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“通話料を下げたい”に応えるPHS+4G対応モデル――だれスマ第1弾「DIGNO DUAL 2」はこう作られた

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 2013年夏モデルとしてウィルコムが発売した京セラ製の「DIGNO DUAL 2 WX10K」(以下、DIGNO DUAL 2)は、ウィルコム端末として初めてPHSと3G/4Gの2つの通信方式に対応した“デュアル”モデルだ。

photo「DIGNO DUAL 2 WX10K」

 DIGNO DUAL 2は2012年に同じくウィルコムが発売した「DIGNO DUAL WX04K」(以下、DIGNO DUAL)の後継機であり、ウィルコムスマートフォンのフラッグシップモデルという位置付け。DIGNO DUALは、PHSによる音声通話のほか、ソフトバンクモバイルの3G網を使う音声通話とパケット通信に対応していたが、DIGNO DUAL 2では新たにソフトバンクモバイルの4G通信(AXGP)にも対応した。

 ウィルコム同士であれば24時間無料となるPHSの音声通話と、それ以外の携帯電話や一般固定回線にも定額通話が行える「だれとでも定額」に加え、月額のパケット通信料が2980円になる新料金プラン「ウィルコムプランLite」も利用できる。

 OSはDIGNO DUALのAndroid 2.3からAndroid 4.2に進化し、操作性なども大幅に改善された。プロセッサーは1.5GHzデュアルコアのMSM8960を採用。ディスプレイは4.7インチのHD(720×1280ピクセル)TFT液晶を搭載し、おサイフケータイ、テザリング、防水(IPX5/IPX7)/防塵(IP5X)性能、ワンセグ、赤外線通信など日本向け機能を詰め合わせたまさに“オールインワン”スマホだ。

photo左から、京セラの川居氏と三田氏

 そんなDIGNO DUAL 2について、商品企画を担当した京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部 商品企画課の川居伸男氏と、デザインを担当した同社デザインセンター デザイン4課の三田真由氏に話を聞いた。

なるべく安くスマホを使いたいに人にメリットある端末を

photo商品企画担当の川居氏

 川居氏は、DIGNO DUAL 2について「ウィルコムが提供する『だれスマ』(新料金プランのキャンペーン)を活用したいユーザー向けに開発したもの」と話す。ウィルコムは2013年夏モデルの発表会で「スマホ戦国時代に参戦」することを表明。料金面はもちろん、端末の性能面でも、携帯電話キャリアのスマホと戦えるラインアップを目指した。その中でDIGNO DUAL 2は、DIGNO DUALにはなかった下り最大76Mbpsの4G通信に対応したことが大きなセールスポイントになる。

 「メインユーザーとして想定したのは、コスト意識が高い30代〜40代男性で、スマホの利用料金を下げたいユーザー全てが対象です。1Gバイトという制限はありますが、通話だけでなくパケット代も安く済ませたい人には、通信速度の速さと合わせて非常にメリットのある端末です」と川居氏。スマホ料金の高さを気にするユーザーを取り込みたいウィルコムの要望に応える形で、開発が始まったという。

 それでは京セラは、夏モデルの中でDIGNO DUAL 2をどう位置付けているのだろうか。川居氏は「私たちは最新のデバイスを盛り込んでハイスペックさを狙うというより、スマホの裾野を広げる役割を担っています。ウィルコムの中ではフラッグシップモデルですが、一番は使いやすさを重視して開発しました。ユーザーの中には初めてスマホを使う人も多いと想定していましたし、実際にそのようです」と話す。

 京セラ製スマホでは、ソフトバンクモバイルが2013年夏モデルとして発売した「DIGNO R 202K」もAXGPの4G通信(SoftBank 4G)に対応しているが、もちろんこちらはPHS通話には対応していない。しかしDIGNO Rは幅60ミリで重さ約94グラムの軽くてスリムなボディが特徴で、もしこのサイズ感でPHS対応のスマホが生まれれば、小柄な端末に慣れ親しんだウィルコムユーザーにとっては、乗り換え候補のスマホとして魅力的だ。

 川居氏はこれからのラインアップについて、「今後はウィルコム端末でもDIGNO Rのようなコンパクトな端末を検討したいです」と答えてくれた。将来的に、PHS通話と3G/4G通信を融合したコンパクトモデルが出ることを期待したい。

4G+PHSの“ニコイチ”を実現する難しさ

 DIGNO DUAL 2の開発では、PHSと3G/4G通信を両立させる技術的な難しさもあったと言う。「今回Qualcommのチップセットを使いましたが、同社の協力もあってPHSをサポートするベースバンドチップを搭載できました。また、(4G対応により)DIGNO DUALからアンテナが2本増えたので、その配置や電波の干渉など考慮すべき面が多く、綿密なシミュレーションも行いました。端末のエッジ部分にはほとんどアンテナが入っているので、握っても感度が落ちないレイアウトにするなど工夫しています」と川居氏は苦労を語る。

 PHSと3G/4G通信という2つのシステムを組み合わせる“ニコイチ”の実装についても「Qualcommのチップセットも、OSのAndroidも、もともとはPHSに対応していません。これに新しいシステムを追加するわけですから、手間暇かけて進めました。もちろん、ユーザーにとっては遜色ない使い勝手になっています」と川居氏は振り返る。

 今回DIGNO DUAL 2に追加された機能に、PHSの電話番号宛てに短いメッセージを送受信できる「ライトメール」がある。DIGNO DUALでは、開発期間の問題もあり実装できなかった機能で、ユーザーからの要望も多かったようだ。

 「多くのウィルコムユーザーが重視する機能なので、DIGNO DUAL 2ではぜひ対応したいなと。ライトメールはパケット通信ではなく音声通話の仕組みを使う点は3GのSMSに近いですが、SMSはあくまでサーバー型のサービスです。ライトメールはダイレクトなレスポンスなど、“つながる”便利さを体験できると思います」と川居氏は話す。

 技術面で手間と苦労がかかっているDIGNO DUAL 2だが、市場全体ではニッチなウィルコム端末でそれだけのコストに見合うだけの売上げが期待できるのか? という疑問もある。

 その点について川居氏は、「当然ながらビジネスなので、採算の取れないものは開発しません。リソースを効率的に活用しながら、ウィルコムの事業に貢献させていただいてます」と説明する。ウィルコム夏端末のフラッグシップモデルという位置付けなだけに、定額通話だけでなく4Gの高速通信を楽しみたい、またスペックの高さや機能の多さに期待するウィルコムユーザーも少なくない。コスト面を重視しながら、できる限りの作り込みがなされたようだ。「(京セラは)国内より海外向けモデルの部品供給のほうが多いので、そことのシステム共有や調達面でのスケールメリットがあります。スマホは共用できる部品が多いので、全体で効率化を図っています」(川居氏)と、グローバル展開でほかの国内メーカーと差別化できていることを明らかにした。

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