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Microsoft製品だけでiPhone、iPadを管理――その計り知れない影響とは?

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 米Microsoftが新たなエンタープライズ向けモバイル管理基盤をリリースしたことについて、アナリストは同社が成長市場に参入するための準備を始めたと見ている。だが、Microsoftの知名度が見込み客に影響を与えるかどうかは未知数である。


「電話」と「メール」の細やかな使い勝手が向上、一方で気になることも……

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 iPhone 5sに搭載されたiOS 7は、iOS 6から見てさまざまなアップデートが図られている。スマホの主要な機能である「電話」や「メール」については大きな刷新はないものの、日々使う機能としては非常に使い勝手が良くなっている。以前からiPhoneを使っているユーザーはもちろん、最近iPhoneを使い始めた人も知っておきたい便利機能について触れていこう。

photophoto「iPhone 5s」

“着信拒否”できる安心感は絶大!

 電話機能に関して、筆者が最も大きな進化だと感じるのは「着信拒否設定」ができるようになったことだ。iOS 6までは着信拒否をするにはキャリアの有料オプションサービスを申し込む必要があった。また、従来のケータイには搭載されていた機能だったこともあり、iPhoneで使えないのを不満に感じていた人も多いのではないだろうか。

 着信履歴から設定するには、拒否したい着信欄の右端に表示された「i」をタップ。あとは画面下部に表示された「この発信者を着信拒否」をタップするだけだ。着信拒否を設定すると、電話はもちろん、メッセージ、FaceTimeでの着信を拒否できる。

photophoto着信履歴から設定するには、「電話」→「履歴」→拒否したい連絡先欄の「i」をタップ。最後に「この発信者を着信拒否」を選択する(写真=左)。「電話」→「連絡先」→拒否する相手を選択→「編集」→「この発信者を着信拒否」という方法もある。ちなみに「連絡先」アプリからは設定できないようだ(写真=右)

 特定の電話番号からの迷惑電話に悩んでいた筆者としては、この機能が追加は非常にありがたかった。苦手なあの人からの着信を拒否してしまう、なんて思い切ったことも簡単にできるようになったiPhone、恐るべし!

 インタフェースに関しても、「キーパッド」などはよりシンプルになった印象を受ける。基本的な使い方はiOS 6のときと変わらず、キーパッドで電話番号を入力したら「発信」をタップする。ちなみに、電話番号を入力して「+“連絡先”に追加」をタップすれば、素早く電話番号を連絡先に登録可能。知っておくと便利な機能の1つだ。

photophotoこれまでも同様の機能があったが、筆者はiOS 7になって気が付いた。以前よりも表示が分かりやすくなったように感じる(写真=左)。通話中のメニュー画面。こちらもアイコンが円形で表示される(写真=右)

 「後で通知」「メッセージ」機能は、iOS 6から引き継がれている。いずれも着信中に電話に出られないときに使うためのもので、前者は任意のタイミングで着信があったことを再通知する機能で、後者はショートメッセージで発信者にすばやくメールを送れる機能だ。

photophotophoto着信中の画面は以前よりも見やすくなった印象(写真=左)。「後で通知」をタップすると、指定したときに改めて通知が届く(写真=中)。「メッセージ」をタップすると、着信があった電話番号に当ててショートメッセージを送信できる(写真=右)

 といいながら、筆者は実生活でこの機能を使ったことは一度もない……。結局、GmailやLINEで「どうかしましたか?」などの連絡をしてしまうことが多い。せっかくなのでどんどん活用するべきだと、原稿を書きながら改めて思った次第だ。

 なお、着信音を素早く止めるには、本体の電源キーかボリュームキーを一度押す方法もある。また、電源キーを2度押しすれば、留守番電話に転送できる。

iPhone同士ならタダで話せる「FaceTime」

 iOS 7になり、「FaceTime」が独立したアプリとして登場したのも注目すべきポイントだろう。さらに、ビデオ通話だけでなく、「FaceTimeオーディオ」という音声のみでの通話機能が追加されたのは大きい。

photophoto「FaceTime」アプリの履歴画面。電話アプリとインタフェースはほぼ同じだ(写真=左)。履歴から発信するには「FaceTimeオーディオ」をタップ(写真=右)
photophotoFaceTimeオーディオの通話画面も、電話アプリと同様。通話中に「FaceTime」をタップすると、ビデオ通話に切り替えられる(写真=左)。「連絡先」から発信する場合は、「FaceTime」欄に表示された受話器のアイコンをタップする(写真=右)

 iPhone同士であれば、キャリアに関係なくインターネット回線を介した通話が行えるので、実質タダになるのが魅力のこの機能。もちろん、双方がパケット定額制への加入かWi-Fiでの利用が必須条件となるが、多くのユーザーがこの点は問題ないだろう。相手がiOS 7のiPhoneやiPad、iPod touchを使っていることを知っているなら、どんどん活用してみよう。

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Lightroomでクリエイティブな写真編集――Adobeのエバンジェリストが教えるテクニック

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photo米アドビシステムズのJulieanne Kost(ジュリアン・コスト)氏

 米アドビシステムズでシニアエバンジェリストとして活動するJulieanne Kost(ジュリアン・コスト)氏が初来日を果たした。「Photoshopの伝道師」として知られるRussel Brown(ラッセル・ブラウン)氏とともに、「Create Now / PLUS ONE DAY」としてPhotoshopやLightroomをアピールするツアーを行っていたが、今回、コスト氏にLightroomのメリットと使いこなしについて話を聞く機会を得たので、お届けする。

LightroomとPhotoshopとElements、どれを使えばいい?

 コスト氏は写真家としても活動しており(http://jkost.com/)、その立場からLightroomの特徴として「使いやすさ」をあげる。それは自身がヘビーユーザーであるPhotoshopと比べても「使いやすさが格段に上がっているから」という。Lightroomでは、「ライブラリ」「現像」「ブック」といったモジュールを順に進めることで、「ワークフローに従って作業できるのが醍醐味」。写真をさまざまに編集・補正を行うために「Photoshopを使うのが好き」だが、合成のような高度な作業を行わないのであれば「仕事の90%はLightroomで完結する」と話す。

photo「Lightroom 5」

 アドビシステムズとしては写真管理・編集ソフトとしてPhotoshop(及び Bridge)、Lightroom、Photoshop Elementsという3製品があるが、コスト氏は、PhotoshopとLightroomは「写真家の好み」で使い分ければいいという。Lightroomは管理・整理機能が強力で、補正機能ではRAW画像をさらに「エンハンスできる」からだ。ちなみにPhotoshop Elementsは「初心者向け」だが、ガイドに従って編集作業ができる点で「Bridgeよりは使いやすいと思う」。

 「RAWで撮影してトーンカーブや、(カラー補正の)HSLなどの機能を使いたい場合はLightroomを、フィルターやスマートオブジェクトなどの機能を使いたい場合はPhotoshopを使う。デジタル一眼レフカメラならLightroom、コンパクトデジカメならElementsを使う、といった具合に、レベルとニーズに合わせて使いこなすといい」。

 コスト氏はそう話しつつ、「どのくらいのレベルで写真をコントロールしたいかによってどれを選ぶかは違ってくるが、アマチュアでも真剣に写真に取り組んでいると、Elementsでは物足りなくなってくる」と指摘する。

高機能化しても心理的ハードルが低いLightroom

 コスト氏は、Lightroomに過去10年分 約2万5000枚の画像を保管しているという。撮影した写真は頻繁に「捨てている」そうだが、過去10年間の写真が1つのカタログに収められているため、過去にさかのぼって写真を管理できる点をLightroomのメリットとして挙げる。

 Lightroomは、「カタログ」と呼ばれるデータベースを利用して写真を管理するが、このカタログはパソコンのストレージよる制限を除けば「ほぼ無限に写真を保管できる」ため、あえてカタログを切り替える必要はない。以前のバージョンでは1つのカタログに保管できる写真の枚数に制限があったが、現在はその制限もないため、切り替えずに使うことがお勧めだとコスト氏は話す。

 Lightroomの現像モジュールにはトーンカーブやHSLパネルを使った補正機能を始めとしてさまざまな機能があるが、「どれも重要な機能で、こうした機能があるからこそ、自由に創作でき、創作意欲をかき立てられる」と話し、単に写真の補正だけでなく、円形フィルターや修正ブラシ、ぼかし、トーン修正といった機能を活用することを推奨し、「最終的に仕上がってくる写真がより良いものになる」と強調する。

 たくさんの機能があるので、「お気に入りの機能」もたくさんあるが、例えばレンズ補正に含まれる、水平/垂直を自動的に補正する「Upright」機能は、「非常に時間を節約できる」ためお気に入りだという。また、「出張や旅が多いので、出先でも調整できるので気に入っている」。と最新バージョンの5より実装された「スマートプレビュー」機能もお気に入りだという。

photo「Upright」の例 演台に対して斜めから撮影した写真でも、ワンクリックで正面から撮影したように水平垂直を補正してくれる

 最近のデジタル一眼レフカメラには高度な動画撮影機能が搭載されており、Lightroomも動画の管理機能を備えているが、動画の処理に関して、写真ほどの柔軟性はない。コストt氏は、「動画を使えるツールはPhotoshopやPremierがあり、Lightroomは写真家が使いやすいという方向で強化して欲しいと考えている」とコメント。この辺りはコスト氏が担当している部分ではないため、実際はLightroom開発チーム次第だが、「伝道師」としては動画機能の強化はそれほど求めていないようだ。

 コスト氏が求める機能とは何かと尋ねると「キーワードをもっと簡単に使いたい」という返答が帰ってきた。Lightroomでは管理のために、写真にキーワードを付けてあとから検索しやすくできるが、「キーワードは気が重い」とKost氏は話し、さらに使いやすい工夫を求めている。

 また、現像モジュールでさらに「クリエイティブのオプション」が欲しいという。PhotoshopのCamera RAWの機能をもっとLightroomで使いたいということで、さらなる写真機能の強化がされることを望んでいるそうだ。

 Lightroomは、そうした機能が豊富にあったとしても、必要な機能だけ使えるようにモジュールで分かれていて「使いたいものだけ使えばいい」という使い方ができるため、Photoshopのように高機能化しても、使う際の心理的なハードルは低い、とコスト氏はその使いやすさを強調する。

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2つの新型iPad、どちらを買うべきか迷ったら考えること

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og_ipad_mini_retina_001.jpgiPad mini Retinaディスプレイモデル

 今週、米国は感謝祭。これは日本でいうところの盆暮れ正月並に都心から人々の姿が消え、観光地が静まり返り、大勢が親戚縁者や故郷の古い友人と団らんのひと時を過ごす休暇だ。そしてこの感謝祭が終わった直後の金曜日がブラックフライデー。クリスマス商戦の幕が切って落とされる日で、米国で最も多くのショッピングが行なわれる時期だ。狙っていた商品が売り切れにならないように、この金曜日に列をなして買い物をする人も多い。

 唐突に製品発表をしているようにも見えるアップルも、実はすべての新製品をこのブラックフライデー前には発表し終え、その多くは販売や予約の開始を行なっている。2013年発表の製品もプロ用のMac Pro以外はすべて無事販売が始まっている。

 一番最後に発売された「iPad mini Retinaディスプレイモデル」については、あまりにも販売開始が唐突過ぎたためレビュー記事を書くタイミングを逃してしまったが、ここで改めて2013年のアップル製品の魅力を振り返ってみたい。

大きさが変われば使い方も異なる

 NTTドコモが扱うようになったことで、もはや誰にも止められない勢いを得た2つのiPhoneについては、すでにレビューを掲載している(どちらも期待を裏切らない“正統進化”——林信行の「iPhone 5c/5s」徹底レビュー)。

 それでは、その後に発表があった2つのiPadについてはどうだろう。そもそもiPhoneをすでに持っている人が、iPhoneの画面をさらに大きくしたiPadが必要なのだろうか?

