「日本人って、そもそも椅子に座るのが下手なんです」——。こう話すのは、コクヨで長年オフィスチェアの開発に携わる椅子のエキスパート、斉藤亘氏だ。
オフィスワーカーなら、肩こりや腰痛、疲れ目に悩まされたことがあるだろう。こうした症状は、体に合ったオフィスチェアを選ぶことと、上手な座りかたをすることでかなり軽減されるという。
自分の体と相性のよいオフィスチェアはどうやって選べばいいのか、どうすればオフィスチェアとうまくつきあっていけるのか——。椅子選びのポイントと疲れを軽減させる上手な座り方について、斉藤氏に聞いた。
日本人は欧米人に比べて骨盤が“寝て”しまう
なぜ、日本人は座り方が下手なのか。斉藤氏によれば、「日本人は欧米人に比べて骨盤が“寝て”しまう」(斉藤氏)というから驚きだ。
二足歩行の人間は、立っているときに体が一番自然な状態になるため、座っているときにも立っているときと近い形に骨盤を維持するのが理想の形。しかし、日本人の骨盤は「椅子に座ると寝てしまいやすい」(同)ことから、疲れない座り方をするのが難しいという。そんな“座り下手”な日本人が、安定した姿勢を保って座るためには、まず椅子の座面から考える必要がある。
良い椅子は座面で体圧を分散できる
椅子に長い時間座っているとおしりが痛くなることがあるが、あれはお尻の一点に集中して体重がかかってしまうから。長時間座るオフィスチェアでは、この“体の表面にかかる圧力(体圧)”を座面でうまく分散することが最も重要だと斉藤氏は言う。
「お尻が痛くなると、つい、座る位置を変えたくなりますが、そうすると座り下手な僕たち日本人は、どんどん姿勢が崩れてしまう。姿勢をキープするためにも、座面は体圧をうまく分散できる固さ、素材、形状である必要があるんです」
例えばメッシュ素材は一見、体圧をうまく分散できそうに見えるが、「ハンモックと同じで体重がかかる場所が沈み込むだけで、姿勢も安定しにくい」(同)。そのためコクヨでは、適度な固さのウレタンクッションを使い、その形を体に沿わせることで体圧を分散できる座面にしている。さらに最新のオフィスチェアには、お尻のあたる部分を少しだけ凹ませた「ポスチャーサポートシート」と呼ばれる座面を採用し、凹みにお尻をフィットさせることでお尻が前にすべって骨盤が“寝て”しまわないようキープできるようにした。
体圧は、座り方を工夫することで分散させることもできる。最も体圧を分散できるのは、椅子に深く腰掛けた状態で膝と足首がそれぞれ90度に曲がっていて、なおかつ太ももが座面に水平な状態。「足が床から浮いていても、逆に座面が低すぎてもだめ」(同)なので、椅子の高さを適度に調整するといい。
肘掛けも、体圧を分散する上で重要なアイテムのひとつ。「腕はものすごく重いので、座面にかかる体圧を減らすためにも、肘を支えることは大切」という理由からだ。ただし、肘をどう支えるかは、「椅子だけで考えるのではなく、デスクとセットで考えたほうがいい」と斉藤氏。例えば椅子の高さを適正な高さにしたいと思っても、デスクが高いとそちらにあわせて調整せざるをえないからだ。どうしても合わない場合は、フットレストを使うことをおすすめしているという、
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