3〜4年前は海外メーカーのケータイなんてほとんどなかった日本だが、スマホ/タブレット全盛時代の今は、海外端末のオンパレード。iPhone、iPad、Nexusシリーズなど、なんでもござれな状態だ。
聞くところによるとApple、Googleのお膝元である米国は、プリペイドのSIMカードを使ったデータ通信が驚くほど安いらしい。ということは、旅行に行ったら安価な高速データ通信が使い放題……地図もルートもグルメ情報もリアルタイムで調べ放題ということだ。それはもう“モバイルパラダイス”ともいえる状態だという。
しかし……筆者は、そのパラダイスに行ったことがない! フリーランス稼業ゆえにまとまった休みがとりづらいのが最大の理由だが、もう1つ「絶望的に英語がわからない」という事情もある。大学を卒業できたのが不思議なくらいの英語力しかなく、お釣りのことをchangeというのを知ったのは、つい1カ月ほど前というありさま。それゆえ、海外旅行を避けて通ってきたのだった。
ただ、近年のスマホ/タブレット事情を目の当たりにしていると、海外のモバイル市場をこの目で見たいとはやる気持ちを抑えられなくなってくる。それならばと一念発起し、ついに約13年ぶりの海外旅行を思い立った。
行き先はロサンゼルス(以下、LA)。飛行機に乗っている時間が北米地域の中では恐らく一番短いだろうという短絡的な理由だ。そして10月28日。いよいよ成田から飛び立った! 現地滞在期間は5日間。手元にあるのは3G対応のNexus 7(2012年モデル)とau版のiPhone 5。さて、これらを憧れのパラダイスで上手く使うことができるのだろうか?
英語力ゼロでもWiMAXルータは買える、えらく疲れるけど
モバイルパラダイスを堪能するため、最低限の下調べはしておいた。参考になったのがITmedia PC USERで山根康宏氏が連載している「海外プリペイドSIM導入マニュアル」のシカゴ2013年編だ。
街は違えど同じアメリカ。おそらく役立つだろうと思い、熟読した。どうやらVirgin Mobileの3G/WiMAXルータと料金支払い用プリペイドカードを現地で買えば、スマートフォンとタブレットの両方で使えて、なおかつお得なようだ。「とにかくコレを買おう」と心に決め、LAの地に降り立った。
Virgin Mobile製品を取り扱う販売店は、前もってホームページで調べておいた。ダウンタウン界隈では、山根氏の連載でも取りあげられていた電器店「RadioShack」系列の、MACY'S PLAZA店がほぼ唯一の取扱店。ホテルから30分ほどの道のりを歩いてみた。
とぼとぼ歩いて行くと、少しずつ人が増え始める。目的のRadioShackは、ダウンタウンでも特に人通りの多い、中心部的な場所にあるようだ。中を覗くと、さっそく目的のルータ「Overdrive Pro 3G/4G Mobile Hotspot」を発見! 価格は119ドルだった。女性店員に「May I Help You?」らしき言葉をかけられたので、ルータを指差し「Is this mobile hot spot?」なんて、中学生が聞いてもあきれるような低レベルの英語で質問。「Yes」ときたから「I buy」という、これまたわけのわからぬ英語で返答すると、在庫を持ってきてくれた。なんとかなるものだ。
そのあとも、まったく聞き取れない英語で話しかけられ続ける。聞き取れる単語を頼りにパスポートを出したり、クレジットカードを出したりして、何とか乗り切った。
途中、料金プランをプリペイドにする必要があったので「Top-Up Card,prease」と切り出したら、今度は支払う額の候補をいくつか提案されたので、そこから月35ドルのプランを選んだ。期間中の3Gの通信量は最大2Gバイト、WiMAXなら無制限。これなら、特に節約しながら使う必要はなさそうだ。
また、「アクティベーションどうする?」らしきことも聞かれたので、「アイハブマイPC」(自分でアクティベーションする、と伝えたつもり)という、これまたトンデモ英語で返答。店員は特に表情を変えることもなく、淡々と手続きしてくれた。
RadioShackで買い物を終えただけなのに、脳はもうヘトヘト。店の目の前にあったコーヒーショップで、えらく量の多いコーヒーを飲み、休憩。この苦労こそが旅の醍醐味、かもしれない。
アクティベーションで大苦戦! 結局は?
そんなこんなで買い物と観光を終え、ホテルへ戻る。今度はいよいよアクティベーション作業だ。購入したばかりのOverdrive Proをさっそく充電。その最中に、タブレットを使って作業を進めたのだが……これがうまくいかないのだ。
設定自体は難しくないはずだった。Overdrive ProのSSIDとパスワード(暗号キー)をタブレット側で入力。接続が完了したらブラウザを立ち上げ、ユーザー登録とTop-Upカードのシリアル番号を入力するだけだ。
しかし、どうしても途中で終了してしまう。「Oops! This Broadband2Go device Suspended.」という無情なコメントとともに、ユーザーサポート窓口の電話番号が出るだけで、その先に進めない。タブレットをノートPCに変えても当然ダメだ。身振りのコミュニケーションがやっとの旅行者が、英語でサポート窓口に電話できるはずもなく(その気力もない)、八方塞がりである。パラダイス妄想、ここに潰えたり……。
しかし、ここで終わるわけにはいかない。こちとら異国の地で165.79ドルも払ったのである。意を決して、翌日また同じRadioShackへ行き、返金なり使えるようにするなり、しなければ。そうして旅行1日目の夜は更けていった。
旅行2日目の朝。今度は地下鉄でRadioShackへ向かう。不幸中の幸いと言うべきか、店には昨日筆者の買い物を担当した店員がいた。そこで「I buy this mobile hot spot yesterday」「I can't activation」「Displayed error message」と必死に説明し、iPhoneで撮影したエラー画面を店員に見せる(今考えてもよく通じたなと思う……)。
店員も、最初のうちは「表示された電話番号に、製品のシリアルナンバーを伝えて」というようなことを言っていたが、それができないのである。とにかくもう何でもいいから「Please help」「English is very difficult」などと言っているうちに何とか思いが伝わったようで、サポート窓口への電話をお願いできた。
電話口でのやりとりを横で聞いてみると、つまるところ製品シリアルナンバーをサポート担当者に伝え、名前や住所の入力といったユーザー登録手続きを手動でやってもらったらしい。途中。店員さんが筆者に「ペン」というから、ペンとメモを用意したのだが、なにやら意味が分からない。またまたピンチ!
で、結局このオチは「ペンを出せ」ではなく「(ユーザー登録用の)PINを決めてくれ」と言ってくれていた……というもの。発音が流ちょうすぎてペンとピンの区別ができなかったのだ。
電話口でやりとりを代行してもらい、セットアップには持参していたノートPCを使ってもらった。途中、「中国語分からないから英語表示に切り替えて」という微妙に筋違いな難題を押しつけられつつも、結局はOverdrive Proのセットアップ画面を見せたら、何とかなった。ただ、Windows 8.1にアップグレードしたばかりのノートPCだったためか、途中でスリープ復帰に失敗したり、余計な手間もかかってしまった。
そんなこんなで約1時間。ついに……セットアップが完了した! iPhone 5でもNexus 7でもノートPCでもすべて通信ができた。店員さんは作業が終わった途端に、「Have a nice day.Good bye」と言ってお店の奥に引っ込んでしまった。いや、ほんと心苦しかった……。
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