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ノートPC疲れを軽くする“無重力姿勢”、試してみる?

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 持ち運んでどこでも使える便利なノートPC。デスクや会議室、外出先まで、さまざまな場所で使えることから、業務のほとんどをノートPCでまかなう人も増えている。しかし、ノートPCは本来、短時間の利用を前提に作られており、デスクトップPCと同じ感覚で長時間使っていると、首、肩、腰に多大な負担がかかってしまう。

 使うPCがデスクトップ型からノート型に変わったのなら、作業環境も変えていく必要がある。そして、画面とキーが一体になっているノートPCでは、「目」と「手」の両方を快適にするために、椅子だけでなく机も見直す必要がある——。こう話すのは、人間工学の権威で慶應義塾大学 名誉教授の山崎信寿工学博士。そんな同氏がオフィス家具メーカー大手の岡村製作所(以下、オカムラ)とともに開発したのが、“座れば自然とノートPCを使うのに最適な姿勢を保てる”オフィス向けユニット「Shift」(シフト)だ。

PhotoノートPCで作業する際に体にかかる負担を研究。その結果、明らかになった負担を減らす姿勢を机と椅子に反映させた
PhotoノートPCの作業時に、“自然に疲れない姿勢”を保てる机と椅子のユニット「Shift」

 Shiftは、“ノートPCで仕事をする人”のために開発されたオフィス家具。ディスプレイの高さや大きさ、キーボードの傾斜がデスクトップPCとは異なるノートPCで作業する際に、いかに体の負担を減らせるかを考えて開発された机と椅子のユニットだ。

 “ノートPC専用の机と椅子”が生まれた背景や、楽な姿勢へと導くための構造上の工夫、ノートPCで仕事をする際に体に負担をかけない姿勢のとり方について、山崎氏に聞いた。

座れば自然とモバイルPCに適した姿勢に

山崎信寿博士(以下山崎氏): (取材のためにノートPCを開いた記者を見て)ちょうどノートPCを持ってきているんですね。では、普段通りの作業を再現してもらっていいですか?

 ……少し前かがみになってしまいますね。首や肩がつらくなるでしょう?

—— はい、1日が終わると頭痛がするほど首が痛くなり、日ごとに疲れがたまっていきます。

山崎信寿博士慶應義塾大学名誉教授・山崎信寿氏

山崎氏: ノートPCは長時間の作業に向いていないんです。デスクトップPCに比べてディスプレイが小さく、位置も低い場所にあるでしょう? 画面を覗き込もうとして、ついつい前のめりの姿勢になってしまいますよね。それが長時間続くと、首や肩に負担がかかってしまいます。仕事道具がデスクトップPCからノートPCに変わったのであれば、オフィス家具もそれに合わせて変化しないといけません。それは椅子だけではなく、机もです。

 ただ、残念なことに、ほとんどの家具メーカーは椅子と机の開発事業部が異なるので、“セットで最適な製品”を開発するのが難しかったのです。

—— それで、机と椅子のユニット製品「クルーズ&アトラス」を開発した実績があるオカムラでの開発が決まったのですね。オカムラが発売したShiftを見ると、背もたれがずいぶん後ろに倒れているような印象を受けます。このような姿勢をとることで目や首、肩、腰の負担を軽減できるのでしょうか。

山崎氏: ええ。湯船の中で脱力したところを想像してみてください。湯船の中のように無重力に近い状態で脱力すると、体はまっすぐに伸びず、少し屈曲します。無重力状態だったら体に負担がかからないのですが、残念ながら地上でそれを再現するのは難しい。いかに無重力に近い状態にするかを考えた末にたどり着いたのが、「低座後傾姿勢」です。このように、少し体を屈曲させる“無重力姿勢”によって筋肉が脱力し、体の負担が減るのです。

——背もたれに体重を預ける「後傾」が体の負担を軽くするのは分かるのですが、「低座」(座面を低くする)にはどんな効果があるのでしょうか。

山崎氏: 低座にすると、ディスプレイと目の高さの位置関係がちょうど良くなり、首と目の疲れがぐっと減ります。加えて、首が直立すると集中力が増し、かなりもたれかかった後傾姿勢をとっていても眠気を催さないんです。

——Shiftに座れば、無重力状態のようにリラックスしながら作業に集中できるのですね。

山崎氏: もう1つ、座面を低くしている理由があります。1日座って仕事をしていると足がむくみませんか? それは、座面が膝の裏を圧迫するからなんです。でも、低座であれば、座面が足を圧迫することはありません。また、座面の形も、膝裏を圧迫しないよう工夫しています。中央が少し凹んでいるでしょう? 女性の方が男性より身長が低い分、下肢も短いですよね。そして、膝を閉じて座ることが多い。そのような女性特有の問題も考慮して、座面の奥行きが中央に行くほど短くなるように設計しているのです。

Photo女性と男性の座り方の違いに着目した独特のデザイン

——そういえば、ほとんどの椅子の座面は中央に向かうほど長くなっています。

山崎氏: ほとんどのオフィスチェアでは、先端部が丸みを帯びていて、女性の膝裏を圧迫するようなデザインになっています。Shiftは体の小さい日本の女性のことを考えてデザインされていますから、ぜひ使ってみてほしいですね。わたしの研究室の実験で、5人の女性にこの椅子で作業してもらったところ、むくみが平均35%減少したという結果が出ています。

 もちろん、女性に比べて身長の高い男性が座っても良いように、この椅子では、外側に向かうにつれて座面を長くしています。この形により、膝を広げて座る男性は大腿の下側面が支えられ、座面を短く感じないようにデザインしているのです。

 ほかにも、尻滑りを防ぐために座面を傾けつつ先端側は平らにして、自然に深く座り、背もたれに体を預けても、膝裏を圧迫しないようにしました。

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