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世界最速“70ppm”ビジネスインクジェットで国内法人プリンタ市場を狙うHP

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日本HPが国内ビジネスプリンタ市場に本格参入

 日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は11月19日、法人向けA4インクジェット複合機/プリンタ「HP Officejet Pro X」シリーズを発表した。印刷速度が最大70枚/分という、オフィス用デスクトッププリンタとしては世界最高速のスピードを実現したのが特徴だ。

 単機能プリンタと、プリンタ/スキャナ/コピー/ダイレクトプリント/FAXなどの機能を搭載する複合機のそれぞれに印刷速度の異なる2モデルを用意。毎分70枚印刷が可能な複合機「X576dw」と毎分55枚の複合機「X476dw」、毎分70枚のプリンタ「X551dw」と毎分55枚のプリンタ「X451dw」というラインアップになる。直販サイトのHP Directplus価格は、順に9万7125円、8万6625円、7万3500円、6万1950円。11月28日に発売される。

og_hp_001.jpgog_hp_002.jpgA4ビジネスインクジェット複合機の上位モデル「HP Officejet Pro X576dw」と、単機能の上位モデル「同X551dw」(写真=左)。複合機の下位モデル「HP Officejet Pro X476dw」と、単機能の下位モデル「同X551dw」(写真=右)。上位モデルはカラー、モノクロともに世界最速の70枚/分の印刷速度を実現したのがトピックだ。なお、給紙枚数は手差し50枚+標準トレイ500枚に加え、オプションでもう1段トレイ(500枚)を追加できる。本体サイズは、複合機が517(幅)×399(奥行き)×517(高さ)ミリ、単機能モデルが517(幅)×399(奥行き)×414(高さ)ミリ

 同日行われた製品発表会では、日本HP取締役副社長の岡隆史氏が登壇し、法人向けプリンタ事業に対する意気込みを語った。

og_hp_003.jpg日本HP取締役副社長の岡隆史氏

 HPにとってプリンタ事業は年間売り上げで2兆円を超えるコアビジネスだ。岡氏は「プリンタの歴史を振り返ると、初のインクジェットプリンタや、小型なデスクトップタイプのレーザープリンタを世に送り出したのはHPだし、それをカラーにし、大判に展開してきたのもHP。最近では片手で持ち運べるモバイル複合機なども提供している」と紹介し、プリンタ分野で常にHPが技術トレンドをけん引してきたと説明。「商品の印刷からバスのラッピングまで、人々が気付かないようなところまで、当たり前のようにプリンタが使われているが、そうしたバックボーンをHPのプリント技術が支えている」と述べ、家庭用のインクジェットからデジタル印刷機まで、あらゆるセグメントでシェアNo1の座にいるとアピールした。

 しかし、HPがグローバルのプリンタ市場で大きなシェアを占める一方、日本国内ではそれほど存在感を示せていない。デジタル印刷機の分野でこそ国内シェア75%と、グローバルを上回る高い数字を持つが、それ以外のインクジェットではグローバルの47%に対して国内では10%、大判では52%に対して22%、そして最も苦戦している法人向けレーザー市場ではグローバルで36%なのに対し、わずか0.2%にすぎない。これまで日本HPの国内向けプリンタ戦略がコンシューマーを主軸に展開してきたのも要因の1つだ。

 ただし、今回新たに投入するビジネスインクジェット機「HP Officejet Pro X」シリーズによって、こうした状況を大きく変えていけると岡氏は期待する。同氏は「現在HPは“Ink in the Office”というキーワードで、インクジェットをオフィスに広げていこうと世界的に力を入れているが、(国内で苦戦している)SMB/SOHOや部門プリンタといった分野でようやく戦える製品が出てきた」と述べ、ギネスが認定する世界最速の印刷速度を実現した「HP Officejet Pro X」と、印刷コストを引き下げる定額制の新サービスの2つを武器に、「一般的にオフィスプリンタはレーザーだと認識されているが、これをインクジェットで塗り替え、オフィスプリンタの常識を変えていく。日本で企業向けプリンタ事業を本格展開していくことを宣言する」と力強く語った。

