TD-LTEなのは“予定調和”だが
スマートフォンの普及が急速に進み、OTT系サービスの台頭など、中国でもフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が始まった。2013年6月に上海で開催した「Mobile Asia Expo 2013」(MAE2013)では、これから中国で始まるスマートフォンを中心とした新サービスを多数展示していた。その展示内容からも、2013年下半期の中国市場ではLTEとNFCが大きく動き出すことがうかがえる。
いまだに事業者免許の発行時期が不透明な中国の4G LTEだが、中国移動(チャイナ・モバイル)がTD-LTE方式で最初にサービスを開始するのは、“公然”のこととなっている。同社のテストサービスは2013年6月に一般ユーザーに対象を広げ、中国の16都市でUSBモデムとモバイルルーターを使った高速データ通信サービスを提供している。広東省のように、既存の3G価格とほぼ同等の料金プランを提示し、毎月一定料金を支払うなど商用向けと同じサービスを提供している都市もある。
この本格的な商用テストサービスを利用するためには、過去数カ月間におけるデータ通信利用実績が必要など、一般の個人ユーザーにはやや厳しい条件を設けている。そのため、サービスの参加者はまだ多くない。TD-LTEはスマートフォン普及に必須であるが、中国における多くのユーザーは、当面TD-LTEスマートフォンが確実に利用できるまで待っているというのが実情だ。
TD-LTE対応スマートフォンは、中国の大手メーカーが販売予定とアナウンスしていたものの、実際に動作するモデルはMAE2013より前に公開していなかった。だが、MAE2013で中国移動はブースにSamsung、LG、Huawei、ZTE、Sony、Coolpad各社のLTE対応モデルを多数並べ、本格的な商用サービス開始が間近であることをアピールしていた。展示した機材では、会場で試験的に運用していたTD-LTEネットワークを実際に接続していて、多くの来場者がLTEの高速通信を体験していた。
なお、中国移動で販売予定のTD-LTE対応モデルは、LTEだけではなく、既存のGSMやTD-SCDMA方式にも対応する。このため、従来の2Gと3GのユーザーがLTEのカバーエリアを気にすることなく乗り換えることが可能だ。展示していた機材は、TD-LTEとGSMの「デュアルSIM、デュアルモード、デュアルスタンドバイ」仕様もあったが、CSFB(Circuit Switched Fallback)対応でシングルSIMのモデルも確認している。このことから、2タイプのスマートフォンを製品化する可能性が高い。
TD-LTE対応モデルを投入する予定のメーカーの中でも、Sonyは「Xperia M35t」でデュアルSIM版とCSFB版を販売する予定だ。これは、デュアルSIMモデルの需要が高い中国市場を配慮してのことだろうが、TD-LTEの開始に合わせて2つのモデルを投入することで、中国移動ユーザーにXperiaシリーズの認知度を高めたいという考えもあるようだ。Sonyは、これまでW-CDMA方式を採用する中国聯通(チャイナ・ユニコム)にはグローバル向けモデルをいち早く投入してきたが、加入者数が圧倒的に多い中国移動が採用するTD-SCDMA(中国独自の3G規格)対応モデルの投入は、わずか数機種に過ぎない。
調査会社のAnalysys Internationalによると、2013年上半期の中国国内スマートフォンシェアはSamsungの17.3パーセントを筆頭に、Lenovo、Coolpad(宇龍酷派)、Huawei、ZTE、Apple、Tianyu(天語)、Geonee(金立)、HTC、OPPOと続き、Sonyは10位以内にも入っていない。同時期の中国国内におけるスマートフォン販売総数は7528万台で、シェア10位のOPPOでさえも2.9パーセント、218万台を販売している。Xperiaが第2四半期に全世界で960万台を販売して好調なSonyだが、中国移動向けTD-LTEスマートフォンがヒットすれば、それだけで販売数を大きく引き上げることができるだろう。
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