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その漏えいしたID、自分の「お金」に直結していませんか?

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コラム

半径300メートルのIT:その漏えいしたID、自分の「お金」に直結していませんか? (1/2)

OCNから約400万件のメールアドレスと暗号化されたパスワードが漏えいしました。即座に被害が発生するとは限りませんが、口座情報などの重要情報をWebサービスに預ける場合の対策と覚悟を考えてみましょう。

[宮田健,Business Media 誠]

 また大規模な情報漏えい事件が発生しました(NTT Comのサーバに不正アクセス、Webアプリの脆弱性を突かれた可能性(参考記事))。

 今回の漏えい規模は約400万件とけた違いに多いのですが、もう慣れっこになってしまった感もあります。今回はメールアドレス(OCN ID)とハッシュ化されたパスワード(※)の漏えいです。ハッシュ化されたパスワードから元のパスワードを見つけ出すには時間がかかりますから、すぐに何らかの被害が発生するということではありません(何か悪さをされる前にパスワードを変えましょう)。

 今回、私がお伝えしたいのはOCN IDのようなさまざまなサービスで使える「マスターID」とそのパスワードが漏えいしてしまった場合、どうなってしまうのか、という点です。

※ハッシュ化されたパスワード:文字列や数値から固定長の議事乱数を生み出すハッシュ関数を使って暗号化したパスワードの要約のこと。この要約からは元のパスワードに戻せないのが特徴。実際のサービスでは、ユーザーが入力したパスワードから要約を毎回作成し、それがサーバに保存されている要約と一致するか否かをチェックしていることが多い。

OCNが提供する「OCN家計簿」

 例えば、OCNが提供するサービスの1つに「OCN家計簿」というものがあります。いわゆるアカウントアグリゲーションサービス(口座情報集約サービス)と呼ばれるもので、金融機関やクレジットカード、公共料金などのWebサイトから情報を取り出し、収支を一括して管理することが可能です。確かに、各種Webサイトには通帳やカード使用履歴がありますので、これをまとめれば収支が分かり、家計簿代わりになりますね。

OCN家計簿OCN家計簿

 では、どのようにして金融機関などの情報にアクセスするのでしょうか。実は、アカウントアグリゲーションサービスでは、金融機関のログインIDおよびパスワードなど、ログインに必要な情報をあらかじめ登録しておく必要があります。さらに、OCN家計簿では登録したコンテンツパートナーサイト(金融機関やカード会社など)へはオートログインが可能(参照リンク)という機能があります。

 非常に便利に見えるのですが、そのリスクの高さにお気づきでしょうか。

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(続報)なぜ池に浮かべたのか、どうやって実現したのかメガソーラー

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yh20130724Okegawa_map_250px.jpg図1 桶川市とメガソーラーの位置。近くを上越新幹線が通る。

 「池に浮くメガソーラーが運転開始、日本初の水上式で1.18MW」では、埼玉県の桶川市に建設された珍しいメガソーラーについて紹介した(図1)。

 埼玉県の東部にある桶川市で、水量調整用の池の水面に、4500枚の太陽光パネルを設置し、1.18MWの出力を得たというものだ(図2)。温度条件が良いために発電量が10%ほど増えることをメリットとして紹介した。だが、それだけのためにだけにわざわざ池の上に建設したのだろうか。そうではない。

yh20130725Okegawa2_angle_590px.jpg図2 後谷調整池に浮かぶ「ソーラーオンザウォーター桶川」の外観。出典:ウエストホールディングス

 そもそもなぜここに池があるのか。桶川市を含む埼玉県東部には東京湾に注ぎ込む中川(元荒川)の支流が多い。この一帯は平坦な土地が広がっているため、まれに発生する集中豪雨の際に、放っておけば川が氾濫する。調整池は増水時の水をいったん貯える役目があるのだ。地域には、後谷調整池の他にも数十の調整池が点在している。

 桶川市の狙いは、行政財産である「後谷調整池」を何とか活用できないかというもの。調整池はどうしても必要であるため、行政財産として確保されている。しかし、市にとってはふだんから維持管理費がかさむばかりで税収も得られず、収益という面では「負」の財産だった。調整池にメガソーラーを誘致した市の狙いは、負の値を正の値に変えるというものだ。

 「1m2当たり150円という行政財産の使用料の他、固定資産税も得られ、調整池の維持管理をメガソーラーの事業者の義務としたため、市にとっては濡れ手に粟のような条件である」(桶川市環境課)。後谷調整池の場合、設置面積が1万2400m2ある。これは市にとって186万円の使用料が新たに得られることを意味する。今回メガソーラーを建設・運営するウエストホールディンググループに対して、隣接する地方自治体の他、全国から声がかかり、早くも順番待ちの状態になっているのはこのような好条件を聞きつけたからだ。

事業者の持ち出しにならないか

 このような好条件は裏を返せばメガソーラーの事業者に多大な負担がかかっていると言うことではないのだろうか。1回限りの「慈善事業」にならないか。

 「桶川市のメガソーラーの維持管理コストは、地上設置型メガソーラーの維持管理コストと同程度の水準だ。地上設置型の除草作業にはそれなりにコストがかかる」(ハウスケア代表取締役社長の荒木健二氏)。同社はウエストホールディングスグループで資材の調達を担当する企業だ。

 市もメガソーラー建設に対して敷居を下げようと工夫している。「行政財産を貸し付ける場合、法により1年が上限だ。だが、1年ごとに契約を更新するという条件で水上型メガソーラーを引き受ける事業者はいないだろう。そこで契約の前に、20年間の利用を可能とする趣旨の基本協定を結んだ」(桶川市環境課)。

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「ロックオンAF」や有機ELファインダー搭載の2020万画素エントリー 「α58」

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 ソニーは7月25日、デジタル一眼カメラ「α58」を8月9日より販売開始すると発表した。「DT18-55 F3.5-5.6 SAMII」と「DT50-200mm F4-5.6 SAM」をセットしたダブルズームレンズキット(SLT-A58Y)と「DT 18-135mm F3.5-5.6 SAM」をセットした高倍率ズームレンズキット(SLT-A58M)が用意され、実売想定価格はいずれも8万5000円前後。

photo「α58」

 エントリーに位置しながらも、有効約2010万画素“Exmor” APS HD CMOSセンサー(APS-Cサイズ 23.2×15.4ミリ)と画像処理エンジン「BIONZ」を搭載。BIONZの強化によってISO感度は最高ISO16000まで対応するほか、最上機種である「α99」と同様の「エリア分割ノイズリダクション」(画像を平坦/エッジ/テクスチャの3領域に分割し、それぞれに応じたノイズリダクション処理を行う)も実現している。

 AFシステムには半透過ミラーを搭載した「トランスルーセントミラー・テクノロジー」を既存シリーズ同様に採用しており、常時、位相差AFが行える(測距点は3点クロス15点)。新たに被写体の色や輝度から大きさを認識し、よりAFの精度を高める「ロックオンAF」機能を備えており、コンティニアスAFとの併用により動画撮影中のAF精度を高めることもできる。

photophoto

 ファインダーはエントリー機ながら144万画素・視野率100%の有機ELディスプレイを搭載。背面液晶は2.7型(約46万画素)。撮影機能は既存エントリー機「α57」をほぼ継承しており、被写体へカメラを向けるだけで、3分割法による構図をカメラが自動的に判断してトリミングを行う「オートポートレートフレーミング」や、全画素超解像ズーム、15種類のエフェクト、6種類の「クリエイティブスタイル」などを利用できる。

 ダブルズームキットに付属する「DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM II」(SAL18552)は「DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM」に比べると外装が一部変更され、また、後遮光窓の形状見直しによって、フレアやゴーストの発生を抑制している。単体での販売もボディと同日より行われ、価格は31500円。

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α | BIONZ | レンズ | 有機EL | APS-C | 超解像技術


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「世界初」60倍ズームで超望遠1200ミリ パナソニック「DMC-FZ70」

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 パナソニックは7月25日、超高倍率ズームレンズを備えたレンズ一体型デジタルカメラ“LUMIX”「DMC-FZ70」を8月22日より販売開始すると発表した。価格はオープンで、実売想定価格は4万円前後。

photo「DMC-FZ70」

 「世界初」(同社)となる、光学60倍ズームレンズ(35ミリ換算20〜1200ミリ相当)を搭載した超高倍率ズームデジカメ。ズーム時に6群のレンズが同時に動く「6群全可動レンズ」によって60倍という高倍率と約130.2(幅)×97(高さ)×118.2(奥行き)ミリの小型化を両立。マクロモード時には1センチまでの接近が可能となっている。

 開放F値はF2.8-5.9と上位機に当たる「DMC-FZ200」(製品レビュー)の全域F2.8に比べると暗いが、FZ200相当の手ブレ補正機構「Power O.I.S」を備えており、また、手ブレ補正プログラムのアルゴリズム改善を施すことで、ゆっくりした手ブレ(低周波域)にも対応したほか、補正角度も既存「DMC-FZ48」比で約2倍とすることで安定したフレーミングを実現した。

photophoto

 なお、別売のテレコンバージョンレンズ「DMW-LT55」ないしクローズアップレンズ「DMW-LC55」を装着可能で、テレコンとデジタルズームを併用すれば、10200ミリ相当という焦点距離を実現できる。動画はAVCHDおよびMP4での録画に対応。歩きながらの撮影でもブレにくい手ブレ補正「アクティブ」モードも用意した。また、高感度マイクの設置部分には風切り音を拾いにくい構造を採用することで、クリアな録音を可能にしたという。

photo別売テレコンバージョンレンズ「DMW-LT55」装着時

 撮像素子は1/2.33型 有効1610万 高感度MOSセンサーで、最大9コマ/秒(AF追従時は5コマ)の連写も可能。背面液晶はFZ200と異なり固定式だが、広視野角タイプとなっており、サイズは3型(46万画素)。撮影機能としては15種類のクリエイティブコントロールやパノラマ撮影機能などを備えている。