 答えはもちろん、人によって違う。だが、もしiPhoneと2つの異なるサイズのiPadのすべてを持っていたら、きっと生活も仕事も、さらに輪をかけて快適になることは間違いない。

 その理由が分からない人は、紙の帳面を例に考えてもらうと理解しやすいかもしれない。手のひらにスッポリ収まるメモ帳なら電車で立って移動しながら、パっとひらめいたアイデアを書くのに便利だ。だがそのメモを元に、さらに想像を広げてアイデアの枝葉を広げるとなると、もう少し大きな、最低でもB5サイズくらいの帳面が欲しくなる。

 それでは手のひらサイズとB5サイズがあれば、すべての用件を満たせるだろうか。このアイデア帳を会議室に持ち込んで、ほかの人たちに見せようとすると、1度にのぞき込めるのはせいぜい3〜4人だろう。もっと大勢で見るためにはもっと大きなサイズの紙や、模造紙、ホワイトボードを使いたくなる。

 このように「紙」という同じ材質の文具でも、サイズが異なればそれだけで使うシーンも、用途も、使い勝手もそれぞれ異なってくる。アップルがiPhoneに加えて、2つの異なるiPadも出しているのは、まさにそんな理由からだ。

og_ipad_mini_retina_002.jpgog_ipad_mini_retina_003.jpg7.9型のiPad mini RetinaディスプレイモデルとiPad Airのサイズ比較

 ここで想像してみてほしい。さきほどの紙のノートが、手のひらサイズは罫線入りだけ、B5サイズは方眼紙だけ、もう少し大きいサイズはすべて無地だけといった具合に区別がついていたら、使う人は喜ぶだろうか。

 ある人は方眼紙が使いたくて、本当は手のひらサイズが欲しいけれど、意に反してあえてB5サイズを選ぶことになるかもしれない。あるいはある人は、もっと大きなノートが欲しかったが罫線入りが使いたくて、小さいメモ帳でガマンすることになるかもしれない。サイズによって仕様やパフォーマンスを変えると、かえってそこに迷いが生じ、モノを選びづらくなる。

 それにも関わらず、2012年のアップルは、おそらくどこかでiPad miniがiPadという製品と競合することに若干の恐れを感じ、あえて2製品でCPUなどの仕様を変えていた(実際には、それ以上に大きかったのは、Retinaディスプレイの有無かもれない)。

 しかし、2013年はiPad miniの7.9型サイズでも、ほとんど価格や重さを変えずにRetinaディスプレイが搭載できるようになったことを受け、そしてさらにおそらくはこの1年で多くの人々が7.9型には7.9型のよさがある一方で、9.7型にも9.7型ならではのよさがあると十分伝わっただろうという感触も後押しして、CPUや解像度といったスペックを同じ内容でそろえてきた。

og_ipad_mini_retina_004.jpgiPad mini Retinaディスプレイモデルは、RetinaディスプレイとA7チップの搭載でiPad Airとの違いはもはやサイズだけになった(左がiPad mini Retinaディスプレイモデル、右が旧iPad mini)

 もはや、ユーザーが悩む必要があるのはサイズだけなのだ。

そのどちらもが「理想」

 それでは、あなたにはどのサイズのiPadがピッタリか。もしあなたが財政的に余裕があるのであれば両方を買って使い比べてみるのが1番いい。両方持っていれば、その日の気分によって、今日は小さいバッグで出かけたいからiPad mini、今日は7〜8人の会議で資料を見せたいからiPad Airというように使い分けができる。

 ここで素晴らしいのは、最近ではiCloudやGoogle Docs、Dropboxといったクラウド系サービスの利用が広がっていることだ。例えば、iCloudに対応したアップルのビジネスアプリ群、iWork(文書作成アプリのPages、表計算/表作成アプリのNumbers、プレゼンテーションスライド作成アプリのKeynote)で作業をしていれば、iPad Airで作成した書類が、数秒後にはiPhoneでも、iPad miniでも、Macでも、そしてWebブラウザベースのiWork for iCloudによってWindowsからも利用可能になる。

 iWorkのアプリ群は、できあがる書類の見栄えに関してはほかのビジネス系アプリを圧倒する美しさで定評があり、できあがった書類はWord、Excel、PowerPointの形式で書き出すこともできる。

 実際、iOS機器やMacでのiWorkの連携は、1度でも使えば病みつきになる。この文書もMac上のPagesで書いているが、そのおかげで、原稿を中座してディナーへ向かう途中、書きかけの原稿をiPhoneで見直したり、iPadを使って道すがら思いついたアイデアを忘れないうちに書き足しておくこともできる。

 iCloudは自分専用に作られた“おひとりさまクラウドサービス”なので、1度設定してしまえばIDやパスワード入力の手間にわずらわされることもない。たまに複数の機器で同時に作業してしまうと「どちらの機器でつくったバージョンを残すか?」と聞かれることがあるが、それ以外は使用機器の違いをまったく意識せず自然に行なえる。この輪に入るとあまりにも快適過ぎて、もはやほかのアプリは使えなくなってしまうほどだ。

 それどころか、このiWorkの快適さの罠にハマると、まさにiPhoneと2種類のサイズのiPadすべてをそろえて、その日のシチュエーションによって使う機器を取り替えたくなってしまう。そう、実はすでにiPhoneを持っている人は、iPadを併用することで、iOSの魅力や楽しさを、さらに増幅させることができるのだ。

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「少しも秘密になっていない」──Adobeの情報流出問題、まだ連絡受けてないユーザーも

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REUTERS

 米Adobe Systemsは今年9月にサイバー攻撃を受け、数千万人のユーザーに関する情報を盗まれたが、同社によれば、この問題に関するユーザーへの連絡に予想以上に時間がかかっているという。攻撃から10週間が経過した今もなお、この件について連絡を受けていないユーザーがいるということだ。

 インターネット上には現在、Adobeから流出した大量のデータの一部が出回っており、まだAdobeからの通知を受け取っていないユーザーはオンライン詐欺やID盗難にあうリスクが高まっていることになる。

 「これは大失態だ。誰でもこのリストにアクセスしてダウンロードできる。少しも秘密になっていない」。アンチウイルスソフトウェアメーカーである英Sophosの上級セキュリティアドバイザー、チェスター・ウィスニウスキー氏はそう指摘する。

 Adobeの広報担当者、ヘザー・エデル氏によれば、Adobeは9月17日にこの攻撃に気付き、顧客への連絡はこの情報流出について10月3日に発表してから「すぐに開始した」という。

 「メールでの通知に、予想よりも時間がかかっている」と同氏は語る。

 「攻撃の影響を受けたメールアドレスを検証しなければならず、一度に送信する通知の数も制限する必要がある。メールプロバイダーにブロックされたり、スパムとしてタグ付けされたりしないようにだ」と同氏は説明を続ける。

 同氏によれば、この攻撃でクレジットカード情報やデビットカード情報を盗まれた約290万人の顧客に対しては、既にメールと書面で連絡済みという。

 「今は、当社サイトを利用する際に必要となるAdobe IDアカウントを持つ、その他数千万人のユーザーに連絡を行っているところだ」とエデル氏は語る。同氏は、実際に影響を受けたアカウントの件数については、現在も調査が継続中であることを理由に、具体的な数字の公表を断っている。

 インターネットでは少なくともここ3週間、約1億5200万件のAdobe IDアカウントに関するデータを含むファイルが出回っている。その内容を確認した複数のセキュリティ企業によると、このファイルにはメールアドレスの他、暗号化されたパスワード、パスワードを忘れたときのための「パスワードのヒント」が含まれているという。

 だがエデル氏によれば、攻撃されたデータベースは廃棄予定のバックアップシステムであったため、「1億5200万人のユーザーのアカウント情報が流出した」とするのは正確ではないという。

 同氏によれば、漏えいしたデータには、現在は使われていないメールアドレスを含むものが約2500万件と、無効なパスワードを含むものが1800万件含まれるという。「アカウントはかなりの割合で偽物だった。無料のソフトウェアやその他各種の特典を入手するために、最初から使い捨てのつもりで設定されたものだ」と同氏は語る。

 それでも、Sophosなどのセキュリティ企業の専門家は、パスワードのヒントを分析し、その他各種のテクニックを駆使して、ファイルに含まれる不特定数のパスワードの割り出しに成功している。

 またFacebookなど一部の企業は、Adobeの顧客情報を含むファイルが広く出回ったことを受けて、このファイルに含れているのと同じアカウントとパスワードの組み合わせを自社のサービスでも使用しているユーザーの特定を進めている。

 Facebookはその上で、該当するユーザーに対し、本人確認とパスワードの変更を求めている。

 Facebookの広報担当者、ジェイ・ナンカロウ氏は次のように語る。「Facebookユーザーのアカウントが危険にさらされかねない状況には、積極的に対処する。たとえそれが、外部のサービスで発生した脅威であってもだ。そうした危険な状況を察知した場合は、該当するユーザーにメッセージを送り、アカウントのセキュリティ確保に努めている」

 Sophosのウィスニウスキー氏は、情報漏えいに関するAdobeからの通知を装いつつ、実際には悪意のあるリンクを含んでいる詐欺メールに注意するようユーザーに呼び掛け、次のように語っている。

 「悪い輩は、狙った相手がAdobeと関わりがあることを既に承知している。その分、だますのも簡単になる」

copyright (c) 2013 Thomson Reuters. All rights reserved.

