要介護者の情報をクラウドで集約、リアルタイムで共有
日本社会の高齢化が進むなか、“介護の充実”は大きなテーマとして掲げられている。そういった取り組みを進める介護施設は多いが、最近では自治体がITを使い、地域ぐるみでよりよい介護体制を追求する動きも出てきている。
茨城県笠間市は、要介護者に関する情報をリアルタイムに閲覧や共有ができるクラウド型システム「介護健診ネットワーク」を、2014年10月から運用を開始したと発表した。要介護者への介護、医療サービスの業務効率化やサービス品質の向上を図るのが狙いだ。
笠間市の人口は約7万7000人(2014年10月1日現在)。そのうちの約25%が65歳以上の高齢者だ。高齢者率が高まるとともに、介護サービスの需要も増えているという。2012年2月に「健康都市かさま」宣言を行ったことも、同市が介護事業に注力している背景といえる。
介護活動を行うには、要介護者の緊急連絡先や健康診断結果、ケアプラン、お薬手帳、現在の病状といったさまざまな情報が必要となる。同市ではこれまで市や医療機関などがこうしたデータをバラバラのデータベースに蓄積しており、介護や医療関係者がデータにアクセスしづらい環境だったという。
同市企画政策課 北野氏は「地味な事務作業ではあるが、とても煩雑で時間がかかる。どうにか効率的に行えないかという課題があった」と話す。そのような中、ちょうど総務省が主導する「地域経営型包括支援クラウドモデル構築事業」の実証実験に応募し、日立製作所と協力して、新たなクラウドインフラを構築することになった。
今までバラバラだった各データベースのデータを、高セキュリティ環境のクラウドサーバに集約し、家族や自治体、地域の介護事業者や医療機関といった介護関係者がWeb上で一覧できるようにしたのだ。タブレット端末などを使い、外出先からデータを閲覧、編集することも可能で編集結果はリアルタイムで反映される。
こうして2013年7月から2014年3月までの約8カ月、新システムを「介護健診ネットワーク」として試験的に導入し、市内の介護事業者のうち、13カ所の介護事業所に利用してもらった。利用者からはポジティブな反応が多かったという。
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