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1万円台の7型タブレット、「IdeaTab A1000」「Diginnos Tablet DG-D07S」をまとめて試す(外観編)

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7型サイズで200〜300グラム台、1万円台で購入できるイマドキの7型タブレット

photo7型サイズのタブレットは、スマホ以上の視認性とPC以上の携帯性を実現する。通勤列車内など、立ったままでも使いやすい

 かつてPCでしかできなかったこと、今なら手元の機器でたいていのことができるように──。個人向けPCの売れ行きが鈍化する傾向にあるなか、個人向け機器の市場に「タブレット」がじわじわと浸透してきた。

 PCは「コンテンツを作る」とする作業も行う機器として、今後も、特に業務シーンでは確実に必要とされ続けるはずだ。ただ、個人用途においてはWebサイト表示やWebサービス、メール、アプリを楽しむといった「コンテンツを見る・使う」用途であればタブレットで十分、どころか重量や可搬性のよさから、より幅広いシーンで活用できるようになる可能性を秘めている。中でも注目は「7型クラス」の機器だ。これまで多かった10型クラス/600グラム前後のそれと比べ「軽くて持ちやすい、携帯するのも苦にならない」サイズ感が日本ではことさら評価されている部分なようである。

 というわけで今回は、2013年7月に登場した7型タブレットの新モデル2つ、レノボ・ジャパン「IdeaTab A1000」と、サードウェーブデジノス「Diginnos Tablet DG-D07S」をまとめてチェックする。


photophoto左がレノボ・ジャパン「IdeaTab A1000」、右がサードウェーブデジノス「Diginnos Tablet DG-D07S」

 これら2機種、まずは比較的低価格なのがうれしい部分。IdeaTab A1000は発売時想定価格で1万8000円前後、Diginnos Tablet DG-D07Sは同社直販サイト価格で1万2800円である。ちなみに2013年7月25日(日本時間)にGoogleより発表された注目の新モデル「Nexus 7 2013」も同じく7型クラス。仕様はさておき、こちらは日本円換算で2万円台プラスαから(16GバイトWi-Fiモデルの場合)となる見込みである。

 では、外観をチェックしていこう。どちらも7型ワイドの液晶ディスプレイを採用するピュアタブレットスタイルで、一般成人男性の手で“握れる”範囲に収まっている。尻ポケットには厳しいが、スーツの内ポケットには収納可能。重量も文庫本ほどなので、バッグに入れるなら気にしなくてもよい範囲である。利用、持ち運びともに通勤・通学電車の人もさほど違和感なく所持できるはずだ。

photophotoIdeaTab A1000
photophotoDiginnos Tablet DG-D07S
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photoiPad mini(7.9型)とNexus 7 2012(7型)とサイズ感を比較 左からiPad mini、IdeaTab A1000、Nexus 7 2012
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photoiPad mini(7.9型)とNexus 7 2012(7型)とサイズ感を比較 左からiPad mini、Diginnos Tablet DG-D07S、Nexus 7 2012

 本体サイズはIdeaTab A1000が121(幅)×199(高さ)×10.7(厚さ)ミリで重量は約350グラム。Diginnos Tablet DG-D07Sは113(幅)×191(高さ)×7.9(厚さ)ミリで重量は約272グラムとなる。

 Diginnos Tablet DG-D07Sはかなり薄く、軽量なのが好印象だ。ボディに金属素材を用い、裏面はヘアライン加工入りのつや消しブラックで塗装、さらにC面にポリッシュ処理がなされている。このフラットな“金属板”風デザインは、価格から想像できる以上の意外な高級感がある。

 一方のIdeaTab A1000は、(これまで)7型Androidタブレットのベンチマーク機の1つであったGoogle「Nexus 7 2012」と同程度のサイズ感だ。角はやや丸みを帯びており、裏面は樹脂素材を用いている。Diginnos Tablet DG-D07Sと比べると少し重いが、樹脂素材のため質感はほどよくソフト。剛性感もあるので、多少雑に扱っても大丈夫そうな安心感がある。


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もうフルHDには戻れない、シャープ「LC-60UD1」の“懐の深い”表現力

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 この夏話題の4Kテレビについては、本連載でもソニー機東芝機と製品リポートを続けてきたが、今回は8月上旬に60V型が店頭に並び始めるシャープの4K AQUOS(アクオス)「UD1シリーズ」について触れてみたい。

ts_arekore_aquos01.jpg60V型の「LC-60UD1」

 UD1シリーズは、すでに発売されている70V型の「LC-70UD1」と60V型の「LC-60UD1」の2モデル展開で、台数が見込める50インチ台はラインアップされていない。その製品構成から4K高精細の醍醐味(だいごみ)はまずは大画面で……というシャープの強い主張を酌み取ることができる。

 採用されたパネルは、大阪府堺市にあるSDP(Sakai Display Product)製の倍速表示VAパネル。SDPは旧同社堺工場、現在はホンハイ(台湾)傘下にある液晶パネルの生産拠点で、UD1シリーズに使われる4Kパネルは世界唯一の第10世代の設備で生産されたパネルとなる。ちなみに、シャープのハイエンド4Kテレビ、「ICC PURIOS」(LC-60HQ10)のパネルは同社亀山(三重)工場で生産されたものである。

 60V型、70V型ともに、同社最新技術のモスアイ・パネルが採用されている点にまず注目したい。これは蛾(モス)の目(アイ)の構造を研究して開発されたパネルで、ディスプレイ表面にナノ単位の微細な突起を設けることで、外光や部屋の照明などの反射を大幅に抑え、なおかつ艶のある黒を再現するというもの。実際このクラスの大画面は、小さいサイズのテレビ以上に画面の映り込みが気になるはずで、モスアイ・パネルはまさに4K大画面にうってつけの好提案といっていいだろう。

ts_arekore_aquos15.jpgts_arekore_aquos05.jpgモスアイパネルは、外光を拡散させて映り込みを防ぐ。自分の顔が画面に映らないのは大きなメリットだ

 もうひとつUD1シリーズで注目すべきポイントとして、70V型、60V型ともに「THX 4Kディスプレイ規格」の認証を得たことが挙げられる。米THXは、ルーカスフィルムを出身母体とするシアター/ホームシアターのための技術認証機関。THX 4Kディスプレイ規格には400を超える厳格なテスト項目があり、それらをすべてクリアーし、その認証を受けた4K液晶テレビは、現在のところ(国内で発売されているモデルでは)シャープ製品のみということになる。

 UD1の開発エンジニアに聞くと、ユニフォミティー、ガンマカーブ、色再現、コントラストなどTHXにはさまざまな項目で厳格な規定があるそうだが、とくに画面のユニフォミティ(均一性)基準がたいへん厳しく、それをクリアーするのはかなりタイヘンなようだ。画面を細分化し、画面中央と周辺部での輝度レベル、ホワイトバランスに偏差がないかどうか徹底的に精査されるのだという。とくにUD1シリーズは、LEDバックライトを画面上下に配したエッジライト型だけに、導光板とのマッチングなど相当なファインチューニングが必要なはずで、その苦労がしのばれる。そうやって仕上げられたテレビだけに、このTHX認証は高級テレビを買う際の1つの安心材料、太鼓判として捉えてもいいだろう。

 入力信号を4K解像度(3840×2160ピクセル)にアップコンバートする映像信号処理回路「AQUOS 4K-Master Engine PRO」は、既存のチップの組合せによって構成されてるようだが、もちろんシャープ開発陣によってきめ細かなチューニングが施されている。例えば超解像処理によって生じるジャギー(斜め線のギザギザ)の発生に対しては、いくつかのフィルター・パターンを用意し、その使いこなしで対処しているようだ。

ts_arekore_aquos04.jpg映像モードは7つ

 映像モードは「高精細」「標準」「映画」「映画THX」「ゲーム」「PC」「フォト」の7つ。店頭での見栄えを考慮した「ダイナミック」ポジションがなくなり、その代わりに4K映像の魅力をアピールしやすい画質にチューニングした「高精細」モードが設けられたのが興味深い。また、映画観賞用映像モードとして、「映画」「映画THX」の2つが用意されていることにも注目したい。後者はTHXの定めるモニター画質を追求したもので、色温度D65 、ガンマ特性2.2、色域はハイビジョン規格のBT.709(sRGB)に準拠している。前者の「映画」モードは、この「映画THX」にシャープ流の味付けを施したものと考えていい。シャープ流という意味で興味深いのが、色温度設定。同社エンジニアによると、D65設定では肌色がどうしても緑がかるため、「映画」モードではそれを嫌って色温度は6500K(ケルビン)の黒体放射ラインに沿った値に定めているという。ガンマカーブについても、基準カーブの2.2をベースにより階調重視の設定が採られているようだ。

 4K大画面高級テレビだけに、音質のケアにも意が尽くされている。画面下にテレビ本体とは別筐体(きょうたい)のスピーカー用ボックスを配置、楕円(だえん)型スコーカーとドームツィーターによる2WayスピーカーをL/Rchそれぞれに前向きにビルトイン、本体背面に内蔵した2基のウーファーを用いた「DuoBass」との組合せによる2.1ch構成が採られている。スピーカー前面は、開口部の大きなパンチングメタル仕様だ。スピーカーのイコライジング等を受け持つ音声回路用には「ヤマハ・オーディオ・エンジン」が採用されている。

ts_arekore_aquos02.jpgts_arekore_aquos03.jpgテレビ背面にある低振動ウーファー「DuoBass」。ユニットを対向配置して振動を相殺する仕組み。上にある青い水は、振動が少ないことを視覚的に表している(左)。フロントのスピーカーボックスを液晶パネル方向から見た写真。独立したキャビネットは意外と奥行きがある(右)