og_hp_004.jpgog_hp_005.jpgプリンタの歴史をひもとくとHPがその技術をリードしてきた。現在も幅広い分野でHPのプリンタ技術が使われている

og_hp_006.jpgog_hp_007.jpg製品発表会には、IDC Japanの石田英次氏も登壇し、「ビジネスインクジェットは『レーザーの壁』を打ち破ることができるか?」と題して、国内ビジネスインクジェット(BIJ)市場の概況を説明した。同氏は、現在のビジネスプリンタ市場におけるインクジェットの影響力はまだそれほどないものの、ページボリュームにみる比率は成長基調にあり、今後“レーザーの壁”を打ち破っていくためには、ビジネスインクジェットに対する速度/品質の古いイメージなど、ユーザー意識を変えていくことが必要だと訴えた

シングルパスのプリントヘッドで世界最速を実現

og_hp_008.jpgHP Officejet Pro X開発責任者のブラッド・フリーマン氏

 HP Officejet Pro Xの技術的な説明は、開発責任者のブラッド・フリーマン氏が担当した。同製品最大の特徴である高速印刷は、4万2240個のノズルをラインで配置し、シングルパスで4色(YMCK)ページ幅印刷を行うプリントヘッドで実現している。プリントヘッドが左右に動く必要がなく、紙送りの速度で印刷できるのが利点だ。4万2240個というノズルは、初代「Thinkjet」のプリントヘッド(12ノズル、印刷速度毎分1枚)に比べれば3520倍にあたる。

 フリーマン氏はムーアの法則になぞらえて「HPのインクジェットプリントモジュールも同様に18カ月の2倍のパフォーマンスを達成している。ビジネスプリンティングにおいて、我々の目的は他社と競合することではなく、まったく革新的な製品を開発すること。そこで(HP Officejet Pro Xでは)世界最速の印刷速度とファーストプリント、消費電力、印刷コストで2倍、または半分という「2」の数字を目指した。また、耐水性や接続性、信頼性においても大きく改良した」と説明する。

og_hp_008b.jpgHPのインクジェットプリントモジュールもムーアの法則のようにパフォーマンスを向上してきたという

 高速印刷の実現には、膨大なデータ(1秒あたり10億ビットのデータがノズルに送られている)を処理する2つのデジタルASICや、新開発の顔料インクも貢献している。これまでの染料インクでは、紙の中にインクが浸透してしまい、にじみや裏写りの原因になっていたが、用紙の表面に素早くインク層を形成する顔料インクなら、シャープで鮮明な文字や豊かな色合いを表現でき、レーザートナー並みの黒の密度を実現できるという。同氏はインクの速乾性や耐久性を示すために、HP Officejet Pro Xで印刷された紙に水をふりかけ、文字がにじみにくい様子をアピールした。

 このほか、ビジネス向けプリンタとして、印刷品質を保つための自動ノズルテスト機構(BDDもユール)や、大容量のインクタンクシステム(黒9200枚/カラー6600枚)も目を引く。特に新しいインクシステムでは、印刷コストがモノクロ1.5円/枚、カラー7.5円/枚と、10万円前後のレーザープリンタと比較して40〜50%ほど低いという。

og_hp_009.jpgog_hp_010.jpgシングルパスでページ幅印刷を行う新開発のプリントヘッド(写真=左)。大容量の4色独立インクシステムはワンプッシュでカートリッジを着脱できる(写真=右)

og_hp_011.jpgog_hp_012.jpgフリーマン氏によるデモ。水をかけてもにじまないとアピール(写真=左)。実際に水をかけてみたが、確かににじみが少ないように見える(写真=右)

 なお、国内の販売に当たっては、HPが推奨する印刷枚数内であれば契約期間中のインクと本体保守が使い放題になる、定額パックサービスも提供する。インク残量が20%を切ると自動的にコールセンターへメールを発信して交換用インクが送られてくるため、メンテナンスの手間を省けるだけでなく、定額制であることから消耗品のコストをあらかじめ明確できるというメリットがある。定額パックはライト(年間12万6000円)と標準(年間22万500円)の2種類があり、それぞれ推奨月間印刷枚数が2000枚と4200枚。モノクロでもカラーでも同じ印刷コストになるため、カラー印刷を多用する人にお勧めという。

og_hp_013.jpgog_hp_014.jpg各ラインアップとサプライ品の価格

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