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切手と世界人口から読み解く情報セキュリティのオキテ

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 今回は筆を休めるという程の事ではないが、最近筆者が気になったことについて、気楽に読める内容でお届けしたい。なお、以降はあくまで筆者の私見であることをお断りしておく。

大学の講演にて

 今年の夏に某大学で特別講演を行った。たしか「真夏の怪談:恐ろしい情報セキュリティ」とかいう題材だった思う。その講演を聴講した一人の学生がメールをくれた。はじめは情報セキュリティに関する素朴な質問についてだったが、ある時「地球環境の講義がありました。そこで世界人口が急増しているのです」というメールを送ってきた。

 その講義では地球の世界人口が以下のように変化したと説明されたらしい。

  • 1800年 10億人
  • 1900年 20億人
  • 1960年 30億人
  • 1974年 40億人
  • 1987年 50億人
  • 1999年 60億人
  • 2006年 65億人
  • 2011年 70億人

 彼はメールで、「この数字はすごいですよね。これについて、ほかの人がほとんど指摘していないことや気が付いたことがありますか」と質問してきた。

 そこで筆者は、同じ統計数字として40年以上も切手コレクターをしている友人を例に挙げた。友人がいうには、親戚のお土産でもらった「使用済み世界の切手50種」がきっかけになった。その後、だいたい10年で1000種、20年で3000種、30年で4000種、そして40年以上の現在では4500種も収集している。昔は種類を競っていたが、今では自分がほしいテーマの切手や珍品などを集めているので、種類の数はそれほど増えていないという。だが思い入れもあるので、処分するつもりはないらしい。

 学生が質問した世界人口と友人が集めた切手の種類は、どちらも「数」と「時間」の2次元の表で表すことができる。この2つの本質的な違いとはなんだろうか。筆者が学生に「どう考えるか?」と尋ねた。

 ところで、情報セキュリティには「アンテナを高くし、物事の裏、本質を常に考えて結論につなげる」という原則がある。これはセキュリティに限らないが、筆者が30年近くこの仕事に関わってきて痛切に感じていること。そういう意味もあって、学生に尋ねてみたのである。

 2日ほどして学生から回答が来た。しかもメールではなく、たまたま用事で上京したというので、彼と東京駅の喫茶店でお会いした。その答えは、一般的なものと筆者が期待したものとが混在していた。例えば、「時間軸と数量の単位が違いすぎる」「切手には上限があるが、人口には原則として上限がない(地球の質量を上回る人数とか、消費酸素量とかといった他律的な上限はあるが)」「数値のコントロールは、切手なら収集家の判断でできるが、人口はそうはいかない」「現在までの増加率の曲線の傾きが全く違う」などである。

 筆者の期待する答えからはまだ遠く、まあ35点といったところだと伝えた。すると、すかさず彼は、「萩原さんならどう答えますか」と聞いてきた。彼としては2日間まじめに考えてきたので、これ以上は降参ということなのだろう。

 筆者は彼に、「世界人口の数値をよく感じとってほしい。例えば、1900年に20億人だったが、2011年に70億人になった。ほとんどの人は、111年間で50億人も増加したと考えるだろう。それは事実だ。でも、その数字の捉え方は一面的ではないだろうか」と告げた。

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