 チューナーは、地上デジタル3、BS/110度CS2の構成で、外付けのUSB HDDに2番組同時録画しながら別の番組が楽しめる仕様。また、そのUSB HDDに録画した番組を他の部屋のAQUOSに配信して楽しめるDLNAサーバ機能も有している。ちなみに3D表示機能は、アクティブシャッター方式。今回の視聴では実際に試すことはできなかったが、倍速表示パネルだけに、クロストークの発生はかなり気になるのではないかと予想される。

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レディ・ガガの衣装も手掛けたユイマナカザト氏の3Dプリンタ活用

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 2013年7月25日、若手ファッションデザイナー ユイマナカザト(中里唯馬)氏による、作品群「YUIMA NAKAZATO 2014 コレクション」の発表会が開催された。ナカザト氏は過去、レディー・ガガやファーギーといった有名アーティストの衣装デザインも手掛けた。

 今回のテーマはバスケットボールを進化させた架空競技を表現すること。通常のバスケットコートの約10倍はあるスタジアムをバイクに乗った屈強な選手たちがボールを奪い合って掛け回り、約40mの高さにあるゴールにシュートを決めるという競技だ。選手の姿勢や動きは和式馬術を参考にしたということだ。

yk_YUIMA01.jpgファッションデザイナーのユイマナカザト氏

 ナカザト氏がデンマークを訪れた際、武器博物館で日本の甲冑(かっちゅう)の展示を見たことが発想のきっかけとなったという。その後、「スポーツマンシップ」をテーマにしたデザインがスタート。リサーチを重ねてバスケットを基にした競技をできるだけリアルに想像しながら、選手のコスチューム、選手が乗るバイク、広大なスタジアムなどのデザインを作り上げていった。その作品の一部で3Dプリンタの造形物が使われたことが明かされた。

 造形するに当たり、3次元モデルを作成したのは、3次元CGを得意とするフリーランスデザイナーのスン・ジュンジェ(孫君杰)氏、造形に協力したのは3Dプリンタベンダーのストラタシス。

yk_YUIMA02.jpgYUIMA NAKAZATO 2014 コレクションの選手たち

 架空競技に登場する選手たちがまとうビブスは、「自らの肉体を極限に駆使すること」を象徴するように、「人の筋肉・筋繊維」や「数字(ゼッケン)」をイメージした複雑に入り組んだデザインになっており、3Dプリンタのハイエンド機種「Connex500」(ストラタシス)で造形された。使われたのは「Tango」というラバーライク材料(ゴムのような材料)で、着色は造形後に施している。

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yk_YUIMA04_2.jpg赤い装飾部が3Dプリンタ製のビブス

 筋繊維の模様の直径は、0.1mm程度。詳細かつ複雑なモデリングは、スン氏が3Dサーフェスモデラーの「Rhinoceros」を使って作成した。1チームを構成する5人分のビブスの設計・試作は約4カ月で完了したとのこと。

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yk_YUIMA05_2.jpgRhinocerosによる3次元モデル

 コスチュームの他にも、通常のバスケットコートの約10倍の広さだというスタジアムのミニチュア模型についても、コスチュームの他にも、通常のバスケットコートの約10倍の広さだというスタジアムのミニチュア模型を作成した。スン氏が3DデータをRhinocerosで製作。Connex500で黒色と透明の樹脂を同時に造形した。デザインは、スタジアムというよりは、荒野のような感じだ。

yk_YUIMA06.jpgスタジアムの3次元モデル
yk_YUIMA06_2.jpgスタジアムの模型

 ナカザト氏によれば、ところどころ大きく隆起した山は約10mという設定だ。広大なスタジアムを走るために必須であるバイクの製作においては、実際のバイクや自動車などの部品が使われた。こちらは3Dプリンタ製ではない。

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yk_YUIMA07_2.jpg選手たちが乗るバイク

 ストラタシスによれば、医療や製造業だけではなく、デザインやファッション業界においても3Dプリンタの事例はよく見られるという。同社日本法人のマーケティング・マネージャの吉澤文氏はその一例として、マサチューセッツ工科大学(MIT) メディアラボのネリ・オクスマン教授の作品、パリのファッションショウ「ランウェイ」での事例を紹介した。

yk_YUIMA08.jpgストラタシス・ジャパン マーケティング・マネージャ 吉澤文氏
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yk_YUIMA11.jpgストラタシスによるデザインやファッション業界の事例

 

 実際に服や靴の製作などで3Dプリンタが本格的に活用されるのはまだ先の話だろう。ただ、ナカザト氏はときに「明日のアカデミー賞授賞式用のドレスを作ってくれ」というような相談を受けることがあるそう。現状の技術では難しいが、3Dプリンタがこの先もっと進化して造形材料が生地(布)に近くなり、服も作れるようになれば、このような注文に対応できるようになると、3次元データ技術の発展に期待しているようだ。

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新Nexus 7は「利益が出るようになっている」 ハード事業強化のGoogle、「Nexus Qから多くを学んだ」

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REUTERS

 米Googleは7月24日、従来モデルよりも薄型となる新世代の「Nexus 7」タブレットを発表した。インターネット検索大手のGoogleはこの新型Nexus 7によって、消費者向けハードウェア市場でのプレゼンスを拡大し、今後もモバイル向けの中心的なサービスとして自社のオンラインサービスの優位性を維持したい考えだ。

 新型Nexus 7は米Qualcommの「Snapdragon」プロセッサを搭載し、画面解像度も向上している。ストレージが16Gバイトの基本モデルは7月30日に229ドルで発売される。1年前にリリースされた初代Nexus 7は8Gバイトモデルが199ドルで発売された。

 GoogleでAndroidとChromeを統括するスンダル・ピチャイ氏は新型Nexus 7の発表イベントにおいて、「Googleはこの新製品で利益を出したい考えだ」と語った。Googleは初代Nexus 7でモバイルハードウェア市場に初めて参入したが、アナリストからは、この初代タブレットは収支的にはとんとんの製品とみられている。

 「新型Nexus 7は関係者全員に利益が出るようになっている。小売業者もGoogleも含め、すべての関係者にとってだ」とピチャイ氏はReutersの取材に応じ、語っている。

 さらにGoogleは24日、新製品「Chromecast」を発表し、オンライン動画ストリーミング分野での取り組みを再開させた。Chromecastは長さが約2インチのスティック型デバイスで、テレビの背面に差し込めば、YouTubeやNetflixの動画をスマートフォン経由でストリーミング再生できるというもの。価格は35ドルだ。

 1週間後には、Google傘下のMotorola Mobilityも新型スマートフォン「Moto X」をニューヨークで発表するとみられている。Moto XはMotorolaが2012年5月に125億ドルでGoogleに買収されて以来初めて開発したスマートフォンであり、由緒あるMotorolaブランドを競争の激しいモバイル市場に再投入する上で要となる製品だ。

 Googleのほかにも、Amazon.comやMicrosoftなど、従来はハードウェアの製造を行ってこなかった企業が近年はモバイル端末市場への参入を開始している。ユーザーがどこからでもWebにアクセスするようになってきたことへの対応だ。Googleはスマートフォンでの成功を、Amazonの「Kindle Fire」やAppleの「iPad」に独占されている好調市場において再現すべく、2012年6月に初のタブレット製品を発表した。

 GoogleはNexusタブレットを積極的な価格で販売し、ヒットさせたい考えだ。Nexusタブレットのユーザーが増えれば、それだけ広告がユーザーの目に触れる機会も増えることになるからだ。Googleは売上高の大半をオンライン広告やモバイル広告から上げている。

 Nexusシリーズには、韓国Samsung Electronicsや台湾HTCなどのパートナー企業が製造するスマートフォンやタブレットが含まれており、NexusシリーズはGoogleのAndroid OSを採用する世界中のメーカーにとってリファレンス端末としての役割も果たしている。

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copyright (c) 2013 Thomson Reuters. All rights reserved.

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JR東日本、Suicaデータの社外提供について詳細を公表 希望者は提供データから除外も

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 JR東日本は7月25日、社外提供するSuica利用データの取り扱いについて公表した。日立製作所が同データを利用して行う解析サービスについて、プライバシー面の不安や「事前の説明・同意が不足しているのでは」といった批判の声が上がっていたのを受けたもので、JR東日本は「大変なご心配をおかけした」と謝罪。希望者はデータ提供から除外できるようにする。

 JR東日本によると、日立に提供するのは「Suicaでの乗降駅、利用日時、鉄道利用額、生年月、性別およびSuicaID番号を他の形式に変換した識別番号」からなるSuica利用データ。

photoデータ提供の流れ=ニュースリリースより

 SuicaID番号はSuicaに割り振られたユニークな番号で、Suica裏面の「JE」から始まる文字列。同社によると、提供データからは元のSuicaID番号に復元できないようにしており、利用者の氏名や連絡先とひも付けることができまないという。また特定のSuicaのデータを長期にわたって追跡できないようにしているという。契約でも、同番号を他のデータとひも付けたり、提供データから個人を特定する行為は厳格に禁止しているとしている。

 日立は同データを分析し、各駅の利用状況をまとめたリポートを作成して顧客に提供する。設定した基準以下の集計結果は数値表示やグラフ化を行わないなど、「個人の行動を特定できないよう、お客さまのプライバシーに配慮しております」という。