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この記事はThomson Reutersとの契約の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。

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「まねできる技術は守っても無駄、教えてしまえ」日本ロボット学会小平会長

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SCF2013

 2013年11月7日に開催されたシステムコントロールフェア(SCF)2013のラウンドテーブルでは、京都工芸繊維大学院教授の濱田泰以氏、大日本印刷理事の黒田孝二氏、日本ロボット学会会長の小平紀生氏、IDEC 常務執行役員の藤田俊弘氏、日本電気計測器工業会 エネルギー・低炭素政策委員会 委員長の石隈徹氏が、日本のモノづくりの強みと弱みについて語り合った。

 今回の記事では、特に製造業のモノづくりに直結するテーマについて話した、日本ロボット学会会長の小平紀夫氏の講演内容を前編で、IDEC 常務執行役員の藤田俊弘氏の講演内容を後編でお伝えする。



ラウンドテーブルラウンドテーブルの様子

「失われた20年」はロボットによる生産性向上の時期

 日本ロボット学会会長である小平氏は、産業用ロボットから見た製造業の発展の歴史を振り返った。小平氏は、日本の戦後60年の製造業の歴史を振り返ると、1950〜1970年頃の「高度成長期」、1970〜1990年頃の「安定成長期」、その後の「失われた20年」の3つの時期に分かれると指摘。「実はGDPや製造業生産額は高度成長期よりも安定成長期に大きく伸びており、失われた20年では横ばいから微減傾向。ほぼ経済動向と同期する形になっている」(小平氏)。

 しかし、製造業の生産性という観点で見た場合、状況は変わってくる。「製造業付加価値(製造業のGDP貢献額)と製造業の従業員数の推移を見ると、従業員数は1990年ごろから大きく減少する中、製造業付加価値は横ばい傾向である。つまり生産性向上により、製造業付加価値を維持しているという状況が見えてくる。これが生産自動化の進化と産業用ロボットの普及による効果だ」と小平氏は指摘する。

製造業の歴史生産性過去60年のGDPと製造業の総生産額の推移(左)、製造業の生産性推移(右)(クリックで拡大)

変種変量生産に直面する生産自動化とロボット化

 60年の歴史の中で「生産」に求められるものも変わってきている。高度成長期は、モノがない時代で同じものを大量に作る「標準品大量生産」が求められた。また安定成長期には、選ぶ豊かさのようなものが求められるようになり、多くのものを少しずつ作る「多品種少量生産」が必要になる。失われた20年では、需要変動が激しくなったことから、多くのものをさまざまなロットで生産する「多品種変量生産」が求められた。そしてリーマンショックを経て現在は、さまざまなモノをさまざまなロットで作る「変種変量生産」が必要になってきているという。

 小平氏は「産業用ロボットに求められることも変化している。標準品大量生産ではとにかく機械化が求められたが、多品種少量生産では自動化による柔軟性が求められ、多品種変量生産では、情報に即応する情報化が必要になる。そして今変種変量生産に向かい『知能化』が求められてきている」と話す。

 「知能化」は、複数種類の作業を複数ロボットで分業することを意味しており、多機能ロボットによるセル生産を目指すもの。画像センサーや力センサーなどの技術が進化しロボットに多く搭載されるようになったことで利用できる分野が広がってきているという。

ロボット生産自動化の進化と産業用ロボット出荷台数推移(クリックで拡大)

 一方で産業用ロボット産業に関連する企業にとってはそれぞれに課題を抱えている。「エンドユーザーとなる製造業にとっては国際競争力強化のためのモノづくり革新が必要。一方でロボットメーカーにとっては、製造現場のグローバル化が進む中、市場のグローバル化と国際競争激化に対する対応が求められている。また、間をつなぐシステムインテグレーターにとっては、従来は“経験知”でのシステム構築が多かったが、国際化が進む中でそれらに対応した取り組みが必要になる」(小平氏)

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転換点となったG-SHOCK、カシオはスマートウオッチを作るのか――増田裕一さん

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 今年で30周年を迎えたG-SHOCKの歴史を探る本インタビューシリーズ、最終回は、カシオ計算機時計事業部長の増田裕一氏。増田さんはG-SHOCKだけでなく、OCEANUSやPRO TREK、Baby-Gなど、同社の腕時計事業全般を見る立場にある。

 1983年、当時まだ20代半ばだった増田さんが商品開発担当としてかかわったのが、「DW-5000C-1A」。年齢も近く親しかったエンジニア、伊部菊雄さんが開発した初代G-SHOCKである。

ay_g01.pngG-SHOCKの出荷数量は1997年がピークだった。2012年には海外出荷数が過去最高になり、1997年に近づいている。青が国内、赤が海外、緑が全体(クリックすると拡大して詳細を表示)

 G-SHOCKの歴史は「壊れないデジタルウオッチ」として始まった。当初1980年代は日本よりも米国で売れる時期が長く続き、発売から15年近く経った1997年ごろに日本でのブームを迎えることになる。新商品の発売日には行列ができるのが当たり前、というブームを過ぎると、売上台数は急落した。2001年ごろには同社の時計事業は売上高がピーク時の3分の1、赤字スレスレまで落ち込むが、その後G-SHOCKはいくつかのターニングポイントを経て復活していく。現在はアナログモデルのラインアップを増やし、出荷数量も急速に回復中。2012年にはピーク時に迫るレベルまで伸びている。

 →「30年経った今だから話せる、初代G-SHOCK開発秘話——エンジニア・伊部菊雄さん」(参照記事)

 初代G-SHOCKから30年。これまでカシオでずっと時計ビジネスに携わってきた増田さんは、この30年をどう振り返り、これからどんな時計を作ろうと思っているのだろうか?(聞き手:吉岡綾乃)

「G-SHOCKブーム」が去ったときに考えていたこと

ay_casio000.jpgカシオ計算機時計事業部長、増田裕一氏

——30周年を振り返って、今思っていることをうかがいたいのですが、いかがでしょうか?

増田: われわれカシオの時計事業で、いろんな面で貴重な経験を生み出してくれたのがG-SHOCKです。今から30年前、「腕時計というのは壊れやすい精密機械だから、大事に扱わないといけない」とみんなが思っていた時代に、落としても壊れない、どこに持って行っても大丈夫なタフなウオッチを作ろうという発想からG-SHOCKは始まりました。そして、耐衝撃性にこだわったがゆえにユニークなデザインができました。そのデザインが、今度はファッショナブルなものとして若い人たちの目に新鮮に映り、今に至っています。振り返ればG-SHOCKは、時計業界において、それまでの常識が覆されるような、そういうデザインを作り上げられたんじゃないかと思ってます。

 もうひとつは、G-SHOCKに絡めたマーケティングですね。今は各国で「SHOCK THE WORLD」というイベントをやっていますが(参照記事)、G-SHOCKは、時計以外も含め、カシオのいろんなプロモーションや宣伝のやり方を変えました。

 後は……カシオは時計事業には遅れて参入したわけなんですよ。スイスのブランドが既に成功しつつある中に後から参入した。その時に同じようなことをやっていてはダメだということで、アナログではなくデジタルから入っていきました。われわれが今、時計業界の中である程度のポジションを占めているのも、G-SHOCKでのいろんな経験がその後の戦略に役立ったからですよね。もともとカシオが時計事業をスタートした時はデジタルが中心でしたが、今は売上としてはアナログモデルの方が多いんです(参照記事)。最近、アナログを広げてきたのも、G-SHOCKブームが去った後、ガタガタと売上が急落した時のインパクトが、われわれの事業の根本的戦略を見直していかないといけないことを教えてくれたから。そういう意味では事業戦略にも役立ちましたね。

——ブームが過ぎて売上が急落した時に、事業の根本的な見直しをして盛り返したということですが、普通だったらブームが終わったらそこでG-SHOCKの歴史も終わったと思うんですよ。でも、もう一回違う路線で盛り返したのがすごいな、と。その時に増田さんは、どういう方針を指示していたのですか?

増田: よく言っていたのは「原点に戻ろう」というメッセージですね。G-SHOCKはファッショナブルなものとして、ある意味広がりすぎたために、みんな同じようなものに見えてしまう。そういうものを一度全部忘れて、改めて原点に戻ろうと考えたのです。G-SHOCKの原点は何かというと、「耐衝撃」なんですね。“性能”という基本的な部分に戻った時にどんなデザインが出てくるのか。そしてただ同じところに戻るんじゃなく、電波時計やソーラー(太陽光発電)といったその時のもっとも進んだ技術を絡めて、もう一回基本の部分でキチッとしたものを作っていこうということは言いましたね。

原点にかえったG-SHOCK「The G」

ay_casio01.jpg2003年発売「The G」(GW-300J-1JF)

——増田さんから見て、G-SHOCKが原点に返った機種とはどれだったのでしょう?

増田: (2003年発売の)「The G」と呼んでいたモデルですかね。あまり飾り気のないモデルで、もちろん耐衝撃性能、防水という基本的なところはしっかりしています。電波ソーラーを載せたG-SHOCKなので、電池交換を気にしなくていいし、(電波で自動的に時刻合わせをするので)時刻も一切ケアしなくていい。これが基本の部分ですね。

 防水性もその当時で一番最高の20気圧、200メートル相当の防水性です。そしてもちろん耐衝撃性。電波ソーラーにG-SHOCKの耐衝撃性を組み合わせたThe Gは、どこへ持っていっても壊れないし、時間に対してもバッテリーも一切気にしなくていい。それが原点という考え方であり、打ち出していきました。

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これぞ“八八艦タブ”必須技術──「Intel Dynamic Platform Thermal Framework」

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オンラインアップデートで制御変数の変更も可能

kn_dptf_01.jpgファンで放熱できないタブレットで高い処理能力と発熱抑制を両立するために導入した「Intel Dynamic Platform Thermal Framework」

 インテルは、11月27日に開発コード名“Bay Trail”世代のAtomに関するアーキテクチャ概要と、搭載するタブレットの展開を紹介する説明会を行った。この中で、インテル モバイル&コミュニケーションズ事業部 カスタマー・テクノロジー・ソリューションプラットフォーム・ハードウェア・エンジニアの平井友和氏が、「Intel Dynamic Platform Thermal Framework」(Intle DPTF)の概要を説明した。

 Intel DPTFは、Bay Trail世代のAtomに導入した電力管理技術で、システム各部の温度をセンサーで検知し、事前に用意した変数に従って消費電力やシステム設定をリアルタイムで変更する。Bay Trail世代のAtomを搭載する軽量薄型のタブレットでは、ファンを使った放熱ができないため、高クロックでかつマルチコアのプロセッサを搭載するとボディ内部が高温になってしまう。Intel DPTFは、高い処理能力を発揮するプロセッサを搭載したボディ内部でも温度上昇を抑えるためにインテルが用意した技術だ。

 Intel DPTFでは、ボディ内部の各部に用意した複数の温度センサーと消費電力センサーの情報をリアルタイムで収集し、その状況に合わせて各部コントローラの挙動や動作クロックを変更することで、処理性能を確保しつつ、発生する熱を抑えることを目的としている。温度や消費電力に合わせたシステムの制御は、Intel DPTFに用意したパラメータに従って行う。この仕組みで「急速充電を優先するとチャージコントローラが高温になって、その影響でプロセッサの動作クロックが下がってしまうが、充電の優先順位を下げるようにパラメータを設定して充電時間が長くなる代わりに、プロセッサの処理能力を優先することも可能になる」(平井氏)という。

 さらに、このパラメータの設定を、製品ごとに異なるハードウェア構成やボディ形状と材質などを考慮して、最適な制御をタブレットメーカーが独自に行えるだけでなく、「最近のWindows 8.1導入の8インチディスプレイ搭載タブレットでは、ある特定のフラッシュゲームに注目しているようですが」(平井氏)といったような、ユーザーの利用動向の変化に合わせて、パラメータをオンラインアップデートなどで随時変更できるのもIntel DPTFの特徴として平井氏は説明している。

kn_dptf_03.jpgkn_dptf_02.jpgタブレット内部では、高クロックで動作するプロセッサやメモリなど、従来より高い熱が発生する条件がそろっているが、ファンを使えないため放熱が難しくなっている(写真=左)。左側のお風呂でタブレットにおける熱処理の考えを図説している。注いでいる水はプロセッサなどから発生する熱の量で、下から流れていくのが放熱できる量。お風呂にたまった水がタブレット内部の熱の量だ。右のグラフは、Intel DPTFで充電コントローラの温度を50度以下にするように設定した場合のDTSと充電コントローラ、タッチパネル各部の温度推移(写真=右)

