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“スマホでカーナビ”を拡大するドコモとパイオニアの狙い

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 NTTドコモとパイオニアは11月14日、スマートフォン向けの交通情報サービス「ドコモ ドライブネットインフォ」を発表した。12月中旬から、ドコモのAndroidスマートフォン向けに無料で提供する。対象は10月10日に発表した2013年冬-2014春モデル以降の機種。

photoドコモ 代表取締役副社長の岩崎文夫氏(写真=左)と、パイオニア代表取締役 兼 社長執行役の小谷進氏(写真=右)

 ドコモ ドライブネットインフォは、現在地をもとに周囲の地域情報や、ユーザーから寄せられた渋滞情報などを表示するアプリ。スマホを使った通話やメール(SMS)の送受信、音楽の再生などもできる。「しゃべってコンシェル」の仕組みを使った音声認識技術が使われており、話しかけることで操作できるのが大きな特徴だ。なおドライブネットインフォ単体では経路検索ができず、ナビを利用するには別途「ドコモ ドライブネット」が必要になる。

photophoto「ドコモ ドライブネットインフォ」
photophoto話しかけることで、音声通話やメール(SMS)の送受信、音楽の再生などもできる

 ドコモ ドライブネットは、ドコモとパイオニアが共同で提供しているスマホ向けのカーナビゲーションサービス。月額315円の有料サービスだが、スマホで本格的なナビ機能を利用できる。12月中旬に“ドコモ ドライブネット”として複数のサービスが始まることから、従来のドコモ ドライブネットは「ドコモ ドライブネットナビ」に名称を変更。またドコモ ドライブネットナビのiPhone 5s/5c対応もアナウンスされた。なお、ドコモ ドライブネットインフォのiPhone対応は「検討中」だという。

photophotoドコモのiPhone向け「ドコモ ドライブネットナビ」
photophotophoto同時に発表された「スマートフォンホルダ01」。NFCチップが内蔵されており、ドライブネットインフォをインストールしたNFC対応スマホを置くと、自動でアプリが起動する
photo高精度のナビ機能を提供する「カーナビ用センサーユニット01」。2012年6月に発売した「ドライブネットクレイドル 02」に付属するセンサーユニットと同じ仕様のものだ。今回はより低コストで使い始められるよう、ホルダとセンサーユニットを別売りするという

カーテレマティクスに参入するドコモの狙いとは

 ドコモは5月、カーテレマティクス分野への本格的な事業参入を目的に、パイオニアと業務・資本提携を結んだ。6月末にはパイオニアが行なった約50億円の増資を引き受け、ドコモがパイオニア株式の約7%を取得している。ドコモと提携したパイオニアは、カーナビゲーションシステムなどの車載機器やスマートフォンが取得した位置情報を集め、高度な交通情報を生成できる交通クラウド基盤「モバイルテレマティクスセンター」を構築。ドコモ ドライブネットインフォは、このモバイルテレマティクスセンターを活用するサービスの1つでもある。

photophotoドコモ ドライブネットインフォの特徴(写真=左)。パイオニアが構築したクラウド基盤と、ドコモのITSクラウドを活用する第1弾のサービス(写真=右)

 NTTドコモ代表取締役副社長の岩崎文夫氏は、「ドコモ ドライブネットインフォを通じて、カーライフでもスマートライフを実現したい」と意気込みを語る。ドコモが掲げるスマートライフとは、モバイル技術を応用した新しいライフスタイルのこと。ドコモはネットワークとスマートフォン、そしてユーザーの行動支援を行なうサービスを提供することで、その実現を目指している。というのも、今後のモバイル市場では、キャリアが提供する端末や回線、料金だけでなく、サービスによる差別化が重要になるためだ。

photoドコモは、ドライバーにもスマートライフの提供を目指す

 ただドコモ ドライブネットは、単なるスマホ向けのサービスではなくM2M(機器間通信)の取り組みの一環として位置づけられている。岩崎氏は「M2Mは産業分野のほか、フォトパネルなどのコンシューマー向け、そして自動車向けが考えられる。ドライバーと自動車、自動車と自動車を結び付け、さまざまな情報をクラウド上に蓄積・解析してマッチングする情報やコンテンツをドライバーに提供できれば、より便利で安全で楽しいドライブが実現する」と狙いを説明した。

