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ドコモのiPhone発売で中小ベンダーに勝機? 日本のアプリマーケットが迎える“第3幕”とは

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アプリマーケットに訪れた3度目の大きな変化

photoクエリーアイ代表取締役の水野氏

 クエリーアイは、スマートフォンアプリなどデジタルコンテンツに関する分析システム「QuerySeeker Analyze」「QuerySeeker.com」を提供している企業だ。代表取締役である水野政司氏は、スマホ向けアプリマーケットが創設された当初から市場動向をウォッチしている存在。その水野氏が「いまアプリマーケットに“第3幕”が訪れている」と話す。

 水野氏によると、アプリマーケットにはこれまで、第1幕、第2幕という大きな波があったという。第1幕は、日本で「iPhone 3G」が発売され、アプリマーケット「App Store」が誕生した時だ。この時、携帯電話向けのコンテンツなどを手掛けていた一部のベンダーが、App Storeに可能性を感じてiPhone向けのアプリ開発に参入し、アプリのマーケットが立ち上がっていったという。しかし当時は、国内のスマホ普及台数はせいぜい10万台といったところであり、到底儲けが得られる状況ではなかったと振り返る。

 その後、iPhoneの人気が高まるに連れて、NTTドコモが「Xperia SO-01B」を発売するなど、対抗馬としてAndroidスマートフォンの普及が本格化した。これにより、スマートフォン利用者自体の母数が急速に拡大してきたのが第2幕になるという。フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトが鮮明になったことで、“ケータイ向け”コンテンツを提供してきた企業がアプリを提供するようになったのに加え、フィーチャーフォンで人気を博したソーシャルゲームベンダーが、大規模な広告展開で集客し、収益を高めていった。

 だがこの第2幕も、2012年の前半に終結してしまったと水野氏は分析する。その要因の1つは、ソーシャルゲームの人気が急速に落ちたことで、大規模に広告を出稿する企業が減少したこと。そのため、アプリのランキングにおける広告の影響が相対的に小さくなり、アプリの“質”で勝負できる状況が再び生まれてきたのだという。

photoドコモがiPhoneを扱い始めたことでiPhoneのシェアが過半数を超え、開発リソースをiOSに集中できることが中小ベンダーには有利に働く可能性がある

 そしてもう1つの要因は、NTTドコモが「iPhone 5s」「iPhone 5c」を販売したことだ。従来iPhoneを販売してこなかったドコモがiPhoneシリーズを扱うようになったことで、現在量販店の売上ランキングは上位をiPhoneが独占する状況が生まれた。このことはライバルとなるAndroid端末の販売シェアが落ち、iPhoneが過半数を超えるシェアを持つ可能性が高まっていることを意味する。そうなれば、従来iOSとAndroid、双方のアプリを提供する必要があったのが、日本のことだけを考えればiOSのアプリだけを開発すればいいことになる。

 開発リソースをiOSに集中できるようになり、さらにアプリの質で勝負できるようになった。こうした状況は、中小規模のアプリベンダーに再びチャンスをもたらす“第3幕”が訪れたことを意味する——というのが、水野氏の持論だ。

ファンを獲得し、継続的な売上を得るアプリが増加

 確かにネット上のソーシャルゲーム広告は減少したかもしれないが、ゲームアプリが連日テレビCMを実施する傾向は一層加速しており、売上ランキングを大手のゲームベンダーが占める状況に変わりはない。そうした状況下で、果たして本当に中小規模のアプリベンダーにチャンスがあるのだろうか。

 水野氏によると、中小ベンダーの動向を見る上で注目すべきは、アプリランキングの中間地帯だという。この辺りの位置にランクするアプリの中で、長い間継続してランクインし続け、かつ継続的に収益を上げているアプリがいくつか出てきているのだそうだ。

 そうしたアプリの代表例の1つとして、水野氏はNECビッグローブの「嫁コレ」を上げている。これは、アニメキャラクターのボイス付きカードをコレクションして楽しめるアプリで、有料課金によって追加のボイスを入手できる仕組み。嫁コレのアプリは執筆時点(12月11日)でApp Storeのトップセールスランキングで160位に位置しており、決して派手な売上を上げているようには見えない。だが2011年に提供を開始して以降、継続的にトップセールスランキングにランクインしており、安定した収益を上げていると見られる。

photoApp Storeのトップセールスランキングにおける、執筆時点での「嫁コレ」の順位は160位。派手な存在ではないが、長く継続してランクインしているのが強み

 さらに水野氏はもう1つの事例として、グッディアという企業を上げている。同社は「レジの達人」「イライラスナイパー」などのカジュアルゲームを提供しているベンダー。いずれもアプリ自体は無料で、アプリ内広告で収益を上げるビジネスモデルを採用している。同社はすでに多数のカジュアルゲームを提供しつつも熱心なファンを獲得していることから、新作アプリがリリースする度に、無料アプリランキングのベスト10以内に入る人気だという。

 個々のアプリが継続してランクインし続けている訳ではないが、新作を継続的に提供しつつ、それらが常に上位にランクインしているという意味では、継続性が高いといえる。グッディアは地方の新興アプリベンダーだが、継続した人気と収益の獲得により、アジアなど外国での展開も視野に入れる程の成長を遂げているとのことだ。

photoグッディアの代表作の1つ「レジの達人」。多くのカジュアルゲームでファンを獲得し、新作アプリに継続して人を集められることが同社の強みとなっている

 こうしたベンダーやアプリに共通しているのが“緩い囲い込み”だと、水野氏は解説する。月額課金が主体だったフィーチャーフォンの有料コンテンツでは、一度獲得したユーザーをいかに逃さないよう、きつく囲い込むかが重要となっていた。だが月額課金が主流ではないスマートフォンの場合、ユーザーはサービスを止めたいと思えばアプリを削除するだけであり、あっという間にユーザーがいなくなってしまう。

 スマホアプリでは、一度ファンになってもらい、ユーザーが自発的に継続利用してくれれば、ニッチなコンテンツであってもビジネスは成立しやすいという。これは例えるならば、強固なファンを獲得することでCDを買ってもらったり、ライブやグッズ販売に結び付けたりすることで収益を上げる、アーティストのビジネスモデルに近い。

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男女・年代別マーケティングは「もうできない」 マルチデバイス時代の情報行動5つのタイプ、Googleが分類

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 「『F1層』も『M1層』も、もういません」——Google日本法人は12月16日、複数のデジタルデバイスを利用しているマルチスクリーンユーザーの行動分析に基づき、情報接触行動に関する5つのタイプを発表した。男女や年代による傾向はあまり見られず、「単純な区分けは意味を成さなくなりつつある」とまとめている。

photo情報接触行動を5タイプに分けて特徴を説明。画像は記事後半に登場する「テレビ視聴中のマルチスクリーン率」の結果

 インテージのシングルソースパネル「i-SSP」を利用し、テレビ、PC、スマートフォンの3つを保有し利用している20〜60代の男女500人を対象に、それぞれのツールの使用時間や視聴・行動内容をデータで取得して分析を行った。意識的に回答するアンケートに比べ、ユーザーの先入観やバイアスが入らないのが特徴の手法だ。

 情報接触行動データに基づき、同社が類型化した5タイプは以下の通り。

1.キマジメ大食らい(全体の22%)

 デバイス利用時間が全体的に長く、朝起きたらすぐにテレビの電源をオン。情報番組が好きでテレビからトレンドを知るタイプ。昼間もすきま時間にスマホで最新情報をチェックし、雑誌の購読数も多い。ものを買う時は慎重派で、価格比較サイトや口コミサイトでしっかり確認。「地元」「昔なじみ」の意識が強く、人付き合いはこれ以上広げなくてもいいと感じている。接触メディアは取捨選択ではなく追加していくタイプで、情報を追うことに躍起になっている側面も。

2.ハラハチブ自由人(全体の15%)

 メディア接触時間が全体的に短く、特にテレビ視聴は極端に少ない。PCの利用は夜型。ニュースや天気予報はスマホで知り、雑誌を読む習慣はほぼなし。リアルショップよりオンラインで買い物することが多く、必要なものを買うスタンスなためあまり悩まない。騒がしい空間が苦手で、SNSもあまり好まない。

3.ヒマツブシ貴族(全体の30%)

 とにかく持っているデバイスは常時電源をオン。PCやスマホは調べるものではなく楽しむもの。テレビ番組ではワイドショーを好み、スマホではゲームや動画の利用時間が長く、写真や動画を撮ることも多い。衝動買いも多く、話題の商品はいち早くチェック。生活の充実感はリアルな接触で感じたいと考えているため、付き合いや交際のための支出は削れない。

4.探索ナルシスト(全体の22%)

 PC利用が少なく、メインデバイスはスマホに移行。テレビでは報道番組など堅めの番組を見ることが多い。スマホからでも価格比較サイトや企業サイトを閲覧して情報収集。何かを購入する際はPCで行うことが多く、メディア間の使い分けが明確。他人にどう思われるかより「自分は自分」という意識が強い。世間的な「ブランド」とは一線を画したいため、テレビで取り上げられるとそっぽを向きがち?

