米アドビシステムズでシニアエバンジェリストとして活動するJulieanne Kost(ジュリアン・コスト)氏が初来日を果たした。「Photoshopの伝道師」として知られるRussel Brown(ラッセル・ブラウン)氏とともに、「Create Now / PLUS ONE DAY」としてPhotoshopやLightroomをアピールするツアーを行っていたが、今回、コスト氏にLightroomのメリットと使いこなしについて話を聞く機会を得たので、お届けする。
LightroomとPhotoshopとElements、どれを使えばいい?
コスト氏は写真家としても活動しており(http://jkost.com/)、その立場からLightroomの特徴として「使いやすさ」をあげる。それは自身がヘビーユーザーであるPhotoshopと比べても「使いやすさが格段に上がっているから」という。Lightroomでは、「ライブラリ」「現像」「ブック」といったモジュールを順に進めることで、「ワークフローに従って作業できるのが醍醐味」。写真をさまざまに編集・補正を行うために「Photoshopを使うのが好き」だが、合成のような高度な作業を行わないのであれば「仕事の90%はLightroomで完結する」と話す。
アドビシステムズとしては写真管理・編集ソフトとしてPhotoshop(及び Bridge)、Lightroom、Photoshop Elementsという3製品があるが、コスト氏は、PhotoshopとLightroomは「写真家の好み」で使い分ければいいという。Lightroomは管理・整理機能が強力で、補正機能ではRAW画像をさらに「エンハンスできる」からだ。ちなみにPhotoshop Elementsは「初心者向け」だが、ガイドに従って編集作業ができる点で「Bridgeよりは使いやすいと思う」。
「RAWで撮影してトーンカーブや、(カラー補正の)HSLなどの機能を使いたい場合はLightroomを、フィルターやスマートオブジェクトなどの機能を使いたい場合はPhotoshopを使う。デジタル一眼レフカメラならLightroom、コンパクトデジカメならElementsを使う、といった具合に、レベルとニーズに合わせて使いこなすといい」。
コスト氏はそう話しつつ、「どのくらいのレベルで写真をコントロールしたいかによってどれを選ぶかは違ってくるが、アマチュアでも真剣に写真に取り組んでいると、Elementsでは物足りなくなってくる」と指摘する。
高機能化しても心理的ハードルが低いLightroom
コスト氏は、Lightroomに過去10年分 約2万5000枚の画像を保管しているという。撮影した写真は頻繁に「捨てている」そうだが、過去10年間の写真が1つのカタログに収められているため、過去にさかのぼって写真を管理できる点をLightroomのメリットとして挙げる。
Lightroomは、「カタログ」と呼ばれるデータベースを利用して写真を管理するが、このカタログはパソコンのストレージよる制限を除けば「ほぼ無限に写真を保管できる」ため、あえてカタログを切り替える必要はない。以前のバージョンでは1つのカタログに保管できる写真の枚数に制限があったが、現在はその制限もないため、切り替えずに使うことがお勧めだとコスト氏は話す。
Lightroomの現像モジュールにはトーンカーブやHSLパネルを使った補正機能を始めとしてさまざまな機能があるが、「どれも重要な機能で、こうした機能があるからこそ、自由に創作でき、創作意欲をかき立てられる」と話し、単に写真の補正だけでなく、円形フィルターや修正ブラシ、ぼかし、トーン修正といった機能を活用することを推奨し、「最終的に仕上がってくる写真がより良いものになる」と強調する。
たくさんの機能があるので、「お気に入りの機能」もたくさんあるが、例えばレンズ補正に含まれる、水平/垂直を自動的に補正する「Upright」機能は、「非常に時間を節約できる」ためお気に入りだという。また、「出張や旅が多いので、出先でも調整できるので気に入っている」。と最新バージョンの5より実装された「スマートプレビュー」機能もお気に入りだという。
最近のデジタル一眼レフカメラには高度な動画撮影機能が搭載されており、Lightroomも動画の管理機能を備えているが、動画の処理に関して、写真ほどの柔軟性はない。コストt氏は、「動画を使えるツールはPhotoshopやPremierがあり、Lightroomは写真家が使いやすいという方向で強化して欲しいと考えている」とコメント。この辺りはコスト氏が担当している部分ではないため、実際はLightroom開発チーム次第だが、「伝道師」としては動画機能の強化はそれほど求めていないようだ。
コスト氏が求める機能とは何かと尋ねると「キーワードをもっと簡単に使いたい」という返答が帰ってきた。Lightroomでは管理のために、写真にキーワードを付けてあとから検索しやすくできるが、「キーワードは気が重い」とKost氏は話し、さらに使いやすい工夫を求めている。
また、現像モジュールでさらに「クリエイティブのオプション」が欲しいという。PhotoshopのCamera RAWの機能をもっとLightroomで使いたいということで、さらなる写真機能の強化がされることを望んでいるそうだ。
Lightroomは、そうした機能が豊富にあったとしても、必要な機能だけ使えるようにモジュールで分かれていて「使いたいものだけ使えばいい」という使い方ができるため、Photoshopのように高機能化しても、使う際の心理的なハードルは低い、とコスト氏はその使いやすさを強調する。
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