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“ドラクエ”や“KOF '97”がスマホに登場――古参ゲーマーが重い腰を上げた1年

 「App Store」のランキングを見ると、有料・無料にかかわらず、そのほとんどがゲームアプリで占められていることに気付く。トップセールスで事実上不動のトップとなっているガンホー・オンライン・エンタテインメントの「パズル&ドラゴンズ」(以下、パズドラ)は、2012年以来いまだに衰え知らずの人気を誇っている。また、2013年下期にはスクウェア・エニックスの初代「ドラゴンクエスト」が期間限定で無料配信され、初日で100万ダウンロードを突破したことも話題を呼んだ。往年の人気タイトルのリメイクも増え、ますます注目が集まるスマホアプリの1年を振り返っていきたい。

王者“パズドラ”にLINE関連ゲームも追随

 2012年のリリースにもかかわらず、2013年も1年を通してパズドラ人気は衰えなかった。また、トップセールス2位(12月21日時点)につけているセガの「ぷよぷよ!!クエスト」(以下、ぷよクエ)も500万ダウンロードを達成するなど、パズル系ゲームは安定した人気がある。パズドラはニンテンドー3DSで「パズドラZ」が、ぷよクエはアーケード版の稼働が開始するなど、スマホを超えたハード展開も盛り上がりを見せている。

 ほかにも、音楽ゲームと育成・コレクション要素を合わせた「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」(KLab)や、「アイドルマスター シンデレラガールズ」のように人気作品をアプリ化したものなどは、コアなファンを獲得している。操作性の面ではパズル・アクションなどジャンルにかかわらず、一般的にiOS端末の方が優れている印象で、特にラブライブは音楽パートの判定がシビアでAndroid端末では操作が大変だった。ただ、三森すずこさんのりりしい演技が目立つ園田海未をはじめ、スクールアイドルの女の子たちを高精細な画面で拝めるというメリットもあるので、一長一短とも言える。

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(C)2013 プロジェクトラブライブ! (C)KLabGames (C)bushiroad

 そして、無視できないのが世界で3億ユーザーを超えた「LINE」と連携するゲームサービス「LINE GAME」の存在。9月6日時点で配信していた36タイトルの累計ダウンロード数(iPhone/Android総計)は2億を突破するなど、その勢いはとどまることを知らない。LINEのオリジナルキャラクターが活躍する人気パズルゲーム「LINE POP」が3400万、「LINEバブル」が2600万ダウンロードを達成したほか、パズルゲーム「LINEポコパン」も2000万ダウンロードを超えている。

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「LINE パズル de イナズマイレブン」 (C)LINE

 つい先日には、レベルファイブの人気作品「イナズマイレブン」とコラボレーションした「LINE パズル de イナズマイレブン」をリリース。パズルと収集要素を組み合わせたもので、イナイレ未プレイでも気軽に楽しめるように仕上がっている。また、LINE GAMEのだいご味といえば、LINE上の「友達」とのスコア競争だ。リアルの人間関係が生み出すソーシャル要素によって、ついついゲームに夢中になってしまう。

スマホをゲーム機にする周辺機器

 ハードの面でもスマホのゲーム利用を促すものが登場した。12月24日発売予定のロジクール製「G550」はiPhone 5s/5および第5世代iPod touchに対応したゲーミングコントローラーで、容量1500mAhのバッテリーも内蔵しているため、長時間のゲームプレイも可能だ。従来のゲーム機で慣れ親しんだ十字キーや各種ボタンを備えるが、やはりiPhoneではバッテリー持ちがやや心配だ。また、本製品に対応することが表明されているゲームは、国内ではスクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーIII」のみ。他メーカーの動きも分からないという状況だ。

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「ロジクール G550 パワーシェル コントローラ+バッテリー」と「Smartphone GamePad」

 同じくスマホ用ゲームパッドとして12月17日に発表されたのが、韓国Samsung ElectronicsのGALAXYシリーズ端末専用「Smartphone GamePad」だ。日本での発売は未定で、BluetoothあるいはNFCで接続して使用する仕様になっている。今後もスマホ向けゲームパッドが続々と登場するかもしれないが、それが浸透するかはまだまだ分からない。ただ、格闘ゲームやアクションゲームなどの一部ジャンルが、スマホの小さい画面やタッチパネルに不向きなのは事実。どのような形にせよ、操作面でのストレスを除いてほしいというユーザー側の要望は根強くあるだろう。

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百度の「Baidu IME」「Simeji」が入力情報を無断で送信 セキュリティ会社が指摘

 中国の検索大手「百度(バイドゥ)」の日本法人が提供する日本語変換ソフト「Baidu IME」「Simeji」が、利用者に無断で文字入力の内容を自社サーバに送信していると、NHKなど複数のメディアが報道しています。問題の検証を行ったセキュリティ会社のネットエージェントは報道を受け、ブログで検証結果の詳細を報告しています。なお、Simejiのダウンロード数は2013年10月時点で700万件を突破。Baidu IMEも180万回以上ダウンロードされている人気ソフトです。

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Baidu IMEの送信例(ネットエージェントの発表より)
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Simejiの送信例(ネットエージェントの発表より)

 ネットエージェントの検証によると、Baidu IMEとSimejiでは、全角入力の情報をSSLで暗号化して送信していました。半角入力のみの場合は、情報は送信されておらず、「クレジット番号や電話番号も変換しなければ送られません」と同社は説明しています。

 また、Windows向けソフトであるBaidu IMEでは、入力内容のほかにコンピューターのSID(セキュリティ識別子)、利用アプリケーションのパス名、Biadu IMEのバージョンを送っていました。Android向けアプリのSimejiでは、UUID(個別端末識別子)、利用デバイス名、アプリのパッケージ名、Simejiのバージョンを送信していました。

 Baidu IMEでは初期設定で「ログ情報」の送信機能はオフになっています。製品サイトのQ&Aコーナーでも、ユーザー自身がログ情報の送信にチェックを入れない限り、送信は行われないと説明しています。しかし、検証の結果ではオフの状態でも入力内容の情報が送られていました。Simejiにおいても、初期設定で「クラウド入力」「ログ情報」の送信がオフになっていますが、情報は送信されていたとのことです。

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Baidu IMEのインストール画面。ログ情報の送信は初期設定でチェックが外れている
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製品サイトのQ&Aコーナーにある説明
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Baidu IMEを26日午前11時にダウンロードした時点では、クラウド入力機能がデフォルトでオンになっていた

 ネットエージェントは利用者の対応策について、「バージョンアップを待ち、改善されるまで使用は控えたほうが良いかもしれません」と指摘しています。また、読売新聞の報道によると、内閣官房情報セキュリティセンターや文部科学省では、中央省庁や学問・研究機関など約140機関に百度製日本語入力ソフトの使用停止を呼びかけたとのことです。

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3DプリンタやCADの2013年ってどうだった?

 早いもので、今週いっぱいで2013年のお仕事も終了です。この年末は、つながりもよろしく9連休。……ということで、どこか遠くへ旅行などにいらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

 さて、皆さんにとっての2013年はいかがでしたでしょうか? 今回は、2013年の3次元データ業界を振り返っていきます。

2013年の3Dプリンタ

 3Dプリンタブームが始まったのは、2012年の終わりの方であったと記憶しています。クリス・アンダーソン氏の「Makers」が2012年10月に出版された後くらいだったでしょうか。正直なところ、私はこのブームがそんなに続くとは思っていませんでした。だって、誰がどう考えても「モノを作る」仕事に関係する人にしか関係のないもの、と思っていましたから。実を言えば、今だってそうです。しかし、数多くのメディアがこの機会に何か新しいものを見いだして報道を続けました。さらに、国としても補助金を付け、経済産業省主導の取り組みが始まるなど、今年になってその動きはさらに加速しました。メディアにおける3Dプリンタの紹介もむしろ今年の方が本番だったような気がします。

 また、年の始めは比較的センセーショナルな報道内容が多かったのに対して、徐々に事実を押さえた内容が増えてきたように思いました。しかしながら、私たちのように日々モノづくりの情報に触れている立場の人間にとっては、3Dプリンタブームは非常に大きな動きに見えますが、一歩外を出れば、「3Dプリンタ? そういえば、どこかで聞いたような……」程度の認知度です。そういう意味では、一般の人にとってはまだ特殊な世界の出来事であるのが現実でしょう。

 しかし、今年の前半、この連載の記事で「3Dプリンタ狂騒曲」と表現した動きは決して無駄ではなかったと思います。というのも、製造業やそれ以外の何らかのモノづくりに携わる産業の人たちに、3Dプリンタ導入の機運が起きて、その結果として3Dデータの存在や重要性が認識されてきたからです。その結果、3Dプリンタがきっかけとなり、3次元CADの導入に踏み切った企業も出てきています。企業の設計現場においても、3Dデータ活用によるメリット全体を享受できる環境が整いつつあります。

 一般社会での3Dプリンタの知名度向上もさることながら、もともとモノを作っている製造業の中で、従来以上に3Dプリンタや3次元CADの活用が進むきっかけになった、ということが一番の成果だったといえそうです。

3Dデータ共有サービス

 3次元データに対する関心という意味では、個人の方に対しても確かに出てはきているようです。今、あちらこちらのメディアでさかんにささやかれているのが、3Dプリンタを使うためには、3Dデータが必要だけどそれを作るのが難しい……。そこで、「3次元データを共有したり販売したりしよう」というサービスやサイトの登場です。私自身もそのようなサービスについての意見やアドバイスを求められることがありました。

 このような形で3次元データの方に注目が集まってきているのは良いことだと思っています。ただし個人的には正直、まだ課題があると思っています。ユーザー目線では、特にデータの作り手にとっての(私だけかもしれませんが)メリットがいまいち分かりづらいということでしょうか。現在、これらのサービスは”投資家目線”で構築されたものと、と私は考えています(なお、”投資家目線”の言葉は、3D-GANの相馬達也さんが、3Dプリンタをめぐるさまざまな立ち位置を語る際に使う言葉を借用させていただきました)。確かに、データの作り手である、あるいは買い手である“ユーザー目線”で見た時に、(少なくとも私は)どうもピンときません。だからこそ、今後の発展に期待したいと思うのです。

 ただ、そういったサービスだけに頼りすぎるのは安易というものでしょう。そこにはデータの作り手が必要なわけで、その底上げを図っていくべきです。だからこそ、3D-GANとしては、今の大人ではなく、もっと若い世代、つまり子どもの頃から、3Dデータに触れて、造形できるという環境で馴染んでいってもらう、ということが大事だと考えています。

 Facebookなどを見ていても、あちらこちらで子ども向けの3Dプリンタイベントを目にするようになりました。実は、今求められているのは、そのようなことではないかと思いますし、私としても来年も引き続き、個人的なミッションの1つとして頑張っていきたいです。

水野のお仕事が増えました……(ということは?)

