紀伊國屋書店の電子書籍アプリ「Kinoppy for Android」は8月5日、バージョン2.0にメジャーアップデートした。基礎設計から再構築し高速化されたビューワ、新UIの本棚や、ストア機能の強化など、読書体験が大幅に向上されている。
今回筆者はKinoppy開発チームの協力を得て、リリース直前のバージョンを試用する機会を得た。具体的にどう変わったか、徹底解剖していこう。
新UIで使い勝手が向上した本棚
Kinoppy 2.0を開くと、まず「メイン本棚」が開く。画面下部のメニューアイコンは廃止され、画面左右からのスワイプ操作か、画面の左右下部にあるボタンでメニューを引き出す形になった。iOS 7やAndroid 4.4(KitKat)のUIと同じなので、すぐに慣れることができるだろう。メニュー階層が目視でき、これまでより分かりやすく感じられる。
メイン本棚は従来同様、ユーザーが任意に棚や本の配置を決められる。Kinoppy 2.0ではメイン本棚以外にも、任意で本棚が追加できるようになった。旧バージョンでは本が多くなってくると、棚を横スクロールさせるか、本棚を縦スクロールさせるしかなかったが、複数本棚により三次元的な管理が可能となったわけだ。
表示モードが[標準]か[グリッド]の場合は、ピンチアウト/ピンチインで拡大・縮小できるようになった。拡大して書影をはっきり表示させるのも、縮小して一覧性を高めるのも、お好み次第だ。背景テクスチャも、[木目][ライト][ダーク]から選択可能となった。
また、通常の本棚とは別に、一定の条件に基づいて自動的に本を並べる「スマート本棚」が新機能として追加された。旧バージョンではリスト表示にすると[追加順]や[読んだ順]などの条件で並び替えることができたが、Kinoppy 2.0では任意の並び替え条件を保存してすぐに呼び出せるようになった。例えば、出版社が「集英社」で、ジャンルが「コミック」といった具合だ。
表示モードや背景は、それぞれの本棚ごとに設定可能。もちろん、これらの本棚設定は、同じIDでログインした異なる端末でも自動的に同期される。簡単な並び替え程度しかできない電子書店も多い中、Kinoppy 2.0の本棚機能は群を抜いている。
パフォーマンスが大幅に向上されたビューワ
Kinoppy開発チームによると、旧バージョンは基礎の上に増築を繰り返してきたことでさまざまなボトルネックが発生してしまっていた。それを今回、基礎設計から再構築し無駄なコードを排除することで、パフォーマンス向上を図ったという。
旧バージョンとの違いが顕著なのは、本を開く際の速度。Android 4.4.4のNexus 7(2012)で、タップしてから読み始められるまで、旧バージョンでは約5秒掛かったが、Kinoppy 2.0では約2.5秒。半分ほどに短縮されている。待ち時間が短いのは、すこぶる快適だ。
発売から5年近く経過しているXperia SO-01B(root化してAndroid 2.3.3になっている)でも、本を開くのに要した時間は約3秒と、Nexus 7とほとんど変わらない。古い端末でも機敏に動作するのは嬉しいユーザーが多いことだろう。
本棚で本をタップするとまず操作パネルが開き、[続きから読む]や[最初から読む]をタップすると本が開くという2段階方式になった。従来に比べ必要な操作が1回増えたが、旧バージョンの本棚では誤操作してしまうユーザーが多かったらしく、あえて2段階方式に変えたそうだ。
なお、従来は背表紙表示への切り替え操作だったダブルタップは、[続きから読む]またはダウンロードに割り当てられている。
ビューワでの操作は、中央タップでメニューボタン・オプションボタンやスライダーが表示される。目次などのメインメニューは、メニューボタンタップか左端からスワイプ。オプションメニューはオプションボタンタップか、右端からスワイプ。本棚のUIと統一されている。
機能的には、全ページサムネイル表示や、ページめくりにスクロールモードの追加、一定速度以上のフリック入力による慣性ページ送り、マーカーの多色化やアンダーラインなどが追加されている。また、KADOKAWA-EPUB 制作仕様で公開されているEPUB 3拡張仕様によるBOOK☆WALKER「めがイラスト」にも対応したのは嬉しいところだ。
ストアはキャリア決済・プリペイド型電子決済にも対応
アプリ内ストアもリニューアルし、フラットデザインになった。
機能的には、分断されていた[おすすめ]が再度ストアに統合され、特集やピックアップなどがモバイルWebと同じように配置されている。「電子書店完全ガイド2013」では[おすすめ]の分断を減点対象としたが、リニューアル後の形であれば減点は取り消していいだろう。
決済方法は、携帯電話キャリア決済(ドコモケータイ払い・auかんたん決済・ソフトバンクまとめて支払い)とプリペイド型電子決済(BitCash・Web Money)が追加され、クレジットカードを持てない方(例えば子供)でも比較的利用しやすくなった。なお、iOSアプリ内ストアは、アップデート後も従来通りApple ID決済のみとなる。
まとめ
旧バージョンのKinoppyも比較的高機能なアプリだったが、今回のメジャーアップデートによってさらにもう一段階進化を遂げ、「読書体験」という意味では他の電子書店と比べ頭一つ抜け出した感がある。あとは、「紀伊國屋書店ウェブストア」の使い勝手をもう少し向上してほしいところだ。
なお、他のデバイス向けアプリも、今後順次アップデート予定。EPUBエンジンが共通化されたので、それほど時間は掛からないはず、とのこと。iOS、Windows、Macユーザーの方は、もう少しだけ楽しみに待ちたい。
著者プロフィール:鷹野 凌
フリーライター。「日本独立作家同盟」呼びかけ人兼代表で、『月刊群雛』編集長。ITmedia eBook USER、ダ・ヴィンチ電子ナビ、INTERNET Watch、マガジン航などに寄稿。ブログ「見て歩く者」で、電子出版、ソーシャルメディア、著作権などの分野について執筆。自己出版で『これもうきっとGoogle+ガイドブック』を1〜3巻まで配信中。
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