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jusの歴史からたどる日本のITコミュニティの道のり

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30周年を迎えたjus

 日本UNIXユーザ会(Japan UNIX Society:jus)は、1983年6月に設立された日本でも最も古いUNIX系ユーザーコミュニティの1つです。

 今年、その活動が30周年を迎えました。その記念として、会員向けに記念グッズの頒布(ストラップ)と販売(グラス)を行った他、jus定期総会に合わせて30周年記念イベントおよびパーティを、jus会員以外の方も参加可能な形で7月20日に都内で開催しました。今回はjusの30年の歩みと記念イベントについてレポートします。

jus、その30年の歩み

 jusは、UNIXおよびオープンシステムを中心とした計算機関連分野の技術/文化/産業の健全な育成を推進し、広く社会の発展に貢献することを目的に活動する非営利団体です。その歩みを、当時の主な動きとともに振り返ってみましょう。

UNIXのユーザーが集って始まった1980年代

 jusは、UNIXの普及を目的に、ベンダに依存しないUNIXのユーザーグループとして1983年(昭和58年)に発足しました。1970年代後半にUNIXが日本に伝来して数年が経ち、ベンダ各社からUNIXマシンが登場し始めた頃のことでした。

 発足当初(1980〜90年代初頭)のjusは、主にUNIX関連の研究成果の発表や各種UNIXマシンの相互接続性検証の場を提供する活動を行いました。当時まだインターネットもなく、UNIX関連の情報交換をするためにユーザー同士が集まって話をする場が必要とされている時代でもありました。中でも「UNIX Fair」は来場者数が最盛期には4万人に逹するなど、jusの開催するイベントは常に盛況でした。

 そして、これらイベントでの情報交換や相互接続検証などの成果がUUCPによるUNIXマシン同士の接続の拡大をもたらし、後のJUNET(Japan University NETwork)や日本におけるインターネットへの発展につながりました。

時期活動内容その他の出来事
1983年6月〜1995年7月jus UNIXシンポジウム(25回開催)-
1984年-JUNET運用開始
1984年9月〜2006年11月jus関西UNIX研究会(129回開催)-
1986年12月〜1995年12月 10回開催UNIX Fair(10回開催)-
1988年-WIDEプロジェクト開始
1988年6月〜jus X11 Working Group-
1988年7月〜USENIXとの提携-
1980年代に始まった主な活動・イベント

インターネット普及、勉強会が始まり活発化した1990年代

 90年代中期に入ってインターネットが一般社会にも普及し始め、PCで動作するLinuxやFreeBSDなど個人利用が可能なUNIX環境が登場すると、jusの活動は徐々に、従来の大規模で研究色の強いものから、「UNIXを日常的にどう活用していくか」という実用的なテーマにシフトしていきます。

 こうした中、「当時まだ高額だったUNIX関連のセミナーを、サラリーマンがポケットマネー(1000円〜3000円)でも参加できるものに!」という意図で始まったのが「jus勉強会」です。

 jus勉強会では、毎回テーマや講師を変えながら、

  • 初心者がつまづきがちなアプリケーション
  • ちょっと面白いUNIX関連技術
  • 知っていると便利なコマンド
  • 中級者になるための一歩

など、さまざまな話題を取り上げ続け、その開催回数は現在までに180回に逹しています。今から見ればまだまだ牧歌的な時代だったともいえる1996年12月に早くも「セキュリティの基礎/ファイアウォールの基礎」を取り上げるなど、多くの先進的なテーマを取り扱ってきたことがjus勉強会の大きな特徴となっています。

 また、この頃からUNIXとは異なるアーキテクチャを持つWindows系OSが急速に普及し始め、UNIX系OSとWindows系OSの共存が課題となってきました。これらの課題に対してWindows系ユーザグループとワークショップを共催するなど、jusは“UNIXユーザ会”の名前に囚われない、計算機関連分野の技術/文化/産業全般に対してその活動範囲を拡げていくようになります。

 その一環として、学術系の研究発表の場として1996年からInternet Conferenceに主催団体の1つとして参加、また実務系の最新情報交換の場として1997年からInternet Weekに参加団体として参加し、それぞれ現在まで継続的に参画しています。jusは学術と実務の両面からインターネットの発展を長期に渡って支援し続けているのです。