 平井氏は、手に持って使うタブレットも、ドッキングステーションに接続したときは手で持つことがないので、この状態では設定を切り替えて熱くなっても処理能力を優先したり、ボディの素材の違いで、タッチ操作で触れることになるディスプレイでガラスパネルを使っている場合は40度を超えるとユーザーが熱く感じたり、金属素材の削りだしを用いたボディでは熱の拡散が早いため、低温でも熱く感じたりするので、その場所だけ発熱しないように抑制するといったケースを設定最適化の理由として挙げている。「ほかのタブレット搭載プロセッサと比べて、より細かい制御が可能だ」(平井氏)

 なお、Intel DPTFで設定するパラメータの種類や設定方法、ガイドラインなどは非公開で、インテルとNDAを結んだメーカーにのみ提供する。また、パラメータの設定について、ハードウェア構成やボディレイアウトなどの情報をインテルと共有することで、インテルから技術的な助言や最適化に必要な開発ツールの提供、さらには、ディスカッションといったサポートもNDA締結メーカーは受けることができるという。

 平井氏はユーザーに向けて、Intel DPTF関連のモジュールやプロセスがデバイスマネージャーやタスクマネージャーなどに表示されるが、それを無効にしないようにアドバイスしている。ただし、ユーザー側でIntel PDTFの設定にアクセスすることはできない。また、Intel DPTFはAndroid OSでも利用することが可能で、この場合、モジュール名称やプロセス名称はWindows OSの場合と異なると平井氏は説明している。

kn_dptf_04.jpgIntel DPTFが有効になっていると、デバイスマネージャーやタスクマネージャーで見慣れないモジュールやタスクを表示するが、タブレットの性能と温度管理のためには無効にしないのが無難

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「Bay Trail」で2014年に4000万台のIA搭載タブレットを――インテルのタブレット戦略

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og_intel_001.jpgインテル モバイル&コミュニケーションズ事業部カスタマー・テクノロジー・ソリューションプラットフォーム・ハードウェア・エンジニアの平井友和氏が「Bay Trail」こと最新Atomの概要を説明

 インテルは11月27日、“Bay Trail”の開発コード名で知られるAtom Z3000シリーズの概要や同社のタブレット戦略を説明する技術説明会を開催した。

 Bay Trailは、22ナノメートル世代の「Silvermont」マイクロアーキテクチャを採用するタブレット向けSoC(System on a chip)で、命令を効率よく並べ替えて実行するアウトオブオーダー方式の実行エンジンや、モジュール単位(2つのコアと1Mバイトの2次キャッシュで構成する)の柔軟な設計、20を超える新しい拡張命令、3次元トライゲート、20段階以上にもおよぶ細かい電力制御などを特徴とする。これにより、32ナノメートル世代のAtom Z2760(開発コード名:Clover Trail)と比較して3倍の性能を持ち、同一性能においては5分の1の消費電力と、パフォーマンスと電力効率を飛躍的に高めているのがポイントだ(関連記事:大解説! Intelの“モバイル”SoC戦略をまとめてみた)。

 ラインアップは、デュアルコア(2次キャッシュは1Mバイト)のZ36xx系とクアッドコア(2次キャッシュは2Mバイト)のZ37xx系が用意され、より低い消費電力で動作するDDR3L-RSをサポートした型番末尾に「D」のつくモデルもそれぞれに用意される。内蔵グラフィックスは、Ivy Bridge世代と同じIntel HD Graphicsに強化され、DirectX 11やOpenGL 3.2 に対応、主要なハードウェアデコーダーを備え、メインストリーム向けCPUと同じメディアエクスペリエンスを実現できるという。

og_intel_002.jpgog_intel_003.jpg22ナノメートル世代のSilvermontは、プロセスルールの進化とマイクロアーキテクチャの刷新を同時に行っている。続くAirmontでも14ナノメートルに微細化され、モバイル向けSoCの進化はさらに加速する方向にある(写真=左)。Bay Trail-TことAtom Z3000シリーズの概要。デュアルコアのZ36xx系もある(写真=右)

og_intel_004.jpgog_intel_005.jpgSilvermontの内部アーキテクチャ(写真=左)とBay Trailのブロック・ダイアグラム(写真=右)

 Bay Trailの技術説明はおさらい的な内容になるが、簡単にまとめると、インテル製SoCを搭載した最新タブレットなら、高性能とロングバッテリーライフを両立しつつ、周辺機器やアプリケーションとの高い互換性を実現できるので、仕事でも遊びでもストレスフリーな体験を提供できますよ、というわけだ。

 なお、新技術ではないものの(すでにClover Trailで導入されている技術)、システムの温度を複数のセンサーでモニターし、各部コントローラの挙動や動作クロックを動的に変更する「Intel Dynamic Platform Thermal Framework」(Intle DPTF)についての技術も明らかにされた。Intle DPTFは、ファンを搭載できない8型クラスのタブレット端末で、細かい電力管理により発熱を抑制しつつ、システムの処理性能を保つ機能だ。こちらの詳細は別記事で取り上げているので参照して欲しい(これぞ“八八艦タブ”必須技術──「Intel Dynamic Platform Thermal Framework」)。

og_intel_006.jpgインテルクラウドコンピューティング事業本部のマイケル・キャンベル氏

 インテルクラウドコンピューティング事業本部のマイケル・キャンベル氏は、このBay Trailを武器にタブレット市場へ注力していくとアピールする。同氏は「タブレット市場は急速に伸びており、2014年はグローバル全体で3億台の出荷が見込まれている。このうち日本は700万台。タブレットにはいろいろなサイズ、デザイン、OSがあり、選択肢がある」とタブレット市場の動向を説明。消費者が価格や画面サイズ、モビリティ(軽量か、LTEを内蔵するかなど)を選定基準にしていると指摘したうえで、メーカー各社から発売されているBay Trail世代のタブレットを紹介し、「(インテル搭載タブレットで)日本の消費者と企業ユーザーにとってこれまで以上に選択肢を用意できる」と、タブレット市場シェアの獲得に自信を見せた。

 キャンベル氏によれば、2014年のタブレット出荷予想である3億台のうち、IA搭載タブレットで4000万台の出荷を見込んでいるという。これまでタブレット市場では存在感のなかったインテルがBay Trailで一気に13%のグローバルシェアを目指すことになる。日本市場での具体的な出荷台数には触れなかったが、同氏は「グローバルと同等、2ケタ以上を目指したい」と語った。

og_intel_007.jpgog_intel_008.jpg22ナノメートル世代の新型Atom(Bay Trail-T)をタブレットセグメントに投入。既存のClover TrailやCore搭載タブレットなども含め、IA搭載タブレットの数は増加しつつある

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見せびらかしたくなる“スマート電源タップ”、Cerevo「OTTO」

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 Cerevo(セレボ)は11月27日、スマートフォンやタブレットで制御できる電源タップ「OTTO」を正式発表した。今年の「International CES」に参考展示され、話題になった“スマート電源タップ”。機能とともに、そのユニークなデザインでも注目を集めた。

ts_otto01.jpgts_otto05.jpg「OTTO」。一口で言えば、カバー付きの8口電源タップ。独特のデザインに加え、無線LANを介してスマートフォンやタブレットから操作できるスマート電源タップだ

 Cerevoは、2007年に設立された家電ベンチャー。社員数わずか11名のファブレスメーカーながら、「家電(Consumer Electronics)を革新(REVOlution)する」というアグレッシブな社名を掲げ、家電にネット接続による新しい利便性を加えてオリジナリティーの高い製品を送り出している。また、「マニアックで奇抜な発想」(同社の岩佐琢磨社長)を大切にしているのも特長で、そのため市場としてはニッチだが、世界中で販売することで数を稼ぐというビジネスモデル。実際、同社製品は世界21カ国で販売され、販売実績の45%を海外が占めているという。「ここにしかないものを作る。ここにしかないのだから、世界中から注文が来る」(同氏)。

ts_otto06.jpgts_otto03.jpgCerevoのコーポレートスローガン(左)と販売実績(右)

 そしてもう1つ、デザイン性を重視している点も同社製品の重要な要素だという。「電源タップはどこの家庭にもあるが、他人に見せるものではない。むしろお客さんが来たら隠したくなるだろう。しかし、逆に『いいでしょ』と自慢できる電源タップがあってもいい」(岩佐氏)。

 岩佐氏によると、最初の発想はサブウーファーの形をした電源タップだったという。リビングルームにあっても不自然ではなく(ただしリビングシアターに限る)、多くのACアダプターを収める容量も確保できる。しかし、このデザインは社内で「ダサい」などと酷評され、改めてデザインを起こすことにした。そのとき声をかけたのが、工業デザイナーの柳澤郷司氏だ。

ts_otto02.jpgts_otto04.jpgデザイナーの柳澤郷司氏(左側)とCerevoの岩佐琢磨社長(右側)。岩佐社長が最初に思いついたのは、サブウーファーの形をした電源タップ。社内では酷評されたというが、AVファン向けなら十分アリでは?

 OTTOは、一見して何か分からない外観をしている。白い石のようにも見えるし、柔らかくなった大福か、溶けかけたスライムのようにも見えなくもない。見る人によって受ける印象は異なるはずだ。しかし、そのデザインコンセプトを聞くと、多くの人が納得するかもしれない。

 柳澤氏に対する依頼は、まず「リビングルームのフロアに置いてもインテリアとして成立するもの。一見して電源タップとは分からないもの」だったという。フロア(床)に置くことを考えたのは、現在のスマートフォンやタブレットの使い方を考慮したためだ。

 「充電中もスマートフォンを手放さない人は多い。電源アダプターはテレビ台の下などに隠されるケースも多いが、充電しながら使うため、ソファーやテーブル付近まで引き回されてしまうのが実情だ」(岩佐氏)。

 こうした要望に対して柳澤氏が考えたのは、「日本庭園の石」と、製品名の元にもなった「オットマン」という2つのコンセプトだった。ソファーに付属するオットマンのように、存在しても違和感を感じさせない。玉砂利が敷き詰められた枯山水に置かれた石のような風情でインテリアに溶け込みつつ、「家電の足置き」という役割を果たす。さらに「イタリア語で“8”はオットー。8口のタップにちょうどいい」(柳澤氏)。

 もちろん、8口という数は電源タップとしてはかなり多めだ。「もっと小さく、という声もあったが、あえてゆずらなかった。今、市場にあるタップは3〜4口が中心だが、足りている人は見たことがない」(岩佐氏)。

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3DキャラのPVが簡単に作れる「キャラミん」で、3次元データ普及なるか?

