Evernoteの新機能として「ワークチャット」が発表されました。この連載では、「チャットワーク」というコラボツールをイチオシ的に取り上げたことがあります(参考記事)。名前が似ている2つのツール、どちらも好きで使っている筆者にとって複雑に思うところもありますが、「ワークチャット」がどんなものなのか試してみました。
「チャットができればいい」は間違い
まず簡単に。ワークチャットは、仕事を進めるためのチャットツールとしては、先行するほかのツールと比べて見劣りします。
仕事に使うチャットに求める機能というものは、導入前と導入後で大きく変わってきます。導入前には「チャットができれば、それでいい」と考えられがちですが、長く使ってみると足りないことがいろいろと分かってきます。
筆者は、仕事のパートナーと3年以上にわたって毎日チャットワークを使っています。すると、チャットワークの中には仕事のための情報がデータベースのように溜まってくるのです。決定事項、やるべきこと(タスク)、あとから読み返すこともある議事録、関係資料……、大量の情報が蓄積されています。
ここで重要なのは、データがどんなに増えたとしても簡単に探し出せること。そして、もしもデータが見つからなければ、その代わりに何をすべきなのかがパッと分かることです。
特に必要なのは「やってないことだけを探し出す」という機能です。チームで仕事をする場合、メンバーに頼むことはたくさんあります。そのタスクを相手はやり終えているのか、まだ途中なのか。そもそも頼んだこと自体を忘れてしまうと探し出すのは非常に面倒な作業になります。
つまり、仕事でチャットを使い続けていけば、チャットの内容を即座にタスク化できたり、タスクをチャットから切り分けて管理したり、検索できたりする機能が大きな意味をもってくるのです。
残念ながら、これらの点でワークチャットには不安が残ります。現時点では、チャットワークのほうが先を行っているといえるでしょう。
資料があるところでチャットすることの意義
しかし、ワークチャットへの期待は大きいのです。最大のポイントは「そこに最初から資料がある」からです。また、チャットの内容もそのまま新たな資料になります。それがEvernoteだけでできるのは大きな魅力です。
メールにせよ、チャットワークのようなコラボツールにせよ、資料となるファイルを添付して送るという行為は、わざわざコピーを作っているのです。そして、ファイルを送った後で手元にある資料をアップデートすれば、内容の異なる「資料」がネットワーク上に残ることになります。
そもそも、資料をどこか(デスクトップなど)において、それを連絡手段にコピーするという行為自体が不合理です。チャットワーク上での会話内容は議事録として存在しているのに、それを「Evernoteにも記録しておく」といった行為も合理的ではありません。
こういった不都合が、ワークチャットを使うことで解消できるなら、それに越したことはありません。現段階では先述のとおり機能的な不足が否めませんが、ワークチャットに関しては明らかに進化したインタフェースになっているWebブラウザ版を使用すると、ワークチャットの真価がよりイメージしやすいでしょう。すでに、Evernoteでひんぱんに共有資料のやりとりをしている相手に限れば、ワークチャットを中心に使用するのもアリだと思います。
筆者:佐々木正悟
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。
ブログ「ライフハック心理学」主宰。
TwitterID:@nokiba
Facebook:佐々木正悟
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