前回の記事では、企業においてWindows XPからどのように移行していくのかを解説した。今回は、新しいOSの移行を何が阻んでいるのかを分析していこう。
IT部門の本質も問われる
Windows XPから新しいOSへの移行を阻んでいるものは、XPで動作している業務アプリケーションや、リプレイスに要するハードウェアやソフトウェアのコスト、手間などではないだろうか。
まず移行にかかるコストに関しては、企業の事情などもあり、一括に計上できないということがあるだろう。また、単にクライアントPCを入れ替えるだけでなく、サーバ側の対応、アプリケーションの改修や再開発など、ITシステム全体でも膨大なコストがかかる。ある意味、今後10年以上利用していくITシステムの姿を作り上げる必要が生じるわけだ。
理想としては、このような大きなビジョンを持ってITシステムを再構築していくことになるが、ビジョンを持ってITシステムを導入・構築しているという企業はそれほど多くはないだろう。大半の企業は、目の前の問題を解決していくだけでIT管理者の仕事量があふれてしまい、「そんなビジョンは無駄」と思っているかもしれない。ビジョンを持っていても、年間にIT関連にかけられるコストが限られている場合は、ビジョンを具体化するための資金が無く、日々のシステム管理やメンテナンスにコストが出ていってしまう。
会社の組織的な問題もあるが、IT部門が「便利屋さん」的な仕事になってしまっていることが大きな問題ではないか。欧米ではIT部門をプロフィットセンターとして考え、社内の各部門にITサービスを提供し、各部門から費用を支払ってもらうという形態になっている。こうなると、IT部門は社内の顧客である各部門にサービスを提供して、利益を生むことになる(社内の帳簿上だけでも)。日本ではアウトソーシングの流れに従って、社内のシステム部門を子会社化する動きがみられるものの、結局は親会社や関連会社の仕事にとどまり、立ち行かなくなった例も多い。
そこで日本的なIT部門としては、社内にいながら顧客(社内の部署)のITコンサルティングを行うようにし、顧客の満足度をどれだけ高めることができるかということが主眼となってくる。もちろん、日々の管理業務に関してはアウトソーシングやクラウドコンピューシングなどを利用することで、内部調達を行わないようにしていく必要があるだろう。
こういった部分は、企業の組織論になるため、本稿ではあまり踏み込まないが、根本的な部分として考えておくべきだろう。欧米では子会社化やアウトソーシング化していたシステム部門を2000年頃から社内に引き戻し、機動的なシステム開発が行えるようにしている。
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