5.社交的ハンター(全体の12%)

 テレビよりもPCやスマホの利用時間が長い唯一のタイプ。深夜帯の利用が多く、常にアクティブに情報を収集し自分でも発信。SNSを活発に利用し、友人とのやりとりも多い。ワイドショーは見ず、よく触れるのはスポーツ番組。話のネタになるようなものを買いたい、自分が薦めたものを周りの人が買うのがうれしいなど、購買行動がコミュニケーションの一部になっている。

photoタイプ別の男女年代比とメディア接触総量

 また、テレビ番組の視聴中にマルチスクリーンでPCやスマホを同時に開いている割合は、総視聴時間中24%にもなった。特に「社交的ハンター」に属する人はテレビ視聴時間のうち3割以上をマルチスクリーンで楽しんでいることが明らかになった。

 テレビを見ながら他デバイスをどのように利用しているかをサッカーの国際試合を例に見たところ、相手チームにゴールやセーブなどのアクションがあったシーンでは検索行動、日本代表の見せ場ではメールやSNSなどの共有行動が多いことが分かった。試合を見ながら何らかのオンライン行動を行った率はどのタイプでも5割を超えたが、特に「探索ナルシスト」「社交的ハンター」に属する人は7割以上となり、率先してコミュニケーションや情報収集を行っていた。

photoW杯アジア最終予選 日豪戦放送時のオンライン行動の様子

 Googleの小林伸一郎マーケットインサイト 統括部長は調査で得られたユーザー分析の知見として、(1)「PCが普及してテレビが見られなくなった」「スマートフォンの普及でPCが使われなくなった」という単純なトレードオフは見られない、(2)情報接触のツールは個人の考え方やライフスタイルで異なり、従来のように男女・年代別に分けては分析に不適切、(3)マーケティングには多メディアで複合的に訴求していくことが必要——の3点をまとめとして挙げ、以下のように述べた。

photo小林伸一郎統括部長

 「多デバイス化によって行動の多様化はますます進んでいるが、個々人の価値観やライフスタイルに基づくものであって、従来の単純な区分けは意味をなさなくなりつつある。とはいえ類型化できなくなっているわけではなく、実際に行動データを分析すると驚くほどきれいに5つのタイプに分けることができた。タブレットの普及が進むことでまた状況は変わっていくはず。同様の調査の実施予定はまだないが、今後も注視していきたい」(小林統括部長)

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冬ボで欲しいアップル製品――「iPad Air」編

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ココが「○」
・広い色域の9.7型ディスプレイ
・薄くて軽いボディ
・iPhone/Macと連携、App Storeの豊富なアプリ
ココが「×」
・Android機より価格は高め
・これまでのケースを流用できない
・Touch IDが欲しかった

はじめに:9.7型サイズの最新iOSタブレット「iPad Air」

og_ipadir_001.jpgiPad Air

 ここでは「冬ボで欲しいアップル製品」と題し、この秋アップルが投入した新製品を複数回に渡って取り上げる。第1回は「iPad Air」だ。実機の使用感はすでに林信行氏神尾寿氏が詳細なレビューを掲載しているので、ここでは測定器やベンチマークテストによるデータを中心に紹介しよう。

 現在では当たり前のように使われているタブレット端末だが、この製品ジャンルの確立に最も貢献したのがアップルのiPadだったことは今さらいうまでもないだろう。iPad Airは2010年に登場した初代から数えて5世代目にあたる。これまでアスペクト比4:3の9.7型ディスプレイを踏襲しつつ、本体はより薄く、より軽く、画面はより美しく進化してきた。

 CPUには64ビットアーキテクチャの最新A7チップ(M7モーションコプロセッサ内蔵)を採用。CPU処理能力と描画性能を引き上げつつ、ボディは史上最薄の7.5ミリまで薄型化し、重量は前モデルよりも150グラムほど軽くなっている(Wi-Fiモデル時)。まさに“Air”の名にふさわしいモデルだ。

ボディと製品概要:9.7型で500グラムを切る薄くて軽いボディ

 ラインアップは16Gバイト/32Gバイト/64Gバイト/128Gバイトの4種類で、それぞれにWi-FiモデルとWi-Fi+Cellular(LTE)モデルの2種類を用意する。カラーバリエーションは、iPhone 5Sで採用したスペースグレイとシルバーとの2色展開だ。

og_ipadir_002.jpgog_ipadir_003.jpg本体サイズは約169.5(幅)×240(高さ)×7.5(厚さ)ミリ。カラーバリエーションは2色で、iPhone 5sと同じスペースグレイとシルバーの2色になった

og_ipadir_004.jpgog_ipadir_005.jpg薄型化されたボディは“Air”の名にふさわしい仕上がり。エッジのカットが美しい(写真=左)。従来モデル(右)と比較すると、iPad Air(左)は額縁が狭く、しゅっとしている(写真=右)

og_ipadir_006.jpgog_ipadir_007.jpg解像度は2048×1536ドット(264ppi)の「Retinaディスプレイ」。軽量化したため片手で持つのもそれほど負担ではなく、画面への没入感も増している。ちなみに写真はシルバーモデル

og_ipadir_008.jpgog_ipadir_009.jpg本体上面/下面

og_ipadir_010.jpgog_ipadir_011.jpg本体左側面/右側面

液晶ディスプレイ:高精細かつ色再現性の高いディスプレイ

og_ipadir_012.jpgマイクロスコープによるパネル表面の拡大写真。iPad Airの画素密度は約264ppiだ

 iPad Airは、前述の通り2048×1536ドット表示に対応したIPS駆動方式のパネルを採用する。7.9型のiPad miniと解像度は同じだが、画面サイズが広いため、写真や雑誌、映画などを見るのに向いている。額縁が狭くなったことで、画面への没入感が増しているのもポイントだ。軽量化されたとはいえ、電車の中で立ったまま長時間片手で持つのはやや辛いが、ソファでゆったりとくつろぎながらメディアコンテンツを視聴するといったシーンにぴったりだ。

 測色器を用いて測定した結果では、色温度は6937Kで、sRGBの6500Kよりもやや高い結果になっている。色温度上ではやや青みがかった白だが、目視ではすっきとした白という印象だ。また、ガンマカーブの補正結果は、RGB各色の入力と出力の関係がほぼ1:1でリニアな線を描いている。階調再現性も非常に優秀といっていいだろう。従来モデル(第4世代iPad)と比べても大きく改善されているのが分かる。

og_ipadir_013.jpgog_ipadir_014.jpgエックスライトのカラーマネジメントツール「i1Pro」を用いて、計測結果から抜き出したガンマ補正カーブ。左がiPad Air、右が第4世代iPad(

og_ipadir_015.jpgog_ipadir_016.jpg色域をsRGB(薄いグレーで重ねた部分)と比較。左がiPad Air、右が第4世代iPadのもの。sRGB相当の広い色域を持ち、第4世代と比べてさらに広がっているのが分かる

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パナソニックの新規事業になる? 空気と水と光からメタンを作る人工光合成とは

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「エコプロダクツ2013」でパナソニックが展示した人工光合成システム

 パナソニックは、「エコプロダクツ2013」(2013年12月12〜14日、東京ビッグサイト)において、同社が開発を進めている人工光合成の最新研究成果を一般公開した。従来、人工光合成による生成物はギ酸(HCOOH)だったが、触媒の材料をインジウムから銅に置き換えてメタン(CH4)を生成することに成功した。今後は、2015年までに、植物と同等レベルの太陽光エネルギー変換効率(照射した太陽光のエネルギーに対して、生成した有機物が有するエネルギーの割合)でメタンを生成することを目標としている。

 従来の生成物だったギ酸は、化学メーカーの原材料として利用されている他、燃料電池車の燃料として注目されている水素の原料にもなる。しかし、ギ酸そのものは、直接燃料として利用はできない。一方、メタンは、都市ガスなどに利用される燃料ガスである。ギ酸と同様に水素合成の原料にもなる。

 現在、パナソニックの人工光合成における、メタン生成時の太陽光エネルギー変換効率は0.04%。これを、バイオマスとして使用されている植物(スイッチグラス)の光合成と同等の0.2%にまで高めたい考えだ。

「エコプロダクツ2013」でパナソニックが展示した人工光合成システム「エコプロダクツ2013」でパナソニックが展示した人工光合成システム。左側が窒化ガリウムを用いる光電極部で、右側が銅を用いた触媒部である(クリックで拡大)

光化学で最も注目されている研究テーマ

 人工光合成とは、植物が太陽光を浴びて水(H2O)と空気中の二酸化炭素(CO2)から有機物(植物の場合はブドウ糖)と酸素を生成する光合成を、人工的な仕組みで行えるようにする技術のことである。光化学で最も注目されている研究テーマの1つであり、豊田中央研究所なども取り組んでいる(関連記事:空気と水と太陽光だけで燃料を作る、豊田中央研が人工光合成を実現)。

植物の光合成(左)と人工光合成の比較植物の光合成(左)と人工光合成の比較(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 人工光合成では、光を照射することで水を水素イオンと酸素に分解する光電極部と、この水素イオンと二酸化炭素から有機物を生成する触媒部に分かれている。なお、水素イオンは、イオン交換膜を介して光電極部から触媒部に移動する。また、水の分解の際に発生する電子は、有機物の生成反応に用いるため触媒部に流れるようになっている。

人工光合成の仕組み人工光合成の仕組み。パナソニックの場合、光電極部に窒化ガリウムを、触媒部に金属(インジウムや銅)を用いる(クリックで拡大) 出典:パナソニック

無機材料だけで人工光合成を実現

 パナソニックは2012年7月、光電極部にLED照明などで用いられている半導体材料の窒化ガリウム(GaN)を、触媒部にインジウムを用いることにより、ギ酸の生成に成功したと発表した(プレスリリース)。ギ酸生成時の太陽光エネルギー変換効率は0.2%。これは、先述したメタンの目標値である、バイオマスとして使用される植物とほぼ同等だ。

 高い太陽光エネルギー変換効率に加えて、窒化ガリウムとインジウムという無機材料だけで人工光合成を実現したことも大きな特徴だ。従来、光電極部には二酸化チタンなどの無機材料を利用する事例はあったが、触媒部は金属に有機物を配位させた金属錯体を用いることがほとんどだった。しかし、金属錯体の場合、照射した光の量に素早く追随できる反応速度を得るのが難しかった。

 さらに、エコプロダクツ2013で公開した成果により、触媒部に用いる金属を変更することで生成する有機物の種類を変えられることも分かった。ギ酸が必要な場合はインジウムを、メタンが必要な場合は銅を用いればよいので、人工光合成の活用範囲を広げられるわけだ。