 利用者からは事前に説明がないことへの批判が相次いでいたが、「日立に提供しているデータは個人を特定することができない情報であることから、提供について約款などへの記載や個別の許諾をいただいておりませんが、法令の趣旨にのっとりお客さまのプライバシーに配慮して取り扱っております」と説明。利用者向けのQ&A(PDF)も公開した。

 7月26日から、希望する利用者のデータを社外提供分から除外できるようにする。9月25日までに要望があった場合、既に提供した過去のデータも除外したものに差し替える。受け付けは専用アドレス宛ての電子メールか電話で行う。詳細は同社の資料(PDF)で。

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巨大データとのそれぞれの付き合い方――Pivotal、SAP HANA

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 ここのところ「ビッグデータ」「プラットフォーム」というキーワードをよく耳にします。どこもビッグデータの潮流へと向かい、巨大かつ大量のデータ処理を可能とするための技術的な態勢を拡充しているところです。

Pivotalが目指すビッグデータのためのデータ処理基盤

 まずはPivotalです。4月にEMCとヴイエムウェアの出資により、米国でPivotalという新会社が設立されました。CEOはヴイエムウェアのCEOを務めたこともあるポール・マリッツ氏です(関連記事)。

 6月12日に開催されたGreenplum/Pivotalソリューションセミナーでは、ヴイエムウェアの市村友寛氏(写真)がPivotalの概要について解説しました。

mhdb_ichimura.jpg

 PivotalはEMCグループの事業戦略から誕生した新会社です。EMCのストレージとヴイエムウェアの仮想基盤上に、これまで両社が保有していたクラウドやビッグデータに関するソフトウェアを再編成してシナジー効果を高める狙いがあります。具体的にはGreenplum、GemFire/SQLFire、Spring frameworkなどの製品が挙げられるでしょう。

mhdb_pvtl.jpgPivotal 次世代エンタープライズPaaSのための新会社(セミナー資料より)

 Pivotal製品はEMCのストレージ製品やヴイエムウェアの仮想環境が必須ではありません。近年、ハードウェアからソフトウェアまで自社で統合して提供する垂直統合型をよく見かけますが、対して、EMCグループの戦略は「水平分業型」だと市村氏は話しています。

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TechTargetジャパン

初音ミクがMac、英語、GarageBand対応――「肩の荷が下りました」とクリプトン伊藤社長

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 「これで肩の荷が下りました」。クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之社長はにこやかに伸びをした。Mac対応という、6年前に初音ミクを発売してからひっかかっていた問題がついに解決できるのだ。「初音ミクV3」はMacの中で歌ってくれる。

画像初音ミクV3
画像ヤマハのVOCALOID責任者・剣持秀紀さんとクリプトン・フューチャー・メディア伊藤社長

6年間刺さった「トゲ」

初音ミクのMac対応について(2007年9月20日)

 「やっぱりWindowsにするしかないかな」「これでIntel Macにするかも」など、Macユーザーのマシン選びに大きな影響を与えているWindowsオンリーのソフト「初音ミク」。Mac対応に関する、発売元のクリプトン・フューチャー・メディアからの公式の回答は、次のようになっています。

[Vocaloid2情報] 初音ミクの新規購入を悩んでいる方へ

現在、主にVOCALOIDソフトウェアレベルでのMac対応の可能性を協議中です。申し訳ありませんが、早急に対応するのが難しい問題と待っております。何卒、ご了承ください。

 上は筆者が6年前に書いたブログ記事から引用したもので、回答者は、初音ミクをはじめとするCV(キャラクター・ボーカル)シリーズの総元締、佐々木渉さんだ。

 この後、WindowsアプリをMacで動かすためのCrossOver Macと初音ミクのパッケージをバンドルした商品がリリースされたりしたものの、Mac対応は進まず。その一方で、MacにWindowsをインストールするBootcampや、VMware Fusion、Parallelsなどの仮想環境でWindowsを動かしVOCALOIDをインストールするのが、MacユーザーボカロPが取るべき道となった。

 それから6年。ようやく初音ミクがMacにやってくる。すべてのMacにバンドルされている音楽制作ソフト「GarageBand」にも、1万7000円という超低価格ながらフル機能搭載の「Logic Pro」にも対応する形で。ちょっと込み入った解説をすると、GarageBandとLogic Proのプラグイン形式であるAudioUnits(AU)に、クリプトン独自のVOCALOID編集ソフト「Piapro Studio」が対応を予定しているのだ(発売時には間に合わないため、アップデートで対応予定)。

 伊藤社長はMac対応ともう1つの6年来の悲願として「ボーカル以外を含めた制作環境」を挙げている。すでに発売されている男声VOCALOIDパッケージ「KAITO V3」ですでに実現しているが、同様に初音ミクの新バージョンにも、音楽制作ソフト「Studio One Artist」と、ボーカル以外の充実した音源「PreSonus」が同梱される。こちらもMac対応なので、MacユーザーはAU対応を待たずに初音ミクのボーカルとバッキングをMacだけで制作できる。

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ヤマハのMac対応

 伊藤社長がゲスト出演した7月24日の発表会は、ヤマハによる「VOCALOID NEO」お披露目だった。「VOCALOID NEO」は、同社がVOCALOIDを初めてMacに対応させたもの。VOCALOIDの開発者であり、責任者でもある剣持秀紀さんは、VOCALOIDのMac対応を検討中とした10年前のプレスリリースを引っぱり出し、「大変長らくお待たせいたしました」とようやく実現に至ったことを話し始めた。

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 ヤマハのVOCALOIDをMac対応させるためには、VOCALOIDの合成エンジンをMacに移植するだけでは不足だった。(※Macの開発環境でVOCALOIDが動作するようにするのは、iPhoneやiPadでVOCALOIDを簡易的に動かす「iVOCALOID」や「VocaloWitter」で既に実現している)

 2010年10月にMac版について聞いた回答が以下のような内容だ。ここではエディタの部分の開発が大変だったという話をしている。


iVOCALOIDに関するトリビア集

  • Mac版はエンジンが移植できたからといってすぐにできるように簡単なものではない。
  • Windows版は複雑になりすぎていて、検証だけで大変。それをMacに移植して検証までするとなると
  • 仕様がiPad版ベースならそれほど無理なく移植できるんだけど、みなさんの反応を知りたい(ぼくはGarageBand用にiPadと同程度の仕様のものを低価格で出してほしいと要望)

 その後、ヤマハではある判断をした。それは、同社の傘下にある独Steinbergが開発するCubaseと緊密な動作をするエディタを開発するというものだ。VOCALOID 3 Editorではオーディオファイルを読み込んだり、リバーブやコンプレッサといったエフェクトを使えたり、簡易的な音楽制作が行えるまでに進化したが、クリプトンの伊藤社長が持っていた「ボーカル以外の音楽制作環境もいっしょにやりたい」と同様の理想形にするためには、ヤマハが自信を持つ音楽制作ソフトであるCubaseのプラグインとして作るのが最適だと決めた。

 CubaseはWindowsだけでなくMacでも動作する、クロスプラットフォームの音楽制作ソフトである。CubaseからVOCALOIDを制御するのに、VSTiという業界標準の仕組みを活用することで、両方のプラットフォームへの対応を大きな負荷なく行うことができる。

 VOCALOIDの合成エンジンがMacで動作し、それをエディタ(この場合はVOCALOID Editor for Cubase)から呼び出す仕組み。これを他社のアプリケーションからも呼び出せるようにした1つの例が、クリプトンのPiapro Studioだ。

 ヤマハにはもう1つやるべきことがあった。歌声ライブラリのMac対応だ。初音ミクやメグッポイド、ヤマハだとVY1をはじめとするVOCALOIDパッケージはいずれもWindowsに特化した管理システム、管理情報を元に作られており、インストーラやライセンス認証もWindowsでしか動作しない。ヤマハはこの部分を全面的に作り直し、「VOCALOID NEO」として、歌声ライブラリごとにリリースし直すことを決めた。Windows版のユーザーには、Mac版インストーラを別途ダウンロード提供する。クリプトン以外のAHSインターネットもこの方式にならい、VOCALOID 3ライブラリのユーザーに対してMac版インストーラを提供することを発表している。

 Macに対応したヤマハ製歌声ライブラリの提供は、Mac対応ボカキュー(VOCALOID Editor for Cubase NEO)が発売される8月5日から順次行われる。

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 ボカキューNEOの予想価格は1万円近い。Cubase本体を持っていない人にとっては、さらに4万円近くの出費を必要とする(Cubase Artist 7の場合)。合計で5万円近く。それだけで音楽制作環境が整うとはいえ、もっと手軽にボカロPになりたい、という人もいいるだろう。

 剣持さんは、「Mac対応の第1弾として」を何度も強調した。これで終わるつもりはない、という意志の現れといっていいだろう。

 iVOCALOIDとの共通点も多いTiny VOCALOID EditorをMacに移植したり、ボカキューNEOの対応Cubaseを、現在のCubase 7とCubase Artist 7から、より下位の低価格バージョンにも拡大するなど、Macのユーザーベースをさらに広げることも考えられるのではないか。

 ボカキューNEOが、Cubase 7の魅力とあいまって受け入れられ、第2弾、第3弾のMac対応を果たしてくれることを期待したい。

英語版初音ミクに至る苦労

 とはいえ現時点では、もっとも安価にMacでVOCALOIDを使う方法は、新しい初音ミクV3を購入することだ。KAITO V3と同価格帯であれば、1万数千円で初音ミクの複数の歌声データベースと、VOCALOIDエディタ「Piapro Studio」と、音楽制作ソフトが手に入る。GarageBandユーザーであれば、Logic Proを買うか、初音ミクV3を買うか、悩むことになるかもしれない。

 「Piapro Studio」はなかなか細かいところに配慮がされている。伊藤社長によれば、このエディタの開発者はボカロPでもあり、自分が使いたい機能を次々と実装しているそうだ。

