連載第2回:「CO2フリーのエネルギーに、水素を太陽光やバイオマスから作る」
さまざまな製造方法が試されている水素だが、現状では石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料から作る方法が主流だ。大量に製造する場合には、化石燃料の原産国で液体の水素を生成してから、タンカーでまとめて輸入する方法が効率的である(図1)。
ただし気体の状態にある水素を液化するためには、マイナス253度まで温度を下げなくてはならない。地球上で最も軽い物質である水素は気体から液体に変わる沸点がマイナス252.6度と極めて低いからだ。超低温の状態を維持する必要があり、長距離を輸送するのが難しい。
このほかに気体のまま高い圧力をかけてボンベやコンテナで運ぶ方法や、都市ガスと同様にパイプラインを使って気体の水素ガスを送る方法もある(図2)。それぞれ輸送量やコストの面で一長一短があって、大量の水素を輸送する手段としては液体水素に及ばないのが現状だ。
液体水素の新しい輸送方法として、「有機ハイドライド」が注目を集めている。有機ハイドライドは液体の有機化合物のうち、化学反応によって水素を結合したり放出したりする性質をもった物質の総称である。常温でも液体の状態で水素を保持することができるため、海外からタンカーを使って長距離を輸送することが可能になる。
日本では千代田化工建設が有機ハイドライドを利用した水素の貯蔵・輸送システムを開発している。横浜市にある事業所の中にデモプラントを建設して、大量の水素を有機ハイドライドで液化して貯蔵するプロセスを実証中だ。1時間あたり50立方メートルの水素ガスを液化することが可能で、容積にして500倍の水素ガスに相当する液体水素を常温でタンクに貯蔵することができる(図3)。
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