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“4K相当”の実力は? シャープ「クアトロン プロ」が描く“華麗なる”細密画

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 2013年の本連載の最後を飾るのは、シャープの“AQUOSクアトロン プロ”「LC46XL10」だ。今年は55インチ以上のクラスに各社から力の入って4Kテレビが出そろい、話題をさらったが、一方で40〜50インチ・クラスにキラリと光る興味深いフルHDモデルの新製品もいくつか登場してきている。なかでも筆者がこの冬もっとも注目しているのが、先月本欄でとり上げた東芝「47Z8」と本機、シャープ「LC46XL10」だ。

ts_arekore01.jpgシャープ「LC46XL10」。発表時の実売想定価格は26万円前後だった

 ハイビジョンテレビ(1920×1080ピクセル)の推奨視距離は3H(画面高の3倍)。その位置で観ることを想定した場合、50インチを超えると画素構造が目立つので4K解像度(3840×2160ピクセル)が必要といわれてきた。逆にいえば、シングルルームやベッドルームなどの狭小空間で3H程度の視距離で観るのであれば4Kテレビの解像度は不要ということにもなるわけだが、そんな視聴環境で画質のよいフルHDテレビを「お一人様」専用で使いたいという方にぜひご注目いただきたいのが、LC46XL10なのである。このテレビ、40〜50インチ・クラスで今もっとも精細度の高いテレビと断言できる。そして、その秘密はシャープ・オリジナルの「クアトロン プロ」にある。

 では、クアトロン プロとは何か。RGBの三原色に加えてY(イエロー)のサブピクセルを加えて色彩表現を高めたのが、シャープ独自の“4原色技術”「クアトロン」。その提案から3年が経過したこの秋、この4原色技術を応用して4K相当の高精細映像を得ようというのがクアトロン プロなのである。

ts_arekore02.jpgシャープ独自の“4原色技術”「クアトロン」

 フルHDパネルに4K×2K相当の高解像度映像が映し出せる? にわかには信じられない話だが、実際にシャープ開発陣に本技術の詳細をたずね、LC46XL10の画質をじっくり精査して、なるほどこれは興味深いアイデアが盛り込まれた、実にユニークな発明だと感心させられた。

 フルHDパネルの画素数を水平/垂直それぞれ2倍にすれば4K解像度が実現するわけだが、画素数はフルHDそのままに、4K「相当」の精細感を実現するのがクアトロン プロ。なぜそんなことができるのか、その秘密を探っていこう。

 まず「水平」の秘密から。R(赤)・G(緑)・B(青)の3原色サブピクセルにY(黄)のサブピクセルを加えた4色で1画素を形成するのがクアトロンパネルの特長。4K入力信号の水平解像度は先述の通りフルHDの2倍。そこでクアトロン プロ開発陣は、左からRGBYと横並びに配列されたサブピクセルのうち、視感上の解像度を決定付ける輝度ピークをGの他にY(G+Rの波長成分)が持っていることに着目、左からRGBで1画素を、BとYで1画素を表現する独立制御による倍密画素駆動を発想、それを実現することで水平方向の見かけ上の解像度を2倍に向上させたのである。

 いっぽう「垂直」については、クアトロン・パネルのRGBYのサブピクセルが上段と下段に分けられていることに着目した。元々これは視野角を広げるために、上下2分割されたサブピクセルのそれぞれの階調再現を切り替えるMPD(マルチ・ピクセル・ドライブ)と呼ばれる駆動法実現のために発想されたもの。フルHDクアトロンパネルでは、上下それぞれのサブピクセルを個別駆動することはできないが、上段と下段のサブピクセルに4K入力信号の垂直2画素分をそれぞれ割り当て、120分の1秒単位で上下順番に光らせれば(=黒挿入すれば)、60分の1秒ごとにフルHDの2 倍の垂直情報が得られるというわけだ。これは実に見事なアイデアというほかない。

ts_arekore03.jpg4つの輝度ピークを作る動作のイメージ(シャープ製品情報ページより)

 シャープ開発陣によると、4原色サブピクセルを用いた水平倍密処理については、クアトロン商品化の直後、早い時期から実験が試みられたという。しかし、水平処理のみによって得られる4K(相当)×1Kの高画質効果はさほどでもなく、このままではものにならないのでは? という感触だったそうだ。

 その後、MPDパネルの垂直時分割表示のアイデアがもたらされ、開発陣がその実験映像に高精細化の手応えを感じた約1年前から一気に開発に弾みがつき、クアトロン プロの商品化にこぎ着けたという。

 水平・垂直どちらかだけの処理では高精細化の実感が得られず、両方がバランスよく処理されることで、人はその効果を飛躍的に感じ始めるというのもとても興味深い話だ。ちなみに、このクアトロン プロによる水平倍密化と垂直時分割表示効果を4K化ではなく、4K化相当とシャープが呼んでいるのは、色信号の解像度アップ処理を行っていないからだという。

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第26回 アジア、南米、アフリカ……、世界102の新興国・30億人にリーチするマーケティングプラットフィーム「Jana」

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「ちょっと気になるWebキャンペーン」バックナンバー

 インターネット環境が整備され、リサーチ会社や広告会社が拠点を置くような先進国ならまだしも、アフリカなど新興国で暮らす消費者に対してマーケティングを行う手段を持つ企業は少ないのではないだろうか。今回紹介する「Jana」はこれまで、そうした課題を抱えるグローバル企業を支援してきた。

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魅せる! 笑わせる! 新設「アーキテクト部門」に大注目 〜ETロボコン2013チャンピオンシップ大会〜

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ETロボコン2013

 LEGO社の「MINDSTORMS NXT」を使ったロボット競技会「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト 2013(ETロボコン2013)」のチャンピオンシップ大会(全国大会)が2013年11月20日、パシフィコ横浜にて開催された。12回目の開催となる今大会では、従来とは全く異なる競技として「アーキテクト部門」を新設。これまでの競技は「デベロッパー部門」として残し、2部門による新体制のETロボコンがスタートした(関連記事:今度のETロボコンは“2部門制”に! レッドカーペットで自らを表現せよ)。

 アーキテクト部門は初めての競技ということで、主催者も参加者もまだ手探りの状態だっただろうが、各チームのパフォーマンスはなかなか見応えがあって、会場は大いに盛り上がった。どんな様子だったのか、早速当日の模様をお伝えしたい。

アーキテクト部門画像1 初開催された「アーキテクト部門」の様子。これが一体何であるかは、また後ほど説明する
同点で2チームが優勝もう1チーム(左)画像2 同点で2チームが優勝。こちらは「Special Boys」(SCSK 中部システム事業本部)/(右)画像3 もう1チームは「男子力∞MAKOTO」(宇部工業高等専門学校 ETロボコン同好会) ※画像クリックで拡大表示

新設されたアーキテクト部門の狙い

 従来のETロボコン(そして、今回のデベロッパー部門)の大きな特徴は、「ソフトウェア勝負」であることだ。使用するロボット(“走行体”と呼ばれる)は全チームで共通。使用する電池まで同じものが支給されるので、ハードウェアの性能は各チームで全く違いがない。詳しくは後述するが、同じハードウェアでも、ソフトウェア次第で走行スピードに大きな差が出てくるのは興味深い。

走行体は2輪の倒立振子ロボット画像4 走行体は2輪の倒立振子ロボット。ハードウェア仕様は全く同じだが、このようにカラーの変更くらいは許される

 ただ、他の多くのロボコンと違うのは、当日の競技結果が良いだけでは優勝できないということ。ETロボコンは、組み込み分野の若手エンジニアに対する教育機会として考えられているため、開発における分析・設計モデルについても審査し、その総合点で評価されるのだ。例えば、前回の優勝チームは競技結果では第5位だったものの、モデル審査が第2位だったため、総合点でトップに立った(関連記事:リタイア続出! “魔の第1コーナー”で一体何が? 〜 ETロボコン2012チャンピオンシップ大会〜)。

小林靖英氏画像5 ETロボコン実行委員会の運営委員長である小林靖英氏(アフレル)

 ETロボコン実行委員会で運営委員長を務める小林靖英氏は、「これまではモデリングに特化した10年だった。モデリング開発を広めようとしてきて、ある程度成果も見えてきた」と語る。ではなぜ、いま新部門なのか。

 「アーキテクト部門では、これから5年後、15年後に活躍するような人材を育てたい。これまでの大会では、まず『課題』が与えられて、それをどうすれば早く正確に解決できるかを追求してきた。もちろんそれは依然として重要なので継続していくが、新部門では『何を作るか』というところから考えていく。企画するエンジニア、生み出すエンジニア、ビジネスでもうけるエンジニア、そういう人たちを育成したい」(小林氏)

 日本のメーカーは技術で勝ちながら、製品で負ける例も多い。例えば、得意とされるロボット分野でも、家庭用のロボット掃除機では製品化が遅れ、米iRobot社の「Roomba(ルンバ)」に市場を押さえられてしまった。高品質な製品を開発するだけでは、世界の中で勝てない。何を作れば売れるのか、求められているのは企画力であり、そこが日本の弱点でもある。アーキテクト部門の設置は、そうした現状への危機感の表れだろう。

 さて、それではアーキテクト部門について、具体的にルールを見ていこう。

 まずフィールドは、前半の「ベーシックステージ」と後半の「パフォーマンスステージ」で構成。ベーシックステージは従来同様、ライントレースのコースになっており、ここを1分以内に完走してから、パフォーマンスを開始することになる。1分以内に完走できなくてもパフォーマンスは行えるが、その場合は点数が低くなる。アーキテクト部門は、ベーシックステージを完走できる技量が前提といえる。