 私にとっての2013年は、それこそ“驚天動地”の1年でした。これまで、自分には全く縁がないと思っていたテレビやラジオに出演、しかもちょっとコメントをするなどのレベルではなく、ゲストとして30分もフル出演するとか、番組丸ごとガイドとしての役割を果たすとか、これまでの私からすると“ありえないこと”が起きました(ミーハーな私としては、その機会を活用して一緒に写真を撮るなどの行為に走ったことは言うまでもありません。笑)。さらに、気がついたらこの1年で、単独の著書、共著、協力書籍などで6冊の書籍を出せました。

 「そういうわけで、水野の仕事が増えました!」と、自慢話をしたいわけではないのです……(笑)。このように私自身の身辺が大きく変わったということは、やはり専門家から一般の方まで、実に幅広い方々が3Dプリンタの情報を求めているということの表れではないかと思うのです。

 既に3Dプリンタを使いこなしている方々は、今さら私の説明など不要でしょうし、むしろ私よりもさらに熟知している方も少なくないでしょう。その一方で、今回のブームをきっかけに「ぜひ試してみたい」「もっと情報が欲しい」という方も非常に多いのも事実であります。後者の方々には、専門の方からしたら基本的過ぎる情報も、簡単に話す必要があります。3Dプリンタ関連の書籍やテレビ放映のニーズが高まったのには、そのような情報発信が世の中から強く求められていた背景を受けてのことだと思っています。

 「一般のメディアが、あおりたてていた」ような傾向はあったとしても、3Dプリンタの情報を継続的に発信し続けていくこと自体、比較的反応が良かったというお話は、多くのメディア関係者の方々から伺っています。

 また私自身、今年の後半には3カ月にわたって、ある専門紙に毎週連載させていただきましたが、最終回となり、編集の方からいただいた言葉は、私ごときが書いた記事に対する反響が、かなり大きいものがあったということでした。社交辞令を差し引いたとしても、そのような言葉がいただけたのも、やはり「3Dプリンタ」というキーワードが、相変わらず多くの人々を引きつける存在であるということがいえるのではないでしょうか。

 「それで、今年は十分に情報が発信できたのか?」と聞かれてしまうと、正直、よく分かりません。ただ、とにかく、これから世の中で必要とされるのは、もっと多くの人に実践してもらえるような、もっとモノづくりのモチベーションをかきたてるような、そんな情報ではないかと思うのです。

 というのも、先日、Webメディアのfabcrossが現役エンジニア500人に対して行った調査結果では、3Dプリンタの認知度が95%にのぼった一方で、約92%の人は「使ったことがない」ということが示されています。まだまだ、“話題”にとどまっている状況というのが現実ということですね。

 そういうわけで今、3Dプリンタを活用していらっしゃる方々、熟知している方々には、2014年はぜひ、もっと積極的に情報を発信していただきたいし、その価値もあると思います。

 今後必要なのは、3Dプリンタについて「具体的に」「どこで」「どう学べるのか」ということだと思います。特に「3Dプリンタに興味がある」という一般の方で、「3Dモデリングを知りたい」という方にとっては、その場所も書籍もまだまだ足りていない現状ではないでしょうか。

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まるで湯船に浸かっているようなリラックス感――理想のPC作業環境を作る方法

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ハーマンミラージャパンの福田怜美氏

 皆さんは普段どのような姿勢で仕事をしているだろうか。

 「ワーカーの約7割が仕事中に身体的疲労や症状に悩まされている」——こう指摘するのはハーマンミラージャパンの福田怜美氏だ。

 こんな職場の悩みに対する解決策を提示するのが、ハーマンミラーと日本マイクロソフトだ。家具やインテリアのメーカーであるハーマンミラーとPCのOS「Windows」などを開発する日本マイクロソフトは、一見関わりがないように見えるが、どちらも人間工学に基づくオフィス用品や仕事道具を開発している。

 ハーマンミラーは体にかかる負担を軽減するワークチェアの「アーロンチェア」や「エンベロップデスク」を販売しており、マイクロソフトは手首に負担がかからないエルゴノミクスデザインのマウスやキーボードを古くから開発している。

ノートPCでの作業は体に負担がかかりやすい

 マイクロソフトの調査では、デスクワーカーは1日にPCを約7時間使用しており、そのうち約6時間が仕事での利用だという。「長時間のPCワークで目、肩、腰などに疲れや痛みを感じる人が多いが、仕事でPCを使う6時間というのは、睡眠時間に匹敵する長さ。快適な睡眠環境は注目を浴びているのに、デスクワークの環境は気をつけていない人が多い。知らず知らずのうちに体に負担がかかっている」と福田氏は述べる。

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マイクロソフトの調査によると、デスクワーカーは1日に約7時間のPCを使用しており、そのうち約6時間が仕事での利用だという(左)。長時間のPCワークで目、肩、腰などに疲れを感じるワーカーは多い(右)

 どうすれば体の負担を減らせるか。福田氏は「定期的にリクライニングを活用すること」が重要だと述べる。座っている時は頭の重量を支えるために腰に負荷がかかる。特にPCのディスプレイに顔を近づけるなどして前傾姿勢になるときが、最も腰椎椎間板への負荷が高くなるという。

 そのためノートPCでの作業は体に負荷がかかりやすい。画面が目の高さよりも下にあるため、ディスプレイを見下ろすような形で前傾姿勢になるためだ。また、ノートPCのキーボードは小さいため、縮こまった姿勢で作業をすることになる。すると「胸が閉まってしまい、十分な酸素が得られず、集中力が切れたり頭がぼんやりしてしまうことが多々ある」(福田氏)。

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PCを操作していると前傾姿勢の猫背になりがちだが、腰椎椎間板に大きな負担がかかる。立位の姿勢に比べて約1.9倍もの負担が椎間板にかかるという(左)。ノートPCはディスプレイを見下ろす形になるため、腰に負担がかかりやすい(右)

 こうした症状を避けるには、まずディスプレイの位置を調整することが大切だ。ディスプレイは自分の目線と同程度の高さにするとよいという。ディスプレイアームなどを使用するのが有効だが、福田氏は「お金をかけずとも、ノートPCの下に厚い本を置くなどして調整する方法もある」と述べた。

 ノートPCを机の手前ギリギリに置いて作業するのも危険だという。腕を浮かせた状態でキーボードを打つことになり、手首に大きな負担がかかり、腱鞘炎(けんしょうえん)になるリスクが高まるためだ。

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適度なリクライニングを活用することで腰への負担は軽減される。ディスプレイアームなどを使い、ディスプレイの位置は目の高さに合わせるのがよい(左)。手首に負担がかかるため、デスクの手前側でノートPCを操作するのもよくないという(右)
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日本マイクロソフトの北川美由紀氏

 日本マイクロソフトの北川美由紀氏も「デスクで作業するときは、ノートPCでも十分な大きさの外付けキーボードとマウスで操作してほしい」と助言するが、現状ではワーカーのうち13%程度しか外付けキーボードとマウスを導入する人はいないという。

 マイクロソフトが勧めるエルゴノミクスデザインのマウス、キーボードは人間の手、指、手首の可動域を考慮して開発したもので、特にキーボードは手、指、手首に合わせた4種類のカーブを施している。慣れるまでに1週間程度かかるものの、慣れれば作業が快適になるという。「マウスやキーボードは現代の文具。少しでも気を遣って選べば生産性は大きく向上する」(北川氏)

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手首をねじる可動域は左右に約80度、指の左右への可動域は約20度、上下の可動域は約30度という(左)。エルゴノミクスデザインを取り入れたキーボード。キーボードの中央に割れ目を作るなど手、指、手首の可動域に合わせた4種類のカーブを施している(右)
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早稲田大学理工学研究所の三家礼子氏(左)。筋電図の測定などを行い、マイクロソフトの「Sculpt Ergonomic Desktop」が手にかかる負担を減らすかどうかを実験した。主観評価や筋電図測定の結果、被験者が普段作業している環境よりも負担が減ったことが実証されたという(中央、右)

 セミナー会場にはハーマンミラーの「フローモニターアーム」「ラップトップマウント」「エンベロップデスク」の3点セットと、マイクロソフトのWindowsタブレット「Surface」を使用した作業用デスクを展示していた。筆者も実際に座って試してみたが、まるでお風呂で湯船に浸かっているかのような感覚でリラックスできた。2014年1月31日まで東京都内のアカデミーヒルズ各所に、タッチアンドトライコーナーが設置されるので、気になる人は試してみるといいだろう。

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会場に設置していた作業用デスク。ハーマンミラーの「フローモニターアーム」「ラップトップマウント」「エンベロップデスク」の3点セットと、マイクロソフトのWindowsタブレット「Surface」を使用している。2014年1月まで、アカデミーヒルズ各所でこれと同じものを体験できるタッチアンドトライコーナーを設置する

タッチアンドトライコーナー実施概要

2013年12月12日〜2014年1月5日

アカデミーヒルズ 六本木ライブラリー内


2014年1月6日〜2014年1月19日

アカデミーヒルズ アークヒルズライブラリー内


2014年1月20日〜2014年1月31日

アカデミーヒルズ 平河町ライブラリー内


※いずれも会員制の施設(有料)だが、タッチアンドトライコーナー設置期間中に上記3つのライブラリーを利用できる1DAYトライアルチケットが抽選で30人にプレゼントされる(応募締め切り:2014年1月7日18時)。


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Windows XP搭載PCの買い替えで考慮すべき問題――ノートPC化から消費税まで

←・SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(2):Windows XPから乗り換えるべきは“7”か“8.1”か

ひとくちにWindows XP搭載PCといっても世代はさまざま

 Windows XPから乗り替える先のOSがWindows 7であれ、Window 8.1であれ、ハードウェアの入れ替えを同時に行うのが理想であることは前回も述べた。

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Windows XP Professinalアップグレード版。社内で利用頻度が低いが、特定の用途でたまに使うようなPCでは、ひょっとしたらWindows XPより前の世代からアップグレードした長寿の製品まで残っているかもしれない

 Windows XPは2002年に発売されて以来、12年あまりも使われてきたOSで、それゆえ「XP搭載のPC」とひとくくりにされる中には、Windows XPの発売直後に導入したプリインストールモデルもあれば、導入からまだ2〜3年しか経過していないモデルまで、さまざまな“世代”が存在するのが普通だ。中にはWindows 98や2000からアップグレードした、XPそのものよりも長寿のモデルまであるかもしれない。

 社内のPCでこうした“世代の差”が存在すると、あるPCでは利用できた業務ソフトウェアや周辺機器が、別のPCでは動作しないというトラブルや、動作速度の大きな差となって現れる。今はなんとかやりくりできていても、ハードウェアはそのままにOSだけをアップグレードした場合、こうした差はいっそう顕著に現れることになる。

 また一般的に、新しいPCのほうが、消費電力が相対的に低い傾向にある。これは2001年に施行されたグリーン購入法がこの十年あまりで浸透してきた影響や、ここ数年におけるピークシフトなど節電意識の高まり、そしてPCパーツの電力効率重視の流れが大きいわけだが、ハードウェアを一括で入れ替えることで、管理コストを下げられるだけでなく、節電効果も期待できるのは、法人ユースでは見逃せないメリットだ。

「デスクトップからノートに移行」を同時に行う

 デスクトップPCからノートPCへのリプレースを行えることも、ハードウェアとの同時入れ替えがおすすめである要因の1つだ。Windows XPの導入が始まった頃はまだデスクトップPCのシェアが高く、現在OSのアップグレードを必要としているPCのうちかなりの割合は、デスクトップPCが占めていると考えられる。

 しかしご存じの通り、ここ10年あまりでノートPCは高性能化と価格下落が一気に進み、今やPCにおけるシェアはノートPCが過半数をはるかに超えている。また、ノートPCはバッテリーを搭載していることから、災害など不意の停電への備えにもなる。先に述べた節電効果も高いほか、省スペースであることも現在のオフィス環境にはマッチしている。

 また、昨今普及しつつあるフリーアドレスのオフィスは、可搬性の高いノートPCあってこそのものであり、将来的にそうしたオフィス環境の導入を視野に入れるのであれば、デスクトップPCをこの機会に思い切って減らしてみてはいかがだろうか。

 むしろ社内に対しては、「デスクトップPCをノートPCにリプレースする過程で、最新のOSにアップデートする」といった告知の仕方のほうがよい場合もある。Windows XPに愛着があり、アップグレードに拒否反応を示す人に対しては、こうしたプロセスを踏んで入れ替えを実施したほうが、納得してもらいやすいだろう。