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 初音ミクV3では、音素の組み合わせのバリエーションを増やし、よりなめらかに発声するトライフォンという方式での収録を追加している。このためデータベースの容量が膨れ上がり、オリジナル初音ミクと、初音ミクAppendのデータベースのすべてをV3パッケージに収録するわけにはいかなくなった。どの声色が入り、どの歌声が入らないか、自分のミクのワンポイントアクセントに使ったりしていたユーザーにとって、自分のAppendが使えないのではと心配な向きもあるかもしれない。その最終選択はまだ決定されていない。ただ、既存のAppendユーザーにはなんらかの対応が施されるようだ。ご安心を。

 初音ミクの使い手は、英語版ミク「初音ミクV3 ENGLISH」も手に入れたいと思うはずだ。ただし、初音ミクV3とは別パッケージとなる予定で、別途購入しなければならない。こちらにも同様に音楽制作ソフトがバンドルされる。

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 英語版ミクの新しいデモ曲は、それほど日本語くささは感じることがない。これまでのデモで感じていた日本語なまりの英語からかなり進化したものだ。これについて伊藤社長に聞いてみた。昨年10月時点での、海外での評価はいまいちで「しぶかったですね」。発音に問題があったらしい。

 初音ミクの歌声の中の人である藤田咲さんには課題を出して勉強してもらっていたのだが、最近になって、ネイティブ・スピーカーの社員が前日にレッスンし、スタジオでも修正しながら収録をしたという。そのかいあって、パリのJapan Expoで行われた英語ミクのデモは評判が上々だった。そのデモ曲「Coming Together」は、ニコニコ動画のクリプトン公式チャンネルで聴くことができる。

 Macに対応した「初音ミクV3 ENGLISH」が海外で発売されれば、GarageBandユーザーやLogic Proユーザーなど広範囲のユーザーが気軽に初音ミクの歌声を使えるようになる。「ミクの声は海外ではすべてに受け入れられるとは思ってないけど、面白いと思ってくれるミュージシャンもけっこういる」と伊藤社長。日本のクリエイターが「世界を股にかけて活躍」するきっかけとなることも期待している。

 初音ミクV3、英語版の詳細は8月上旬に明らかになる。

 MacユーザーのボカロPおよびボカロPになりたいMacユーザー。チャンスはついに訪れた。

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シールのように体に張れる「タッチセンサー」――将来はロボットスキンへ応用も!?

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科学技術振興機構

 科学技術振興機構(JST)と東京大学大学院 工学系研究科は2013年7月25日、東京大学大学院 工学系研究科の染谷隆夫教授、関谷毅准教授、マーチン・カルテンブルンナー(Martin Kaltenbrunner)博士研究員らが、世界最軽量(3g/m2)で最薄(2μm)の電子回路の開発に成功し、タッチセンサーに応用したことを発表した。

 本研究は、JSTの課題達成型基礎研究の一環として進められたもので、オーストリアのヨハネス・ケプラー大学のジークフリート・バウアー(Siegfried Bauer)教授のグループとの共同研究による成果である。

最軽量かつ最薄のタッチセンサーシステム最軽量かつ最薄のタッチセンサーシステム。羽毛よりも軽く、しなやかであるため、身に付けても装着感のないセンサーとして用いることができる

 ヘルスケア・医療用途のセンサーおよび電子回路は、これまでシリコンを中心とした硬い電子素材で作られてきたが、人の肌に直接触れる部分などについては、柔らかく違和感のない電子素材を活用することが期待されてきた。しかし、厚さが1μm程度の極薄の高分子フィルムは、機械的な柔軟性に優れているが、従来の半導体プロセスではセンサーや電子回路を直接作製することは困難で、その解決策が求められていた。


 本研究グループは、厚さ1.2μmの極薄の高分子フィルム(PEN:ポリエチレンナフタレート)に、厚さ19nmのゲート絶縁膜を作製する技術を確立。世界最軽量で最薄の柔らかい「有機トランジスター(電子スイッチ)集積回路」の作製に成功した。この厚みは食品用ラップフィルムの5分の1程度で、重量は印刷用紙1枚の約30分の1だという。試作した有機トランジスター集積回路は、4.8×4.8cm2の面積に144(12×12)個のセンサーが4mm間隔で配列されており、タッチセンサーシステムとして機能する。

柔らかいタッチセンサーシステムの構成柔らかいタッチセンサーシステムの構成

人の手に張ったセンサーシート人の手に張ったセンサーシート。センサーシートは大変にしなやかであり、手のしわのような複雑な表面の形状に追従して、ぴったりと密着させることができる

 開発成功の決め手は、表面の粗い1μm級の高分子フィルムに、厚さ19nmという極薄の絶縁膜を均一かつ密着性高く作ることに成功した点にある。具体的には、陽極酸化法(補足1)を用いた独自の室温プロセスで、基材への密着性の高いアルミニウム酸化膜を高均質に形成する手法を確立した。従来のプラズマ酸化法(補足2)によるアルミニウム酸化膜では、極薄の高分子フィルムがプラズマによって傷んでしまい、ピンホールが発生するという問題があった。本研究は、プラズマのような高エネルギーのプロセスの利用を最小限にとどめ、主として陽極酸化法を用いて従来の問題を解決した。


 この有機トランジスター集積回路は、超薄型であるにもかかわらず、驚くほど丈夫という特長がある。実際、フィルムを折り曲げて曲率半径5μmまでつぶしても、体液や汗と同じ成分の生理食塩水に2週間以上浸しても、2倍以上(233%)に引き伸ばしても、電気的性能を維持し、機械的にも壊れることがない。本研究グループは、この有機トランジスター集積回路を応用し、柔らかいタッチセンサーシステムを試作開発した。

実現プロセス1実現プロセス2実現プロセス3どのようにして、柔らかい電子回路の作製に成功したか 【※画像クリックで拡大表示】

 本研究グループは、2011年に、厚さ1μm級の高分子フィルム上に、有機太陽電池を均一に形成することに成功。このたびの研究で、世界で初めて、厚さ1μm級の高分子フィルムの上に有機トランジスター集積回路が作製できるようになった。

 今回、柔らかいセンサーの超軽量化・超薄型化が達成されたことにより、今後、装着感のない(人間が違和感を持つことの少ない)ヘルスケアセンサーシステム、ストレスフリーの福祉用の入力装置、医療電子機器用のセンサー、衝撃に強いスポーツ用のセンサー、ロボットスキンなど多方面への応用が期待される。また、先に開発された世界最軽量の太陽電池と組み合わせることにより、屋内外の光から電力を得て、半恒久的に健康をモニタリングできる自立型のヘルスケアセンサーなどへの応用も考えられるという。

補足1:陽極酸化法とは、電解質溶液中に金属を浸し、金属を陽極として通電することによって、金属の表面に酸化物の皮膜を形成する手法。


補足2:プラズマ酸化法とは、高エネルギーによって電離した状態(プラズマ)に金属の表面を当てることで、金属の表面に酸化物の皮膜を形成する手法。



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約8割がつながりやすさNo.1を「信じていない」――バリバリつなガレーは“辛口”評価を変えられるか?

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 ソフトバンクモバイルは7月26日から、全国のソフトバンク携帯電話取扱店(一部店舗を除く)で「バリバリつなガレー」キャンペーンを開始する。

photo「バリバリつなガレー」と「お父さんカレー皿&スプーンセット」を紹介するソフトバンクモバイルの栗坂氏

 このキャンペーンは、ソフトバンクの店舗で携帯電話やPHS(他社端末でも可)を提示すると、白戸家のお父さんのイラストがパッケージにプリントされたカレー「バリバリつなガレー」がもらえるというもの(在庫がなくなり次第終了)。

 さらにカレーのパッケージの裏面にあるQRコードからキャンペーンサイトにアクセスすると、抽選で1000人に「お父さんカレー皿&スプーンセット」をプレゼントするキャンペーンにも応募できる。こちらの応募締め切りは8月30日17時まで。

 またバリバリつなガレーキャンペーンに先立ち、ソフトバンクは7月23日から、店舗でケータイを掲示した来店者に「バリバリつなガレーLINEスタンプカード」も配布中。そして18日からは、MNPでソフトバンクのスマートフォンを契約すると「ホワイトプラン基本使用料2年間0円」「ソフトバンクポイント2万4000ポイント」「SoftBank HealthCare月額使用料2年間0円とホワイトプラン基本使用料1年間0円」のいずれかを特典として提供する「バンバンのりかえ割」キャンペーンや、電波状況に満足できなかった場合、契約から8日以内で返品を可能にするサービスも行っている。

 ソフトバンクでは7月25日にバリバリつなガレー配布開始イベントを開催。「バリバリバンバンキャンペーン」と呼ぶ一連の販売施策についてあらためてピーアールを行うと同時に、ソフトバンクモバイル 執行役員 マーケティング統括 マーケティング・コミュニケーション本部 本部長の栗坂達郎氏がキャンペーンの狙いを説明した。

 ソフトバンクはちょうど1年前の2012年7月25日、900MHz帯の「プラチナバンド」でもサービスを開始。他社に遅れをとっていた“つながりやすさ”の向上に向け、本格的な取り組みをスタートさせた。

photophoto接続率1位という事実を訴求したが、約8割の人が信じていないという結果に……

 栗坂氏は「プラチナバンド開通から1年がたち、おかげさまで暫定ではあるが接続率は3社のなかで1位となった。この事実を理解してもらうために、それこそ山の様にCMを打って訴求をしてきた」と振り返る。と同時に「メッセージは届いているものの、残念ながら信じていただけていない面もある。(調査結果では)78%の方が信じていないという結果になった。特に他キャリアのユーザーとってみれば使用している実感もなく、『ソフトバンクが自分で言っているけど、本当なの?』という声も多い」(栗坂氏)と、“事実”への信用度に課題があることを示した。