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 気がついたら、もう11月の最終週です。あと1カ月で2013年も終わってしまいます……。本日は、3D-GANの事務所にて3Dプリンタ「AFINIA」でとある仕事用のデータを出力しながら、この原稿を書いています。とにかく、3Dプリンタに追われてきた1年という実感が(まだ2013年終わってないけど)あります。

 さて、そんな3Dプリンタですが、「製造業か、一般の人か」を問わず、「3次元データを作れない」「3次元データが周囲にない」といったことが問題だということが認識され始めています。

 特に、一般の人については、ほとんどが「3次元データって何?」という状態なのは、この1年で、それほど変わってはいないでしょう。つまるところ、3Dプリンタを使うとか使わないとか言う以前の話として、ほとんどの人たちは「3次元データというものになじみがない」ということになります。もっと多くの人たちが、3次元データに日常から多く接するようになれば、3次元データがウンヌンという問題はなくなるのでしょう。

 それでは、どうやって普段からモノづくりなどに関係ない人たちに、3次元データに親しんでもらえばよいでしょうか。その手法はもちろん1つではないでしょう。引き続き、3D-GAN(3次元データを活用する会)がやってきたような、3Dモデリングと3Dプリンタを使った講座などを継続的に行っていくのも1つだと思います。でも、別な取り組みもあってよい、もっと言えば、別に「リアルな物体」にこだわる必要もないかもしれません。3次元データのよいところは、ワンソース・マルチユースなんですから。

 ということで、今回紹介するのは、「キャラミん」です。

yk_3d29_01.jpgキャラミんOMP起動時の画面

 

キャラミんって何?

 で、「その、『キャラミん』って何なの?」というところだと思いますが、3D-GANの代表理事である相馬達也さんから、いろいろとお話しをお聞きしたので、その内容を紹介していきます。キャラミんを開発した会社の1社が、相馬さんが代表を務めるツクルスです。

 さて、「キャラミん」とは、手短に言うと「誰にでも簡単に、3D(3次元)キャラクターのデータを使ったオリジナルのミュージックビデオが楽しめる音楽プレーヤー」ということです。

 ミュージックプレーヤーが「キャラミんOMP(きゃらみん おんぷ)」です。さらに、これをカスタマイズすることのできる「キャラミんStudio(きゃらみん すたじお)」もあります。

 つまりキャラミんは、音楽を通じて、3次元データにごく自然に親しむことができる環境、というわけです。

 

 このキャラミんというソフトを構成する技術は主に2つです。1つは、音楽解析技術、もう1つは3次元CG技術です。音楽解析技術で主に扱っているのがビート(拍)です。この2つの技術が合わさることで、音楽に合わせて3Dキャラクターを踊らせるということができるわけです。

 このような異なる2つの技術を使って開発されたキャラミんは、VPNなどで広く知られるソフトイーサとツクルスの2社からなる運営委員会で開発が進められたのです。3次元データが音楽と組み合わさることで、面白いものが開発できたというわけですね。

キャラミんの使い方

 ミュージックプレイヤーのキャラミんOMPの使い方ですが、すごく簡単です。

 まず、自分の好きな音源のMP3ファイルをドラッグアンドドロップします。

yk_3d29_02.jpg音楽ファイルの一覧画面

 後は自動的に、ドロップされた音楽の解析が始まります。前述の通り、主にビート、リズムといったものを解析するわけですね。この解析自体は4秒程度で終わっていまいます。

yk_3d29_03.jpgMP3ファイルのドラッグ&ドロップで解析が始まります

 解析が終了すると、これまた自動的に踊り出します。

yk_3d29_04.jpg踊り出します

 キャラミんOMPの操作は、これだけです。ユーザーの作業としては、MP3ファイルのドラッグ&ドロップ以外はほとんどやることがないのです。とっても簡単ですね。

 さまざまな曲で自分のプレイリストを作れば、いろいろな曲で楽しめます。また、変えることができるのは曲だけではなくて、キャラクターやそのキャラクターが踊るステージも変更することができます。振り付けをやり直したり、カメラで撮影をしたりという楽しみ方もできます。

 3次元データに触れる第一歩は、「まずは簡単に使ってみる」ということですから、大いにありですね。

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オンラインでつながる「友達の輪」――ITが変えた消費者の購買行動

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 オンライン専業からマルチチャネル、そしてオムニチャネルへと進化した小売業は、今や実店舗の時代をはるかにしのぐ売り上げを実現し、オンライン販売の比率が高くない本通りに大型店を構えるような“ハイストリートブランド”を探すことさえ困難なほどだ。

 こうした状況はチャンスでもあり、脅威でもある。今日の小売業者は、顧客の購買行動に適切に対応するための技術に、大規模な投資を行わなければならない。顧客ロイヤルティーが希薄になりつつある今日、少なくとも競合他社と同等のサービスレベルを維持する必要があるからだ。たとえ小売業者が優れた製品をベストプライスで提供しても、顧客の購買行動に接点を持たなければ、売り込むチャンスはない。

 最近開催されたCW500 Club(英国IT業界の会員制クラブ)のイベント「Retail IT:The high street vs the internet and the lessons for other sectors(リテールIT:ハイストリート vs インターネット、他業種に向けた教訓」では、さまざまな分野から集った3人のITリーダーが、小売業ITに関するそれぞれの知識と経験を披露した。

iOS/Androidアプリ開発者を応援するMicrosoftの本心は

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 統合開発環境「Microsoft Visual Studio」とプログラム言語「C#」の開発者は、モバイルOS「Windows Phone」搭載デバイス向けのモバイルアプリケーションと同時に、「iOS」や「Android」向けのモバイルアプリケーションも開発できるようになった。

 米Microsoftは、自社以外のプラットフォーム対応のモバイルアプリケーション開発をサポートするツールを提供するために米Xamarinと提携した。Microsoftの狙いは、Visual StudioとC#の開発者にXamarin製のツールを提供し、さまざまなプラットフォーム対応のモバイルアプリケーション開発を支援することで、モバイル市場で勢力範囲を拡大することにある。

スマホ普及で激変するICT市場、ウェアラブル端末やECサービスが“成長株”

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 今後5年でICT(情報通信技術)市場はどう変化するか——。野村総合研究所(NRI)は11月27日、2018年度までの国内を中心とするICT市場の展望を発表した。同研究所はデバイス市場、ネットワーク市場、プラットフォーム市場(物品やサービスの販売に関わる)、コンテンツ配信市場の4分野においてトレンドを予測しているが、その中核となる要因はスマートデバイス(主にスマートフォンやタブレット)の普及だ。

 2013年度はスマホの個人普及率が初めてフィーチャーフォン(従来型の携帯電話:ガラケー)を上回る見通しで、2018年度までにスマホの普及率は80%近くまで伸びるとしている。

photo2013年度はスマホの個人普及率が初めてフィーチャーフォンを上回る見通しだという
photo野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部上級コンサルタントの石綿昌平氏

 まずデバイス市場では、低価格帯のデジタルカメラや車載端末といった機器の売り上げが減少するという。特にデジタルカメラは高画質な写真や動画を撮影できるスマホに押されて、世界的に売り上げが落ち込んでおり、2018年度には2011年度の半分以下まで販売台数が落ち込む見込みだ。

 その一方で、スマートデバイスと連動するウェアラブル端末の市場が拡大するとしている。「ランニングを支援する腕時計やヘルスケア製品が登場してきたが、機器が小さく単価も安いことから、大企業よりもベンチャー企業の方が取り組みやすい。ニッチな製品も含め、今後はベンチャー企業がウェアラブル機器をけん引することになる」(同社ICT・メディア産業コンサルティング部の石綿昌平上級コンサルタント)

photophoto(左)高機能なスマホに押されて、デジタルカメラの販売台数が世界的に減少しているという。(右)一方でスマートデバイスと連携するウェアラブル端末が今後爆発的に伸びると予想

 プラットフォーム市場ではEC(eコマース)のサイト数が増え、市場規模が拡大するという。阿和村聡上級コンサルタントは、この理由として、スマートデバイスで時間や場所を選ばずにECができるようになったこと、そして出店にかかるコストが低下しており、今後出店者が増える見込みであることを挙げた。決済についてもスマートデバイスでクレジットカードや電子マネーを使うシーンが増えるという。

 「ECの方が実店舗より価格が安い場合、実店舗で商品を試用し、ECで購入する(ショールーミング)という人が市場の20%を占めるなど増えてきている。これからはO2O(Online to Offline)とともにリアルからネットへの人の流れも意識する必要がある」(阿和村氏)

photophoto(左)コンシューマー向けECの市場規模は今後5年で約2倍に拡大するという。(右)支払い方法にも変化が。電子マネーやクレジットカードの利用が進み、スマートデバイスが決済に使用されるようになる

 コンテンツ市場における影響はどうか。こちらもスマートデバイスの普及に後押しされるように、電子書籍(新聞・雑誌を含む)の市場が今後5年で約3倍に増加するという。寺田知太上級コンサルタントは「われわれの予測よりもはるかに早いスピードでスマホが普及している。スマホ向けコンテンツ以外は、今後衰退する方向に向かうだろう。既存のコンテンツとスマホ向けコンテンツ両方で戦略を立てなければならない」と話す。

 最近では、ドコモが運営する「dビデオ」やAmazon.co.jpの「Amazonインスタント・ビデオ」に代表される映像配信市場も伸びを見せているが、こちらは放送市場の約5%に相当する1600億円程度で頭打ちになると同社は見ている。「スマホの普及率によって上昇するものの、普及後は成長しにくい」(寺田氏)ためだという。

photophoto(左)スマートデバイスの普及に後押しされ、電子書籍市場は今後大きく伸びるという。(右)動画配信市場も伸びているが、スマートデバイスの普及につれて成長が止まるという予測だ

 寺田氏は「ICT市場は成熟しており、限られたパイの奪い合いになっている。成長領域を見極め、既存の枠にとらわれないような新しい戦略が生き残るために必要。伝統的な手法と最先端の手法を使い分けて、問題の解決に当たるべきだ。例えば課題に対して、論理的思考だけではなく、システマティックに直感を取り入れるデザイン思考などを取り入れないことには、新しい解は見つからないだろう」と主張した。

photo4つの市場における変化のまとめ

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小学館の電子雑誌戦略――Adobe DPS採用のワケ

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CanCam

 『CanCam』『AneCan』『Oggi』『Domani』『Precious』——言わずと知れた小学館発行の有名女性ファッション誌の数々。書店やコンビニエンスストアでこれらを目にする機会も多いだろう。

 そんな小学館のファッション誌9誌がこの9月から電子雑誌でも配信が始まった。雑誌は制作ワークフローやビジネスモデルが一般書籍とは少し異なる。一般書籍の電子化は順調に進みつつあるが、それと比べると雑誌の電子化はまだ少なかったが、2013年に入ると、5月に集英社、そして9月の小学館と、大手出版社が電子雑誌の配信を相次いで開始している。

 このうち、小学館の電子雑誌を支えているのが、アドビ システムズが提供する電子出版ソリューション「Adobe Digital Publishing Suite」(DPS)。ここでは、小学館 デジタル事業局 コンテンツ営業室課長の小沢清人さんに、なぜ今大手出版社が相次いで電子雑誌の配信に踏み切っているのか、そして、DPSの採用に踏み切ったのはなぜなのか、配信に至るまでの考えを聞いた。

消費者のライフスタイルの変化に合わせて選択肢を

小沢清人さん小学館 デジタル事業局 コンテンツ営業室課長の小沢清人さん

—— 大手出版社である小学館が、書籍とは異なるジャンルである雑誌の電子配信にアドビのDPS(Digital Publishing Suite)を採用するまでの経緯・背景をお聞きできればと思います。最初に、小学館の電子に対する基本的な考えを教えてください。

小沢 小学館としては、電子や紙の区別をなくしたいと思っていて、消費者のライフスタイルの変化に合わせて選択肢をもっと広く——紙で欲しい方には紙で、電子で欲しい方には電子で——提供していくべきだろうと考えています。紙しか出さないのは、ある種それを強要してしまっていることになるので。

 今回の電子雑誌配信は、「紙からデジタルへの移行ではない」ということが社内での共通認識でした。供給側の都合だけではなく、欲しい人が欲しいように入手できるようにすることが大事なんだという話をしました。

—— 雑誌にも電子という選択肢を用意する考えは前からあったということですね。実際にDPSの検討に入ったのはいつごろだったのでしょう。

小沢 DPSについて言えば、2年以上前に『MEN’SPrecious』のアプリをDPSで制作したころからですね。2013年秋に向けて電子雑誌を配信しようという話が社内で進み始めたのは2012年末で、2013年3月に社内ワーキンググループが立ち上がりました。

—— ファッション誌から始めた意図は?