Webブラウザ(IE)利用時の消費電力
OSWindows XPWindows VistaWindows 7
PCタイプデスクトップ(スリムタワー型)ノートデスクトップ(スリムタワー型)ノートデスクトップ(液晶一体型)ノート
発売年2006年モデル2008年モデル2010年モデル
CPUCeleron D 346(3.06GHz)Celeron M 380(1.6GHz)Core 2 Duo E4500(2.2GHz)Core 2 Duo T7250(2.0GHz)Celeron T3100(1.9GHz)Pentium P6000(1.86GHz)
メモリ512Mバイト768Mバイト2Gバイト2Gバイト4Gバイト2Gバイト
HDD250GバイトHDD100GバイトHDD320Gバイト160Gバイト500Gバイト320Gバイト
液晶ディスプレイ17型スクエア15型ワイド19型スクエア15.4型ワイド20型ワイド15.6型ワイド
消費電力(平均 ワット)1088253373016
消費電力(最大 ワット)15410967535333
消費電力(最小 ワット)1007650342513
※日本マイクロソフトが2011年5月に発表した「Windows PC 消費電力検証結果レポート」より
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上のリポート結果のグラフ。Windows XP世代のデスクトップPCやノートPCと比較して、Windows 7世代のノートPCは消費電力が大幅に下がっている

XPのサポート終了とほぼ同じタイミングで訪れる消費税増税

 さて、こうした「ハードウェアごと買い替えるべし」という論調が強いのは、Windows XPのサポート終了を好機として、PCの販売を伸ばしたいメーカーや販売店の思惑もある程度は含まれていることは否定できない。先に述べたような同時入れ替えのメリットは間違いなく存在するものの、Windows XPを搭載しているとはいえ、導入からまだ2〜3年程度しかたっていないPCであれば、ハードウェアを買い替えなくても、OSのアップグレードだけで十分というケースもあるはずだ。

消費税の増税時期
消費税
2013年(平成25年)1月〜12月5%
2014年(平成26年)1月〜3月
4月〜12月8%
2015年(平成27年)1月〜9月
10月〜12月10%
2016年(平成28年)1月〜12月

 ただ、今回に限ってはそうした事情とは別に、同時入れ替えを検討すべき事情がある。それは消費税の増税だ。Windows XPのサポート終了とほぼ同じタイミングである2014年4月1日に、消費税(地方消費税含む)が5%から8%へと引き上げられる。それゆえ、このタイミングを逃してしまうと、次に購入する際は、増税分がそのまま負担となる。

 わずか3%とはいえ、PCという単価が高い製品では、1台につき数千円が加算されるので、これが何十台も積み重なると、かなりの総額になる。まったく同じ製品でありながらプラスアルファのコストがかかる道を選択するのは得策ではない。時間がたって価格が下がれば結果的に増税額と相殺される可能性もあるが、少しでも延命することを狙って社内のPCの“世代”をいたずらに増やすよりは、2014年4月1日以前のタイミングで入れ替えを図ったほうが、手間の面からも望ましいだろう。

 この場合、決済の関係で支払いだけが増税後になってしまわないよう、あらかじめ留意しておきたい。また、後から周辺機器を追加購入しなくてはいけないことが判明したが、ほんの1〜2カ月の差で高い税率で買う羽目になった、という事態もなるべくは避けたいところ。Windows XPのサポート終了と消費税の増税、時期が一致したのは単なる偶然だろうが、意外と見逃せないポイントだ。

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AppleとSamsungの仁義なき戦いは続く 2014年のモバイル市場を占う

 専門家らによると、2014年のエンタープライズモビリティ市場は数多くの変化が見込まれるという。その一方で、スマートフォンやタブレットに続く、ウェアラブル端末の影響力は未知数だ。

「HP ENVY Phoenix 810-180jp/CT」――赤く光るかっこいいゲーミングPCだ!

ココが「○」
・ゲーマー心をくすぐるデザイン
・水冷仕様&最新ゲームをサクサク楽しめる高性能
・Beats Audioサウンド
ココが「×」
・Micro ATXなので拡張性はやや劣る
・ショップブランドPCに比べて価格は高め

はじめに:HPがマジメに設計したゲーミングPCは見応え十分

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「HP ENVY Phoenix 810-180jp/CT 東京生産 カスタムモデル」

 日本HP、というよりもBTOメーカー各社は、それぞれ独自にゲーミングPCラインを持っている。日本HPの個人向けデスクトップPCラインアップには、「Slimline」のようなスリムモデルが用意されているが、メインはコストパフォーマンスモデルの「Pavilion」、ハイエンドモデルの「ENVY」という2つのモデルがある。

 今回紹介するゲーミングPCは、ENVYのブランドを掲げつつ、加えて「Phoenix」という別名も併せ持った特別モデルだ。ケースはHPのデザインイメージを踏襲しつつも、専用にデザインされており、わずかに傾斜した形状や内部からケース外に漏れる赤いイルミネーションなどは、ゲーマーの心をくすぐる。また、マイクロATXをベースに設計されているため、比較的コンパクトなところも特徴としている。

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高さを抑えたマイクロATXベースのコンパクトなケース。斜めに傾いた形状や、内部が見れるクリアパネル採用側面板はまさにゲーマー向け仕様っぽさを感じられる

ボディと製品概要:簡易水冷仕様の静音モデル。メンテナンスもまずまず

 このケース、構造もなかなかユニークだ。電源ユニットを上に置くデザインは一般的だが、マザーボードは上下/左右を逆に配置するスタイル。効果のほどは定かではないが、インパクトはバツグンで、ケースを開く側面板も左右逆になるので、一般的なデスクトップPCとは少し頭の切り替えが必要になることもある。

 内部レイアウトは、前部下に3.5インチシャドウベイ、その上部がグラフィックスカード用のスペースで、前部上が5インチベイ×2基となる。3.5インチシャドーベイはトレイ式を採用しており、自作PCユーザー目線で見ても、メンテナンス性はまずまずだ。

 Micro ATXなりに内部密度は高めだが、グラフィックスカードの交換も難易度はほどほどと感じた。なお、グラフィックスカードには支えもついている。こうした気配りは自作PC用ケースでも上位モデルに見られるもので好感触。ただし、ケーブルマネジメントは裏面配線ではなく、小ぎれいではあるがメインスペースに配線されている。

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本体前面/背面。前面インタフェースは、前面上部にあり、USB 3.0×2、オーディオ入出力と、シンプルな構成だ

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電源は上部にあるが、マザーボードは上下/左右が逆。この点を除けば内部レイアウトは常識的な配置だ。HDDベイはトレイ式で交換は比較的簡単に行える

 個々のパーツに目を移すと、目にとまるのはまずCPU用の水冷クーラー。自作PCでも一般的となったヘッド・ポンプ一体型のいわゆる簡易水冷クーラーで、9センチ角相当と思われるやや小ぶりなラジエータを組み合わせている。

 当然ファンも一般的な12センチ角ラジエータ用と比べると小ぶりなのだが、静音性の面では十分に静かな部類に入る。なお、評価機のCPUはCore i7-4770Kを搭載しており、標準構成のCore i7-4770をベースにカスタマイズしていることが分かる。ほか、メモリがDDR3-1600の8Gバイトから16Gバイトへ、グラフィックスカードがGeForce GTX 760からGTX 770へ、ストレージは1TバイトHDDから128GバイトSSD+1TバイトHDD×2へとパワーアップされており、試算したところ、標準構成の13万9860円からグッと上がり20万1810円相当(執筆時点)になっていた。

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CPUクーラーは簡易水冷仕様。カスタマイズによりCore i7-4770ではなく定格クロックが100MHz高いCore i7-4770Kが搭載されていた

 評価機に搭載されたグラフィックスカードは、リファレンスデザインの製品だった。このあたりはショップブランドPCのようにパーツメーカー側が独自に設計した静音クーラー搭載モデルと比べるとやや動作音が大きめ。ただし、リファレンスクーラーも、従来の製品と比べると静かで冷える仕様になってきており、ベンチマークをループ実行するような場合でもなければ不快というほどの動作音は発しない。

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グラフィックスカードは、カスタマイズによりGeForce GTX 770が搭載されていた。リファレンスデザインのカードで、動作クロックなども定格通りの仕様

 そのほか、日本HPというより、ENVYシリーズならではの仕様がオーディオ機能だ。本製品はほかのENVYと同様、Beats Audioが採用されている。ゲームにおいて、その世界観を演出するのは、グラフィックスと同時にオーディオも重要な要素だ。そのオーディオ面での機能として評価できる。

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Beats Audioに対応。タスクトレイのアイコンから各種パラメータの調整が可能だ。ちなみに、音声入出力はアクセスしやすい本体上面に搭載されている

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俺、歌声になってみたから、歌わせてみない? 楽譜を入力すれば歌ってくれる「Sinsy」の中の人体験

 2009年のクリスマス、Sinsyという歌声合成技術がデビューした。サンプリングした音の素片を結合させるVOCALOIDやUTAUとは違う、HMM(隠れマルコフモデル)という統計的な手法を用いて人間の歌声をモデリングし、本物の人間のようにリアルな歌い方が可能となっている。

 Sinsyは名古屋工業大学が提供している無料のWebサービスで、電子フォーマットの楽譜をインプットすると歌声のオーディオデータを吐き出してくれる。この技術をベースにCeVIO Creative Studioという製品も今年発売された。

 そして2013年のクリスマス、筆者はそのSinsyの歌声の「中の人」になった。ブラウザから誰でも使えるバーチャルシンガーになったのだ。Sinsyではこのシンガーを「ボイス」と呼ぶ。「Sinsyボイス m003e_beta 松尾P」の誕生である。

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ボーカル一覧に筆者の声が!!! 言語は英語です

中の人になるためにすべきこと

 きっかけは学会への取材だ。昨年2月に開催された情報処理学会 音楽情報科学研究会・音声言語情報処理研究会の「歌声情報処理最前線!!」で、名古屋工業大学国際音声技術研究所の徳田恵一教授と大浦圭一郎特任助教による講演「自動学習により人間のように歌う音声合成システム —Sinsy—」があった。このとき「英語音源あると便利でいいんですよね。あと、ローカルで処理できるとうれしい」と要望を出したら、「中の人をやってみませんか?」という逆提案されたのだ。

 この時点では英語を歌えるボイスはまだなかった。徳田教授は筆者が英語のカバー曲を歌っているのを知っていたのでもちかけてくれたようだ。UTAUを使って自分の英語音源を作ってみたいと考えていたけどなかなか正しいやり方にたどりつけずにいたので、これは試す価値があると思い快諾。収録の条件を聞いて、さっそく試すことにした。

 VOCALOIDやUTAUとは違い、意味のない文字列を一定の音程で歌う必要はない。Sinsyの音源収録では、ただ歌を歌えばいい。今回は英語音源なので、英語の歌だ。10数曲あればいいというので、特に練習なしで歌える14曲を選んだ。

  • And I Love Her
  • Yesterday
  • All My Loving
  • Get Back
  • The Fool On The Hill
  • Back In The U.S.S.R.
  • Here, There And Everywhere
  • Blackbird
  • Hey Jude
  • Penny Lane
  • Michelle
  • Let It Be
  • Lady Madonna
  • The Long And Winding Road

 すべてビートルズの曲で、ポール・マッカートニーがリードボーカルを取っているのを選んだ。歌いまわしとかがあまり変ってしまうとよくないだろうという、個人的な判断からだ。ポールの曲を歌うときにはできるだけ節回しを似せるように心がけているので、多少なりともポールっぽい歌声合成音源になれば、という目論見もあってのことだ。成功するしないは別にして。

