Skylakeで「完全なワイヤレス化」を目指す
米Intelシニアバイスプレジデント 兼 PCクライアント部門担当ジェネラルマネージャーのカーク・スカウゲン氏によれば、2015年後半にデスクトップPC、ノートPC、タブレットのそれぞれに適したフォームファクタ向けにSkylakeベースのCPUを量産出荷予定だ。
そのSkylakeを搭載したノートPCやタブレットのリファレンスデザインでは、「完全なワイヤレス化」を実現するという。それは無線LANによるネットワーク接続だけでなく、WiDiによるディスプレイ接続、そしてA4WPの“Rezence”によるワイヤレス給電技術による充電まで、ケーブルレスで運用が可能になる。これはPCメーカーに強制するものではないものの、ハイエンドモデルなどを中心に「完全なワイヤレス運用」が可能なPCが登場する日もそう遠くないかもしれない。
この完全なワイヤレス運用を実現するには、自宅や職場だけでなく、街のさまざまな場所にワイヤレス充電設備を用意して、場合によっては電源供給を前提にした課金サービスなどが必要になるだろう。いずれにせよ、社会全体でワイヤレス充電環境を整備するのが利便性向上の第一歩だ。スカウゲン氏がIDFの2日目に行ったセッションにおいて、アラブ首長国連邦のエミレーツ航空 ITイノベーション担当トップのサンジャイ・シャーマ氏が登壇し、同社がラウンジや航空設備にワイヤレス給電装置を設置し、旅行客の利便性を図っていく計画だと明かした。
PCやスマートフォンなど、電子機器を持ち歩くのがごく当たり前となった昨今、バッテリーを使い切る前に適時充電していくことは非常に重要だ。飛行機で移動する場合、空港ラウンジはその重要ポイントだが、最近ではさらに航空機の座席にAC電源やUSBを設置しているケースも多く、充電する機会としては以前より恵まれている。近年、豪カンタス航空をはじめ、燃料費高騰で経営危機に直面している世界各国の航空会社に資本参加して世界中にネットワークを拡大しつつあるエミレーツだが、最新技術やトレンドをいち早くキャッチアップして顧客の心を掴む余力があるというのも同社ならではだろう。
ケーブル1本にすべてお任せ、「USB 3.1」と「Type-C」が目指す世界
このような話をすると、Intelや関連パートナーはすべて「ワイヤレス化」への道を歩みつつあるように思えるが、一方で、ケーブルによる機器間接続の技術革新も進んでいる。その最たるものが「USB」だろう。キーボードやマウスを接続するのが主な役割だったUSBは、2.0の世代になり転送速度がアップし、ストレージやプリンタなどより大容量のデータ転送を必要とするデバイスの接続も容易になった。3.0の世代では最大速度が5Gbpsまで高速化しh、HDDやSSDを外付けで接続しても、内蔵ストレージと同等の感覚で扱えるまでになった。
その後継となるUSB 3.1は、規格化自体は2013年夏に行われており、従来比2倍の最大10Gbpsの転送速度に対応して「SuperSpeed 10」(もしくはSuperSpeed+)などの呼称やロゴを用いている。USB 3.1については転送速度以外にもいくつか注目したいポイントがある。その1つがデータ転送以外に大容量給電まで対応し、すべての機器間の接続をUSBケーブル1本で実現してしまうという構想だ。
もう1つは「Type-C」と呼ぶ新しいコネクタ規格で、2014年8月には「裏表関係なくケーブル挿入が可能なUSBの新規格が登場」として話題になった。対応製品が市場に登場するのは2015年以降の見込みだが、Skylakeの完全ワイヤレス化と時を同じくして、ユーザーの利便性を高める技術が有線、無線、ともにIntelによって同時進行するというのも興味深い。
電力供給とディスプレイ出力をカバーする新規格を導入
具体的には、これまでUSBで対応できなかった領域を埋める新規格がUSB 3.1のタイミングで登場する。IDF 14では、ノートPCを例にした周辺機器との接続に対するニーズを紹介していたが、「Power」と「Display」の項目のみ、それぞれACアダプタとHDMIなどUSB以外の接続規格を用いている。これを「Power Delivery」(PD)や「AV Class」といった仕組みでカバーし、USBで代替可能にする。
これまでは、ディスプレイがUSBハブとなっており、ACアダプタで電源を供給していた。USB 3.1では、このUSBハブ部分にノートPCと外付けSSDをそれぞれUSBで接続すると、「ノートPCからディスプレイへの画像出力」「ノートPCと外付けSSD間のデータ転送」「ノートPCへの給電」が、すべてUSBケーブル1本を通して行えるようになる。ノートPCにACアダプタを接続する必要はなく、USBハブに接続したすべての周辺機器へのアクセスがUSBケーブルを通して行える。
これまでもUSBバスパワーによる給電で最大5ボルト×500ミリアンペア=2.5ワットの充電が可能だったが、最近ではタブレットをはじめ標準のUSB経由では給電容量が足りないデバイスも増えてきた。こうしたデバイスを含め、さらに大容量を必要とするノートPCや関連デバイスの同時給電を可能にするべく登場したのが「USB PD」となる。
最新のPD 2.0では最大100ワットまでの給電を可能にする。ただし、コネクタ規格によって上限を設けており、例えば、スマートフォンやタブレットで普及しているMicro Type-A/Bの場合、PDの要件を満たしたうえで最大60ワットまでとなっている。Type-Cについては、サイズがMicro Type-A/Bとほぼ同等ながら最大100ワット給電に対応する。
USB PDとともに重要なのが「USB AV」(AV Class)だ。これは、USB経由で双方向のディスプレイ通信、ならびに、音声信号を含めたやり取りを可能にする。これまで、外部ディスプレイ接続はHDMIやVGAなどのケーブル接続か、先ほども登場したWiDi(Miracast)の利用が一般的だった。もし、給電や周辺機器接続を含めてUSB接続1本ですべての通信や給電ができるならば、非常に有用な規格だといえるだろう。
Copyright© 2014 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.