ステージ画像6 「ベーシックステージ」は、デベロッパー部門の第4中間ゲートまでと共通。右下の空白が「パフォーマンスステージ」

 パフォーマンスで何を披露するかは、各チームで自由に考えて決める。パフォーマンスステージは2.79×2.74mの広さがあり、必要ならば大道具的な装置を用意しても構わない。ただし、装置の設置や撤収も評価の対象となるので、作業が速やかに終わるように工夫する必要がある。競技を開始する前に、パフォーマンスについて説明するプレゼンタイムも2分間用意されている。

 チームの順位は、企画審査(100点)、一致性審査(100点)、魅力審査(200点)の合計点で決められる。企画の内容について事前に評価するのが企画審査。残りの2つは当日のパフォーマンスを見て採点されるもので、一致性審査ではどれだけ企画書通りにできたかを評価、魅力審査ではパフォーマンスの「すごさ」を評価する。点数配分を見て分かるように、最も重視されているのは観客へ与える印象である。

魅力審査の点数は団扇の数で決定画像7 魅力審査の点数は団扇の数で決定。団扇は1人が2本持っており、各チームのパフォーマンスを0〜2本の間で評価する
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今から始める超入門!! iPad+iPhotoの写真管理術(後編)

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写真管理を簡単にする5つの方法

og_hirotamac_001.jpgレビューでデモ機を触っているうちにほしくなって、結局、iPad mini Retinaディスプレイモデルの128GBを買ってしまいました。原稿料が……

 iPad版「iPhoto」の基本的な使い方を解説した前編に続き、後編ではiPhoneやデジカメ、Macをからめた総合的な写真管理について“チャレンジ”してみた。なぜチャレンジなのか。紆余曲折あったのですよ。

 昨今において、写真をどう管理するかは、割と難しい問題だ。機器だけ見ても、撮影する側はデジカメやスマホなど、鑑賞する側もPC、タブレット、スマホ、テレビなど、鬼のように多様化してきている。ここに写真の転送や保管に利用するPCやスマホのアプリ、Webサービスが加わってさらに複雑化。転送を楽にする無線LAN対応のSDカードや、無線LAN内蔵のカメラも出てきたりして、世はまさに写真管理の戦国時代なワケです。

 約10年ほど前、PCがまだ王様だったころは、アップルも「デジタルハブ」をテーマにMacを中心としたコンテンツ管理構想を掲げてましたが、今や「家にあるコンピューターはスマホやタブレットで十分だよ」という人も多いはず。

 人間、あまりに手段が多いと「考えるのをやめた」となって、「とりあえずパソコンに全部入れておくか」と単純な手段をとりがちですが、それぞれの特性を理解して組み合わせれば、より写真の管理が楽になる。今回はiPadをメインに、MacとiOS端末を組み合わせて5つのコースを考えた。

その1、お手軽バックアップコース

・メリット:設定が簡単

・デメリット:動画がバックアップできない

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 写真はデジカメでたまに撮るぐらいで、基本、iPadに取り込んで使っているという人にオススメなのがこのコース。アップルのクラウドサービス「iCloud」が提供している「フォトストリーム」を利用する。

 フォトストリームは、「もう使っているよ!!」という人も多いだろう。知らない方のために一応触れておくと、iPadを無線LANにつないだ際、中身(「カメラロール」)の写真をどんどんネットに転送してくれる機能だ。お値段は無料。このフォトストリームは、MacやWindows機、iPhone、iPod touchにも対応しているので、それぞれの端末でオンにしておけば、インターネットを介して写真を交換できる。

og_hirotamac_003.jpgog_hirotamac_004.jpg「設定」アプリの「iCloud」にある「写真」を開いて、「自分のフォトストリーム」をオン

 iPadに写真をためているいるだけでは、盗難にあったり、壊れたときにすべての写真を失ってしまう可能性がある。万が一に備えて、定期的にPCのiTunesでバックアップを指示すればいいのだが、いちいちMacがあるところに行くのが面倒という人も多いはず。

 そこでiPadとMacでフォトストリームをオンにして、iPadが無線LAN圏内に入った際、問答無用ですべての写真がMac側にバックアップするように設定しておく。その際、Macはスリープしないようにして液晶の輝度を下げておこう。ここ最近のMacならスリープ中に定期更新を受けられる「Power Nap」に対応しているので、スリープ状態でもフォトストリームの写真を受け取れる。

og_hirotamac_005.jpgog_hirotamac_006.jpgMac側はiPhotoやApertureで環境設定を開き、「iCloud」タブで「自分のフォトストリーム」をオン。Macではダウンロードとアップロードを指定できる。バックアップ用途なら「自動読み込み」だけチェックしておけばいい(画面=左)。Power Napは「システム環境設定」の「省エネルギー」から指定できる。ここになければMacが対応していない(画面=右)

 注意したいのは、フォトストリームが対応するファイル形式は、JPEG、TIFF、PNG、多くのRAWという画像のみで、動画は送れない点。少し面倒だが、動画は「DropBox」に手動で保存したり、「PhotoSync」などのアプリを使って無線LAN経由でMacに直送することになる。なお、AVCHD形式の動画はそもそもiPadに取り込めないので、最初からMacに取り込んで変換しないといけない。

バックアップだけならクラウドも視野に

 お金をかけていいなら、PCなしでもっと楽にバックアップできる。iCloudはバックアップ機能を用意しており、無線LAN圏内に入ったタイミングでカメラロールにある写真やビデオを自動で保存してくれる。しかし、iCloudの無料プランでは容量が5Gバイトと少ないため、撮りためた写真をコピーするとすぐに埋まってしまう。10Gバイト/年2000円、20Gバイト/年4000円、50Gバイト/年1万円と写真の容量にあわせてアップグレードしよう。例えば10Gバイトを申し込めば、無料の5Gバイトとあわせて15Gバイト分のストレージを利用できる。

 フォトストリームをオフにして、クラウドストレージの「DropBox」が持つ「カメラインポート」を使う手もある。これはiOSのカメラロールや、PCにつないだカメラ、SDメモリーカードなどのデータを、自動でDropboxに転送する機能だ。DropBoxの無料版は2Gバイトスタートで、友人を紹介したりすると500Mバイトずつ追加され、最大16Gバイトまで増える。それ以上は100Gバイト/月9.99ドルか年99ドルのプロ版を契約することになる。


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「艦これ」の赤城がねんどろいどに! ご飯とちゃぶ台もついてくる

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 ブラウザゲーム「艦隊これくしょん」(艦これ)の航空母艦「赤城」がねんどろいど化! グッドスマイルカンパニーが12月17日、オンラインショップで予約を開始した。価格は4500円。

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 特徴である甲板や電探、マストなどを再現。「艦載機」3機と、回避運動をイメージした「水飛沫エフェクト」が付属する。また「大食い」のイメージから、オプションパーツとして「山盛りご飯」「ちゃぶ台セット」「ボーキサイト満載のバケツ」もついてくる。

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 予約は2014年1月15日午後9時まで。発売時期は5月の予定。

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工場システムがネットで丸見え!? ――JPCERT/CCが訴える制御システムの危機

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JPCERT/CC

 セキュリティの対策支援や情報啓蒙などを行うJPCERT(Japan Computer Emergency Response Team)コーディネーションセンター(以下、JPCERT/CC)は、2012年に新たに制御システムセキュリティ専門の対策チーム「ICSRチーム」を創設。同組織がある一定の分野に特化した組織を作ったのは初めてだという。制御システムセキュリティにどういう問題があるのか。またJPCERT/CCとしてどういう取り組みを進めているのか。制御システムセキュリティを担当するJPCERT/CC 常務理事で制御システムセキュリティ対策グループ担当の有村浩一氏に聞いた。



なぜ制御システムセキュリティ専門部隊を作ったのか

MONOist なぜ制御システムセキュリティ専門の部門を設立したのですか。

有村氏 やはり大きかったのはStuxnet(スタックスネット)の存在だろう。イランの核施設へのサイバー攻撃を目的としたマルウェアであるStuxnetは、2010年から登場し、インターネット経由で拡散した。シーメンス製のPLC(Programmable Logic Controller)に作用するように作られていた点と、USBメモリ経由でクローズドネットワークでも被害を受ける可能性がある点で、危機感が高まったように思う。以前から同様の問題は現場では感じていたが、それが一気に表面化したというような感じだ。

有村氏JPCERT/CC 常務理事 ICSR(Industrial Control System Response)チーム部門長の有村浩一氏

 ちょうどこれらの流れの中で政府の活動も活発化してきた。私が委員として参加していた経済産業省の「サイバーセキュリティと経済 研究会」でも、リアルとバーチャルが結び付き、ITがリアルの世界に与える影響が大きくなる中で、サイバーセキュリティの脅威に対しどう取り組んでいくか、ということがトピックとなった。その中でJPCERT/CCとしてどういう取り組みができるか、ということを考えて、新たに制御システム専門とする「ICSR(Industrial Control System Response)」チームを2012年に設立した。

 JPCERT/CCはもともと、安全なコンピュータ環境を実現するために、コンピュータセキュリティインシデントに関する調整や連携を行うことを、基本理念とした組織だ。サイバー攻撃が国境を超えて行われるのが当たり前になる中、国内組織や海外組織との連携活動、情報収集や分析発信活動などを行い、コンピュータ環境の安全性を向上させるのが中心的な活動だ。1996年から活動を開始し、具体的には企業からインシデントの情報を取得し、セキュリティベンダーの紹介や、今後の被害の拡大を抑える情報提供を行う。また、今後のセキュリティ製品開発へのフィードバックなども行っている。

 情報システム分野では浸透してきているが、制御システム分野においても、情報システム分野と同様に、セキュリティ面での連携が取れる体制を実現していきたいと考えている。

予防、早期発見、事後対応をサポート

MONOist ICSRチームでは、どのような活動を行っていますか。

有村氏 基本的には情報システムに向けて行っている活動と同様の仕組みを用意する。情報システムでは主に「発生したインシデントへの対応」としてのインシデントハンドリング、「インシデントの予測と捕捉」を行う情報収集・分析・発信、「インシデント予防」としての脆弱性情報ハンドリング、の3つの取り組みを行っている。インシデントに対し「被害を受けた時にどう対処するか」「被害の発生をどう見つけるか」「被害を受けないためにどうするか」という観点で取り組みを進めている。

