「Pro」の名を冠したVAIOノート、その開発秘話に迫る
「VAIO Z(Z2)」の発売から約2年、“薄型軽量”を追求したVAIOの新作が久しぶりに現れた。それがソニーの2013年PC夏モデルで目玉となる、モバイルノートPCの「VAIO Pro」だ。
ラインアップは11.6型モデルの「VAIO Pro 11」と13.3型モデルの「VAIO Pro 13」を用意しており、それぞれ11型クラス、13型クラスのタッチパネル搭載Ultrabookとして、世界最軽量(2013年6月10日時点、同社調べ)を誇る。さらに、薄型かつ高剛性のボディ、入力しやすいキーボード、色鮮やかなディスプレイ、長時間のバッテリー駆動など、単に軽いだけでなく、トータルバランスも重視した。
多くのモバイルノートPC愛好家が熱視線を送る、この新鋭Ultrabookはいかにして生まれたのか? 詳細なレビューは掲載済みだが、本特集では製品の開発コンセプトやデザイン、各部のこだわりを明らかにすべく、開発者の方々にロングインタビューを行った。特に内部構造は、開発者自身の手で実機を分解してもらいながら、じっくり確認していこう。
今回話を伺ったのは、開発を統括したプログラムマネージャーの宮入専氏、機構設計を行った渡村憲司氏、電気設計リーダーの小坂和也氏、そして商品企画を担当した城重拓郎氏の4名だ。宮入氏は「VAIO S」シリーズの開発者インタビューに続き、本企画で2度目の登場となる。
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パーソナルコンピューティングの激変期、PCはどうあるべきか?
ここ2〜3年の間に、PCより手軽に使えるデジタル機器のスマートフォンやタブレットが普及し、その影響を受け、PC用のWindows OSもタッチ操作に注力したWindows 8へ突然変異するなど、PCユーザーを取り巻く環境は大きく変化しつつある。
そこでソニーは、2013年PC夏モデル(VAIO Pro 11/13、そして同時発表のVAIO Duo 13)の開発テーマに「PCの再定義」を掲げた。コンテンツの閲覧ならば、スマートフォンやタブレットでも十分と考える層は増えつつある。だったら、PCならでは、VAIOならではの強みは何なのか? 開発チーム全体で検討を重ね、得られた結論は「何かを作り出すクリエイティブなツールであるべき」という基本的なPCのあり方を強化することだった。
もちろん、これは従来型のPCを作るという意味ではない。一般にPCよりスマートフォンやタブレットのほうが優れている、直感的なタッチ操作、スリープからの復帰やレスポンスの速さ、持ち運びやすさ、といった要素を可能な限り採り入れながら、PCとしての個性も際立たせるという「新時代のPC」を生み出すチャレンジだ。
もっとも、VAIOの製品ラインアップとしては、こうした時代のニーズに即応すべく、タブレット形状とノートPC形状を素早く切り替え可能で、ペン入力にも対応したコンバーチブル型Ultrabookの「VAIO Duo 11」(2012年10月発売)が先行して開発されていた。当然、2013年夏の新シリーズではこれと違う切り口が求められる。そこで商品企画の城重氏は、伝統的なクラムシェル型(貝殻のような2つ折り形状)を選択したうえで、「今だから作れる理想のモバイルPC」を突き詰めるべく、企画を立てた。それがこのVAIO Proだ。
同氏はこれまでにVAIOだけでなく、「Sony Tablet S」や「Xperia Tablet S」といったAndroidタブレットを手がけており、今回のクラムシェル型ノートPCでもその経験が生かされた。配慮したのは、全体のバランスだ。「クラムシェルのノートPCは、キーボードを軸とした生産性が最大の魅力。スマートフォンやタブレットの利便性を含みつつも、携帯性だけに特化して、PCの使い勝手が犠牲になっては意味がない。使い勝手を維持したまま、どこまで薄さや軽さを削れるか、よい部分を伸ばし、いかに研ぎ澄ませるか、そのかじ取りに苦労した」と語る。
開発を統括した宮入氏は、同時発表となった「VAIO Duo 13」とのすみ分けについて、「VAIO Duo 13は、ペンや紙のノートのような使い心地、リアカメラの活用など、新しいクリエイションの提案を独自のスライド型ボディとともに提供していく、いわばテクノロジーリーダー的な製品。対して、VAIO Proは、仕事を通じて何かを作り出していく幅広いユーザー層に向け、文書作成のしやすさ、薄型軽量、耐久性といった部分を徹底して作り込み、十分なパフォーマンスも兼ね備えたクラムシェル型ノートの最先端といえる製品」と説明する。
VAIO Proの“Pro”という言葉には、そうした「プロフェッショナルなユーザーがヘビーに持ち歩き、いつでもクリエイティブな発想を形にできるツール」という意図が込められた。
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