小沢 小学館の女性誌は年齢層、ジャンルなどカバーしている範囲が広く、今後の電子雑誌ビジネスのモデルケースがいくつか想定できました。また、複数の雑誌を同時に行うことで、コスト面だけでなく、社内の意思統一など多くの面で効率化をはかることができました。

 5月に集英社が電子配信を始めたことも大きな要因です。女性誌の電子市場を一気に活性化させるチャンスと感じましたので。

 また、権利処理でいうと、女性誌も3年ほど前にその動きがありました。当時はまだ女性ユーザーが多くないこともあり、大きな展開には至りませんでしたが、権利処理は進んでいました。社内ではずいぶん前から(女性誌の電子雑誌を)「いずれやる」という空気がありました。

DPSの魅力は「解析」「実績」「サポート」

—— 電子雑誌のソリューションというと、アドビのDPSを筆頭に、例えばKoboのAquafadasやPixelMagsもあります。実際の検討ではどういった点を重視したのでしょうか。

小沢 我々の検討項目は多岐に渡りましたが、総合的に我々の理想の実現に最も近かったのがDPSでした。さまざまな要件にアドビはかなりアグレッシブに対応してくれました。

 次がコストです。導入のイニシャルコストで考えると、かつては『DIME』1誌しか電子雑誌にしていなかったので高く感じたのですが、今回は9誌を同時にスタートすることで、1誌当たりのコストは他のソリューションと大差ないところまで下がりました。

 そして「読者のコンテンツへの接触」を分析できることが必須だと考えていました。DPSはデフォルトの解析機能でもそれなりに行えますし、より詳細な解析をしようと思えばAdobe Analyticsもあり、拡張性の高さも十分です。

—— 先ほど集英社の取り組みが少し出ましたが、集英社はAquafadasを採用しました。一方小学館はDPS。それぞれ大手が別のソリューションを採用しているのが面白いですね。

小沢 Aquafadasも検討しました。先ほどお話しした理由でいうと、1つは解析の部分で我々はアドビの方が優れていると判断したということと、採用実績、特に北米市場ではDPSが最大手だったことも判断材料でした。AppleもAmazonも米国企業ですので、そこで多くの採用実績があることの意味は大きく、それはサポートにも現れます。技術的な部分はもちろんですが、海外企業との手続き作業でも手厚いサポートがありました。実績を基にしたアドバイスは、安心感につながりました。サポートは導入時には見えないところではありますが、アドビのサポートは本当に素晴らしかったです。

—— DPSはコンテンツにインタラクティブ性を持たせられる部分が強調されることが多いですが、むしろ、大手であればあるほど既存のワークフローとの親和性も重要視されますよね。

小沢 そうですね。現状、小学館の電子配信のワークフローは、紙の校了後に始まります。雑誌制作に関わる方々は大変多く、ワークフローや環境を変えるのは現実的ではないですし、避けたいと考えていました。

 現時点では、大部分の人のワークフローは今までと変わらず、実際の現場ではDPSを使っていることを意識せずに作業してもらっていると思います。いずれ、ワークフローに変化があった場合も現場ではアドビの製品は多く使われているので、混乱は少ないと想定しています。

雑誌の特異性と電子雑誌でそれをどう生かすか

tnfigdps3.jpg

—— DPSの可能性について、ここまでの話は、コンテンツそのものではなく、ワークフローなどに着目したものでした。例えばインタラクティブなコンテンツ制作についてはどう考えていますか?

小沢 提供されるコンテンツがPDFベースなのかリッチなものなのかよりも、まずは我々の提供するコンテンツをどこでも手に入れられる状態にすることが優先的なことでした。ここは実書店とのギャップがある部分で、紙版は、「日本全国、どこでもお買い求めいただけます」と言えるほどに流通は整備されていますが、デジタルコンテンツの流通はまだ遠く及ばないと感じます。それを解消することが、市場の拡大につながると考えています。

 また、消費者に新たな選択肢を用意しても、選択していただくためには、新しい選択肢を体験していただく必要があると考え、今回はLite版という編集ページのダイジェスト(各誌100ページ以上)を紙版にバンドルしました。本誌に掲載されているコードを入力することで、Lite版を無料で楽しむことができるというものです。これは、電子雑誌の体験促進だけでなく、紙版の利便性を高めることを目的としています。このクーポンコードを付与する仕組みもDPSは備えていたので助かりました。

 雑誌は商品としての性質がコミックや書籍とは大きく異なります。コミックや書籍はロングテール商品ですが、雑誌はバックナンバーの売上げは全体の数%で、ロングテール商品ではありません。“1巻無料”で続きを買っていただくことも期待できません。各書店とのコミュニケーション、プロモーションをもっと頻繁にやっていくことが必要な商品なのだと感じています。

 電子化による可能性は、販売チャネルの拡大といったことだけではありません。閲覧ページの分析はいままでは大変コストが掛かりました。また、アプリケーションの形でのコンテンツ提供は、読者とのコミュニケーションの場にもなり得ますし、雑誌のWebサイトとの融合が進むのではないでしょうか。雑誌の可能性の広がりを感じます。

想像以上の気づき——データ解析の可能性

tnfigdpsx.jpgAdobe DPSの解析画面。こうしたデータ分析が雑誌制作に生かされる時代となってきた

—— 実際に本格的な電子雑誌配信を開始し、どのような気づきがありましたか。

小沢 今回、ファッション誌9誌の電子配信を開始したことで、図らずも幅広い年齢層の女性のデジタルデバイスの使用法が見えてきました。世代ごとの情報摂取の方法が見えてきたことは、雑誌そのもののつくりや方向性にも役に立つと思います。

 解析についていえば、各ページの閲覧傾向がPV数としてリアルタイムで分かるのは大きいですね。紙雑誌では読者からのハガキなどがありますが、時間が掛かりますし、印象に残ったことが正確かということもあります。1回しか読んでいなくてもすごく面白いページもあれば、何回も読んでいるページもあるでしょうし、DPSでとれる数字は、それをどう判断するかは別として、我々が今までとることができていなかった資料です。

—— 可能な範囲でそうした傾向をお聞きできますか。

小沢 iOSでの傾向を簡単にお話しすると、『CanCam』や『AneCan』などはiPhoneで読む方が多いですね。実は、iPhoneよりiPadで読む方が多い雑誌は1誌もありませんでした。

 ほとんどの雑誌で8割前後が、iPhoneで雑誌を見つけているようで、雑誌を読む段になって、iPhone、iPadとデバイスの使い分けが始まります。年齢層によって、iPadの所有率が違うことが原因かもしれませんが、僕らが思うほど、大きい画面で見たいと思っていないのかもしれません。いずれにせよ、我々の想像以上に、読書方法のデジタル化は進んでいると感じました。

 誌面のページ数とPV(ページビュー)の関係を見ると、基本的にはiPhoneでも1冊丸ごと以上(PV>ページ数)読まれています。例えば200ページの雑誌があったとして、iPhoneだと50〜100ページくらいしか読んでもらえないと思っていたのですが、230ページくらい読まれています。どの雑誌もその値はiPadの方が若干高いですが、そう大きくは違わない。ただ、PVがページ数を割る雑誌もあり、世代によって雑誌の楽しみ方が違うのかな、と考えたりできる興味深い数字が取れています。

—— DPSに対しての課題などはどうみていますか?

小沢 正直、不満が生じるほど、まだ我々が作りこみをしていないです。新機能のアップデートなどは頻繁にあるので、それをスペシャルイシューのような形で実験していくことなどを社内で議論しています。雑誌は、多い月で500ページを超えてきますので、その中の一部分だけ何か変えるのは負担が大きいですから。スペシャルイシューの方が、最初からそれに合わせた企画で動けますし、分量も少なくて済みます。今後はリアルイベントとの連動なども行っていきたいと話しています。

紙の拡売を一生懸命やればデジタルの数字が伸びる

—— 雑誌というパッケージそのものについてはどう見ていますか?

小沢 今、雑誌離れをしているのは30〜40代という印象です。何らかの理由で雑誌から少し離れてしまった方がたくさんいらっしゃって、そういう人が例えば電子だと、若干安く、邪魔にならず、買いやすいということで、もう一回雑誌を手に取っていただけるのではないかと。中でも今回、『Oggi』『Domani』はすごく動きました。雑誌コンテンツへの期待はまだあると感じました。

—— 紙と電子は食い合うという議論はまだまれに見ますよね。しかし小学館の実感でも紙と電子の食い合いはないと。

小沢 はい。今の市場は、紙とデジタルが食い合うほどの規模ではなく、紙版でも数十万部、日本の人口比でいえばすごく少ないと思います。デジタルが数百部、数千部売れても食い合うという規模ではないように感じます。

 紙が落ちて電子が伸びる、という状況は想像できません。紙の部数が伸びた上で電子も伸びるということであり、極端な話、紙の拡売を一生懸命やればデジタルの数字が伸びる、くらいに思っていたりします。我々のようなデジタル部門としては、雑誌をより多くの方に楽しんでいただけるような、デジタルの特典を開発するが必要だと考えています。紙なのか、電子なのかを選択するのはあくまで読者の皆さまですから。

—— 日本と海外、例えば米国市場と比べて、電子雑誌の潮流に違いは感じますか?