 これらの曲を選ぶ上でもう1つ、ポイントがあった。それはMIDIのカラオケが存在すること。この14曲については、ヤマハが販売しているMIDI演奏データを、こちらと名古屋工業大学双方で購入して使った。これを参考に、ボーカルデータと対照させる楽譜データをSinsyチームで作っていくのだ。

 こちらでは、MIDIデータをQuickTime Proに読み込み、オーディオデータに変換してからiMacのGarageBandに取り込み、ボーカルを録音していった。収録場所は、なんの防音もされていない自宅リビング。2012年3月の、家族がいない時を見計らって、一気にほぼ1日で録音した。サンプリング周波数は44.1kHz。

 オケは売り物なので、そのデータをそのものを出すわけにはいかないが、参考に、同じ曲を自分で作成したオケで「歌ってみた」ものがいくつかあるので、ご参考に。こんな感じである。

 上記の録音でも分かるように、部屋の内外のノイズを拾ってしまっていること、本当は48kHzか96kHzでの収録が望ましいのを44.1kHzで録ったこと、さらにはMIDIデータのBPMが固定ではなかったため、ボーカルデータの後処理が大変で音質を下げてしまった。

 録音から公開まで時間がかかったことにはそういった問題があったと、後で徳田教授から説明を受けた。まだこれは「Sinsyボイス m003e_beta 松尾P」とあるようにベータ版なので、音質改善のチャンスが残されている。歌ってみたが捗ると話題の「だんぼっち」でどの程度いけるのかは試してみないとわからないが、録音環境も理想的なものに少しでも近づけて再度挑戦し、品質を上げたいと考えている。

 そういうわけで、このバージョンで、音質面で問題があるとすれば、それは当方の収録条件が原因。まだ良くしていきたいと思っているので、それまでは現行のベータ版でぜひ歌わせてほしい。

みんな俺の声を使ってください! ってことでSinsyの使い方を解説

 Sinsyを使うためには、MusicXMLというフォーマットの楽譜データを作成する必要がある。筆者は五線譜で入力するFinale NotePadというフリーウェアを使っている(Mac版、Windows版がある)。Cadencii、MuseScoreといったアプリも利用可能だ。

 譜面ができたらMusicXML形式で書き出し、そのファイルをSinsyにサイトで送信する。数秒待つと、.wav形式のオーディオデータで、m003e_betaが歌う英語のボーカルがダウンロードできるようになる。

 楽譜をスタジオ付きシンガーの松尾P君に渡すと、スタジオの中で歌って、「できたよ」と渡してくれる——そんなイメージだ。

 スタジオにいるシンガーは1人ではない。英語の歌ならば、m003e_beta(つまり、筆者の声です!)だけでなく、女声の「f002e 香鈴(シャオリン)」も使える。日本語は、同じ人が歌う「f002j 香鈴」、初号機の「f001j 謡子」。そして、UTAUでもおなじみの波音リツが「f004j 波音リツS」として加わった(デモは去年から出ていたが、使えるようになったのはこのクリスマスから)。Sinsyではこの4人、5種類の歌声を無料で使うことができる。

 「調教いらず」でリアルな歌声を手に入れることができるSinsyだが、譜面で表現できないような細かいニュアンスまで「調教」することは難しい。そこはMelodyneなどのピッチエディタ(DAWに付属、内蔵するものも多い)と併用するなどの方法もある。

 なお、ローカルでSinsyが使えたらいいですね、という話は今回実現した。ソースコードが公開されたからだ。Sinsyのバージョンは初期型で、0.9となる。早くも試した方のブログはこちら

 自分の知らないところで、自分が歌えない、知らない曲が自分の歌声で響いていくというのは、自分自身の理想型でもある。どんどん歌わせていってほしい。m003e_betaに歌わせたら、ニコニコ動画やYouTube、SoundCloudなどに投稿してもらえるとうれしい。

 エクシングへの取材でも書いたが、HMM方式の歌声合成には、歌唱者適応という技術がある。その技術がさらに進めば、数曲しか残っていない場合でもその歌声からボイスを構築し、たくさんの人がその歌声で曲を作ってくれる。自分たちがいなくなっても続いていくものがあるとうれしい。

MMDAgentはAndroid対応に

 Sinsyの兄弟分とも言える、同じく徳田チームによる製品「MMDAgent」(3Dキャラクターと対話できるソフト)もこのほどメジャーアップデートを果たした。今回はAndroid対応が目玉だ。徳田教授に聞いたところ、iOS版は人的リソースの問題から現時点で予定はないそうだ。

 移植や他形態での利用については、基本的に修正BSDライセンスで公開しているため「商用利用も含めてどのように利用してもOK。ただし、COPYRIGHT表示は必須」となる。例外はメイちゃんの3Dモデルで、こちらはクリエイティブ・コモンズのCC BY-NCで公開なので「商用利用を除き、どのように利用してもOK。ただし、COPYRIGHT表示は必須」となる。

 つまり、版権的に使えるMMDモデルがあれば、それを利用して独自の対話型3DエージェントをiPhone、iPad向けに作ることも可能となる。これはMMDAgent関連の開発コミュニティに期待したいところだ。

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6インチの曲面ディスプレイを搭載――写真で見る「G Flex」

 LGエレクトロニクス・ジャパンはこのほど、曲面ディスプレイを搭載したAndroidスマートフォン「G Flex」を日本の報道陣向けに公開した。G Flexは10月28日に発表されたモデルで、11月の韓国発売を皮切りに、香港やシンガポールでも販売されている。日本での発売は未定だ。

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曲面ディスプレイ搭載のAndroidスマートフォン「G Flex」。ボディカラーはTitan Silverの1色

 G Flexの曲面ディスプレイは、この10月にグループ企業のLGディスプレイが量産を開始したもの。サイズは6インチのプラスチック有機EL(P-OLED)で解像度はHD(1280×720ピクセル)、曲率700R(半径7メートル)の曲がり具合で縦方向にカーブしている。ピクセル配列はペンタイルではなく、RGBの縦ストライプのため、明るく自然な色合いで描画できるという。フルHDでない理由についてLGでは、「この時期に製品化するためにはHD画質がベストだった」(説明員)と説明。おそらく、量産時の歩留まりなどコスト面で折り合いが付かなかったと予想される。

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端末の左側面(写真=左)と右側面(写真=右)。「G2」と同じく操作部が背面にあるため、両サイドはスッキリしている。左側面にあるスロットはSIMカード用
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端末の上面(写真=左)と底面(写真=右)。上面にある小さな穴はノイズキャンル用のマイクだろうか? 底面には地上波デジタルテレビ(DMB)用のアンテナと外部接続用のUSB端子、通話用マイク、イヤフォンジャックがある

 このディスプレイにあわせてボディも曲線を描いており、ズボンのポケットにも収まりやすいとしている。通話時にはユーザーの耳と口を結ぶラインにフィットし、音質が従来の端末と比較して3デシベル向上した。また横画面にして動画を視聴した場合は、6インチというサイズながら画面の端まで自然に目に入るため、IMAXシアターのような臨場感や没入感が体験できるとしている。その場合の推奨視聴距離は約30センチだ。そして、片手操作時にディスプレイの上下に指が届きやすいというメリットもうたわれている。

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ボディがカーブしているため、6インチという大きさでもディスプレイの端に指が届きやすい。というメリットもうたわれている

 短時間の試用ではあるが、確かに映り込みが軽減するなど横画面時の視認性は高いと感じた。ただ、ほかの6インチクラスのモデルとしっかり比較したわけではないので、曲面ディスプレイの恩恵がどこまであるのかは微妙なところだ。また持ちやすさについては、6インチという大きさを考えると確かに指が画面の端まで届きやすいが、快適な片手操作ができる——というほどでもなかった。

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横画面で動画を見ると、IMAXシアターのような臨場感が味わえるという(写真=左)。カメラのUI(写真=右)
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背面の電源キー/カメラ部周辺(写真=左)。電源キーは押すと光る仕様で、メインカメラでセルフタイマーを使うときに、撮影タイミングを教える工夫も盛り込まれた。背面下部と底面のアップ(写真=右)

 このG Flexのボディは柔軟性があり、強く押された場合には短時間であれば平面に戻っても動作に支障はない。耐えられる荷重は明らかではないが、人間1人がゆっくり乗るのであれば問題ないという。こうした柔軟性を実現するためにプラスチック基板を使った有機ELが採用され、また専用のバッテリーがグループ企業のLG化学で開発された。容量3500mAhで、ユーザーが交換できないタイプだ。

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ボディにあわせてバッテリーもカーブしている

 ボディの背面は特殊塗装により傷の自己修復(Self Healing)機能が施されている。これはボディがカーブしていることで接地面が特定の場所に集中するなど、平面なスマホに比べてこすれやすく、キズが付きやすいことに配慮したもの。同様の自己修復機能はPCや携帯電話、スマートフォン用ケースなどで採用実績があるが、「スマホ本体ではG Flexがおそらく世界初だろう」(説明員)とのことだ。

 曲面デザインとサイズ以外のスペックは夏に発売された「G2」に近い。電源キーとボリュームキーが背面中央にあり、左右どちらの手でもっても人差し指で操作できる。新たに、傾きに反応してロックスクリーンの画像が変化する機能や2画面表示のマルチタスク機能が追加されている。

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端末下部にあるテレビ用アンテナを伸ばしたところ。縦画面だとちょっと邪魔だが、横画面なら違和感がない場所
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別売オプションのカバー。これも700Rでカーブしている

 OSはAndroid 4.2を採用し、プロセッサーはクアッドコアで2.26GHz駆動のQualcomm Snapdragon 800「MSM8974」。サポートする通信方式はLTE-Advanced、LTE、HSPA+、GSM。メインカメラは1300万画素、インカメラは210万画素。2GバイトのRAMと32Gバイトの内部ストレージ(ROM)を備えており、外部メモリには非対応だ。そのほか、NFCやBluetooth 4.0、USB 3.0、IEEE802.11a/b/g/n/acに対応する。今回のデモ機は韓国のLG U+が販売しているモデルで、地上デジタルテレビ(地上波DMB)の受信機能があった。

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ソニーとパナソニック、有機EL共同開発の提携を更新せず──「それぞれ開発は続ける」

 ソニーとパナソニックが、昨年6月に発表した次世代有機ELパネルの共同開発に関する提携を更新せず、期限通りに解消することが分かった。

 提携では、両社がそれぞれの技術を持ち寄り、50インチ以上の大型有機ELパネルに適した印刷方式の量産技術を2013年末までに確立することを目指した。印刷方式は、パネルの発光層(EL層)を形成する際、有機EL材料を印刷によって塗布する手法。生産工程がシンプルになり、大型化や量産コストの削減に大きく貢献するという。また今年1月の「International CES」では、パナソニックが独自の“RGBオール印刷方式”を使った56V型有機ELディスプレイを参考展示したが、これには提携の一環としてソニーから提供されたTFTが採用されていた。

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「2013 International CES」でパナソニック(左)とソニー(右)が展示した4K有機ELディスプレイ。また、パナソニックは9月のIFAでマザーガラス方式で製造したという55V型4K有機ELディスプレイを展示した

 ソニー広報では、提携の解消について「もともと年末が期限であり、更新せずに終了した。両社は1年半の成果を元に、それぞれ開発を続ける」とし、一部報道の「4K液晶テレビに集中」を否定した。また「可能性の話」と前置きした上で、「今後も商品化に向けた量産スキームなども含め、協力する機会があればやっていきたい」としている。ただし、提携の目的であった印刷方式の量産技術確立については、「詳細はいえない。いずれにしてもまだ課題はあり、今すぐ量産にかかるわけではない」と言葉を濁した。

