企業の顧客窓口として、日々ユーザーからの問い合わせや意見などに対応するカスタマーサポート業務。
直接顧客の声に耳を傾け、彼らが抱えるさまざまな悩みを解決する役割を担うため、大きなやりがいを感じることができる一方で、時として過酷な業務でもある。製品やサービスに対する容赦ないクレームが来ることもあれば、難解な問い合わせ内容に頭を抱えることも少なくないだろう。
本稿では、主にB2B向けサービスを提供する企業のカスタマーサポートの実現場から、サポート担当者たちの本音の声をお伝えする。
クレームのほとんどが勘違い
「クレームのうち約8割はユーザー自身の勘違い」。
こう断言するのは、あるWebサービス会社の法人顧客向けサポート部門に所属するAさんだ。4人からなる同部門では、問い合わせ対応のほか、ヘルプページの作成、メールマガジンの制作などを受け持つ。問い合わせは基本的にWebフォームからのみとしているので、対応はメールで行っている。1日あたり約20件の問い合わせがある。
寄せられるクレームの内容をよく聞いてみると、ユーザーの思い込みや見落としなどがほとんどだという。そうした場合には、論理的かつ丁寧に説明してあげることで、クレームを付けた本人も自分の過ちに気付き、恥ずかしくなってすぐに引っ込んでしまうようである。
また、経験豊富なサポート担当者であれば、ちょっとした対話からユーザーが勘違いしている箇所がピンと来るため、そこを指摘してあげるとすぐに解決するそうだ。
かたや、厄介なクレームもある。「自分の価値観が正しいと信じて疑わないユーザーは、製品の仕様それ自体に『なぜこうしないんだ! 私ならこう作っている』などと文句を言ってきます。このような話になってしまうと、もはやどうにもできないのですよ……」と苦笑いするのはBさん。ITソリューション企業で同じく法人顧客向けのサポートを担当する。同社は事業部ごとにカスタマーサポート担当者を配置しており、BさんはIT業界の顧客を抱える事業部に籍を置く。対応は主に電話で行っている。
また、クレームではないが、問い合わせで困るのは、“ユーザー言葉”を多用されるケースである。例えば、「これ」「それ」といった代名詞から、ユーザーがカスタマイズして変更したフォルダ名、システムの独自運用など……。電話応対であれば逐一確認していけるが、メールだと一筋縄ではいかないのは容易に想像できるだろう。
なぜこのような事態が起きるのか。Aさん、Bさんが口をそろえて言うのは「ユーザーは、サポート担当者もまったく同じシステム画面を共有していると思っているからでしょう。実際、問い合わせ内容に沿った画面は開いていますが、ユーザーがカスタマイズでもしていたら細部は違ったものになってしまいます」ということだ。
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