 制御システムでも同様の方法で取り組みを進めており、アセットオーナー、ベンダーそれぞれに情報提供や調整活動を行っていく。

 アセットオーナーにとってはインシデントが発生した際にこれが制御システムの問題なのか、情報システムの問題なのか分からない場合が多い。ICSRチームは制御システム専門チームだが、JPCERT/CC内の既存の組織の中で連携を取る体制で組織を作っている。とにかく問題が発生した際に相談できる窓口になっていきたいと考えている。

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「セカイカメラ」、1月にサービス終了

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 頓智ドットは12月17日、スマートフォン向けAR(拡張現実)アプリ「セカイカメラ」の全サービスを1月22日に終了すると発表した。同社は「今後、セカイカメラの進化版となる『tab』に注力する」としている。

photoアプリ画面

 スマートフォンのカメラを起動し、空間上に文字や画像、音声などを「エアタグ」で付与・共有するアプリ。同じ空間にいる/いたユーザーとスマートフォンの画面越しにコミュニケーションできる仕組みだった。

 2009年9月にiOS版がリリースされ、公開から4日で10万ダウンロードを超えるなど、前年に国内発売されたばかりのiPhoneの初期の人気を支え、AR技術の可能性を垣間見せる草分け的存在だった。

 サービス終了後、登録したアカウントの情報やエアタグなどは全て削除される。過去に投稿したエアタグデータはKML形式でエクスポートでき、Google Earthなどにマッピングできる。

 Twitterでは「未来を感じたのに……5年早すぎた」「セカイカメラが使いたくてiPhone買った気がする」「(プレスリリースの)URLが“the_end_of_sekai”って」など多くの反響が寄せられている。

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ホーム、文字入力、便利機能――「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」の使い勝手を試す

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 NTTドコモのシャープ製スマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」は、シャープ独自のホーム画面や便利機能などを備え、使い勝手を重視したモデルに仕上がっている。そんなSH-01Fの使い勝手を、ホーム画面や文字入力、独自の便利ツールなどの面から紹介していきたい。また、私物として普段使っているからこそ気付くような部分もあわせてチェックした。

好みに合わせてホーム画面をカスタマイズ

 SH-01Fは、シャープ独自のUIである「Feel UX」と、NTTドコモが提供する「docomo LIVE UX」の2つのホームを搭載している。Feel UXでは、アイコンを大きく表示する「シンプルモード」や、高精細なディスプレイを生かして小アイコンを並べる「5列レイアウト」など、好みでカスタマイズできる。背景色もカラフルなものから落ち着いた木目調のものまでを用意し、背景の模様やレイアウトするキャラクターなどもそれぞれ選べる。

photophoto左から、「Feel UX」と「docomo LIVE UX」
photophotophoto明るい色合いで、見やすい3列並び(写真=左)。高精細ディスプレイを生かした5列並びで、落ち着いた木目調デザイン(写真=中)。docomo LIVE UXなら「マイマガジン」でニュースを見られる(写真=右)

 docomo LIVE UXは、ドコモのサービスを使いやすく配置したほか、各ジャンルのニュースが一目で分かる「マイマガジン」アイコンも備えた。特定のニュースアプリをインストールしなくても日々の情報を入手できる。

打ち間違いがなくなる? 親切設計の文字入力

 キーボード画面では文字入力に関するさまざまな設定ができる。なかでも便利なのは「入力ミス補正」だ。例えば「うるおぼえ」と入力した際に、ヒントマークとともに「うろ覚え」という正しい単語が変換候補に表示される。自動修正をさせる機能もあるため、打ち間違いはかなり減るだろう。

photophoto「うるおぼえ」と入力すると、ヒントマークとともに「うろ覚え」と正しい単語が変換候補に表示される(写真=左)。右端の下から2番目にあるボタンをタップすると、メニュー画面が開く(写真=右)

 日本語・英語・数字入力の切り替えは画面左下のボタンをタップするほか、キーボード自体を左右にフリックすることでも可能で、より直感的な操作性を実現している。設定次第で上下フリックでも切り替え可能となる。

 そのほか、片手での操作性を重視した機能も実装した。キーボードのサイズ変更のほか、右寄せ・左寄せを選択でき、どちらの手で操作しても文字を入力しやすくなっている。変換候補の表示列の数も指定できるため、自分の使い方に応じた設定が可能となった。

photophotoキーボードの高さを「最小」、候補行数を「1行」、キーボード幅を「左寄せ」に設定(写真=左)。右寄せにすると、右手で操作しやすい(写真=右)
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3Dプリンタだけが革命ではない、製造コスト低減に役立つ印刷技術

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 さまざまな製品を主に印刷技術を使って作り上げようという動きが盛んだ。なぜ印刷にこだわるのだろうか。製造コストを劇的に引き下げられること、これが最大の理由だ。

 製造時のコストアップ要因は幾つもある。材料自体のコストはもちろん、製造工程自体にも原因がある。工程数が多いこと、各工程に時間が長いこと、各工程で加熱や冷却などにエネルギーを大量に使うこと、これがコストアップにつながる。例えば真空が必要な工程や、清浄度の高いクリーンルームを使う工程などは避けたい。

 印刷技術を使うことができれば、これらの問題が一気に解決する。常温、常圧下で大面積を一気に作り上げる、これが印刷技術の醍醐味だ。例えば、ロール状に巻いた100mにも及ぶ「基板」にパターンなどを印刷することで電子部品を作り上げるロールツーロール(R2R)法が望ましい。

 このように考えると、積水化学工業が「電池」を印刷技術で作り上げようとしている理由を理解できる。同社は印刷技術を前提としてリチウムイオン蓄電池と太陽電池という2種類の電池を開発中だ。

室温下で有機系太陽電池を製造する

 同社は東京で開催された環境関連の展示会「エコプロダクツ2013」(2013年12月12〜14日)で、2種類の電池を見せた。1つは色素増感太陽電池、もう1つはリチウムイオン蓄電池だ。

 「当社が色素増感太陽電池で狙いたいのは、低温条件で連続生産することにより、製造コストを下げることだ。製造規模が1万m2の場合、従来方式と比べて製造コストを3分の1に抑えることが可能だ」(積水化学工業)。今後、量産技術を確立し、2015年に太陽電池市場への参入を目指す。

 色素増感太陽電池は、シリコン(Si)を使わない有機系太陽電池の1つ。二酸化チタン(TiO2)と有機色素、ヨウ素(I)のイオンを組み合わせた太陽電池だ。これまでは製造時に高温(約500度)の焼成過程が必要だったが、同社は室温プロセスだけで有機フィルム上に太陽電池を試作した(図1)。高温焼成を使わない世界初の実績だと主張する。

 変換効率は8.0%であり、有機フィルム上に形成した色素増感太陽電池としては世界最高水準であるという。なお、ガラス基板上に形成した場合の発効率は9.2%だった。

yh20131217Sekisui_PV_590px.jpg図1 試作したフィルム型色素増感太陽電池。発電して得た電力でスマートフォンを充電するデモを見せた。エコプロダクツ2013での展示

 開発した製造方法は、積水化学工業のR&Dセンターと産業技術総合研究所(産総研)の先進製造プロセス研究部門が共同で作り上げたもの。積水化学工業は微粒子制御技術や多孔膜構造制御技術、フィルム界面制御技術を用い、産総研が開発したエアロゾルデポジション法(AD法)と組み合わせた。産総研はセラミックス微粒子が常温で固化する常温衝撃固化現象を発見し、AD法として確立している。音速に近い速度で有機フィルムにナノ粒子をぶつけることで、均一で強度の高い膜を形成できる。既にロールツーロール法による連続成膜にも成功しているという。

 太陽電池として機能する膜が強く、有機フィルムに曲げる力が働いても機能し続けるため、曲面を帯びた場所に設置する太陽電池や、意匠性を高めた太陽電池の開発にも役立つ。

yh20131217Sekisui_ADmethod_590px.jpg図2 AD法の概要。出典:産業技術総合研究所

 もう1つの開発品は、リチウムイオン蓄電池だ。大容量で軽く、薄いことが特徴である。

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iBooks Storeからのサプライズギフト『HOLY』――時代を超えて届ける一冊

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いつか未来のクリスマスに、思い出せるといい光景だと私は思った

 読み終えると、そんな気持ちになる一冊がある。その本の名は『HOLY』。少し縦長の、小冊子と形容した方が正しいこの本は、1988年に刊行。そのタイトルから連想されるように、クリスマスという特別な日を舞台にした20数ページのショートストーリー。著者は『キッチン』『TUGUMI』『アムリタ』などの作品でも知られるよしもとばななさんだ。

HOLYHOLY

 よしもとさんのファンでも、この本を所有している方は少ないかもしれない。しかし、その価値を高く評価し、クリスマスに向けた特別なギフトとしてユーザーに贈るサンタが現れた。AppleのiBooks Storeである。

 Appleの「12 DAYS プレゼント」は、クリスマスの翌日、12月26日から1月6日までの計12日間、ミュージック、映画、ブックなどiTunesの有料コンテンツが毎日日替わりで1日1つ無料でプレゼントされるというもの。「12 DAYS プレゼント」アプリをダウンロードする必要がある。

 全120カ国以上で同時に実施されている企画だが、日本では特別なデイゼロ(Day 0)企画も用意された。これは、12月16日から19日まで、12 DAYS プレゼントアプリを立ち上げると、よしもとばななさんの『HOLY』という作品を無料でダウンロードできるというもの。Appleのしゃれたサプライズギフトといえる。

 iBooks Storeからのサプライズギフトとして時代を超えて選んだ“本”。著者のよしもとばななさんに聞いた。

クリスマスに贈ろうという取り組みで生まれた本だった

よしもとばなな電子ペーパー端末も所有しているが、電子書籍はiPadで読むというよしもとばななさん

—— 9月に、よしもとさんの著作23作品が幻冬舎から電子書籍としてiBooks Storeで独占先行発売されました。幻冬舎から、というのは何か思いがあったんですか?