 ただし、実際にサービスを使っているソフトバンクユーザーのネットワーク満足度は上昇している。栗坂氏によれば、Twitterなどではつながりやすさが向上したとの声が投稿されており、またパケ詰まりや通信速度について評価する内容も増えているという。

 「この“事実”をなんとかしてソフトバンクユーザー以外にも広げたい。そこで考えたのが『バリバリバンバンキャンペーン』。期間中に乗り換えると基本料が無料になるほか、電波がつながらない場合は8日以内なら返品にも応じるということを始めた。この自信のほどを知って欲しい。ただそれだけでは皆様にメリットがないため、店舗でケータイをかざせば『バリバリつなガレー』を差し上げることにした。せひ店舗に起こしいただき、ソフトバンクの電波の良さを実感していただきたい」(栗坂氏)

photoバリバリつなガレー配布開始イベントに出席したダレノガレ明美さん、ガッツ石松さん、石田純一さん、お兄ちゃんことダンテ・カーヴァーさん、そしてお父さん
photophotophotoダレノガレさんから男性陣に「あーん」のサービス。お父さんも興味津々

 ソフトバンクは26日から、バリバリバンバンキャンペーンに合わせた新CM2本の放映を開始。イベントには、CMに出演している白戸家のお父さんとお兄さんのダンテ・カーヴァーさん、ガッツ石松さん、そして“ガレーつながり”ということでダレノガレ明美さん、芸能人カレー部から石田純一さんも登場。キャンペーンの告知とバリバリつなガレーの試食などを行った。

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孫氏と宮川氏、BWA追加周波数割り当てで総務省に要望書

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この道はいつか来た道

kn_songekido_01.jpg総務省で要望書を提出した理由を説明する孫正義氏と宮川潤一氏

 ソフトバンクとソフトバンクグループでAXPGデータ通信事業を行っているWireless City Planningは、7月25日に2.5GHz帯BWA追加周波数割り当ての決定プロセスに対する要望書を総務省に提出した。これは、日本経済新聞に、追加周波数の割り当てにおいてUQコミュニケーションズの申請に沿った内容に決定するという内容の記事が、申請内容を検討する電波管理審議会の開催前に報じられたことに対して行ったものだ。

 日本経済新聞の報道では、7月26日に開催する電波管理審議会において、2.5GHz帯BWAの追加周波数帯域の20MHz分は、すべてUQコミュニケーションズに割り当てることになったとしている。この報道内容が事実だった場合、2.5GHz帯BWAの周波数割り当ては、UQコミュニケーションが既存の30MHzと新規の20MHzを合わせた50MHzになり、Wireless City Plannningは既存の20MHzのままとなる。

kn_songekido_02.jpgkn_songekido_03.jpgkn_songekido_04.jpg当初、Wireless City Planningは、UQコミュニケーションズに10MHz、自分たちが10MHzという割り当て案を考えていたが(3月に総務省に提案している)(写真=左)、UQ側が20MHzを申請したため(現時点では推測だが)、Wireless City Planning案が通って既存分とあわせて30MHzと30MHzの“イコールフッティング”になるか(写真=中央)、UQ側が20MHzを取得して50MHzと20MHzになるか(写真=右)という状況にあった。しかし、日本経済新聞は、25日未明に「UQが追加分20MHzを取得」と報道し、それを受けて宮川氏と孫氏が今回の行動を起こすことになった

 ソフトバンク代表取締役社長 兼 Wireless City Planning代表取締役社長の孫正義氏と、ソフトバンクモバイル取締役専務執行役員の宮川潤一氏は、25日総務省を訪れ、総合通信基盤局において、電波管理審議会開催前に日本経済新聞が報道した内容の情報漏洩があったことと、通例なら1週間前に公開する審議会の開催日程が、前日の25日に連絡があったことなどをうけて、要望書を提出し、要望書を提出した理由と今回の周波数割り当て決定プロセスに対する問題点を関係者に説明した。

 今回、ソフトバンクとWireless City Plannningが提出した要望書では、電波監理審議会で、割り当て申請をした企業が開設計画を説明する公開ヒヤリングを行うことと、26日に行う予定の電波監理審議会で周波数割り当ての審議を行わないことを要望している。

 今回の2.5GHzBWA追加周波数割り当て20MHz分で、Wireless City Planningは、UQコミュニケーションズとともに10MHzずつを申請してUQコミュニケーションズの既存分と同等の30MHzの利用を目指していた。ただ、直前にUQ側が20MHz分を申請したという情報も得ており、その場合、Wireless City Planningの10MHz分追加申請が通って30MHzと30MHzの“イコールフッティング”となるか、UQ側の申請が通ってUQ側50MHzのWireless City Planning側20MHzの“絶対不利”になるかという状況になった。

イコールフッティングは総務省も“誘導”した

 孫氏は、最初に提案した“イコールフィッティング”は、総務省も勧めていたもので、この案に沿って審議が進むものと考えていたと語っている(孫氏と宮川氏は総務省が“誘導した”という表現を使っている。ただし、総務省が“誘導した”事実を示す証拠について、宮川氏は「物証は提示できないが、当方がこれまで何もいわずにいたことが、そのことを示している」と述べるにとどまっている)。25日未明の報道に接した宮川氏は、総務省に事実を確認するため訪れたが、対応した総務省関係者は報道内容を否定しなかったという。

 宮川氏の説明によると、割り当てを希望した企業は、審査に必要な財務、技術、事業計画などの報告書類を提出しており、その書類を参考にして作成した要約資料のチェックをWireless City Planningで7月24日に行い総務省に戻している。その翌日未明の報道と電波審議会開催の通知だったため、要約資料も読んでいない、事実を正しく把握していない状態での審査で間違った判断をしていると孫氏は主張する。

 宮川氏は、Wireless City Planningがウィルコムの事業を引き継いでから現在までに設置した基地局数、最近におけるユーザー数の増加ペースや今後の拡張計画(契約数を事業開始から30カ月で400万件、60カ月で1000万件)、そして、帯域利用の効率といった技術面の優位性を説明しながら、時間をかけて精査すれば、追加周波数はWireless City Planningに割り当てるはずと訴えた。

kn_songekido_05.jpgkn_songekido_07.jpgkn_songekido_06.jpg孫氏と宮川氏が示した、Wireless City PlanningとUQ WiMAXが設置した基地局の比較(写真=左)とソフトバンクモバイルとKDDIが設置した1.5GHz帯基地局数と(写真=中央)2GHz帯基地局数の比較(写真=右)

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「Samsung SSD 840 EVO」徹底検証――“TurboWrite”で下克上の性能を発揮か?

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「840 EVO」は日本で8月上旬に発売予定

tm_1307_samsung_ssd_01.jpg「Samsung SSD 840 EVO」シリーズ

 Samsung Electronicsから最新のコンシューマー向けSSD「Samsung SSD 840 EVO」が登場した。

 2012年10月に発売された「Samsung SSD 840」の後継となるメインストリーム向けモデルで、最新のトリプルコアコントローラと、新プロセスルール製造のNANDフラッシュメモリを採用し、「TurboWrite Technology」を呼ばれる独自の高速化技術の導入により、840を大幅に上回る性能を実現していることが大きな特徴だ。

 国内では日本サムスン販売特約店のITGマーケティングが8月上旬に発売する予定だが、今回はいち早く250Gバイトモデル(MZ-7TE250B/IT)を入手できたので、性能や消費電力を従来機と比較しながら検証していこう。

チタニウムカラーのシンプルなデザイン

 Samsung SSD 840 EVOのボディデザインは、従来の840およびその上位モデル「Samsung SSD 840 PRO」を踏襲しつつ、ボディにチタニウムカラー(ラメの入ったダークグレー)、ワンポイントにブラックをあしらったシンプルなものだ。

 従来同様にボディのエッジをダイヤモンドカットしているが、今回はカットした後に塗装(蒸着)を行なっているため、エッジの反射は抑えられている。

 先日開催された「2013 Samsung SSD Global Summit」では、デザインチームのディレクターに話を聞く機会があったが、今回は普及モデルであることを意識してデザインしたという。

tm_1307_samsung_ssd_02.jpg左上が840、右下が840 EVO。外装は840のほうが高級感がある。840 EVOはシンプルな仕上がりだ

 前回は840 PROと840で共通のデザインイメージを採用していたが、今回の840 EVOは、840 PROのラインとは差別化する意味で、同社ブランドにおけるプレミアムな意味を持つオレンジを使用せず、より大衆的なイメージを意識してシンプルにまとめたとのことだ。

 確かにじっくり見比べると構造的にも簡素で、ロゴのプリントなども840 PRO/840のほうがコストがかかっているように見える。もっとも、840 EVOのデザインも決して安物というイメージはなく、クールにまとまっている。プレミアムな840 PROのラインとのすみ分けとコストダウンをうまく行なっているといえそうだ。

