ベンチャー企業のZMPは2014年7月2日、東京都内で会見を開き、インテルの高性能CPUを搭載した自動運転技術開発用のコントローラボックス「IZAC(Intel ZMP Autonomous Controller)」の開発を行うと発表した。IZACはインテルのCPU「Core i7」を搭載しており、外付けのPCを使わずにアクセルやブレーキをリアルタイム制御するための計算処理と、制御信号の送信を行うことができる。ZMPは今後、設計試作とテストマーケティングを行い、2015年7月に発売する予定である。
ZMPは2009年から、車両に各種センサーやカメラなどを搭載した自動運転ロボットカーの研究支援プラットフォーム「RoboCar」の販売を行っている。2012年には、トヨタ自動車のプリウスをベースにしたロボットカー「RoboCar HV/PHV」の販売も開始した。
自動運転車は、車両に搭載した周辺環境センサーやカメラから取得した膨大なデータを基に、自車の位置推定や障害物の検知などをリアルタイムに行う。そのデータから経路生成やトラッキングなどの判断をし、コントローラボックスから制御信号を送信してステアリングやブレーキなどをリアルタイムで制御するためには、高度な計算処理が必要となる。同社がこれまで販売していたRoboCarに搭載されているコントローラボックスでは、そういった計算を行う際、ユーザーはボックスに外付けのPCを接続し、さらにソフトウェアも準備してから開発を行う必要があった。今回発表されたIZACでは、外付けのPCが不要になるとともに、ボックス内でストレージへのアクセスや高度な計算と制御信号の送信を全て行うことが可能になった。
また、同社がこれまで取り組んできた自動運転技術研究の過程で開発したソフトウェア群が、IZACのユーザーにコンポーネントとして順次提供される。開発言語は、CおよびC++だけでなくモデルベース開発環境「MATLAB/Simulink」からのコード生成にも対応している。また、タスク監視やモニタリング、ログの取得ができるなど、開発をサポートする機能も搭載する。
ZMP代表取締役社長の谷口亘氏は「今のところ一般販売は検討しておらず、まず自動車メーカーや自動車部品メーカーの開発者の方に向けて販売していく予定。先日、愛知県で自動運転の公道実証実験を行うと発表したが、この実験でノウハウを積み重ね、2020年の東京オリンピック・パラリンピックではZMPの自動運転技術が競技場と選手村を結ぶ手段として利用されることを目指したい」と今後の展望について語った。
同会見に登壇したインテル代表取締役副社長の宗像義恵氏は、「インテルはIVI(In-Vehicle Infotainment:車載情報機器)ソリューションの開発など、自動運転技術への取り組みに注力している。しかし、自動車関連のビジネスはインテルが単独で進められるものではないので、カーエレクトロニクス企業や、IT企業、そしてZMPのような先進的な技術を扱う企業と共にマーケットを開拓していきたいと考えている。今後、ZMPと一緒により安心な自動運転を実現するためのIT技術の開発を推進していく」と話した。
また、ZMPは近い将来、IZACをカーオーディオコンポの標準規格である2DINサイズまで小型化することを目指しており、カーナビゲーションシステムのようにタッチパネル上に表示された地図をタッチして目的地を設定すれば、自動運転が開始するようなインタフェースの搭載を検討しているという。会見では、車内にイメージ展示用モックアップのIZACが設置された自動運転車も展示された。
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