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NexTV-F、4K試験放送の準備は「順調」

 一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)は12月26日、2014年度に開始予定の4K衛星放送に向け、実際の衛星放送環境を模したデモンストレーションを報道関係者に公開。試験放送に向けた“中間報告”として、準備が順調に進んでいることをアピールした。

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会場になったスカパーJSATの東京メディアセンター(左)。あいさつに立ったNexTV-Fの元橋圭哉氏(右)

 今年5月に総務省「放送サービスの高度化に関する検討会」が作成したロードマップでは、2014年度中に高度狭帯域衛星デジタル放送による4Kテレビの試験放送を、そして2016年には高度広帯域衛星デジタル放送による8Kテレビの試験放送を実現することが提起されている。これを実現するため、放送局や家電メーカーなどを含む産学官の“オールジャパン体制”で組織されたのがNexTV-Fだ。あいさつに立ったNexTV-Fの元橋圭哉氏は、「現在は必要な機材の調達やチューニングを行っている。放送ギリギリまでチューニングを行い、素晴らしい映像をお届けすることを目指したい」と話している。

 公開したデモンストレーションは2種類。1つは、東経124/128度CS衛星を利用する高度狭帯域衛星デジタル放送を想定したもので、カメラで実際に撮影した映像をリアルタイムでHEVCエンコードし、疑似衛星回線で伝送する。映像の符号化方式は、現在のH.264比で約2倍の圧縮率を誇る「HEVC」(High Efficiency Video Coding、H.265)。それを本番同様、MPEG-2 TS(トランスポート・ストリーム)に多重化し、衛星放送に類似した変調/復調も行っているという。なお、高度狭帯域方式では、一般的な45センチ前後のパラボラアンテナで受信できる。

 NexTV-Fの顧問で、また総務省の情報通信審議会・放送システム委員会で主査も務める東京理科大学の伊東晋教授によると、今回の映像はビットレートが35Mbps程度で、「衛星のトランスポンダー1つの容量は40.5Mbpsのため、映像に十分(な容量を)まわすことができる」という。

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デモの概要(左)。東京理科大学の伊東晋教授(右)

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その場で撮影した映像をリアルタイムエンコードして模擬伝送している。4Kならではの精細感に60フレームのスムーズな動きを見せていた

 HEVCデコーダーを介して4Kモニターに映し出された映像は、3840×2160ピクセルの毎秒60フレーム(4K/60p)で、カラーフォーマットは4:2:0(YCbCr 4:2:0)。「放送フォーマットはまだ議論中で、春にはフィックスしたいと考えているが、4K/60p 4:2:0になるのではないか」。

2016年の到達点を“画質”で示した

 もう1つのデモンストレーションは、NexTV-F参加企業が共同開発を進めている4K/60pリアルタイムエンコーダーLSI(1チップ化)に向け、その圧縮アルゴリズムをソフトウェアでシミュレーションしたというもの。各放送局が作成した4K番組をショートクリップにして、事前にソフトウェアエンコードした映像を4Kモニターに映し出していた(権利処理の都合で写真は掲載不可)。

 リアルタイム符号化におけるアルゴリズムは、圧縮効率と画質の向上を目指して研究開発と各種パラメータのチューニングが続けられており、今回のデモは「いわば、2016年の到達点を“画質”で示したもの」。ビットレートはこちらも35Mbps程度だ。そしてLSIが完成した暁には、マルチLSIにより8K映像のリアルタイム符号化にも活用する計画だ。

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4K/60pのハードウェアリアルタイムエンコーダー開発に向け、の圧縮アルゴリズムをソフトウェアで再現した

 ただし、2016年の8K試験放送時に使用する広帯域衛星放送システムでは、BSの1トラポンで8Kを1チャンネル、そして4Kを3チャンネル同時に送出することも視野に入れており、この場合は4K/60pを25Mbps程度に圧縮する必要がある。伊東氏は、「HEVCはそれくらいの実力は持っている符号化方式。技術者は悲鳴を上げそうだが、まだ余裕はあると考えている」とハッパをかけた。

 「それでも、少なくとも来年の4K試験サービスには十分に“使えるレベル”に近づいた。実際の試験放送ではさらにワンランク、ツーランクほど画質が上がるだろう」(同氏)。

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趣味としての写真撮影がいっそう楽しくなる3台のカメラ

携帯性と高画質を兼ね備えたフルサイズミラーレス

 今年もっとも注目したデジカメは、ソニーが11月に発売したフルサイズのミラーレス「α7R」だ。レンズ交換ができるフルサイズ機といえば、これまでは機材一式の大きさと重さを覚悟しなければならなかったが、α7Rでは一回り以上のコンパクト化を達成。フルサイズならではの高画質と、ミラーレス構造による小型軽量ボディを両立させた画期的な製品といっていい。

 有効3640万画素のフルサイズセンサーが生み出す画質は、解像感が高く、遠景の細かい部分までをきっちり表現できる。低ノイズの高感度画質や滑らかな階調性、クリアでナチュラルな発色についても好印象で、画質面の満足度は高い。同じ画角で比較した場合、フルサイズ機はAPS-Cセンサー機に比べてレンズの焦点距離が長くなるため、ボケを生かした写真が撮りやすい点も魅力だ。

 なおα7Rの撮像素子は、解像感重視のローパスレス仕様となる。そのため、都会の建物など規則的な模様がある被写体を撮ると、ごくたまに画面の一部にモアレが生じることがある。モアレは、わざと発生させようと思ってもなかなか撮れない。偶然モアレが生じたら「当たり」だと思って楽しみたい。

 直線を多用した独特の外観デザインについては好みが分かれるところ。三角頭のファインダーをボディ天面に配置した、昔ながらの一眼レフ風スタイルを採り入れながら、レンズマウントの付け根部分にエプロンと呼ばれる段差がないため、見た目にちょっと間が抜けた印象を受ける。ただ、しばらく使っていると目が慣れるせいか、これはこでれ引き締まったスマートなスタイルのようにも思えてくる。既存のフルサイズ一眼は曲線的でふくよかなデザインが多いが、何故かそっちが急激に古めかしく感じてしまう。

 惜しいのはシャッターボタンを押した際の操作感があまりよくないこと。長めのレリーズタイムラグも気になる。そのほか、操作面には注文を付けたい点がいくつかある。しかし一方で、そんな細部の不満点には目をつぶってもいいと思えるくらい、フルサイズ画質と携帯性の両立という、ほかにはない圧倒的な魅力のほうが勝っている。

・レビュー:飛びついても損なし! フルサイズミラーレス「α7」に迫る

・長期試用リポート:「α7」第1回——初めてのフルサイズは、ミラーレスでした

・α7は戦略的フルサイズ —— ソニー「α7」発表会

高品位なボディとスムーズな操作感覚が魅力の逸品

 オリンパス「OM-D E-M1」は、今年もっとも気に入ったミラーレスのひとつ。特に注目したいポイントは、ボディの質感の高さと使い勝手のよさだ。外装は、高品位なマグネシウム合金製で、グリップ部には手触りのいいラバーを配置。手に取った感触がすこぶるよく、シャッターを押した際のレリーズ感も心地よい。AFは、シャッターボタン半押しによってほぼ無音で作動し、素早く合焦する。

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オリンパス「OM-D E-M1」

 さらに、電子ビューファインダーと液晶モニタの視認性は上々で、アイセンサーによる両者の切り替えもスムーズだ。豊富なカスタムメニューを利用して、操作性を自分流に細かくカスタマイズできる点もありがたい。このあたりの快適な操作感は、ライバルとなる他社ミラーレスに差を付けている。

 画質については、キットレンズである「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」のキレ味のよさが光る。開放値から画面全体でシャープな描写が得られ、被写体のディテールまでを克明に再現できる。それなりの価格がするものの、E-M1を買うなら是非、このレンズは入手したいところだ。

・長期試用リポート:「OLYMPUS OM-D E-M1」第3回——望遠マクロレンズで楽しむ大人の休日

・レビュー:実用度の高いハイエンドミラーレス 「OLYMPUS OM-D E-M1」

・E-5後継はなぜミラーレスなのか、ZUIKOレンズの今後は:統合機でありフラッグシップ機——オリンパスに聞く「OM-D E-M1」

撮る楽しみを満喫できるアナログライクな操作性

 一眼レフの分野では、いまいちばん気になるのがニコン「Df」だ。メカニカルダイヤルを多用したクラシックデザインのフルサイズ一眼である。Dfの外観を見て、その仰々しいダイヤルやボタンに戸惑い、うんざりする人がいるかもしれない。一方で昔ながらの一眼レフカメラを思い出し、懐かしく感じる人も少なくないはず。

 外観だけでなく、操作性についても賛否が分かれるだろう。これまでの多くのデジタル一眼では、液晶表示を見ながら、ボタンやダイヤルを使って各種の設定を素早く調整できる。ところがDfでは、たとえばISO感度を変更するだけでも、カメラを両手で持ってファインダーから目を離し、左手でロック解除ボタンを押しながら、右手でどっこいしょとダイヤルを回す、という手間が必要になる。

 このスローな操作感こそが、ほかのデジカメでは得られないDfならではのリズムである。すべてがマニュアルというわけでなく、オートISO機能もあるし、オート露出やオートフォーカスももちろん使える。だが、狙いに応じて個々の設定を自分で決め、アナログ感覚のダイヤルをいちいち使って確実にセットする、その行為自体を楽しめることがDfのいちばんの魅力だ。

・レビュー:ニコン党待望、メカニカル操作を極めたフルサイズ一眼——ニコン「Df」

・「写真に没頭するカメラ」 ニコン「Df」詳報

 そもそもカメラは、直に手に取って使う道具なので、見た目のデザインとホールド性、そして操作感覚が、スペックなどの数値以上に重要な要素になっている。デザインや操作感が気に入ったカメラなら、いい写真が撮れそうな気持ちになるし、逆に趣味が合わないカメラなら、撮影意欲が低下してしまう。そして結果的には、写真の写りにも影響を与えるだろう。

 そんな意味で、今回取り上げた3台は、目を引く個性的なデザインが撮影者の気分や意欲を高めてくれる、とてもチャーミングなカメラである。

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すべての利用者に電力を届ける「送電」と「配電」

 日本の電力会社10社の発電所を合計すると1300以上もあって、意外に多いように思える(図1)。実はそのうちの85%は水力発電所で、1カ所あたりの発電量は小さく、合計しても全体の電力供給量の2割にも満たない。現在の主力の電力源は火力発電所だ。供給量の6割をカバーしているが、発電所の数は159しかない。

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図1 電力会社10社が保有する発電設備(画像をクリックすると拡大)。出典:電気事業連合会

 一方、電力を利用する企業や家庭は全国で8000万を超える。各地の発電所で作られる電力を膨大な数の利用者に送り届けることが電力ネットワークの役割である。そのために緻密な構造の「送電」と「配電」の仕組みが日本全体に張りめぐらされている。

6000以上の変電所が電力を伝達

 電力は基本的に電線を通して送られるが、その間に少しずつ量が減ってしまう。電線によって電力の一部が消費されてしまうからだ。ただし電圧が高いほど、電線で消費する電力が少なくて済むという特性がある。このため、できるだけ高い電圧の状態で電力を送ることが望ましい。

 発電所で作られる電力は数十万ボルトの大きさの電圧で送り出される。それを段階的に低い電圧に下げていって、最終的に100ボルトの状態で家庭まで届けるのが日本の電力ネットワークである(図2)。