 また、実際に手に持ってみると、軽さにも驚く。現状配布されている資料では「最大53グラム(1Tバイトモデル)」としか記載がないのだが、評価用の250Gバイトモデルを実測してみると、わずか43グラムしかなかった。モバイルノートPCのストレージ換装用途としてはこの点も魅力だろう。本体サイズは69.85(幅)×100(奥行き)×6.8(高さ)ミリと、約7ミリ厚のドライブだ。

tm_1307_samsung_ssd_03.jpgtm_1307_samsung_ssd_04.jpgカラーリングは、チタニウムカラー(ラメの入ったダークグレー)をベースに、ブラックのスクエアがアクセントになっている(写真=左)。ボディのエッジをダイヤモンドカットした後に塗装(蒸着)を行なっているため、反射は抑えめだ。試作機のためか、底面のラベルは角度がズレて貼られており、少々チープな印象を受ける(写真=右)
tm_1307_samsung_ssd_05.jpgtm_1307_samsung_ssd_06.jpg基板の長さは全体の半分以下しかない。250Gバイトモデルの実測は43グラムしかなかったが、その軽さもうなずける(写真=左)。基板の裏にはもう1枚のNANDフラッシュに、コントローラ、DRAMキャッシュが実装されている(写真=右)
tm_1307_samsung_ssd_07.jpgtm_1307_samsung_ssd_08.jpgNANDフラッシュの型番は「K90KGY8S7N-CCK0」とある(写真=左)。DRAMキャッシュ表面には「K4PG324EB-FGC2」とプリントされている。カバーを開けてみたところ(写真=右)。カバーは星型ネジ3本で固定されており、うち2つはラベルの下側に隠れている

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世界の大手企業に不正アクセスした犯人、1億6000万件のクレジットカード情報を盗む

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jstic01.jpg米司法省による訴追状

 米司法省は7月25日、世界の大手企業のネットワークに侵入して1億6000万件あまりのクレジットカード情報を盗んでいた男5人を、不正アクセスなどの容疑で訴追したと発表した。

 被害に遭った企業の中には、米NASDAQ、7-Eleven、JetBlue、Dow Jonesといった大手企業や組織、Visa(ヨルダン)やDiners(シンガポール)などの主要クレジットカード会社が含まれる。被害総額はこのうちの3社だけで3億ドルに上るという。

 訴追されたのは、ロシア人とウクライナ人の26歳から32歳の男5人。それぞれに役割分担があり、まずロシアの男2人が企業のネットワークに不正アクセスを確立し、3人目の男がそのネットワークから情報を盗み出していた。ウクライナの男は犯罪行為を隠すためのWebホスティングサービスを運営。5人目の男が盗んだ情報を売りさばいていたとされる。

 ネットワークへの侵入には、SQLデータベースの脆弱性を見つけてSQLインジェクション攻撃を仕掛ける方法が使われた。アクセスを確立すると、システムにマルウェアを仕込んでバックドアを開く手口を利用。被害企業側がセキュリティ対策を講じて不正アクセスを遮断しても、執拗な攻撃を繰り返して再度アクセスを確立していたという。

 検出を免れるために、被害企業のネットワーク設定を変更したり、セキュリティソフトウェアから身を隠す手口なども講じていた。特定の標的を狙った攻撃は数カ月にわたって続くこともあり、被害企業のシステムに1年以上もの間マルウェアを潜伏させていたケースもあった。

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「私用メール」をめぐる会社と組合の対立 組織に潜む闇

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 東京を中心に百貨店を経営する上場企業A社から、「ある従業員がトラブルになり、助けてほしい」という依頼がきた。依頼主は会社側の人間と思いきや、実はそこの労働組合である。「私用メール禁止」というルールに抵触した従業員のCさんに処分が下ったが、それを不服としたCさんと会社側との間で訴訟も辞さないほどに揉めているという。今回は情報セキュリティ関連だが情報漏えいの事案ではなく、組織内部の、しかも「私用メール」という事案である。

(編集部より:本稿で取り上げる内容は実際の事案を参考に、一部をデフォルメしています。)

事例

 依頼主は筆者の知人でもある労働組合専従員のBさんだ。彼によると、トラブルの発端はCさんの「私用メール」が発覚し、会社側が「降格処分」を言い渡したことであった。就業規則に「会社のメールにおける私用メールは一切禁止する」という一文があった。

 Cさんの上司であるD課長は、この処分について「就業規則に違反したのだから、文句の言いようがない」と話したそうだ。しかし、Bさんは内心で「誰でも多少は私用メールをしているし、この処分はCさんへの個人攻撃とも受け取れる、会社としても何も良い結果を生まないだろう」とも考えていた。そこで筆者には、「なんとか円満に解決したい」と要望した。

事案:百貨店経営のA社で主任職のCさんが、就業規則で禁止された「私用メール」を行い、人事部から「降格処分」の判断が下った。しかしCさんは「会社には従わない」と宣言。Cさんは管理者ではないため、労働組合に所属している。そこで、労働組合はCさんが不利にならないよう会社側と交渉したが、会社側は頑なにこの処分を撤回せず、交渉決裂にもなりかねない事態へ発展した。


 Cさんは、就業規則で禁止された「私用メールをしていたこと」を認めている。それによって「降格処分」の方針が会社側から出されたのだがBさんの考えから労働組合が交渉するに至った。戦前からあるA社の労働組合は、いわゆる「御用組合」という雰囲気もあり、日本らしい労働組合ともいえるが。そんな中で依頼主のBさんは、「会社あっての組合だ。主張すべきところはするが、譲歩すべきところはする」という考えである。一方でCさんは、「顧問弁護士を個人で雇っても全面対決する」と息巻いていた。

 筆者が状況について話を聞いていくうちに、Bさんからは「以前は○○だった」というコメントが何度も聞かれた。それは、今の世間の動向について「無頓着」という表現がぴったりくるほどに残念な印象を受けるものだった。その後の調査で次のことが分かってきた。

(1)A社は就業規則で「私用メール禁止」と記載している。従業員に対するコンプライアンス教育でも「私用メールはしてはいけない」と明確に言葉で伝えていた。

(2)しかし、一部の従業員は「程度の差はあるが、誰でも私用メールをしている」と証言している。

(3)Cさんの私用メールは1日平均3.2通。メールは「飲み会の案内」といった情報ばかりで、機密情報の漏えいは認められなかった。

(4)Cさんの行為が発覚したきっかけは、情報セキュリティ管理者によるメールチェックだった。ただ、会社側が従業員のメール利用をチェックしていることはほとんど知られておらず、コンプライアンス教育などでも知らせていない。「メールチェックを行う」という規定や文書も従業員には知られていない。

 筆者が総務部に確認したところ、メールチェックは週に1回、情報セキュリティ管理者(情報担当役員や総務部の情報セキュリティ管理者、店舗ごとの担当者の計数人)がランダムで行っていた。明らかに「私用メール」と判断できる場合は、本人の直属の上司にメールで内容を報告しているとのことだ。Cさんのケースではその上司であるのD課長に報告された。本来はその範囲内でCさんが行動を改善すれば、それで済む話だった。

 しかしCさんが主張するところによると、D課長はCさんに全く警告しなかった。それどころか前月になって突然、「君(Cさん)は毎日のように私用メールをしている。これは悪質な規則違反だ。次回の懲罰委員会で降格処分されるだろう」と告げてきたという。

 総務部の報告を受けた際にD課長は、「Cさんのメールの私的利用を継続調査すべきだ」と申請したという。D課長は、「Cさんに何度も口頭で注意したが、無視された。だから継続調査をお願いした」と主張している。CさんとD課長の証言に食い違いがみられるが、「言った、言わない」の水掛け論になってしまうだけだろう。

 筆者は、その他の部署などのケースについても確認したが、ほとんどが飲み会といった程度の内容であり、管理者の多くは私用メールの実態を知りながらも、「本人に話すほどではない」と判断し、本人に注意もせず、会社にも報告していなかったのである。それ故に、ほとんどの従業員がメールチェックのことを知らなかったようだ。

 こうした事実確認が終わり、筆者は依頼主のBさん、当事者のCさんと上司のD課長、それに人事部長と情報担当役員を呼んで調査結果と改善策を告げた。

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「スマートフォンをなくした!」でも安心な暗号化技術ガイド

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 モバイル端末暗号化は、スマートフォンやタブレットを紛失したり盗まれたりした場合に最も懸念される情報流出を防ぐため、手軽な対策を提供してくれる。

 暗号化は、復元可能な形でデータにスクランブルをかけて暗号に変換する。データを読み取ろうとする人には無意味な文字の羅列にしか見えない。米調査会社Ponemon Instituteの調査によると、紛失したスマートフォン3台のうち2台に機密情報や社外秘情報が含まれており、モバイル端末暗号化の重要性は高い。

TOEICを斬る(前編) 〜悪魔のような試験は、誰が生み出したのか〜

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 われわれエンジニアは、エンジニアである以上、どのような形であれ、いずれ国外に追い出される……。いかに立ち向かうか?→「『英語に愛されないエンジニア』」のための新行動論連載一覧

 この連載を読んでいただいているエンジニアの皆さんで、「TOEIC」をご存じない方はいらっしゃらないと思いますが、一応説明致しますと、TOEICとは、Test of English for International Communicationの略称で、「国際コミュニケーション英語テスト」のことです。

 言うまでもありませんが、「英語に愛されないエンジニア」である私にとって、このTOEICとは悪意と憎悪の対象です。もちろん、私には好きな試験など1つもありませんが、憎悪のレベルにまで至っている試験は、このTOEICだけです。

 私のこの「TOEIC嫌い」を決定付けたのは、10年前に、米国赴任から帰国した直後に受けた受験の結果でした。「赴任前後でスコアが全く変っていない」という現実を突き付けられた時です。

 バカな! と思いました。

mm130725_eee1.jpg画像はイメージです

 仕事では問題ばかりでしたが、2年間の米国生活の衣食住に必要な会話をこなし、必要なら、青い目の、背の高い、でっかい体格のニーチャンと口論までやってのけた、この私の「英語による国際コミュニケーション力」が、公に否定されたのです。

 じゃあ、私が米国赴任の生活で使ってきたあの英語は、コミュニケーションは、何だったのか?

 私が使っていたのは、『英語のような何かの音声信号』だったのか? それを気の毒に思った、私の回りの米国人が『一生懸命、その信号の解読を試みてくれた』……。そういうことなのか?