時期活動内容その他の出来事
1991年9月〜現在jus東海研究会-
1994年-Linux 1.0.0 リリース
-Netscape Navigatorリリース
1995年-Windows 95発売
1996年5月〜現在jus勉強会(180回開催)-
1996年7月〜現在Internet Conference(17回開催)-
1997年12月〜現在InternetWeek(参加団体として15回参加)-
1990年代に始まった主な活動・イベント

より上位レイヤへと範囲が広がった2000年代

 1990年代末から2000年代初頭にかけて、当時急速に裾野を拡げはじめていたオープンソースコミュニティにとって、大きな飛躍のきっかけとなるイベントが開催されました。1999年と2001年の2回開催された「オープンソースまつり」です。

 jusがぷらっとホーム、日本Linux協会と共催したこのイベントは、主要なオープンソースコミュニティが一堂に会する国内初のイベントだっただけでなく、オープンソースコミュニティが自分たちで会場の手配からその運営まで主導する、初の「オープンソースコミュニティイベント」といえるものでした。

 この「オープンソースまつり」で誕生した「オープンソースコミュニティの情報発信とつながりの場」は、「オープンソースカンファレンス(OSC)」に引き継がれ、現在も活発な情報発信と交流が行われています。

 2001年5月にjusがTokyo Perl Mongersと共催した「YARPC 19101」も、今のコミュニティイベントに大きな足跡を残したイベントとして記憶されています。当時まだ珍しかった複数のプログラミング言語(PerlとRuby)の交流イベントで、その後のLightweight Language(LL)イベントの原型となった他、現在の技術系イベントでは定番となっている「ライトニングトーク」が日本で初めて行われたイベントでもありました。

 この頃から、jusの活動はいわゆる上位レイヤ(プログラミング言語やユーザーアプリケーション)寄りの領域にも広がっていきました。各種プログラミング言語コミュニティとのコラボレーションイベントである「LLイベント」は第1回の参加者が150名でしたが、最盛期には1000名にもなり、当日会場で実際にコーディングを行う「その場でどう書く」というセッションや、プロレスリングを会場として利用するなどの野心的なアイデアに次々に取り組み続け、今年は11回目の開催を迎えます

 また、2004年には当時黎明期だったSNSについてサービス各社を招いてのパネルディスカッションを、2006年には提供ベンダ各社を招いてシンクライアント体験ワークショップを、2010年から2011年にかけては日本Androidの会と共同で携帯型情報機器のためのイベント「Gadget1」を開催するなど、よりエンドユーザーに近い領域でのイベントも積極的に開催しています。

 その一方で、地域コミュニティとの連携にも取り組んでいます。毎年関西地域で開催されている「関西オープンフォーラム」に主催団体の1つとして参加している他、2007年からは「jus研究会 JAPANTOUR」と称して全国各地域で旬なネタを東京から持ち込んだセッションや、現地の方を講師にした発表の場の提供にも取り組んでいます。

 この他にも、jusが発足当時から得意としていたネットワーク管理やシステム管理領域への取り組みとして、日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG) meetingへの協力、2008年からIPv4アドレス枯渇対応タスクフォースへの参加(2010年度情報通信月間総務大臣表彰)、2009年からシステム運用に関する研究コミュニティである運用研究会への協力を行うなど、近年のjusの活動は非常に多様な領域へと展開しています。

時期活動内容その他の出来事
1999年11月、2001年2月オープンソースまつり(2回開催)-
2001年5月YARPC 19101(Tokyo Perl Mongersとの共催)-
2002年10月〜現在関西オープンフォーラム(11回共催)-
2003年8月〜現在LLイベント(10回開催)-
2004年-mixi運営開始
2006年-Twitter運営開始
2007年-iPhone発売
2007年6月〜現在jus研究会 JAPAN TOUR(61回開催)-
2008年9月〜現在IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース(参加団体)-
2009年7月〜現在運用研究会(協力団体)-
2010年2月〜2011年11月Gadget1(5回開催、後援団体)-
2000年代に始まった主な活動・イベント
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