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図2 日本の電力ネットワークの構成。出典:電気事業連合会

 発電所から家庭までの間に、5段階にわたって電圧を下げながら、利用者が必要とする大きさに変えて配分する。この過程で電圧を下げる役割を担うのが変電所で、全国に6000以上もある。変電所で電圧を変換しやすくするために、通常は発電所から交流の電力が送り出されて、企業や家庭のコンセントまで交流で届けられる。

発電と送配電を分離するメリット

 このうち発電所から変電所までの基幹部分が送電ネットワークで、さらに変電所から企業や家庭などに電力を届ける部分が配電ネットワークである。日本では電力会社が発電・送配電・小売をすべて担っている。そのために電力供給体制が硬直的になり、電気料金の上昇などにつながっているとの指摘がある。

 最近になって電力会社の発電・送配電・小売の3つの事業を分離する政策がようやく進み始めた(図3)。いわゆる「発送電分離」である。このところ太陽光発電に取り組む企業や家庭が急速に増えていることもあって、大小さまざまな発電設備が次々に誕生している。その点でも送配電ネットワークが電力会社から分離・開放されて、数多くの発電設備とつながりやすくなる意味は大きい。

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図3 電気事業者の区分変更案。出典:経済産業省

 かつての電電公社(現在のNTT)が独占していた国内の電話網を開放したことによって、日本の通信市場は一気に活性化した。料金が安くなり、サービスも充実した。同様のことが電力市場に起こる期待は大きい。実現までには課題が残っているものの、国を挙げて早期に発送電分離を実現する必要がある。

連載第1回:電力を表す基本単位「kW」と「kWh」

連載第2回:世界中で使い分けている「直流」と「交流」

連載第3回:電力の供給源は「発電」と「蓄電」

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「情報漏えいやサイバー攻撃はバレなきゃ平気」という企業が増えるとどうなるか?

米国防総省の関係者いわく

 氏名や時期は明かせないが、今年にある関係から来日された米国防総省の元関係者とお会いすることができた。その際、その方が私見して述べたのだが、何と日本の政府や企業の情報漏えいにおける損失額は、公表されて数字以外に少なくとも1000億円以上にもなるだろうということであった。換算方法やその根拠については聞けなかったが、「とても控えめにみての数字だ」と話していた。

 これまで本連載でも触れてきたように、組織の内部犯罪の一部は、その事案が表面化しなかったり、同僚が被疑者でも周辺はほとんどその事案を知らないこと、刑事事件とすることに大きな葛藤を経験する経営者が多かったりすることなどがある。そのため、事案が世間に知られることは少なかった。この「公開されることが少ない」というセキュリティ事件における事実は、外部犯罪(サイバー攻撃やネット上の改ざんなど)にも通じる。

 筆者は企業にコンサルタントを行っている中で、その企業が「気が付いているはず」と思われる外部からの攻撃に対し、ベンダーやSIerなどに依頼をしている場面に遭遇することがある。筆者も相談があれば仕事として受けるが、こうした対応を“何となく”出入りの業者に依頼する企業が圧倒的に多いのだ。多分、昔からの慣習なのだろう。

 それでもきちんと対処していればいいのだが、一部の業者の行動はどう見ても疑問を感じる。詳細には触れないが、筆者がこの道30年の経験としてセミナーなどでお伝えしていることは、外部からの攻撃については大手企業を除き次の通りである。

  • 表面化するまで公開しない
  • 攻撃にあっても(多分圧倒的に)気が付かない

 こういう事実が目前にあるということだ。中小企業、零細企業が日本の企業数の9割を超えるが、ここでのセキュリティの運用、管理は一部の企業を除き、とても信じられないほどあまりに「おざなり」である。システムの担当者、ネットワークの担当者も「名前だけ決まっている」例が多く、専門的なスキルを習得する場がない。従業員の中から「PCに詳しい」と思われている従業員を指定して対応している例が多いのだ。

 筆者は、銀行員時代に営業店や融資部、調査部の依頼で「その企業が融資に相応しいか」「技術的にその融資を受けるべきか」「上場に協力できるか」などに関する「技術評価書」なるものを作成していた時期があった。その企業(大部分が設立10年以内のベンチャー企業)に出向き、社長や技術担当役員と面談をするが、ほとんどの経営者はセキュリティを「装飾品」の一つとして扱っていたのが印象的であった。

 例えば、入退室管理は相当に厳しくしているし、監視カメラ(ダミーも多い)にIDカードや指紋認証と、いかにも「弊社はセキュリティが万全です」と金融機関に見せたい雰囲気がまん延している。そこを通ると会議室に通され、名刺に「工学博士」と印刷された方が、技術的な解説をされる。そこは企業秘密である場合がほとんどだが、さすがにその技術で企業が成り立っているという自負もあり、当人は熱弁をふるってくれる。

 筆者もそこは真剣に聞いているが、面談では同席している支店長向けに貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)などを解説する場面もあり、その時に筆者は「トイレをお借りします」と断わってその企業の従業員の作業やデスクを見て回る。すると、セキュリティの視点から多くの問題点が浮かび上がってくる。

 例えば、従業員が席を離れたばかりのデスクを見ると、機能仕様書が放り出されていたり、PCの画面も作業途中のままだったりしている。周辺の従業員もその多くは中途採用されたばかりの人々なので、筆者が部外者だとは気が付かず、とがめる人はいない。デスクトップ上に重要と思われる名前のファイルが表示されたままで、誰でも簡単に開けてしまう状態である。ネットワークの構成を調査すると、サーバまで丸見え、共有フォルダでは管理者権限の設定すらない。その気になれば、近く特許申請をするであろう中核の技術情報まで簡単にコピーできるだろう。

 こうした企業に同情する面もある。ベンチャーでがんばっているので、ある程度は製品に関係の無い領域のことには手薄になるのだろう。だが、最低レベルのセキュリティくらいはきちんと確保してほしい。これは現在もそのまま言えることだが、セキュリティの脅威は10年前に比べると、もはや比較にならないほど巨大になっている。

 ここまで解説したのは、現在のベンチャー企業にもセキュリティの大切さを認識してほしいという気持ちもあるが、実は「日本人の本質」が情報セキュリティにとって問題になることを指摘したいためだ。仕事柄、筆者は外国人と接する機会も多く、そこで気が付くのは、日本人は「情報」という目に見えないものを軽視するという本質である。

 「情報」という極めて重要な商品について、日本の企業は「漏えいされているという事実すら知らない」ということが実は最も多い。しかも、こんなことがあった。ある中堅企業の社長(サラリーマン社長)にそのことを伝え、「監視に少しでも投資すべきだ」とご提案したら、「そんなことより、株主が気付かなければそのままでいい。来年で任期が切れるから、わざわざ自ら騒ぎ立てることもないだろう」というのだ。もはや、絶句するしかなかなかった。この経営者の意識が“例外中の例外”であることを願いたいものだ。もしこういう経営者ばかりなら、日本の技術は上場企業から中小零細企業までことごとく盗まれ、気が付いた時には既に手遅れになっている。こうなるのも時間の問題かもしれない。

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出遅れたWindows 8タブレットの勝機はiPadの弱点

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Windows 8 | iPad | Android | タブレット | Windows XP


 Windows最新版についてのさまざまな報道を目にした人が、ある程度混乱するのは無理もない。これまでにMicrosoftが売り出したどの製品よりも速いペースの売れ行きを見る限り、Windows 8はWindows 7以来の出来といえるのか。それとも、発売までに時間がかかり過ぎたことや的を外したことから判断して、Windows Vista以来の失敗作とみるべきなのか。恐らくその両方だろう。Windows 8の現在の状況や、他のシステムが与える影響について理解するためには、細部に目を向ける必要がある。

 まず、Windows 8は出遅れた。Appleは優れたデザインの製品を通じて、既に大量のユーザーを自社陣営に引き入れた。同社の製品は使い勝手が非常にシンプルで、大多数のユーザーはiPadのファッション性を評価し、自分の会社のPCと併用するようになった。そのPCの圧倒的多数は、XPを含むWindowsを搭載している。StatCounterの調査によれば、世界の全デスクトップに占めるWindows XPの使用率はまだ25%近くに上り、その大部分を組織のPCが占める。

 だがiPadユーザーの大多数はMicrosoftを見捨てていない。真の問題は、iPadがWebや電子メールを閲覧するための端末としては素晴らしい半面、情報の作成に関しては全く向いていない点にある。

 確かに電子メールには返信できるし、Facebookにも投稿できてツイートもできる。だが、ソフトキーボードはその場しのぎの用途であればともかく、きちんとしたキーボードの代替にはならない。PowerPointスタイルのプレゼン資料をiPadで作成するのは容易ではない。複雑なスプレッドシートで作業しようとすれば、すぐにPCが欲しくなるだろう。

 外付けキーボードやサポートスタンドがあっても、iPadが本格的な業務用コンテンツの作成に適しているとは思えない。それにさまざまな付属品を使い始めると、何本ものケーブルを持ち歩き接続しなければならないという昔ながらの問題に引き戻される。Bluetooth接続によって機器間の接続は必要なくなったが、充電は依然として大きな問題だ。Appleはモバイル化の多くの部分で素晴らしい功績を挙げた。だが次はどこへ行くのか。

王座争い

 Appleによるタブレット市場の独占状態に対する真の対抗勢力は、まずAndroid陣営から出現した。よりオープンなプラットフォームを持つAndroidは、オープンなプラットフォームと囲い込まれた環境(walled garden)の違いが理解できる技術通にとっては魅力的だった。だが、一般ユーザーは当初、横並びでAppleをまねた面白味のないデザインと、簡単にダウンロードできるアプリの少なさのために、あまり関心を示さなかった。

 Androidのアプリストアに十分な(そして適切な)アプリがそろうと、今度はAndroidの異なるバージョンが存在する問題が浮上した。2010年にリリースされたGingerbread(バージョン2.3)を皮切りに、Honeycomb(同3.x)、Ice Cream Sandwich(同4.0)、Jelly Bean(同4.1〜4.3)、KitKat(同4.4)が登場。多くのメーカーのタブレットは、Androidの特定のリリースに依存する設計になっていたことから、後のリリースの新機能や改善点を取り込むことができなかった。これに対してAppleは、この問題にかなりうまく対処してみせた。

 だが最新バージョンのAndroidを搭載したスマートフォンやタブレットは、Appleから市場シェアを奪いつつある。Appleは特許の嵐でこれに対抗し、Appleが保有する特許を他社に利用されたと訴えてきた。これは裏目に出ているようだ。裁判所はAppleの訴えを退けたり、上訴審で判断を覆したり、他社に科した罰金を大幅に減額したりしている。

 一方のMicrosoftは、他の陣営が法的論争やアップグレード戦争を繰り広げている間に、独自のタブレット「Surface RT」を発売した。Windows 8の簡略版をベースとして、特にバッテリーが長持ちするタッチ式タブレットを目指したSurface RTは、Modern UI(旧Metro)と、Windows RT環境向けの専用アプリを搭載していた。Surface RTでは既存のWindowsアプリケーションは実行できなかった。同端末で実行するアプリは全て、Modern UIから直接入手しなければならない。

 Microsoftにとってこれは問題だった。


“写真趣味への誘い”新たな仕掛けの発芽が見えた

 2013年もまもなく終わろうとしているが、今年のデジカメトレンドを3つのキーワードで表現するならば「スマホカメラの進化」「趣味性への回帰」「新たな仕掛けの発芽」なのではないかと思う。連鎖する話となるので、順番に振り返ってみよう。

