半導体メーカーのFreescale Semiconductor(以下、フリースケール)が開催するロボットカー競技会「The Freescale Cup(フリースケール・カップ)」の世界大会が、2013年8月22〜23日にかけて中国のハルビンで開催された。
日本代表の東京大学チームは、前日練習までにハプニングが続き、本戦に向けたロボットカーの調整に向けた作業を順調に進められなかった。まさにアウェーの洗礼と言っていい。前回の前日練習までの様子に続き、今回は本戦の結果についてお伝えする。
本戦結果の前にルール確認
本戦結果の前に、フリースケール・カップがどういったロボットカー競技会なのかを簡単に説明しておこう。
フリースケール・カップでは、一般的なロボットカー競技会と同様に、あらかじめ決められた範囲内の部品を使用してロボットカーを開発する。フリースケールの32ビットマイコンを搭載する制御ボードや、モーターを駆動するアナログボードの他、実車の8分の1スケールのシャシー、タイヤ、競技コースの車線を認識するためのラインカメラモジュール、競技コースを照らすLEDライト、走行用のモーター、出力電圧7.2V/容量3000mAh以下の二次電池モジュール(ニッケル水素電池もしくはニッカド電池)などを使用する。
開発したロボットカーは、競技コースの中央を走る車線をラインカメラで認識しながら自律走行することになる。参加チームは、ロボットカーの走行タイムを競うわけだ。
ここまでの説明だけを見れば、フリースケール・カップは他のロボットカー競技会とほぼ変わらないように思える。しかし、その最大の特徴は競技コースにある。
一般的なロボットカー競技会は、競技コースの詳細が参加チームにあらかじめ知らされている。各チームは、その競技コースで最大の能力を発揮できるようなロボットカーのハードウェアや制御ソフトウェアを開発することになる。
一方、フリースケール・カップの競技コースは、中央に黒色の車線が引かれているさまざまなタイルを組み合わせて作られる。競技コースのタイルは、直線やカーブ、交差路、シケインの他に、表面がでこぼこで安定走行が難しいものや、斜度が15度以内の傾斜路などが用意されている。ただし、競技コースのレイアウトは、大会直前まで参加チームに知らされない。つまり、参加チームは、どんなレイアウトの競技コースであっても速く走行できるようなロボットカーを開発する必要があるのだ。
搭載ボードの違いによる差
フリースケール・カップの世界大会は、日本大会からレギュレーションが一部変更されている。日本大会では、自動車のボディ系システム向けの32ビットマイコン「MPC5604B」を搭載する評価ボード「Bolero(ボレロ)」と、ボレロに対応するアナログボードの使用が義務付けられていた。これらが「フリースケールの32ビットマイコンを搭載する制御ボードと対応するアナログボード」に変更されたのだ。
変更の理由は、世界大会に参加する9カ国のうち、5カ国の予選で異なる評価ボードとアナログボードを使用していたためだ。この異なる評価ボードとは、ARMの32ビットマイコン向けプロセッサコア「Cortex-M0+」を用いた「Kinetis Lシリーズ」を搭載する「Freedom(フリーダム)」である。
ボディ系システム向けマイコンのMPC5604Bと汎用マイコのンKinetis Lシリーズは、プロセッサコアや動作周波数、メモリ容量などに違いはあるものの、処理能力はほぼ同じと言ってよい。しかし、ロボットカーの性能を左右する、もっと大きな差が存在する。フリーダムボードは、ボレロボードと比べてサイズがかなり小さいのである。
対応アナログボードも含めれば、重量とサイズの違いは相当なものになる。ロボットカーに使うシャシーやモーター、電池、タイヤなどは同じものを使うことを考えれば、より小さいフリーダムボードの方が、ロボットカーを軽量かつ低重心にでき、競技を有利に進められる。
今回の世界大会に参加する各国チームのロボットカーについて、使用するボードの種類によって分けてみた。
[フリーダムボードを使用]
- 米国代表:カリフォルニア大学バークレー校
- 台湾代表:国立台湾科技大学
- マレーシア代表:スインバン大学
- EMEA(欧州、中東およびアフリカ)代表:スロバキア工科大学
- 中国代表:北京科技大学と中南民族大学(決勝参加チームを本戦前の準決勝で決定)
[ボレロボードを使用]
- 日本代表:東京大学
- インド代表:バンナリ・アンマン工科大学
- メキシコ代表:メキシコ国立工科大学
- ブラジル代表:サンパウロ大学応用科学部
今回の世界大会は、こういったハードウェア面における性能差を容認した上で実施されているのだ。
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