よしもと 幻冬舎さんは出版業界の中でも常に先を行こうとする、開拓していく心をお持ちで、昔から何か一緒にできることがあったらなと自分の中でちょっとずつ優先していたんですけれども、今回、これなら本当の意味で価値あることができる、というのが1つ。

 iBooks Storeでというのは、さまざまな人の縁もありますが、わたしが昔からMacユーザーだったということがありますね。「がちゃ・じわー」みたいなマシンだったときから。

—— その音がどのMacか後で想像する楽しみができました(笑)。

よしもと 条件がいっぺんにそろったというのが正直なところですね。条件がそろうかどうかも運のうちですから。自分にとっても、もうこれは絶対やった方がいいんだ、と思って、ほかの出版社から出した本とかもまとめて。

 あと、わたしが引っ越しをして、「もう紙の本なんてうんざりだ」と自分の中でバシッと切り替わったのもあると思います。

—— ご自宅にある蔵書もかなり処分されたんですか?

よしもと わたしが持っている本は特殊なものが多くて、特殊な装丁とかデザインとか、どうやっても電子書籍にはならないだろうっていうものは取っておいて、あとはもう切り替えていこうという。それでも、考えたくないほど、ほんとに考えたくないくらいあります。引越し屋さんが「詰めても詰めても終わらないんです! もう1日ないと!」と泣くくらい。

—— 『HOLY』は「キッチン」で海燕新人文学賞を受賞されたのと同時期に書かれたものですよね。

よしもと これ、みんなで書いたんですよ。確か10人以上で書いたんじゃなかったかな。小さい本で、プレゼント用封筒とカードがついて、クリスマスに贈ろうという取り組み。

—— 当時の角川書店が“贈物用の本”として企画した「角川グリーティングブック」ですよね。村上龍さんや銀色夏生さんも書かれていました。今では入手困難になっています。

よしもと その中でももっとカード寄り、言葉の入ったカードに近い扱いだったと思います。わたしも「これだけが手に入らないんです」って問い合わせを何回受けたか。自分も持っていないんですけど。

クリスマスに人から贈られて、ただいい気分になることを意識して書いた

—— HOLYは、すべてが祝福される優しく幸せに満ちたショートストーリーですが、どういうことを意識して書かれたんですか?

よしもと クリスマスに人から贈られて、気分が悪くならない、ただ、いい気分になる——それだけを意識して書きました。あんまり恋愛寄りにしちゃうと、用途が限られちゃうから、それを意識した記憶があります。

—— よしもとさんがクリスマスで記憶に浮かぶものは?

よしもと クリスマスっていうと思い出すのが、小学生のころにもう「絶対サンタはいない」と思っていて、自分はいないと思ってたけど、世の中的には一応いるってことになってる時期ってあるでしょ。

 小学校3、4年生のころかな。そのころわたし、野球が好きで、「誰かのサイン入りの何かがほしい」って言っていたら、朝、阪急ブレーブスの選手の誰だろう……、盗塁で有名な人のサイン入りバットが枕元にゴロッと置いてあって。全然望んでいないものだったのがすごい印象的なんですけど、そんなことじゃなくて、もっと素敵な話を、ですよね。

 そういえば、実家の「きよしこの夜」を流すオルゴールの音程が狂ってて、わたし、小学校で習うまで、違う曲を歌っていました。子どものころのことって大きいですよね。膨らみますよね、気持ちが。

—— ちなみにそれはポジティブ、ネガティブの二極で言うとどちらになるんでしょうね。

よしもと ポジティブなイメージですよ。高度成長期で日本人がやっとツリーを家に飾ったりケーキとかを買ってくるようになったときに育ったから、「クリスマスって何て楽しいんだろう」と思いました。お正月って、和食でつまらないですよね、子どもにとっては。

安全重視の世の中になって見えてきたこと

—— 今年が2013年ですから、HOLYは約25年前、四半世紀前の作品となりますが、これを書かれたころと比べて何か変わりましたか? 子ども、あるいは若い人、という視点で感じることがあれば。

よしもと バブルに疲れて、心の隙間を埋めはじめたころですよね、ちょうど。そのころと比べると、今は若い人が慎ましいですよね。言ってることもやってることも。

—— 近著の『すばらしい日々』の中にも、おばあちゃんの言葉として「若い人たちに元気が無いとおっしゃっている」とありました。

よしもと 若い人はほんと大変だと思いますよ。何をすればいいのかも分からないでしょうし、先も見えないでしょうし。でも、自分で切り開いていける人にとっては面白い時代だと思います。

 わたしが10代くらいまでは、子どもが無茶なことをするのを親が止めない時代でした。夏休みを40日間北海道を自転車で走るとか、彼女に何か贈りたいから徹夜で1週間バイトするとか、そういうのを親は止めなかった時代です。

 わたしは止めないですけど、今の大体の親御さんは止める方向で。確かに、東日本大震災もあったし気持ちは分からなくはないんですけれども、型破りな人が育ちにくい時代ではあると思います。わたしも、これでよしとする時代なんだと思ったらいろいろ見えてきたことがありました。

—— 何か意識が変わったんでしょうか。

よしもと 安全重視、でしょうか。リスクを取らないっていう。それはそれでいいと思うんですけど、その中でもやっぱり何か「親が何と言おうと、俺はこうなんだ」みたいなのを持っていないと、これからは生きていけないのかなと思います。

—— 子育てだったり、親しい方とのお別れだったり、震災だったり、さまざまな経験を経て書かれた近著の『すばらしい日々』と『HOLY』をあえて比べるなら、それぞれどう位置付けますか?

よしもと 正直言って、HOLYを書いたころはメンタル的にまったく余裕がなかったです。人生で最も世の中の汚いものに接していた時期でした。余裕がない中で捻出してるから、「よく頑張ってるな、偉いぞ」って今読むと思います。

 『すばらしい日々』は心に余裕がある状態で書いてるから、ある意味、自分では成長を感じます。

—— ありがとうございます。最後に、よしもとさんが子どもにこれだけは必ず読ませたいと思う一冊を挙げるとしたら?

よしもと 『1Q84』を勧めるかも。子どもに読んでほしいという意味では『ゲド戦記』ですね。

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Windows XPから乗り換えるべきは“7”か“8.1”か

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←・SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(1):今さら聞けない「Windows XP」サポート終了問題

OSアップグレードとハードウェアの入れ替えを同時に行うのが理想

tm_1312_xp2_01.jpgWindows XPのデスクトップ画面。当時は「Luna」と名付けられたユーザーインタフェースが新鮮な印象を与えたものだった

 2014年4月9日(日本時間)にサポート終了が迫ったWindows XP。同OSが発売されたのは2001年のことだった。

 2001年といえば、NTT東日本が「Bフレッツ」の提供を開始したり、Yahoo! BBやイーアクセス、アッカ・ネットワークスが低価格ADSLサービスに参入するなどして「ブロードバンド元年」と呼ばれた年だ。ほかにはDDIポケットがモバイル通信サービス「Air H"」を開始するといった出来事もあり、こと通信サービスについては、ナローバンドからブロードバンドへの過渡期真っただ中にあった。

 そんな中でリリースされたWindows XPだが、ダイヤルアップ接続をはじめとして、旧来の通信回線を前提とした仕様も数多く残されている。こうした仕様のまま、昨今のスパイウェアなど、高度化した脅威に対抗することは構造的にも難しく、また最新のソフトウェアを利用するにしても、綱渡りにも似た状況であるわけだ。

tm_1312_xp2_02.jpg2001年10月に発売されたデスクトップPCの例(エプソンダイレクト「Endeavor MT-6000」)。Windows XP Professional、Pentium 4 1.5GHz、128Gバイトメモリ、40GバイトHDDを搭載し、価格は9万5000円前後だった。FDドライブやCRTが時代を感じさせる

 身近なところで分かりやすい例を挙げよう。Windows XP発売当初、PCで主流のCPUはちょうどPentium IIIからPentium 4へと移行しつつあったが、昨今のアンチウイルスソフトによくみられる高度なヒューリスティックエンジンによる未知のウイルスをリアルタイムで検出する技術は、その当時には一般的でなかった。

 そのため、これらの旧世代CPUでリアルタイム検出を実行しようとしても、処理速度が追いつかず、まともに機能しないことがほとんどだ。ハードウェアのアップグレードとともに、開発段階からこれらの機能を念頭に置いて設計された新しいOSに入れ替えない限り、対応は困難といえる。

 またハードウェアについては、通信機能以外の進化も著しい。64ビット対応による大容量メモリのサポート、USB 3.0などの高速なインタフェース、高解像度のディスプレイ、タッチパネルといった技術についても、Windows XPの発売当時にはまだなかった、もしくは一般的でなかったものばかりだ。CPUも現在ではPentium以降に登場したIntel Coreが第4世代(開発コード名:Haswell)まで進化し、クアッドコア以上の環境も当たり前となって、処理速度は劇的に向上している。

 Windows XP世代のPCは、ハードウェアの経年劣化も心配だ。OSだけアップグレードしたところで、大事なデータを記録したHDDや電源など内部のパーツが寿命を迎え、すぐに故障してしまっては元も子もない。

 こうした点も踏まえると、もし当時のハードウェアをだましだまし使い続けているのであれば、OSだけをアップグレードするのではなく、新しいハードウェアにまとめて入れ替えるのが得策だ。新しいハードウェアの多くは消費電力が下がっている場合が多く、節電効果も期待できるので、企業ユースでのメリットも高い。