スマホカメラの進化

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既存モデルからカメラ性能も強化された「iPhone 5s」

 これは昨年から見えていた傾向であるが、スマートフォンの普及と進化、そしてスマホ搭載カメラの進化はとどまることを知らず、結果的に低価格なコンパクトデジカメはその需用そして市場の大半を奪われた。旅行先から日々のイベントまで、いままでならコンパクトデジカメを手にしていたであろう人々の手には、今日、スマホが握られている。

 Wi-Fiに代表されるスマホ連携機能を搭載することでスマホとの使い分けを提案したコンパクトデジカメも多く登場したが、大きな成功を収めたとは言いがたく、最終的には防水や超望遠、カメラとしての高い質感といった、スマホで代替できない領域をカメラが受け持つという格好に収まった。

 CIPA(社団法人カメラ映像器機工業会)の統計資料も日常の記録役がコンパクトデジカメではななくなりつつあることを裏付ける。

 2013年1〜10月分(本稿執筆時での最新資料)の日本国内向けデジタルカメラの出荷台数は636万4630台でこれは前年同期比87.3%ながらも、金額ベースでは前年比96.7%と市場規模という観点からは昨年同期と同レベルを維持しているように見える。ただ、内訳を見るとレンズ交換式が前年同期比128.5%(台数ベース)の成長を見せているのに対し、レンズ一体型(コンパクトデジカメ)は前年同期比では台数で77.5%(金額で78.9%)とマイナス傾向を示している。

 各社の製品ラインアップもそれを裏付ける。低価格な日用品的コンパクトデジカメを豊富にラインアップするメーカーは既に無く、製品投入のサイクルも一時に較べると非常に緩やかなものになっている。

趣味性への回帰

 では「スマホで代替できない領域をカメラが受け持つ」として、それは旧来と同じく防水や望遠、またはカメラとしての質感なのか。以前からコンパクトデジカメとスマホとの関係性という観点より議論されていたテーマであるが、2013年にはレンズ交換式の側から、強くカメラであることを誇示する製品が登場した。ニコンの「Df」だ。

 一見するとフィルムカメラのようなクラシカルなボディは徹底的にダイヤル操作にこだわっており、フルサイズセンサー搭載機(FXフォーマット機)としては軽いが、重量を量れば決して軽くもないし、小さくもない。ただし、「カメラ」であることを強烈に主張する存在感がある。決して安価なモデルではないが高い支持を得ており、バックオーダーの消化もままならない状態が続いている。

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ニコン「Df」

 画質を筆頭とした性能や機能はもちろんだが、写真撮影という趣味を楽しむためのツールというスタンスが一貫されていなければ、ここまでのボディサイズやアナログ主体のインタフェースは受け入れられなかった可能性が高い。利便性ではなく、頑ななまでに写真が「趣味」であることを主張したことが、Dfの最大の注目点といえる。

 他の製品では、結果的に写真趣味層への強いアピールに成功した格好となったのが、ソニーの「α7/7R」だろう。「誰も作れなかったカメラ」と題し、世界最小最軽量のフルサイズミラーレスという先進性を伴って登場したが、フルサイズセンサー対応Eマウントレンズの少なさ(現時点で入手できるのは2本のみ)が影響し、現在のところ、システムとしての評価を下すことは難しく、オールドレンズの母艦としての注目度が高い状態となっている。

 オールドレンズを装着した状態ではMFが基本となるほか、アダプターを介しての運用となるためにサイズも大きくなる。だがそれでも手持ちの気に入っているレンズを最新のフルサイズ機で使いたいというニーズは強く、こちらも利便性ではなく、趣味としての写真、カメラを愛好する層にとって魅力的な製品となっている。

 誰もが欲しがる、買いたいという製品ならば利便性や求めやすい価格といった要素が求められるが、趣味性に訴えかけるならばそれらは必要ない。デジカメのコモディティ化が進んだ今だからこそ、趣味性の高い製品が輝いて見える。

写真を趣味としてもらうためのカメラ

 ほんの少し前までカメラは趣味の製品だった。それがデジタル化の恩恵を受けて日用品化し、その反動で今は趣味性の高い製品が注目を浴びている状態と言える。それでは、このまま趣味性の高い、高価な製品だけが登場し続け、カメラはまた趣味のモノ、強い言葉で言い換えれば、趣味として始めるにハードルの高いものになるだろうか。

 決してそうとは言い切れない。デジタル化したからこその利便性や手軽さが高まり、結果として、スマホで写真を始め、カメラを手にするような層も少なからず存在する。これから写真を趣味とする、あるいは趣味にしてもらうための“仕掛け”を持ったユニークの製品が登場しているのも今年の特徴と言えるだろう。

 それらに共通するのは、「写真を楽しめる本格的な描写」と「取っつきやすさ」を兼ね備えたことで、ソニー「DSC-QX100」とパナソニック「DMC-GM1」はいずれも高い描写力を持ちながら、前者はスマホ利用が前提、後者はその小ささで心理的なハードルを引き下げている。来年はこのような、取っつきやすさを持った製品が登場するのではないかと予想する。

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パナソニック「DMC-GM1」 写真のキットレンズを組み合わせた状態でも300グラムを下回り、サイズについても「レンズ交換式カメラのボディとしては世界最小」をうたう

 決して安価ではないα7やDfに寄せられる注目度の高さは、写真趣味層が多く存在していることを裏付けた。来年もこの趣味層に向けた製品が多く登場すると思われるが、その次の課題は、カメラ、ひいては写真に興味を持つ層をいか生み出し、趣味層というところまで醸成していくことではないかと感じている。

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LG Electronics、LINEによる家電制御サービスを発表

 韓国LG Electronicsは12月26日、LINEのメッセージを利用して自宅の家電を遠隔操作するサービス「HomeChat」を発表した。来年1月7日から米ネバダ州ラスベガスで開催される「2014 International CES」で披露する。

 自然言語処理(NLP)により、LINEに入力するメッセージで対応するLG製家電を制御できる。例えば「これから3日間、旅行に行く」とLINEに入力すると、「寂しくなりますね。バケーションモードに切り替えますか?」というレスポンスがあり、これに「YES」と答えると、冷蔵庫は省電力モードに、ロボット掃除機は毎朝9時に掃除するように、洗濯機は帰宅の前日に洗濯槽の清浄が終わるように設定される。

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 同サービスは立ち上げ段階では英語と韓国語のみに対応するが、2014年中に対応言語を拡大していく計画だ。

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「Mebius Pad」──超高解像度+防水+LTE内蔵、高機能な10型Bay-Trailタブレット(外観編)

ココが「○」
・超高解像度(2560×1600)IGZO
・LTE、GPS、NFC内蔵、Windows 8.1
・防水、クレードルあり、Mebius復活
ココが「×」
・黒ツヤボディは皮脂・指紋が目立つ
・USB充電非対応
・Bay Trailマシンとしてはちょっと高額

はじめに:ポストノートPCな特長を多く備えた、ハイクラス至高の10.1型Windowsタブレット

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Mebius Pad
10.1型Windows 8.1タブレット「Mebius Pad」。ラインアップはWindows 8.1+Office Home and Business 2013付きの「TA-S10L-B」、Windows 8.1 Pro+Officeなしの「TA-H10L-B」を用意する。発売時価格はどちらも13万円前後と想定される。発売は2014年1月31日を予定

 Mebiusたんおかえり──。シャープのMebiusブランドがタブレットとして、Windows 8.1を搭載する「Mebius Pad」として復活する。

 Mebius Padは、インテルのタブレット向けSoC「Atom Z3000」シリーズ、OSには32ビット版Windows 8.1(ないし8.1 Pro)を採用する10.1型Windowsタブレットだ。2013年9月に行われたCEATEC JAPAN 2013でお披露目、2013年12月18日に正式リリース日が告知された。発売日は2014年1月31日となる。

 まずは試作評価機でその外観と機能をチェックしよう。


 本体サイズは約265(幅)×171(高さ)×9.5(厚さ)ミリ、重量は約595グラム。ラインアップは32ビット版Windows 8.1+Office Home and Business 2013仕様の「TA-S10L-B」と、32ビット版Windows 8.1 ProでOfficeなしの「TA-H10L-B」の2モデルを用意する。価格はオープン、発売時の想定実売価格はどちらも13万円前後となる。

 基本仕様は、開発コード名:Bay Trail-T世代のタブレット向けSoC「Atom Z3000シリーズ」とWindows 8.1の組み合わせで動作するWindowsマシンだ。CPUはAtom Z3770(1.46GHz/最大2.4GHz)、メインメモリは4Gバイト(LPDDR3 増設・交換不可)、ストレージは64GバイトeMMC、ディスプレイは2560×1600ドット表示で10点マルチタッチ対応静電タッチパネルを備えた10.1型ワイドIGZOパネルを採用する。

 昨今の8型Windowsタブレットに対し、大きな差があるディスプレイ以外に、CPUは上位のAtom Z3770を採用、メインメモリも4Gバイトと多め(32ビット版Windows 8.1ではあるが)──など、よりパフォーマンスに優れるであろう仕様となっている。

ボディと製品概要:9.5ミリで500グラム台、10.1型クラスとしてはそこそこ小型軽量

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Mebius Padを正面から
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Mebius Padの背面
ディスプレイは2650×1600ドット表示に対応する10.1型IGZO。1280×800ドットクラスにとどまるのBT 8型Windowsタブレットと比べると、圧倒的に高精細だ。背面は中央に「SHARP」ロゴ、500万画素カメラ、クレードル(I2C)接続用接点、マイク穴がある。光沢のある全面ブラックのカラーリングを採用し、なかなか精かんな印象。ただ、光沢表面のため皮脂、指紋の付着はとても目立つのが少し残念(色がブラックのため、なおさら)
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Mebius Padの上面
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Mebius Padの下面
上面は防水カバー内にmicroSDスロットとMicro SIMスロット、電源ボタン、下面はクレードル接点とクレードル接続固定のためのガイドホールが2つ空いている
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Mebius Padの左側面
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Mebius Padの右側面
左側面にはマイク/イヤフォン兼用端子(3.5ミリ)、防水カバー内にDC入力端子とUSB 3.0(Micro-AB)、右側面に“QUICK”ボタン、ボリューム調整ボタン、左右に外部スピーカーが備わる
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横位置で立てて使える充電クレードルが付属する。この状態で適当なBluetoothキーボード/マウスを用意すれば普通のノートPCスタイルにて机上で使えるようになる(写真=左) ACアダプタは12ボルト/2アンペア出力で、専用のピン端子を使用する。本体のみだと防水カバーを開けて差す方法なので少し面倒だが、付属充電クレードルにも同じDC入力端子がある。こちらを卓上充電ホルダーとして活用すればよいわけだ(写真=右)
Mebius Padの主な仕様
製品名Mebius Pad(TA-S10L-B)Mebius Pad(TA-H10L-B)
メーカーシャープ
OS32ビット版Windows 8.132ビット版Windows 8.1 Pro
本体サイズ(幅×高さ×厚さ)約265×171×9.5ミリ
重量(実測値)約595グラム(588グラム)
画面サイズ(液晶方式)10.1型ワイド(IGZO)
アスペクト比16:10
タッチパネル静電容量式・10点マルチタッチ
デジタイザ─(デジタイザーではないが、専用タッチペンが付属。ホバー状態/筆圧検知非対応)
ディスプレイ解像度2560×1600ドット(約300ppi)
CPU(コア数/スレッド数)Atom Z3770(4/4)
動作周波数1.46GHz/最大2.4GHz
チップセットCPU内蔵
vPro
GPUCPU内蔵
メモリ4Gバイト(LPDDR3/1066MHz 最大4Gバイト)
メモリスロット(空きスロット数)内蔵(0)
ストレージ(評価機実装)64GバイトeMMC(SanDisk「SEM64G」)
無線LANIEEE802.11a/b/g/n(Broadcom802.11abgn Wireless SDIO Adapter/最大300Mbps)
BluetoothBluetooth 4.0+HS
NFC
センサーGPS、加速度、ジャイロ、方位、照度、近接センサー
有線LAN─(拡張クレードルに搭載)
ワイヤレスWAN○(LTE)※NTTドコモXi/FOMAネットワーク対応
キーボード
キートップ仕様・形状
キーピッチ
キーストローク
キーボードバックライト
ポインティングデバイス
主なインタフェースUSB 3.0×1(Micro-AB、OTG対応)、microSDスロット(SDXC対応)、Micro SIMカードスロット、ヘッドフォン/マイクコンボ(3.5ミリ/4極)、イン200万画素/アウト800万画素カメラ
メモリカードスロットmicroSD(SDXC対応)
SIMカードスロットMicro SIM
その他カードスロット
スピーカー(音質補正ソフトウェア)ステレオ(Realtek Audio Manager)
マイクモノラル
指紋センサー
セキュリティチップTPM 2.0
セキュリティロックポート非搭載
バッテリー動作時間約15.5時間(JEITA測定法)
バッテリー仕様4.118ボルト 約28.86Wh
ACアダプタ実測サイズ(幅×奥行き×高さ)80×35×26ミリ
ACアダプタ実測重量(本体のみ/ケーブル込み)116グラム/179グラム
ACアダプタ出力仕様12ボルト/2アンペア
ACアダプタ対応電圧100〜240ボルト(50/60Hz)
DC端子形状専用ピン端子
プラグケーブル端子形状(ACアダプタ側)2ピン
防水/防滴防水IPX5/7等級、防じんIP5X等級
カラーバリエーションブラック
オフィススイートOffice Home and Business 2013
価格オープン(発売時価格13万円前後)
発売日2014年1月31日

