音声通話、特に“かけ放題”の定額通話を主なサービスを提供してきた、これまでのウィルコム。だが2013年夏モデルからは、PHSと4G(AXGP)に対応した「DIGNO DUAL 2 WX10K」と、月額1980円(キャンペーン時)からのパケット定額料「ウィルコムプランLite」を投入するなど、スマートフォンに注力する姿勢を示している。同社のスマートフォンに対する新しい取り組みについて、料金と端末、それぞれの担当者に話を聞いた。
“3人家族で1万円”を実現する料金プランを
Windows Mobileを搭載した「W-ZERO3シリーズ」以降、再びスマートフォンに力を入れ始めたウィルコム。PHS通話ができるスマホとしては、2012年6月にPHSと3Gのデュアルモードに対応した京セラ製のAndroidスマートフォン「DIGNO DUAL WX04K」を発売している。ただ、月額基本料980円+パケット通信料5460円の専用プラン「ウィルコムプランD」を導入したことから、今後もこの料金プランに沿った展開がなされると考えられていた。
だが2013年夏からは、従来の半額近い2980円のパケット定額料で、PHS/3G/4G(AXGP)全てのデータ通信が利用できる新料金プラン「ウィルコムプランLite」を提供。さらに、契約後6カ月間はキャンペーン価格として月額1980円とするなど、低価格路線に大きくかじを切った。また、だれでもスマートフォンを意味する“だれスマ”というキャッチコピーを掲げ、料金面のお得さを強く打ち出してアピールを積極化している。
この料金設定についてウィルコム マーケティング本部 サービス企画課課長の野澤真弥氏は、「実はウィルコムプランDと、ウィルコムプランLiteとでは料金の考え方が違う」と話す。もともとのウィルコムプランDは、同社の人気サービス「だれとでも定額」をスマートフォンで使えるようにするために企画されたものだった。しかし、今回のウィルコムプランLiteは、通常、月額7000〜8000円はかかるスマートフォンのパケット通信料を下げ、より多くの人がスマートフォンを持ちやすくするべく企画されたのだという。
この料金を設定する上で、特に意識したのは「3人家族が持っても1万円で収まること」(野澤氏)。新規契約の場合、現在提供されている「もう1台無料キャンペーン」を適用すれば、副回線となる2〜3回線目は月額基本料が無料となり、ウィルコムプランLiteを家族3人で契約しても1万円をやや上回る額に収まる。さらにキャンペーンを適用すると、パケット定額料が6カ月間1980円で利用できることから、一層お得になる計算だ。
ウィルコムプランLite | ウィルコムプランD+ | |
---|---|---|
基本使用料 | 月額980円 | |
Web接続料 | 月額315円 | |
パケット定額料(通常) | 月額2980円 | 月額5985円 |
パケット定額料(キャンペーン) | 月額1980円 | 月額5460円 |
PHS音声通話 | ウィルコムあて:無料 | |
他社ケータイや固定電話あて:21円/30秒 | ||
3G音声通話 | ウィルコム、他社ケータイ、固定電話あて:21円/30秒 | |
MMS | 無料 | |
SMS | ウィルコム、ソフトバンクあて:無料 ソフトバンク、ディズニー・モバイル・オン・ソフトバンク以外の携帯電話あて:3.15円/通 | |
通信速度制限 | 1Gバイト | 7Gバイト |
とはいうものの、ウィルコムプランLiteのパケット定額料は最大1Gバイトまでと、他社のパケット定額サービスよりも容量制限が厳しく、月間1Gバイトを超えた場合は通信速度が128kbpsに低下してしまう。容量制限を1Gバイトに設定した理由について、同 マーケティング本部 サービス企画部 サービス企画課の赤岸亮氏は、「現在のユーザーの利用状況から、多くの人にとって、これくらいあれば足りるだろうという容量を決めた」と説明する。
ちなみにウィルコムでは、容量制限を超えた場合の制限解除料が0.1Gバイト(100Mバイト)当たり315円と小刻みに設定されている。これは容量制限の上限が1Gバイトと低いことから、より気軽に追加チャージできるようにしたい考えがあったという。
新料金プランで狙うフィーチャーフォンユーザーの底上げ
ではなぜ、ウィルコムは低価格なスマホの料金プランを提供するのだろうか。その1つが、フィーチャーフォンからスマートフォンへ乗り換えるユーザーの存在だ。多くのユーザーがスマホへ移行しているとはいえ、通話料やパケット料のコスト上昇を気にしてスマホ移行をためらう人も多い。低価格によって、ウィルコムユーザーはもちろん、ライバル他社を含めた“乗り換え予備軍”を取り込みたい狙いがあるという。
であれば、他社が従来提供していた、無料通話分付きで通話料が安くなる料金プランを提供するという手も考えられる。しかし赤岸氏によると「やはりウィルコムは“だれとでも定額”が強いので、そちらを訴求した方がよいという判断になった」という。ウィルコムとして、通話を安価に利用したい人には“だれ定”を勧める方針のようだ。
そしてもう1つの狙いが、ウィルコムのフィーチャーフォンでパケット定額サービスをフル活用しているユーザーを、スマートフォンに移行させること。例えば音声端末向け料金プラン「新ウィルコム定額プランS」「新ウィルコム定額プラン」では、パケット通信料の上限が2800円に設定されており、ウィルコムプランLite(2980円)とあまり差がない。あえて近い価格帯に設定することで、スマホ移行をスムーズに進めたい考えだ。
スマートフォンをライトに利用する場合に魅力的なウィルコムプランLiteだが、契約期間は3年間であり、契約中の解除には9975円の手数料がかかってしまう。特にスマートフォンは進化のスピードが早く、端末の陳腐化が激しいだけに、同じ端末を3年間使い続けるのは厳しい——というユーザーも多いだろう。この点について野澤氏は、「契約自体は3年、端末の割賦は2年で完了するので、同じ料金プランを維持しつつ機種変更をする分には、解除料の影響を受けることはない」と説明する。
そしてもう1つ気になるのが、ウィルコム同様ソフトバンクグループの一員となった、イー・アクセス(イー・モバイル)との棲み分けだ。イー・モバイルも、月額3880円でスマートフォンが持てることを売りにするなど低価格スマートフォンの積極販売を進めている。この点については野澤氏は、「両者の棲み分け方などは今後の市場動向を見ながら考えていくことになるのではないか」と述べた。
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