小沢 日本と米国は違う部分が多いと思います。米国は定期購読モデルですから、デジタルに移行するだけで出版社側のメリットは大きいですが、小学館でいえば、定期購読者の割合が1%未満の雑誌もあります。米国における大きなメリットは、我々にとってはあまりありません。

 海外のプラットフォーマーに、印刷費や配送料がかからないんだから儲かるはずだと言われたこともありますが、日本独自の電子雑誌ビジネスモデルを考えなければいけないと感じています。消費のデジタル化、グローバル化が進んでいく中で、出版だけ今までのままという訳にもいかないでしょう。ナポリタンのような「日本独自の洋食」ビジネスモデルを構築して行きたいと考えています。少なくとも米国のように電子雑誌配信をiOSに集中させることは日本では適切ではないと感じています。

—— 「スマートデバイス」と呼ばれるスマートフォンやタブレットが普及してきて、中でもスマートフォンは世界的にみても爆発的な普及を見せていて、これに加え米国だとiPadも多いわけですが、日本ではAndroidもカバーする必要性があると。

小沢 そうですね。今回のLite版ダウンロードでいうと、iOSとAndroidの割合は4:1だったので、思ったよりもAndroidユーザーの方にダウンロードいただいたなという印象です。特に女性はAndroidを使っている方も多いので、この辺りも日本ではポイントになりそうです。



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「iPad Air」は「iPad mini Retina」より高画質は本当か?――測色器で徹底チェック

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画面解像度はAirもminiも同等、しかし発色は……

tm_1311_ipadair_lcd_01.jpg「iPad Air」(写真=左)と「iPad mini Retinaディスプレイモデル」(写真=右)

 アップルは2013年の年末商戦に向けて、iPadファミリーを大幅に強化してきた。薄型軽量を徹底追求した9.7型モデル「iPad Air」と、液晶ディスプレイの高精細表示が可能になった「iPad mini Retinaディスプレイモデル」(以下、iPad mini Retina)、どちらを選べばいいか頭を悩ませている方も少なくないだろう。

 今回のモデルチェンジにより、iPad miniが待望の「Retinaディスプレイ」を採用したことで、表示解像度が初代iPad miniの1024×768ドットから2048×1536ドットに高まり、9.7型のiPad Airに追いついた。Webページや電子書籍の細かい文字、画素数が多い写真の表現などでその違いは一目瞭然だ。

 しかし、実際にiPad AirとiPad mini Retinaを手元で見比べると、どちらもドットを判別できないほどの高い画素密度を体感できる一方、発色がかなり違っているのが気になった。iPad Airに比べて、iPad mini Retinaは高彩度の色が薄く、色域(表示できる色の範囲)がやや狭く見えるのだ。

 それでは、実際にどれくらい発色が違うのか、iPad AirとiPad mini Retinaの液晶ディスプレイ表示を測色器で計測し、比較してみた。テストしたのは各モデル1台ずつで、個体差や液晶パネルベンダーの違いは考慮していない。製品によって別の表示傾向を示す可能性があることは、あらかじめお断りしておく。

tm_1311_ipadair_lcd_02.jpgtm_1311_ipadair_lcd_03.jpgマイクロスコープで液晶ディスプレイの画素を確認した。左のiPad Airは画素密度が約264ppi(ppi:1インチあたりのピクセル数)、右のiPad mini Retinaは画素密度が約326ppiとさらに高く、より精細な表示が可能だが、どちらも目視でドットが認識できないレベルだ。画素形状は過去のiPadと似ており、これまでと同じ液晶パネルメーカーと予想される。つまり今回テストした機材は、採用がうわさされるシャープ製のIGZO液晶ディスプレイではないようだ

測色器でiPad AirとiPad mini Retinaの表示を計測

 テストはエックスライトのカラーマネジメントツール「i1Pro」を使って行った。iPad AirとiPad miniにPCの外部ディスプレイとして利用できるアプリを導入し、i1ProでiPadの発色を直接計測している(計測ソフトは「i1Profiler」を使用)。

 どちらのiPadも環境光に応じたバックライトの自動調光機能をオフに設定したうえ、計測を数回繰り返して、輝度を手動で約120カンデラ/平方メートルの範囲内にそろえた(最高輝度設定ではどちらも400カンデラ/平方メートル超の明るさだった)。参考までに、過去に計測した初代〜第4世代のiPadおよび初代iPad miniの計測結果も併記している。

 結果は下表の通りだ。

i1Proで計測したiPadの色温度(輝度は約120カンデラ/平方メートルに固定)
製品名液晶ディスプレイ画素密度色温度
初代iPad9.7型(1024×768ドット)約132ppi7100K
第2世代iPad(iPad 2)9.7型(1024×768ドット)約132ppi6900K
第3世代iPad9.7型(2048×1536ドット)約264ppi6400K
第4世代iPad(iPad Retinaディスプレイモデル)9.7型(2048×1536ドット)約264ppi6761K
初代iPad mini7.9型(1024×768ドット)約162ppi6834K
iPad Air9.7型(2048×1536ドット)約264ppi6937K
iPad mini Retinaディスプレイモデル7.9型(2048×1536ドット)約326ppi6941K

 iPad AirとiPad mini Retinaの計測結果は色温度が約6900Kだった。これはPCやネットコンテンツ、デジタルフォトにおいて標準的な色域となっているIEC(国際電気標準会議)の国際規格「sRGB」で定められている色温度(6500K)にかなり近いが、先代モデルより少しだけ高い値だ。

 色温度が低いと、白色の表示が黄から赤みがかって見え、高くなるにつれて青っぽく変化する。目視では2台とも濁りがなく、すっきりとした白色に見える。日本人は色温度が高い表示を好む(青みがかった白を白と感じる)傾向にあるので、少し色温度が高い表示のほうが自然な白に感じる人は多そうだ。

 ガンマカーブの補正結果は、iPad Air、iPad mini Retinaどちらも素晴しい結果だった。RGB各色の入力と出力の関係がほぼ1:1で推移しており、シャドーからハイライトまで正確だ。つまり、グラデーションの表示が崩れてしま模様が見えたり、グレーに余計な色がかぶって見えるようなことのない、正確な階調再現が期待できる。先代モデルの計測結果から大きく改善が見られた。

tm_1311_ipadair_lcd_04.jpgtm_1311_ipadair_lcd_05.jpgi1Proの計測結果から抜き出したガンマ補正カーブ。左がiPad Air、右がiPad mini Retina
tm_1311_ipadair_lcd_06.jpgtm_1311_ipadair_lcd_07.jpgi1Proの計測結果から抜き出したガンマ補正カーブ。左が第4世代iPad、右が初代iPad mini。

 次に、それぞれのiPadで色域(表示できる色の範囲)を比較してみよう。

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カシオの“ある意味、9眼”「EX-10」で遊ぼう

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 カシオ計算機のEXILIMシリーズといえば、デジタル技術を前面に押し出した製品作りが特徴で、具体的にはそうした取り組みが「ハイスピード録画」や「HDRアート」などの機能となって製品に搭載されてきた。しかしながら、こうした機能は確かに面白いものの撮影者の意図が入り込む余地はあまりなく、“ユニークな機能”にとどまっていた感がある。

 新製品「EX-10」は1/1.7型の裏面照射型センサーにF1.8からの明るいレンズを搭載と、この部分だけを抜き出せばいわゆる高級コンパクトに属する製品と思いがちだが、高級コンパクトにありがちなマニュアル操作性重視&クラシカル路線ではなく、「こんな写真を撮りたい」と考える撮影者のアシストをデジタル技術で行うというアプローチが行われている。

photo“EXILIM”「EX-10」

 そのアシスト機能して搭載されたのが、従来より定評のあった動作の高速性とブラケティング撮影を複合した「プレミアムブラケティング」だ。この撮影モードでは「ホワイトバランス×明るさ」など2つのパラメータを変化させながら、1シャッターで最大9枚の写真を撮影する。

 ブラケティング撮影そのものは特殊な機能ではないが、1シャッターで最大9枚の仕上がりの異なる写真を撮影することから、カメラの知識が少なくても、絞りやシャッタースピード、露出といった、カメラ的なニュアンスが異なる複数の写真を同時に撮って楽しめる。なお、以下写真についてはすべてサンプル機による撮影であることをお断りしておく。

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photophotophoto「ホワイトバランス×明るさ」でのブラケティング撮影例。中心の1枚がオート撮影的な適正値で、左右がホワイトバランス、上下が明るさをそれぞれ変化させた写真となる

 「プレミアムブラケティング」は本体上部の撮影モードダイヤルに用意されている。値の変化をカメラ任せにするオートとして「フォーカス×絞り」「ホワイトバランス×明るさ」「コントラスト×彩度」「シャッタースピード」の4つが用意されているほか、「フォーカス×絞り」「ホワイトバランス×絞り」「コントラスト×彩度」「彩度×明るさ」「コントラスト×明るさ」についてはそれぞれの値の変化幅を設定することもできる。

 また、明るさ/ホワイトバランス/フォーカス/絞り/シャッタースピード/ISO感度/彩度/コントラストの各値については、それぞれ単一パラーメタだけを変化させる、一般的なブラケティング撮影も可能だ。

 画像処理エンジンが「EXILIMエンジンHS3 ADVANCE」に強化されたこともあり、最大9枚となるブラケティング撮影でも快適さは維持されており、メモリカードへの書き込みも含めてストレスを感じることはない。ただ、1枚の写真を加工するわけではなく、1シャッターで最大9回の連写を行うという仕組み上、周囲が暗かったり被写体の動きが激しいと手ブレもしくは被写体ブレを起こしてしまうこともある。

 各パラメータについて増減は、±1〜3というカタチで表現される。ホワイトバランスやフォーカスなどの値変化について±といわれてもちょっとピンとこないかもしれないが、2軸ブラケットという機能の特性上、すべての値について±で表現した方が混乱が少ないというのも理解できるし、高画質ではなく「好画質」を手軽にという趣旨からすれば、このアプローチで正解だと思う。

photophotophotoシャッタースピードだけは他の値と複合させてのブラケット撮影が用意されていないので、撮影枚数は最大3枚となる。オートでのシャッタースピードブラケットを夜間試したところ、上の例ではそれぞれ1/2秒、1/15秒、1/125秒となった
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photophotophoto「フォーカス×絞り」でのブラケット撮影。フォーカス位置については手前/中央/奥の3パターンを撮影する。上の例では、絞り値はF1.8、F4、F8の3パターン

 一通りのブラケット撮影を試してみたが、「ホワイトバランス×明るさ」や「コントラスト×彩度」など明るさや色調についてのブラケット撮影が面白い。9枚撮ると中には、これじゃないだろうという1枚もあるが、こういった組み合わせもありだと思わせる1枚が撮れたりもする。意図しなかった色調に出会えるという意味ではクロスプロセスに近い楽しみがあるともいえる。

photophoto「ホワイトバランス×明るさ」で撮影した2枚より。左が調整なし、右がホワイトバランス+、明るさ−0.7の1枚
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メイカーズが集合! 3Dプリンタから超小型コンピュータまで

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 モノづくり好きの個人やメーカーが集まる「Maker Faire Tokyo(MFT)2013」が、2013年11月3〜4日に東京お台場の日本科学未来館、タイム24ビルで開催された。イベント会場には電子ガジェットやギークな手芸から巨大ロボまで所狭しと並び、飛行機が飛んだり電子チンドン屋が練り歩いたりと多彩な光景が繰り広げられた。

 開催8回目となる今回は出展者数が約300組と2008年の日本での初開催以来、最大の規模となった。2日間の来場者数は9800人。3Dプリンタメーカーや3Dプリントサービス、自作プリンタなど、さまざまな形で3Dプリンタが盛り上がっていたのが特徴だ。また「Arduino」や「Raspberry Pi」といった自作向けコンピュータを使用した作品も多く展示されていた。

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yk_mft2013_02.jpgMaker Faire Tokyo 2013の会場の様子