 「その通り。お前は、他の人には得られない本当に得難いラッキーな2年間もの米国赴任という機会を得ながら、英語コミュニケーションに関して何一つ取得することなく、帰国しただけなのだ」

 ——「TOEIC」は、冷酷にそう言い放ったのです。

終生の敵“TOEIC”

 こんにちは。江端智一です。

 本日は、私の終生の敵“TOEIC”を徹底的に批判……、もとい非難します。

 今回は、エンジニアリング視点がスッポリ抜けて、著しく客観性を欠き、論理的に破綻しているかもしれません。たぶん、これまでの連載の中で、最も読みにくい文章になるだろうと思います。先に申し上げておきますが、今回は「諦めてください」。

 番外編として、このTOEICについて書かせていただくに至った動機は、この連載も終わりに近づきつつあったからです。

 私はムチャを承知の上で、EE Times Japanの担当者の方に、既に自分のホームページで公開している、TOEICに関するコラムの再掲載をお願いしました。

mm130725_eee_fig1.jpg

江端:「TOEICめ、うぅぅぅ! 貴様、この間の遺恨覚えたるかーッ! (作者注:上記の赴任帰国後のTOEICスコアのこと)くっ! 放せ! お放しくだされ、担当者殿! あの“TOEIC”の野郎に、一太刀たりとも斬りつけずにこの連載が終わったら、私は死んでも死に切れませぬ。武士の、武士の情けでござる」

担当者殿:「江端殿。契約が、契約書がございますぞ!」(作者注:本当にあります)

というバトルを経ることもなく、あっさり許可を頂きました。担当者と、EE Times Japan編集部の皆さんに、この場を借りてお礼申し上げます。


 さて、TOEICに話を戻します。

 「TOEIC受験のしおり」には、「TOEICとは、英語によるコミュニケーション能力を正確に測定するための共通尺度として実施される世界共通のテストシステムです」と書かれていました。

 かつては、それぞれの企業が、独自の英語検定システムを持っていたようですが、このような制度はほとんどなくなり、現在は、TOEICを社内で実施して社員の英語力の指標としているようです。

 TOEICを知らない方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明します。

 TOEICは、他のテストのように合否を判定するのではなく、スコアという形で結果が示されるテストです。満点は990点で、スコアは一桁まで正確に出されます。

 そして、拷問のように、嫌がらせのように膨大な量の設問がある、長時間(2時間)のテストです。

 最初の45分間は、ベラベラ、ベラベラと、止まることなく一方的に流れ続ける英語を聞かされ(リスニングセクション)、残りの75分は、パンフレット並みにぶ厚い英語の冊子をひたすら読まなければなりません(リーディングセクション)。

 しかも、問題が恐ろしく意地悪で、根性悪で、ひねくれています(後述します)。「回答者に理解してもらおう」などという意図のかけらもなく、どす黒い悪意に満ち、「コミュニケーションテスト」と言いながら、私たち受験者とコミュニケーションする意図を最初から放棄している——。そんなテストです。

 ……とまあ、このような「江端の『悪意』フィルター」を介した説明では、訳が分からないと思いますので、TOEICについてちゃんと知りたければWikipediaを読んでください。

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「まぎれもなくパワポです」――経産省が「クール・ジャパン」のために“全然クールじゃない”動画を公開した理由

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 黒背景に赤と白の文字で浮かび上がる「クール・ジャパンとは?」——「新世紀エヴァンゲリオン」のパロディ映像からスタートする3分の映像は、経済産業省公式アカウントでYouTubeにアップされたもの。6月に公布された「株式会社海外需要開拓支援機構法」、いわゆる「クール・ジャパン法」を紹介する内容だ。

photo解説動画の冒頭

 ネット上では公開直後からこの動画について「あまりにクールじゃ無さすぎて逆に驚いた」「クールジャパンというより、ガラパゴスジャパン」「だれかお手本見せてあげて」など辛らつなコメントが続々寄せられている。動画を制作、公開した意図について、クール・ジャパン推進に取り組む同省クリエイティブ産業課の“中の人”を直撃した。

第一声は「ありがとうございます」

photoクリエイティブ産業課の諸永裕一総括補佐

 「いやぁ、記事にしてくれてありがとうございます」。取材場所に赴き、否定的な反響を含め記事にしたことを怒られるかとびくびくしていた記者に投げられた第一声に拍子抜けした。「一番怖かったのは、まったく見られないことだったんです。もう再生回数10万回も間近ですよ。こんなに話題にしていただけてうれしいです」と同課の諸永裕一総括補佐は話す。

 「役所が発信するものってなかなか見てもらえないんですよ。分かりにくいし堅い上にどこに載ってるかわからないですもんね」(諸永さん)。日本のコンテンツなどを海外に売り込む「株式会社海外需要開拓支援機構法」(クール ・ジャパン法)公布を機に、改めて「クール・ジャパン」の趣旨を発信しようと考えた時、プレスリリースやWebページだけでは難しいのでは──と、内容を紹介する動画を制作しようと思い立ったという。イベントの報告などで映像を配信したことはあったが、法律の紹介として制作するのは初めての試み。1回見て印象に残るものを作ろうと思ったという。

 映像では、海外の消費者に「クール(cool)と感じられている日本のもの・サービス」として(1)漫画、アニメなどのコンテンツ、(2)生活雑貨やB級グルメなど衣食住産業、(3)温泉施設や旅館、ブライダルなどのサービス、(3)地域産品、(4)ファッション——の4つのカテゴリを紹介。政府と民間が合同で出資する、今秋設立予定の「株式会社海外需要開拓機構」(クール・ジャパン推進機構)と資金の流れについても説明する。道行く人への街頭インタビューや、同事業に関わる職員がホワイトボードを手に登場するシーンもある。

「実際、パワポです」

 映像は職員による手作り。コンテやプロットを坂本千典さん、映像編集を古屋星斗さんがそれぞれ担当した。2人は入省3年目の同期で、共にアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の大ファン。「コンテを上司に見せる時、さすがにやりすぎと言われるかなと思ったのですが、『いいじゃん』の一言で決まってしまいました」(坂本さん)

 案出しや撮影も含め完成までおよそ2週間ほどを費やし、就業時間外に「趣味と仕事の間として、スペック低めのPCでちまちまと」制作したという。普段は政策立案に携わる2人は映像制作に関しては当然素人。「この動画に一体どれくらいの税金が、というコメントも見られましたが、費やしたのはただただ僕らの汗水です」(古屋さん)

photo古屋星斗さん(左)と坂本千典さん。「一番好きなのは旧劇場版」(古屋さん)とのこと

 「パワポ企画書クオリティ」というコメントもあったが、「お察しの通り、コンテの段階からパワポ」とのこと。「素人作業ですし、厳しい言葉しか来ないと最初から思っていました。でも無視されるよりずっといい。『クールすぎて寒気がした』というコメントにうまいこと言うなぁと感心したり、『(実際のアニメと違って)フォントが太字じゃない』と指摘されて焦ったり。みなさんに見ていただいてありがたいです」(坂本さん)

 茂木敏充経済産業大臣をデフォルメしたゆるキャラも職員の手書きだ。イラストを担当した久保千尋さんは数パターンの「もてぎだいじん」をマウスで描いたという。「大臣には事後承認だったのですが、安倍総理もゆるキャラになっているので大丈夫かなと……。終始ご機嫌で、喜んでくれたようでよかった。『俺ってこんな顔か?』と笑ってました」(久保さん)

photo坂本さんの制作したコンテ。茂木大臣の写真部分には「キャラ化して可愛くします」というコメントが
photo“もてぎだいじん”は「マウスで描きました。ソフト? ペイントです」(久保さん)。候補となった他のキャラも見せてもらったが「大臣の許可を得てないので非公開」。

 「クール・ジャパンというと漫画やアニメを連想する人も多いと思うが、実際に省として取り組んでいるのはもう少し広く、ファッションや食文化、伝統芸能まで含めた日本文化の発信なので、映像ではその広がりを見せたかった。役所の中の人の姿はどうしても届きにくいので、職員にも登場してもらった」(坂本さん)

 「多様性を表現するためになるべく幅広いジャンルの写真を入れるよう気をつけた。実際映像を制作するとテレビやCMを見る目が変わる、当たり前ですが僕らが作るのと全然違う。プロがプロの仕事をきちんと果たせるようできるかたちで支援していくのが、自分たちの役目だと再確認した」(古屋さん)

「あなたの考えるクール・ジャパンとは?」

 公開にこぎつけた動画は初日で再生2万回を突破。同時期に公開された同様の広報動画と比較しても10倍以上だ。「公開して数時間で、広報室から『炎上してますけど取り下げますか』と電話が。部署内では『やりましたね!』『おめでとう』という空気だったのでギャップがありました(笑)」(諸永さん)

photo久保千尋さん

 辛らつな言葉を向けられることを予想しつつ動画を公開したのは、「改めて、あなたの考えるクール・ジャパンを問いかけたかった」からという。「自分の中にイメージがあるからこそ、『これはクールじゃない』『ダサい』という評価が出てくるはず。クール・ジャパンの言葉だけが1人歩きしていて誤解されている部分があるが、そもそも1人1人の感性や価値観は違って当然。こちらから一方的に定義付けるのではなく、みなさんの思う『クール』を拾い上げて生かしていきたい」(諸永さん)

 「『俺が作った方がまし』『これをクールなMADにリメイクするお題?』などのコメントをいくつも見て、よしよし、と思ってました。ぜひ作ってもらいたいですよね、『あなたの考えるクール・ジャパンて何ですか?』を考えるきっかけになれば大成功です」(久保さん)

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