操作性がXPに近く、互換性も高いWindows 7

tm_1312_xp2_03.jpgWindows 7のデスクトップ。Aeroの半透明効果やスタートボタン周囲はWindows Vista譲りのデザインだが、全体の構成はWindows XPに近い。Windows 2000以前のシンプルなUIに近づけるクラシックテーマも用意されている

 Windowsのソフトウェア資産を生かしつつ、Windows XPから移行するOSとしては、最新の「Windows 8」(そこから無償アップデートが可能なWindows 8.1も含む)と、その1つ前の「Windows 7」が候補となり得る。もっとも、現状においてビジネス用途で移行先のOSに多く選ばれているのはWindows 7であり、およそ6割を占めているという。

 Windows 7が好まれる理由はいくつかある。1つは操作性がWindows XPに近いことだ。最新のWindows 8は「モダンUI」と呼ばれる、タッチ操作を前提にしたインタフェースが採用されており、見た目がWindows XPと大きく異なる。

 もちろん、タッチではなくマウスで操作することも可能だが、先日Windows 8.1にアップデートされるまではスタートボタンすら存在せず、またそのスタートボタンにしても従来とは機能が大きく異なるなど、Windows XPから移行すると戸惑いも多いだろう。

tm_1311_surface_pro2_41.jpgtm_1311_surface_pro2_45.jpgWindows 8のスタート画面(画像=左)とデスクトップ画面(画像=右)。スタートメニューの代わりに用意されたスタート画面は、タッチ操作を前提に設定されており、従来のWindowsのデザインとは大きく異なる。デスクトップ画面は、Windows 8.1でスタートボタンが復活したが、従来のボタンとは挙動が異なる(デスクトップUIで押すとスタート画面やアプリ一覧を表示。右クリックするとショートカットメニューを表示)。起動後にスタート画面ではなくデスクトップUIをいきなり表示できるなど、キーボードとマウスを使った操作への配慮もなされたが、Windows XPから乗り換えると操作の違和感が大きい。なお、Windows 8以降は、Windows 2000以前のシンプルなUIに近づけるクラシックテーマも廃止されている

 こうしたユーザーインタフェースの違いから来る戸惑いを少しでも減らしたければ、最新のWindows 8/8.1ではなく、Windows 7をチョイスしたほうがよいだろう。オフィスで従業員のPCをすべてWindows 8/8.1に乗り換える場合、PCの基本操作を改めて学習してもらう必要があり、それにかかる時間や追加のコストも考える必要がある。

 これがもし、2〜3年後にWindows 7がサポート終了となり、再びOSの乗り替えを検討しなくてはいけないようであれば、慣れるための多少の期間が必要であってもWindows 8に乗り替えたほうが長い目で見て得策だろうが、幸いにしてWindows 7のサポート終了まではまだ6年もの猶予がある(前回記事参照)。

 ソフトウェアの互換性についても、枯れた(アップデートを繰り返して不具合を減らし、安定化が進んだ)Windows 7のほうが、Windows 8に比べて高いことも見逃せない。市販の主要なソフトウェアは、メーカーがアップデートプログラムを用意しており、明示的に非対応をうたっているものを除けば、Windows 8/8.1でもWindows 7でもまず支障はないだろう。

 しかし、自社向けにカスタマイズされた古い業務用ソフトウェアについてはそうはいかない。多くのベンダーでは互換性検証のために新型PCの貸出サービスを実施しているが、その結果としてWindows 7を選択している企業は少なくない状況だ。いくら最新のOSとはいえ、業務で長年使い続けてきたソフトウェアが動作しなくては意味がないわけで、これは当然だろう。業務用ソフトウェアの移行も同時に行うとなると、さらにコストがかかってしまう。

 また、意外と見逃されがちだが、イントラネットのサイトや、Webブラウザベースで動作するサービスを利用するにあたって、Webブラウザの互換性が問題になる場合もある。Windows 8にはInternet Explorer 10、Windows 8.1にはInternet Explorer 11が付属するが、これらのWebブラウザでは互換モードを使わなければイントラネットなどが閲覧できないケースがある。こうした場合、Windows 7に付属するInternet Explorer 9であれば、支障なく閲覧できることも少なくない。

 もちろんこれは一例で、Internet Explorer 8以前でないと閲覧できない場合はWindows 7でもお手上げだが、考え方についてはお分かりいただけるだろう。最近ではWebブラウザでのインタフェースを持つサービスも増えているので、独自のソフトウェアにとどまらず、こうしたサービスについても、事前にきちんと検証しておく必要がある。

タッチ操作に最適化され、サポート期限も長いWindows 8

 もちろん、Windows 8を選ぶメリットはある。具体的には、今後ますます増えてくるであろうWindowsタブレットや、2in1デバイス(ノートとタブレットを1台でまかなえる変形型PC)の製品に設計が最適化されていることだ。

 またモバイルノートPCなどでタッチ操作を利用したい場合、タッチを前提に設計されたWindows 8のほうが操作性ははるかに高い。業務用ソフトウェアの動作に支障がなく、営業スタッフが顧客にタブレットスタイルでスマートに画面を見せて商品説明できたり、ペン入力でメモや手書きでのサインを直ちにデータ化できるなど、こうした付加価値に魅力を見いだせるのであれば、検討する価値は高い。

tm_1311_surface_pro2_14.jpgtm_1312_xp2_05.jpg現行のWindowsタブレットには、Windows 8/8.1が採用されている(写真=左/日本マイクロソフト「Surface Pro 2」)。最近リリースが相次いでいる8型サイズのタブレットも、搭載OSはWindows 8.1であり、操作はタッチで行う。iPadとの差異化として、筆圧対応のデジタイザスタイラスを用意する製品も多い。ノートPCに似た外観ながら、ディスプレイ部が分離したり、回転したりしてタブレットとして利用できるコンバーチブル型の製品は「2in1」デバイスと呼ばれる(写真=右/日本ヒューレット・パッカード「HP Elitebook Revolve 810」)。こちらもやはりWindows 8/8.1での操作を前提に開発されている

 また、サポート期限についても、後発であるWindows 8/8.1のほうが有利だ。Windows 7のサポート終了は2020年1月。およそ6年後だ。これに対してWindows 8は2023年1月ということで9年後となり、約3年の開きがある。少しでも“次の選択”を先に延ばすのであれば、Windows 8世代のOSに軍配が上がる。

 ちなみに、PCの買い替えに際しては、Windows 7 Professionalへのダウングレード権を持つWindows 8.1 Proプリインストールモデルを導入しておき、当面はWindows 7を利用し、将来的にWindows 8に無料で変更するという方法もある。

 これであれば、ひとまずWindows 7へと移行しておき、かつサポートは9年後まで受けられるという「おいしいとこ取り」が可能になる。各社のプリインストールモデルの多くにはこのダウングレード権を持つモデルが用意されているので、要チェックだ。次回以降、具体的なモデルを紹介する際に詳しく説明しよう。

(第3回に続く)

←・SOHO/中小企業に効く「ビジネスPC」の選び方(1):今さら聞けない「Windows XP」サポート終了問題

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検証 ルネサス再建〜2013年下半期〜

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 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、ご存じのように2010年4月に、日本を代表する半導体メーカーNECエレクトロニクスとルネサス テクノロジが合併して誕生した国内最大規模の半導体専業メーカーだ。

 しかし、赤字を抱えた2社の合併のため、発足当初から“経営再建”の宿命を背負い続けてきた。2011年3月の東日本大震災での主力工場の被災なども重なり、合併当初に思い描いた経営再建は思うように進まず、2012年末には、政府が約9割出資する官民ファンドの産業革新機構から出資を得ることが決定し、2013年を迎えた。

 2013年上半期は、大株主となることが決定した産業革新機構の下、新たな経営再建がスタートし、3千数百人規模の追加リストラ、携帯電話機/モバイル向けSoC(System on Chip)事業からの撤退を決定。さらに、6月には前オムロン会長の作田久男氏が会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。外部から新たなトップを招き入れ、これまでとは違ったルネサスとして、再建が加速されるのではという期待感が高まりつつ、2013年を折り返した。

 その作田氏が、初めてルネサスのトップとしてメディアの前に登場したのが、2013年8月2日の2014年3月期第1四半期決算説明会だった。

8月、鶴岡工場の閉鎖方針を公表

tt131218R001.jpg2014年3月期第1四半期決算説明会での作田氏

 第1四半期決算説明会で注目されたのは、その業績内容よりも、「作田ルネサス」としての新たな再建策がどのようなものかという点だった。特に、再建に向けて大きな課題として残ってきたルネサス山形セミコンダクタ(山形県鶴岡市)の鶴岡工場の処遇に注目が集まった。鶴岡工場は、デジタル家電、ゲーム機など市況悪化が続く民生機器向けシステムLSIの生産拠点で、ルネサスの赤字体質の要因の1つとして挙げられてきた工場だ。

 その鶴岡工場に関して、ルネサスは2012年8月時点で「1年以内に売却」との方針を示していたが、売却先探しは難航。「鶴岡工場閉鎖」との報道も飛び交う中で、第1四半期決算説明会を迎えた。

 第1四半期決算説明会では、事前の報道通り、鶴岡工場は「2〜3年以内に集約予定」とし、それまでの「売却」方針から、売却先が見つからない場合は「閉鎖」という一歩踏み込んだ方針へと切り替えた。さらに、鶴岡工場だけでなく、2012年8月時点では、存続方針を示していたルネサス関西セミコンダクタの滋賀工場(滋賀県大津市)8インチ(200mm)ウエハーラインと、甲府工場(山梨県甲斐市)の8インチウエハーラインに関しても、「1〜3年以内に集約」と閉鎖方針へと切り替え、資産圧縮を一層進めることを明確化した。