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Mebius Padデバイスマネージャ画面
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Mebius Padデバイスマネージャ画面
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Mebius Padデバイスマネージャ画面
Mebius Pad(試作評価機)デバイスマネージャ画面の一部(※試作機のため、実際の製品とは細かい部分で異なる可能性があります)

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割られた窓ガラス──AppleやGoogleの通勤バスに抗議デモ “新たな支配層”への不満が顕在化

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REUTERS

 サンフランシスコとオークランドで12月20日、米GoogleやAppleのものとみられる専用通勤バスが抗議デモによって進路を妨害された。増大するIT企業の影響力に対する反発の高まりを示す、最新の兆候と言える。サンフランシスコ一帯では、とりわけIT社員の流入に起因する家賃高騰の問題が深刻化している。

 サンフランシスコのミッション地区で20日朝、出社する社員らをピックアップしていた通勤バスを約40人のデモ隊が取り囲み、約30分にわたって進路を妨害した。

 どの会社に行くバスかはパッと見では分からず、バスのフロントウインドウには「メインキャンパス、Ridgeview」とだけ小さく表示されていた。インターネットで検索したところ、AppleがRidgeview Courtという住所にオフィスを構えていることが分かった。サンフランシスコから40マイルほど南に位置するカリフォルニア州クパチーノのApple本社からそう遠くない場所だ。

 この件に詳しい情報筋がReutersに語ったところによると、20日朝には、オークランドでも、Googleが運行する2台の通勤バスが抗議デモの標的になったという。

 「今や支配階級を形成しつつあるIT業界の人たちに、われわれの声を聞いてほしい。立ち退きを強いられている人たちの声だ」。サンフランシスコの抗議デモの参加者の1人は、バスの前に駐車させた小型トラックの後部から、集まった人たちに拡声器でそう訴えた。

 デモの参加者らは「立ち退きのないサンフランシスコに」と書かれた横断幕を掲げ、「サンフランシスコ:現代の二都物語」と題したビラを配った。

 Appleからはコメントを断られた。

 Googleは声明を発表し、次のように述べている。「サンフランシスコベイエリアの住民に迷惑を掛けることはしたくない。当社をはじめ、IT業界の各社はサンフランシスコ市営交通局と協力し、市内でのシャトルバスの運行ポリシーについて協議している」

 サンフランシスコでは、若くて所得の高いIT社員の流入が家賃高騰をもたらし、低所得層が立ち退きを迫られるなど、「ジェントリフィケーション」(下層住宅地の高級化)の問題が顕在化しており、IT企業の通勤バスはその最も目立つシンボルとなっている。一部からは、市の政策がIT業界に対して甘すぎるとの批判も挙がっている。

 例えば、2011年には、サンフランシスコ市が定める1.5%の給与税をめぐり、税負担の重さを理由にサンフランシスコを離れる意向を表明したTwitterに対し、市が給与税の軽減措置が認めており、この件はその後もしばしば批判の対象となっている。

 通勤バスの擁護派の意見は、社員が自家用車での通勤をやめて通勤バスを利用すれば、幹線道路の激しい渋滞を緩和できるというものだ。こうした通勤バスは大概、豪華なシートとWi-Fi接続を備えている。

 一方、反対派は、「通勤バスは市営バスのバス停を混雑させ、地域鉄道サービスも含め、厳しい財政事情にある公共交通機関の利用者離れを引き起こしかねない」と主張している。

 サンフランシスコでは、12月初頭にも、同じ地域でGoogleバスの運行を妨害する抗議デモが起きている。

 20日のサンフランシスコでの抗議デモはIT業界全般に向けられたもののようだ。だが、オークランドでの抗議デモははっきりとGoogleを標的にしていた。このバスに乗り合わせたGoogle社員がTwitterに投稿した写真には、「Fuck Off Google(くたばれ、Google)」と書かれた横断幕を持ってバスの前に立ちはだかる2人の人物が写っている。

 同じ社員が投稿した別の写真には、Googleバスの窓が割られた様子も写っている。

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copyright (c) 2013 Thomson Reuters. All rights reserved.

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来たれ、次世代の「すごうで」――ラックが若手技術者支援プログラム

 ラックは2013年12月21日、優れたIT技術を持った20歳未満の若者を対象に、年間100万円相当の支援を行うプログラム「U-20 IT スーパーエンジニア・サポートプログラム “す・ご・う・で”」を実施することを発表した。最初の支援対象には、灘高校の矢倉大夢氏(@hiromu1996)らが参加するチーム「Epsilon-Delta」が選ばれている。

 同社はこれまで、「セキュリティ・キャンプ」や「Hardening Project」といったイベントへの協力を通じて、若手IT技術者の発掘・育成を支援してきた。また2012年には、ロシアで開催されたセキュリティ競技大会「Positive Hack Days CTF」に日本から参加した学生チーム「Tachikoma」を支援し、渡航費用など財政面をサポートする取り組みも行っている。

 新たに立ち上げられたプログラム、“す・ご・う・で”は、こうした個別の取り組みを体系化したものだ。優れたIT技術を有し、「CTF優勝」など具体的な目標や活動計画を持つ20歳未満の個人/グループを広く募り、選ばれた対象者には、総額100万円相当を上限として支援を行う。

 支援内容には、活動計画の実現に必要なハードウェア/ソフトウェアの提供や専門書籍などの購入費用、あるいはCapture The Flag(CTF)参加のための渡航費用やトレーニング受講費用などが含まれる。さらには、目標に応じて協力できる人や企業を紹介するなど物心両面でサポートを行い、特に突き抜けたスキルを持つ人材育成を支援する。

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ラックの代表取締役社長、高梨輝彦氏とEpsilon-Deltaの矢倉大夢氏

 ラックの代表取締役社長、高梨輝彦氏は、矢倉氏らへの授賞式において「現在ではITインフラの役割が高まり、それがなければ世の中が立ちゆかない状態だが、それを支える人をどう育成するかが課題になっている」と述べた。特に情報セキュリティ分野に関しては、「悪さをしてくる人はどんどん進化している。守っていく側もそれに応じてしっかり防御を固めていかなければならないが、そのための人材が国内ではまだまだ足りない」(同氏)。“す・ご・う・で”も含めたさまざまな取り組みを通じて、優れたITスキルを持つ若者を支援していきたいとした。

 また、同社のセキュリティエバンジェリスト 川口洋氏は、とかく足りないといわれるセキュリティ人材の育成には、短期的には「アドレナリンが出る瞬間、つまり知的好奇心」「かっこよさ」、それに「仲間」が、中長期的には「報酬」「社会的認知度」「文化」が必要ではないかと述べ、「ぜひ知的好奇心を生かしてCTFなどに頑張って取り組んでほしい。皆さんの未来に期待しています」とエールを送った。

 同プログラムの募集期間は2014年2月から3月末まで。応募の際に提出する活動計画書などに基づいてサイバー・グリッド研究所が選考を行い、6月上旬に支援対象者を発表、2015年1月末までの間支援を行う計画だ。応募要項の詳細は2014年1月中に公開される予定となっている。

ただ「楽しいから」

 矢倉氏らが参加するEpsilon-Deltaは、灘高校のパソコン部員を中心に結成されたチームだ。現在は東京/新潟在住のメンバーも含め6名で構成されている。セキュリティ&プログラミングキャンプやLinux関連のカンファレンスなどの場でCTFに触れて「面白そうだな」と感じたメンバーが集い、どっぷりCTFにはまっているそうだ。

 彼らは、検証コードなどのやりとりもしやすいSkypeを通じてコミュニケーションを取りながら、時に学校に泊まり込み、床で仮眠を取りながら、さまざまなCTFに参加してきた。「2013年には20以上のオンラインCTFに参加した。11月にはスペイン・バルセロナで開催された『No cON Name CTF』にも参加し、6位に入賞することができた」(矢倉氏)。年内にさらにもう1つ、大会に参加する予定だという。

 その彼らがラックから支援物資として受け取ったのは、おそろいのユニフォームと逆アセンブラの「IDA Pro」。セキュリティ専門の技術者にとっては必須ともいえる、リバースエンジニアリングのためのツールだ。これまではオープンソースのツールなどを用いていたが、「これでかなりバイナリ解析が楽になった」という。

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 次なる目標は、「SECCON全国大会で上位入賞、DEFCONで本戦進出」(矢倉氏)だ。実は2012年の「SECCON CTF」では、関西大会で優勝しながらも、全国大会では想定したものと異なるルールで行われたこともあり、思うような成績を残せなかった。同様にDEFCONの予選では、x86系ではなくARMベースの問題が与えられ、苦労したという。「スマートフォンがこれだけ普及していることを考えると、ARM系の問題が出題されるのも一理ある。まだまだ基本的なスキルの積み上げが必要だ」(Yuki Koike氏)。

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 そうした悔しさをバネにして、出場できるCTFには全て参加するという勢いで研鑽を続けてきた。その原動力は「ただとにかく、楽しいから。ゲームをするよりCTFの方が楽しい」(矢倉氏)。

 彼らは同時に、CTFをはじめ、セキュリティスキル向上のための取り組みが広く知られてほしいとも期待しているという。「そうすればCTFに対する先生方の認知度も高まって、部費が増えるかもしれない(笑)」(矢倉氏)。

 もちろん、ごく真面目な理由もある。「セキュリティを高めるには、攻撃側の手法だけでなく、思考方法も身に付けておかないといけない。攻撃する側からすれば、相手のどこを狙ってきてもいい。どこから狙うか、相手の思考を知らなければ、守る側も『自分たちにまだ足りないのはどこか』が分からない」(Yuki Koike氏)。

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