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アイルランドにみるビッグデータとセキュリティの世界動向

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 スノーデン事件などを受けて、2014年5月に米国政府が公表したビッグデータ報告書(関連PDF)では、国境を超えたビッグデータ利用にの関する問題点が指摘されている。欧州連合(EU)諸国の中でグローバルICT企業の拠点が集中するアイルランドでは、どのような取組みが行われているのだろうか。

経済の成長エンジンとして注目されるビッグデータのイノベーション

 アイルランドは、北海道とほぼ同じ国土面積を有し、人口は約460万人、GDP2107億ドル(2012年)の国である。アイルランド政府が低い法人税率(12.5%)や積極的な研究開発投資支援策(例えば25%の研究開発税額控除)、高等教育制度の整備などを通じて、海外ハイテク企業の誘致活動を積極的に行ってきた結果、Google、Yahoo!、Apple、eBay、Microsoft、Facebook、Amazon、Twitter、LinkedIn、TripAdvisor、Dropbox、Grouponなど、北米の代表的なインターネットビジネス企業の欧州事業/海外事業統括拠点が同国内に設けられた。EU域外からの直接投資と技術移転のハブとしての役割を担っている。

 ICT産業はアイルランド経済の中核を担っており、さらなる成長のエンジンとして期待されているのが、ビッグデータだ。2011年11月にアイルランド政府の委託を受けた有識者グループが報告した「Report of the Research Prioritisation Steering Group」を受けて、2012年3月に、雇用・企業・イノベーション省(DJEI)は、政府による総額5億ユーロ規模の研究開発投資を柱とする「Research Prioritisation Plan」を発表した。

 この計画では、アイルランド政府が積極的に取り組む研究開発テーマとしては、以下の14項目が挙げられている(関連プレスリリース参照)。

  • 未来型ネットワークと通信
  • データ分析/管理、セキュリティ、プライバシー
  • デジタルプラットフォーム、コンテンツ、アプリケーション
  • コネクテッドヘルス、自立型高齢者生活
  • 医療機器
  • 診断
  • 治療(合成製剤、加工、ドラッグデリバリー)
  • 保健用食品
  • 持続可能な食糧生産、食品加工
  • 海洋再生可能エネルギー
  • スマートグリッドとスマートシティ
  • 製造競争力
  • 加工技術と新材料
  • サービスおよびビジネスプロセスの技術革新

 特にビッグデータとの関わりの深い「データ分析/管理、セキュリティ/プライバシー」の項目は、資源としてのビッグデータを管理しながら有益な情報に変換するデータ分析/管理分野と、情報セキュリティ、バイオメトリクス、暗号化技術など情報保護やデータ規制に関わるセキュリティ/プライバシー分野を研究開発の2本柱としている。

 この2本柱のもと、市民や企業、政府/公共機関による経済的、環境的、社会的ベネフィット実現のための利活用を推進するとともに、健康医療、観光、スマートシティなど、様々な事業分野に共通基盤として横展開する方針を打ち出した。米国と同様に、ビッグデータ利活用によるメリットの享受とプライバシー/セキュリティの課題解決を両輪とした国家戦略を策定しているのが特徴である。

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