 追加の工場再編策を発表した作田氏は、「まだ人・モノが多い。大げさに言うと、(ルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスの)トータルの売上高が1兆8000億円だったころと比べて、今の売上高レベルで考えれば3分の1くらいまでに減らさなければならない」と追加のリストラ、工場再編が必要な点を示唆。これまでの再建策が実り、2010年4月の合併当初と比べて、損益分岐点を約3700億円下げ、固定費も約2100億円圧縮している点も明かしたが、「それなりの努力はしているが、それ以上に売上高が落ち込んでいるので利益を出せない。対応力のあるしぶとい企業になるには、固定費を圧縮し続けなければならない」と言い切り、作田氏のリーダーシップの下、再建が加速することへの期待が膨らんだ。

 そして、迎えた2013年9月は、ルネサスにとって1つの節目を迎える月だった。

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「α7」第1回――初めてのフルサイズは、ミラーレスでした

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 ソニーが11月にフルサイズのミラーレス機「α7」を販売開始してから、早いもので1カ月が過ぎた。カメラ好きの間ではオールドレンズの母艦として使われることも多いようだが、フルサイズ機としては低価格なため、初めてのフルサイズ機としての購入も十分に検討に値するだろう。では、「初めてのフルサイズ機」として本製品を眺めると、本製品はどのような姿を見せるのか。APS-CのNEXシリーズを都合3台使ってきたものの、フルサイズ機は初めてという立場からの印象をお伝えしたい。

photo「α7」ズームレンズキット(ILCE-7K)

 手にしたのは、ベーシックな販売形態となる「α7 ズームレンズキット」(ILCE-7K)。既報の通り、αにはスタンダードモデルの「α7」と高画素&ローパスレス仕様の「α7R」が用意されており、現在の所、販売形態としてはα7をレンズキットで購入するほか、α7をボディのみ、α7Rをボディのみ、と3通りから選択できる。

 純正/社外品のマウントアダプター経由でフルサイズ対応の純正レンズ(FEレンズ)以外を装着するならばボディのみという購入の選択も成り立つが、コスト高にもなりかねない。手持ちのレンズを使うことが第一ではなく、フルサイズに興味があるんだけど……というのが購入動機ならば、選択はズームレンズキットのみというのが現状だろう。

 レンズキットに付属する「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」(SEL2870)はフルサイズ対応ズームレンズといっても軽く(スペックシート上は295グラム)、レンズをボディに装着して、バッテリーやメモリカードを装着しても800グラム以内に収まる。α7本体グリップの握り心地もよく、ホールド感は上々に思える。右手一本で軽々と扱える感覚はNEX-5シリーズに通じるものがある。

photo手を高く上げてハイアングル撮影。本体の軽さを実感するシチュエーション F8 1/250秒 ISO100  70ミリ レンズ:FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS
photo薄暗い室内で。フルサイズだけにピント合わせには気を使うが、MFにもワンタッチで切り替えられるので状況に応じて活用したい F5.6 1/60秒 ISO1000 露出補正−0.3 50ミリ レンズ:FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS
photo昔から営業するそば屋のショーケース。ガラス越しの撮影だが、それがまた柔らかな感じにつながっている F5.6 1/640秒 ISO100 露出補正−0.7 48ミリ レンズ:FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS

 前後2つの電子ダイヤル、露出補正ダイヤル、撮影モードダイヤルのいずれもカチカチとした適切なクリック感があって、“操作している”感は高い。それに標準ズームレンズを装着しても800グラムを下回る重量は“フルサイズ”という響きに反して、軽快なハンドリングを提供してくれる。EVFの反応は良好で、「フルサイズだから」「ミラーレスだから」といったエクスキューズを感じることなく、撮ることに没頭できる。

photo夜の繁華街をバックに、赤いひさしへピントを合わせてみた。暗くなっている右手の柱部分もディテールがきちんと残っているあたりはさすがフルサイズといえよう F5.6 1/80秒 ISO3200 70ミリ レンズ:FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS

 とはいえども、没頭を阻害する要素もいくつか散見される。EVFメインで撮影をしているとEVFの暗さが気になってくるほか(実際のところ、そう暗いわけではないのだが、撮影しているうちにいつの間にかOVFと比較して“暗いなあ”と感じてしまうことがある)、個人的にはどうしてもなじめないのがシャッターボタンだ。

photo

 α7のシャッターボタンはストロークに遊びが多く、シャッターを切ったときにも押し込んだ感覚に乏しいので、シャッターを切るというより、ボタンを押すという感覚しか得られない。もちろんこれには個体差もあると思われるが、複数の販売店でα7を触っても、カッチリしたシャッターの個体には巡り会わなかったので、これはそういう設定で出荷されているのだろう。使っていくうちに慣れるとは思うが、NEX-5RなどいままでのNEXシリーズではそういった感想を得たことはなかったので記しておきたいと思う。

 今回はすべて「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」を使って撮影したが、確かにフルサイズセンサーらしい階調性の豊かさや暗所ノイズの少なさは体感できたものの、やはりこのレンズではボディの能力をすべて引き出しているようには感じられなかった。次回は現在入手できるもうひとつのフルサイズ対応FEレンズである「Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」との組み合わせを試してみたいと思う。

photo昭和モダンなマンションの階段を1階から真上に向かって。バリアングル液晶が便利に感じるカット F4 1/60秒 ISO800 露出補正−0.7 レンズ:FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS
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AWSの安全性を高める「サービスとしてのセキュリティ」、利用急増の理由は?

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 新興企業を中心に、「Security as a Service」(サービスとしてのセキュリティ)が浸透しはじめている。ITベンダーの米JumpCloudは、全てがひとまとめになった監視サービスをSecurity as a Serviceとして提案するベンダーだ。同社のエージェントベースのソフトウェアは、侵入検知と防止、情報喪失防止、「Active Directory」と連携させたID・アクセス管理に対応する。また、相互のTransport Layer Security(TLS)プロトコルを通じてデータをJumpCloudに送り、JumpCloudで問題や攻撃を検知して、システムが不正アクセスされた場合は警告を出すことも可能だ。

 いち早くJumpCloudを採用したマーケティングソフトウェアの新興企業、米TapInfluenceのマックス・パリス業務担当ディレクターは、運用とインフラを1人で担っている。従って、セキュリティをサービスプロバイダーにアウトソーシングするのは同氏にとって理にかなう。

 計40台ほどのサーバで構成されるTapInfluenceのインフラは全て「Amazon Web Services」(AWS)で運用されている。

第5回 ブランド戦略(後編):東南アジアの「未来」を描き、「体験」を提供せよ――企業ブランド/商品ブランドの要件

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編集部より

 本連載では、東南アジアに進出する企業がマーケティングコミュニケーション戦略を立案する際に求められるノウハウを電通 マーケティングデザインセンターの小山雅史氏の取材を通じてお届けしている。前編に引き続き、後編も「ブランド戦略」に関するノウハウをご紹介する。企業と商品、異なる2つのレイヤーで検討すべき課題と解決のためのヒントとは——。


電通 小山雅史氏より

 「第4回 ブランド戦略(前編):日本は新興国に追われる「おじさんブランド」——全ての日本企業が直面する課題「カントリーブランド」とは」では、日本企業が東南アジアにおけるブランド戦略を立案するための大原則として、ブランドには3つのレイヤー、「コーポレートブランド」「プロダクトブランド」、そして企業が紐づく国のブランド「カントリーブランド」が存在し、ブランド戦略はそれぞれのレイヤーに存在する課題を解決する戦略でなければならないとお伝えしました。

 後編では、「コーポレートブランド」「プロダクトブランド」における課題、それらに対する解決の道筋について解説します。

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ニコン党待望、メカニカル操作を極めたフルサイズ一眼――ニコン「Df」

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フィルム時代のMF一眼レフを連想させるデザイン

 オリンパス「OM-D」シリーズや富士フイルム「X」シリーズなどフィルムカメラを思わせるレトロデザインのデジカメが人気を集めている。古くからのカメラユーザーの郷愁を刺激するだけでなく、若いユーザーにとっては懐古趣味が一周して逆に新しく感じる側面があるのだろう。そんなノスタルジックデザインの決定版ともいえるカメラが、今年11月に発売になったニコン「Df」である。

photoニコン「Df」。ボディ単体のほか、単焦点レンズとセットになった「50mm f/1.8G Special Edition」も発売中

 実機を手にして誰もがまず驚くのは、その斬新なボディデザインだ。外装は高品位なマグネシウム合金製で、ペンタプリズム部やグリップ部にはシボ革風の表面処理を適用。そして、いわゆる軍艦部と呼ばれるトップカバー部分には、数多くのダイヤルやボタンが所狭しと配置されている。フィルム時代のマニュアルフォーカス一眼レフを思わせるメカっぽい雰囲気がむんむんと漂っている。直線を多用したペンタプリズム部のデザインからは「FM」や「FE」シリーズなど同社のフィルムカメラを連想する人も多いだろう。

 個人的なことを言えば、最初に買った一眼レフが「FE」で、その後「FM2」や「F3」を使っていたこともある。世代的には、まさにど真ん中のDfターゲットユーザーである。ペンタ部に彫り込まれた旧タイプ風のNikonのロゴや、Aiニッコール風デザインを採用したキットレンズを眺めていると、若かりし頃のさまざまな記憶がよみがえり、もういてもたってもいられなくなる。

photo天面には、ボタンやダイヤルをぎっしりと配置する
photophoto背面の基本レイアウトは、これまでの同社の一眼レフを踏襲する(写真=左)、マウント部には、非Ai方式のレンズ用の露出計連動レバーを装備(写真=右)
photo現在の斜体のロゴではなく、旧タイプのロゴを彫り込んでいる
photophotoファインダーの接眼部には丸い窓を採用(写真=左)、記録メディアはSDカードで、電源はリチウムイオン充電池。撮影可能コマ数は約1400コマ(写真=右)
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