「Blu-ray Discって可哀想なヤツだな」と思うことがときどきある。驚くべき高画質・高音質なメディアなのに、思いきりチープな青いパッケージに収められているし、プレイヤーを見つけに量販店に行くと安っぽくて頼りない1〜2万円の製品ばかりが目につく。そんな情景を見ると、BDという超高品質ディスクの価値を分かっているヒト、業界にほとんどいないんじゃないか、などとふと思ったりするわけです。
音だけしか出ない、しかも30数年前に提案された16bit音楽CDを再生するプレイヤーには今なお数百万円という超弩級モデルがいくつか存在し、その存在理由を強く思い知らせる凄い音を奏でているというのに……。AVとピュアオーディオの趣味性の深さの違いを実感するのはこんなときだ。
BDの高画質・高音質をとことん突き詰めてみたい方にとって、プレイヤーの選択はここ数年、米OPPO Digital製品しかないという状況だったが、レーザーディスク、DVDで歴史に名を残す名プレイヤーを開発してきたパイオニアが、この秋やっと重い腰を上げ、本格ユニバーサルBDプレイヤーの「BDP-LX88」を発表した。2008年に発売された「BDP-LX91」以来、6年ぶりの高級機である。パイオニアのAV事業不振に伴う経営形態の変化が伝えられる中、これは多くのAVファンにとって、とてもうれしいニュースだったと思う。
9月中旬、本機の試作機がぼくの部屋に持ち込まれ、その画質・音質をじっくりチェックする機会を得たので、今回の連載はそのファースト・インプレッションを述べることにしたい。
一瞬たじろぐ重さ、セッティングは腰に注意
その前に本機の概要をまとめておく。まず本機をオーディオラックに載せようと持ち上げ、その重さに一瞬たじろいだ。質量14.3キログラム。画質・音質に悪影響を与える振動対策を徹底したからこそのこの重さなのである。
本体を支える底面は1.6ミリ厚鋼板に3ミリ厚のレイヤードシャーシを組み合せた2層構造。フロントとサイドは、焼き付け塗装を施したアルミパネルが鋼板をがっちり押さ込んでいる。インシュレーターは亜鉛ダイキャストの専用開発品で、安定な設置を実現する3点支持構造だ。こんな高剛性ボディをまとったBDプレイヤーを見るのは、ほんとうに久しぶりだ。
内部コンストラクションは、厳重にシールドされた電源部(電源トランスはEIコア)、デジタル処理基板、アナログオーディオ処理基板をアイソレートした3分割シャーシ構造が採られ、前後に2本のビームを通し、筐体(きょうたい)の高剛性化は図られている。
ディスクドライブメカは、制振効果のある黒色塗装のシールドケースに収められており、メカベースを配置したフローティング構造を採用、ドライブで発生する振動の悪影響を抑える工夫が施されている。
信号処理の基本システムは、OPPO製プレイヤーでお馴染み、その安定性と高速性で定評のあるメディアテック製。映像回路はマーベル製の2チップ構成で、きめ細かなノイズ対策やディティール/色補正、精度の高い4Kアップコンバート処理を可能にしている。
音声回路で目を引くのがDACチップで、高性能で話題のESSテクノロジーの最高峰リファレンスDAC、32bit/8ch仕様の「ESS9018」が採用されている。本機はアナログ・マルチチャンネル出力を装備せず、XLRバランス、RCAアンバランス2系統の2チャンネル出力に特化した仕様なので、8ch出力のこのチップをそれぞれ4ch分充てて、より高精度な差動出力を得ているわけだ。
アナログ・マルチチャンネル出力を装備していないことに疑問を感じる方もおられるかもしれないが、パイオニアはここ数年ずっとLFE チャンネルの遅延対策に意を払ったAVアンプ開発に注力しており、HDオーディオのサラウンド再生は、本機のHDMI出力を利用してLFEチャンネルの遅延問題が解決できる同社製AVアンプと組み合わせて楽しんでほしいという意図なのだろう。
また本機は、DLNAによるネットワーク経由でデジタルファイルの再生が可能(192kHz/24bitまでのPCM 、2.8MHz/1bit DSD に対応)。ESS9018の高音質を活かしたハイレゾ再生が楽しめるわけで、これまた本機の注目ポイントといっていい。
「発売は11月下旬。まだ試作途中の段階なので、いろいろ不具合があります」と言う開発エンジニアと一緒にぼくの部屋でテストを開始した。
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