3Dプリンタで進化する義手

 3Dプリンタを効果的に使った筋電義手「Handie」を展示していたのがexiiiだ。筋電義手とは筋肉に流れる微弱な電流の変化を読み取って動かす義手である。

yk_mft2013_03.jpg「Handie」の開発者:左からメカニカルディレクターの山浦博志氏、デザイナーの小西哲哉氏、ソフトウェアディレクターの近藤玄大氏。Handieの試作品と。

 通常手首を内側に曲げるなど手の動きによって生じる電流を2〜4パターン程度登録しておき、それぞれに義手を握ったり開いたりといった操作を関連付ける。慣れた人はさらに多くのパターンを操作することも可能だそうだ。だが従来のものは価格が400万円にもなり高価かつ重量が大きいことが課題だった。そこで、パーツは3Dプリンタで造形したものを使い、専用端末の代わりにスマートホンを使うことで、より低価格な製品を開発することにしたという。

yk_mft2013_04.jpgスマホで筋電のパターンを登録し、所定の動きに対応付ける。

 当初開発したのは、駆動部にワイヤーけん引を用いた試作1号機と、どちらも外側パーツやギアなどは、個人で購入したsolidoodle社の「solidoodle 3」を使用したABS積層である。

yk_mft2013_05.jpgギア式の2つ目の試作品。ギアも全てABS積層の3Dプリンタによるもの。

 3Dプリンタで出力したギアは摩耗が激しくすぐ使えなくなってしまった。

 そこで第3の試作では3Dプリントサービスを利用し、ワイヤーけん引のものを光硬化樹脂で造形して作成した。

yk_mft2013_06.jpgワイヤーけん引式の3つ目の試作品。外側のパーツおよび内部のばねはインクジェット方式の光硬化樹脂。

 ここで使用したインクジェット方式3Dプリンタはオブジェット(現ストラタシス)の「Eden260V」である。試作品は外側のパーツ、バネ、ワイヤー、モーターからなり、外側およびバネをこの3Dプリンタで造形している。

 モーターは市販の1.6kg・cmのサーボを6個使用し、手の根元に配置して、バネでつながった指先を動かせる。日によって筋電の状態は違うため、スマートホンで筋電位のパターンを登録する。第1、2の試作は、1〜2万円程度で製作できたという。

 現時点では製品化に向かって動いてはいないものの、製作費用は最終的に4万円程度を目標にしているという。

 exiiiは大学で同じ研究室だった近藤氏と山浦氏、そして山浦氏の勤めている会社で出会った小西哲哉氏の3人組。開発を始めたのは約4カ月前で、大学の研究室での研究がベースとなっているという。「今ある技術でどこまでできるのか」挑戦してみたかったという。Handieは優れた製品アイデアを募る国際コンペ「ジェームズ ダイソン アワード2013」において2位を獲得している

 3Dプリンタを使うことによって、試作検討がすぐにでき、個人に適したサイズ・形状のものも製作しやすい。また、義手を使用中でも改良してバージョンアップすれば、その部品だけ取り換えることも可能だろうという。今後は電源の課題や、最近使われ出しつつあるゴム系の造形材料を使ったグリップ力のあるパーツなどの改良を考えているそうだ。

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Amazon「Kindle Fire HDX」発売 「軽くて速くて画面がきれい」初の体験スペースをカフェに

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 Amazon.co.jp(アマゾンジャパン)は11月28日、最新タブレット端末「Kindle Fire HDX」の出荷を始めた。同端末を体験できるスペース「Kindleエンタメステーション」が12月1日までの期間限定で東京・表参道の「ベーカリーカフェ426」にオープンしている。

photo表参道の真ん中で「Kindle Fire HDX」を体験できる

 体験スペースには1軒の家のようにリビングやキッチン、ベッドルームを模した空間が広がっており、それぞれ設置されたKindle Fire HDXを自由に操作できる。日常のさまざまなシーンで活用できるタイミングがあることを発見してほしいという。

 リアルな場所を設けて端末やサービスの訴求を行うのは同社にとって初めての試み。ジャスパー・チャン社長は「とにかく、軽くて、速くて、画面がきれい。この3つの特徴をぜひ感じてほしい。ハイスペックタブレットは多く出ている中、私たちが自信を持ってお届けする新端末の魅力は、数字を並べるより直接体験してもらう方が伝わるはず。年末の買い物の際、選択肢の1つにしてもらえれば」と話した。

photo「Kindleエンタメステーション」外観

 Kindle Fire HDXは、26日にサービスを開始したビデオオンデマンドサービス「Amazonインスタント・ビデオ」でレンタル/購入した映画やドラマなど、Amazonのコンテンツを楽しめるタブレット。ゲームやソーシャルメディア、レシピ検索などのアプリをダウンロードすることもできる。

 画面サイズは7インチ(1920×1200ピクセル)と8.9インチ(2560×1600ピクセル)の2サイズで、いずれもフルHDを上回る高解像度となっている。重さはそれぞれ303グラム、374グラムと軽量。OSは最新のFire OS 3.1、CPUには2.2GHzクアッドコアを搭載した。ワイヤレス映像転送技術「Miracast」にも対応し、タブレットで購入した映画やドラマ、クラウドに保存した写真などをテレビやパソコンの大画面に出力できる。価格は2万4800円(7インチ16Gバイトモデル)からと、「同容量の『iPad mini』より1〜2万円安い」と価格面もアピールする。

photoジャスパー・チャン社長

 「Amazonの売りはコンテンツの豊富さであり、デバイスを問わず楽しんでもらうことはとても大切。一方で、より高品質でストレスの少ないエンターテイメント経験の追求のため、端末も積極的に売り込んでいきたい。今後も両面から伸ばしていく」(チャン社長)

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本当に“3日”持つ? スタミナが自慢のIGZOスマホ「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」を使ってみた

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photo「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」

 スマートフォンを使う上で最も気になる要素の1つに、「バッテリー持ち」がある。シャープ製の「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」は、3000mAhのバッテリーと省電力設計のIGZO液晶を採用した長時間駆動がウリのドコモスマートフォン。SH-01Fでは「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」や「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」など従来機のIGZOから省エネ性能が約20%アップし、高精細な表示と消費電力の抑制を両立させた。

 シャープが「充電を気にせず3日使える」とうたうスタミナスマホを実際に使用し、本当に3日動くのか試してみた。ちなみに、今回が約2年ぶりとなる機種変更だったが、以前のAndroidスマートフォンではモバイルバッテリーが手放せず、バッテリーが1日持たないことも。そういった状況はどれだけ改善されるのだろうか。

 今回のバッテリー残量の確認には「Battery Mix」アプリを使用した。“普段使い”を重視したので、「LINE」や「Facebook」「乗換案内」などこれまで使用していた約10のアプリをインストールした状態で計測した。端末は機種変更した日から約1週間で、ほぼ新品の状態。なお、環境によってバッテリー消費量は変わってくるので、数値はあくまで参考の目安にしてほしい。

 そのほかの細かな条件は以下の通り。基本的に設定は初期状態のままにしている。

  • 満充電の状態で計測開始
  • Googleアカウントの同期はオンに
  • Wi-Fi、GPS、Bluetoothはオフに
  • アラームを鳴らすとき以外はマナーモードをオンに
  • 「エコ技」設定は購入時の状態で、「ecoレベル」がMaxの状態
  • ディスプレイは、輝度の自動調整をオンに
  • その他の設定は全て購入時の状態

日曜朝に計測開始 第一印象は「なかなか減らないバッテリー」

 バッテリーを満充電の状態にし、11月17日日曜日の9時30分から計測を開始。11月20日の9時30分まで動けば3日持つということになる。休日と平日ではスマートフォンを触れる時間も異なる。まずは、よりバッテリー消費が多そうな休日の結果を見てみよう。17日は一日中都内を出歩いていたので、常に異なる電波環境にあった。また、「Chrome」合計で40分、FacebookやTwitter、LINEなどのSNSアプリを計30分、ゲームアプリを20分ほど利用した。12時間後の21時30分の段階でバッテリー残量は62%。

photophotophoto11月17日の9時30分から計測開始(写真=左)。12時間後の21時30分にはバッテリー残量は62%だった(写真=中)。休日だったので、バッテリーの減りも平日より早い印象だ(写真=右)
photoバッテリー温度分布

 機種変更前の端末であれば、Webブラウザを約30分も利用すれば半日でバッテリーがなくなっていたため、ほかの機能は極力使わないようにしていた。だが、SH-01Fではあらゆるアプリケーションを気兼ねなく使うことができた。バッテリー消費が激しいゲームアプリとあわせて使用しても、まだ6割残っている。グラフでバッテリーの減り方を見ても、ゲームアプリやSNSなど消費の激しいものを利用しているとき以外は、緩やかなカーブを描いている。だが、このままだと2.5日しかもたない計算だ。翌日は平日でスマートフォンの利用時間が減少すると考えられるが、どうなるだろうか。ちなみに、Battery Mix に表示される、この日の端末の平均温度は26.2度だった。

就寝中は8%のバッテリー減 これは3日イケるか?

 計測開始から24時間後の18日9時30分時点でバッテリー残量は48%。端末を放置していた0時〜8時までの間は、8%のバッテリー減だった。バックグラウンドでアプリが動作するスマートフォンでは、スリープ状態で放置していてもバッテリーが減っていく。IGZOディスプレイや省エネ機能を備えるSH-01Fも例外ではない。「設定」→「省エネ&バッテリー」→「電池」からバッテリーの利用状況を確認できるが、使用から1日と8時間16分45秒時点でバッテリー残量は41%。消費の内訳はディスプレイが最も高い。ChromeでのWeb閲覧やFacebookアプリの割合も高かった。

photophotophoto18日9時30分時点で残量は48%(写真=左)。バッテリーの利用状況(写真=中)。平日はスマートフォンに触る時間も限られるので、減り方もなだらか(写真=右)

 平日の18日はグラフの曲線もなだらかだ。通勤・退勤時および帰宅後に約40分Webブラウザ(Chrome)やSNSを利用したほか、ゲームアプリを約15分使用した。また、端末内の画像をPCに転送する関係で、約1分間Micro USBケーブルで充電している状態になった。計測開始から36時間後の18日21時30時点での残量は36%。休日は日中のバッテリーの減りが38%減だったが、平日は12%減と大きく差が出た。休日と同じ使い方をしていると3日は持ちそうにない。

 翌19日の9時30分時点の残量は24%。あと24時間持てばちょうど3日だが、さすがに1時間に1%減のペースは厳しいだろう。19日はほぼ18日と同じ利用時間で、グラフの形状も似ている。計測開始から60時間後の21時30分時点での残量は10%。そろそろ終わりが見えてきた。あとは翌20日の9時30分にまだSH-01Fが動いているかどうかだ。Battery Mixで確認すると、バッテリー残量は20日5時56分時点でゼロになった。9時30分までは約3時間30分。計68.5時間の“約3日”持ったという結果となった。

photophotophoto19日9時30分時点での残量は24%(写真=左)。やはり平日はバッテリー消費のグラフはゆるやかなカーブを描く(写真=中)。20日5時56分にバッテリー残量はゼロになった(写真=右)
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