「PCとデジタル家電のデフレは終わった」。全国大手家電販売店のPOSデータを元にマーケティングデータを提供するBCNは7月10日、報道関係者向けの説明会でデジタル家電の販売動向を報告した。これによると、幅広い製品で販売価格は上昇傾向にあるという。ただし、販売台数は増えておらず、「不況下の物価上昇、いわゆるスタグフレーションの恐れも出てきた」(BCNのアナリスト・道越一郎氏)。
道越氏はまず、日本の経済情勢は大きく好転しつつあると指摘する。「長期にわたる円高が株価に“ふた”をしていたが、株価の上昇で経済にも大きな影響が期待される。米NASDAQ指数と日経平均株価にはまだ乖離(かいり)があり、伸びしろもある」。ただし、昨年末からの円安でメーカーの部材調達や輸入コストが上がり、販売価格を上げざるをえなくなった製品もある。需要増加による値上げではなく、やむを得ない事情による価格上昇だという。
旧機種が安売りされる時代は終了?
製品ごとに見ると、薄型テレビの平均単価は昨年3月を“大底”として上昇トレンドに変わった。2012年3月の平均単価は4万3100円だったが、直近の2013年6月には5万7500円にまで上昇。その要因としては、従来の「型落ち品を安売りして台数を稼ぐ」というスタイルがメーカーの方針転換により縮小していること、また販売構成比で40V型以上の大画面テレビが全体の3割を超える“大画面化”が進み、平均単価を押し上げたことを挙げた。
とくに50V型以上の台数構成比は、昨年6月の5.2%から1年で9.3%へと4.1ポイント上昇。あわせてテレビ全体の“平均インチサイズ”は、2013年3月から一気に上昇をはじめ、6月には「32.8」と過去最大を記録している。これは4Kテレビの登場時期とも一致するが、道越氏は、「販売構成比で見ると4Kテレビは全体の1%未満にすぎず、価格上昇の要因とまではいえない。しかし、1つの方向性を示す象徴になった」とみる。
同様に、PC分野でもWindows 8の登場以降、タッチパネル搭載機などの増加で価格は上昇傾向にある。デジタルカメラ分野でもコンパクトカメラの価格下落が落ち着く一方、高級なレンズ交換式やミラーレス一眼の相次ぐ発売で高価格帯にシフトした。
しかし、いずれのグラフも販売数量指数は伸び悩んでいる。「価格だけを見るとデフレは克服できたといえる。しかし、好景気を背景とする需要増が価格を押し上げたわけではない。市場はまだ脆弱(ぜいじゃく)な状況が続いている」と指摘する。
「経済には上ブレ余地がある。それをいかに市場拡大につなげるかがデジタル家電の課題。これまでは価格を下げて需要を喚起していたが、それではもう戦えない。単なる機能の追加ではなく、その機能がどのような価値を生むかを考えていく必要がある」(道越氏)。
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