 ドコモは自動車向けサービスの提供に向け、専用のITSクラウドを開発。ドライブ中に音声でサービスを利用できるよう、しゃべってコンシェルのエンジンを使ったクラウド基盤を構築した。もちろんパイオニアのモバイルテレマティクスセンターとも連携しており、ドコモ ドライブネットなどのサービスやコンテンツは2社の綿密な連携によって提供されている。またコンシューマー用途だけでなくビジネス向けも検討しているという。具体的には、自動車の走行状態に合わせた整備やカー用品の販売・レコメンド、また自動車保険向けに事故対応時のサポートを行なうことなどが考えられている。ドコモとパイオニアはこうした市場の確立を目指して、自動車整備業者やカー用品店チェーンらと「次世代オートアフタービジネス研究会」を9月に発足させた。

既存のナビ事業に影響は? パイオニアがスマホに注力する理由

 かたやパイオニアの狙いはどこにあるのか。パイオニア代表取締役 兼 社長執行役の小谷進氏は、「モバイルネットワークの整備で移動中でも情報が入手しやすくなり、クラウドを使ったサービスの提供が当たり前になった。カーエレクトロニクス市場にも大きな影響があり、これからは“つながるクルマ”を前提とした新たな事業機会を拡大したい」と話す。

photophotoパイオニアの「モバイルテレマティクスセンター」(写真=左)。コンシューマーだけでなく、幅広い業界での利用を想定している(写真=右)

 小谷氏がいう“つながるクルマ”とは、車載機器をネットにつなげるだけでなく、車のソーシャルネットワーク化を進め、車載デバイスによる真のエージェントサービスを目指すというもの。例えばドコモ ドライブネットインフォはユーザーが投稿した渋滞情報を、別のユーザーが参照できる。こうしたSNSを使ったユーザー同士の情報共有を通じて、総合的なドライブ情報を提供したい——という考えだ。それを支えるのがモバイルテレマティクスセンターだが、ドライブネットインフォでの利用はその一端でしかない。パイオニアもドコモと同様に、幅広い業界での利用を目指している。

 そこで気になるのが、従来型ナビとの競合。スマートフォンを使った通信型のナビが増えることで、パイオニアが手がけるナビ専用機の売り上げに影響は出ないのだろうか。しかし小谷氏は「スマホのナビが普及しているが、市場環境の変化は追い風」と話す。

 「弊社の国内向け事業はFIX(ダッシュボードに固定するタイプ)が中心で、この市場はしっかりとした需要があり、これが今すぐスマホ化することはない。スマホで影響を受けているのは、PNDタイプだろう。PNDについては我々は後発であり、むしろスマホを使ったナビでPND市場のシェアを獲得していきたい。ただPNDも一定のシェアがあり、欧州では大きな市場がある。PNDの新規開発をやめるわけではない」(小谷氏)

あえて無料で提供する理由とは

 ドライブネットインフォの背景にある、ドコモとパイオニアのクラウド基盤。いわゆるビックデータを使ったビジネスであり、利用を拡大するには豊富なデータと正確な分析が必要になる。

 ドコモの岩崎氏はドライブネットインフォが無料の理由について、「ユーザーが増えると、クラウド側にさまざまな位置情報がアップされ、精度が上がっていく。そうした狙いもある」と説明。また有料サービスのドライブネットナビへの誘導経路になることにも期待を込めた。

 「そのためには、スマホでこうしたサービスがつかえることを広めたい。目標は特に決めていないが、1つの尺度として早急に100万ダウンロードを目指したい」(岩崎氏)

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