米Adobe Systemsは今年9月にサイバー攻撃を受け、数千万人のユーザーに関する情報を盗まれたが、同社によれば、この問題に関するユーザーへの連絡に予想以上に時間がかかっているという。攻撃から10週間が経過した今もなお、この件について連絡を受けていないユーザーがいるということだ。
インターネット上には現在、Adobeから流出した大量のデータの一部が出回っており、まだAdobeからの通知を受け取っていないユーザーはオンライン詐欺やID盗難にあうリスクが高まっていることになる。
「これは大失態だ。誰でもこのリストにアクセスしてダウンロードできる。少しも秘密になっていない」。アンチウイルスソフトウェアメーカーである英Sophosの上級セキュリティアドバイザー、チェスター・ウィスニウスキー氏はそう指摘する。
Adobeの広報担当者、ヘザー・エデル氏によれば、Adobeは9月17日にこの攻撃に気付き、顧客への連絡はこの情報流出について10月3日に発表してから「すぐに開始した」という。
「メールでの通知に、予想よりも時間がかかっている」と同氏は語る。
「攻撃の影響を受けたメールアドレスを検証しなければならず、一度に送信する通知の数も制限する必要がある。メールプロバイダーにブロックされたり、スパムとしてタグ付けされたりしないようにだ」と同氏は説明を続ける。
同氏によれば、この攻撃でクレジットカード情報やデビットカード情報を盗まれた約290万人の顧客に対しては、既にメールと書面で連絡済みという。
「今は、当社サイトを利用する際に必要となるAdobe IDアカウントを持つ、その他数千万人のユーザーに連絡を行っているところだ」とエデル氏は語る。同氏は、実際に影響を受けたアカウントの件数については、現在も調査が継続中であることを理由に、具体的な数字の公表を断っている。
インターネットでは少なくともここ3週間、約1億5200万件のAdobe IDアカウントに関するデータを含むファイルが出回っている。その内容を確認した複数のセキュリティ企業によると、このファイルにはメールアドレスの他、暗号化されたパスワード、パスワードを忘れたときのための「パスワードのヒント」が含まれているという。
だがエデル氏によれば、攻撃されたデータベースは廃棄予定のバックアップシステムであったため、「1億5200万人のユーザーのアカウント情報が流出した」とするのは正確ではないという。
同氏によれば、漏えいしたデータには、現在は使われていないメールアドレスを含むものが約2500万件と、無効なパスワードを含むものが1800万件含まれるという。「アカウントはかなりの割合で偽物だった。無料のソフトウェアやその他各種の特典を入手するために、最初から使い捨てのつもりで設定されたものだ」と同氏は語る。
それでも、Sophosなどのセキュリティ企業の専門家は、パスワードのヒントを分析し、その他各種のテクニックを駆使して、ファイルに含まれる不特定数のパスワードの割り出しに成功している。
またFacebookなど一部の企業は、Adobeの顧客情報を含むファイルが広く出回ったことを受けて、このファイルに含れているのと同じアカウントとパスワードの組み合わせを自社のサービスでも使用しているユーザーの特定を進めている。
Facebookはその上で、該当するユーザーに対し、本人確認とパスワードの変更を求めている。
Facebookの広報担当者、ジェイ・ナンカロウ氏は次のように語る。「Facebookユーザーのアカウントが危険にさらされかねない状況には、積極的に対処する。たとえそれが、外部のサービスで発生した脅威であってもだ。そうした危険な状況を察知した場合は、該当するユーザーにメッセージを送り、アカウントのセキュリティ確保に努めている」
Sophosのウィスニウスキー氏は、情報漏えいに関するAdobeからの通知を装いつつ、実際には悪意のあるリンクを含んでいる詐欺メールに注意するようユーザーに呼び掛け、次のように語っている。
「悪い輩は、狙った相手がAdobeと関わりがあることを既に承知している。その分、だますのも簡単になる」
関連記事
- Adobeの情報流出で判明した安易なパスワードの実態、190万人が「123456」使用
Adobeから流出したユーザーのパスワードをセキュリティ企業が調べた結果、「123456」「qwerty」などの安易なパスワードを使っているユーザーが大量に存在することが分かった。 - Adobeへのサイバー攻撃、不正アクセスの影響は3800万人に
影響を受けたユーザーは当初290万人と発表されていたが、その後の調査で少なくとも3800万人に上ることが分かったという。
copyright (c) 2013 Thomson Reuters. All rights reserved.
(翻訳責任について)
この記事はThomson Reutersとの契約の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。
(著作権、商標について)
ロイター・コンテンツは、トムソン・ロイター又はその第三者コンテンツ・プロバイダーの知的財産です。トムソン・ロイターから書面による事前承認を得ることなく、ロイター・コンテンツをコピー、再出版、再配信すること(キャッシング、フレーミング、又はこれらと同等の手段による場合を含む)は明示的に禁止されています。トムソン・ロイターは、コンテンツの誤謬又は遅延、或いはコンテンツに依拠してなされたあらゆる行動に関し一切責任を負いません。 Reuters(ロイター)及びReuters(ロイター)のロゴは、トムソン・ロイター及びその関連会社の商標です。ロイターが提供するその他のメディア・サービスについてお知りになりたい場合は、http://about.reuters.com/media/をご参照ください。