「スマートウオッチ」というと、高精細なタッチディスプレイに、高性能なCPU、各種センサーなどを搭載した、“スマートフォンを小型化したようなデバイス”をイメージする人が多いだろう。スマートフォンとの連携を前提にはしているが、それ単体でも豊富な機能(アプリケーション)を利用できるコンピュータ。これが現在主流のスマートウオッチというデバイスの在り方なのかもしれない。
ただ、非常に便利な世界が広がる半面、課題として付きまとうのが毎日の充電の煩わしさだ。腕時計の代わりに日常で使用することを考えると、スマートフォンやタブレット端末のように、毎日忘れずに充電するのは正直つらい。充電を忘れようものなら、ただの飾り(よく言えば、アクセサリー)にしかならない。もちろん、省電力化への取り組みも行われているだろうが、やはり充電は必須だ。
こうしたスマートウオッチの課題に対し、時計メーカーならではのアプローチをとるのがカシオ計算機(以下、カシオ)だ。
「G-SHOCK(ジーショック)」「PROTREK(プロトレック)」「OCEANUS(オシアナス)」などの腕時計ブランドを有するカシオは、Bluetooth 4.0で追加された低消費電力通信規格「Bluetooth Low Energy(Bluetooth LE)」に対応する“世界初”の腕時計として、G-SHOCK「GB-6900」(3モデル)を2012年3月に発売。現在では、通信の信頼性などを向上させた「第2世代エンジン」を搭載したモデルを展開している。
実は、筆者自身、この第2世代エンジンを搭載した「GB-X6900B」のユーザーで、G-SHOCKらしいデザインはそのままに、iPhone/Android端末と連携し、電話やメールの着信、SNSの通知を電子音/バイブレータで知らせてくれるこのモデルを非常に気に入っている。もちろん、充電は不要。電池交換なしで2年間使用でき(毎日12時間リンクして、1日10件の通知を受けた場合)、G-SHOCKシリーズのウリである耐衝撃性や防水性も完備している。腕時計という日常アイテムの価値・イメージを崩さずに、スマートウオッチの在り方を具現化した時計メーカーならではのアプローチといえるだろう。
そんなカシオが「2014 International CES(2014CES)」(2014年1月7〜10日、米国ネバダ州ラスベガス)において、G-SHOCKではない「スポーツウオッチ」のカテゴリーで、iPhoneと連携するBluetooth LE対応のデジタル腕時計「STB-1000」を新たに発表した。Bluetooth通信でiPhoneと連携できるという点で、Bluetooth LE対応G-SHOCKとそっくりな兄弟のようにも思えるが、実はさまざまな違いがある。
今回、カシオ 羽村技術センター 時計事業部 モジュール開発部 モジュール企画室 室長の長谷川良行氏に、STB-1000の特徴、Bluetooth LE対応G-SHOCKとの違い、カシオが考えるスマートウオッチの方向性・展開についてお話を伺った。
スポーツウオッチ以上の価値を提供する「STB-1000」
——この製品を企画した背景は? なぜ「スポーツウオッチ」なのか?
長谷川氏 最初にBluetooth LE対応のG-SHOCKを手掛けた際、スマートフォンのアプリ次第で、これまでになかった新しい腕時計の活用シーンを作り出すことができると、その可能性の大きさを実感した。それを具現化するには何がよいか、さまざまな検討・調査をした結果、“スポーツ/フィットネス”に行き着いた。
実際、健康目的で、iPhoneで音楽を聞きながらジョギングする人が多い米国でリサーチしてみると、iPhoneに何らかのフィットネス系アプリを入れているユーザーが大半であることが分かった。そして、運動中にiPhoneの画面で今何km走ったか、ペースはどうかなど確認するのが煩わしいという声が聞かれた。
こうした声から、腕時計とiPhoneのフィットネス系アプリを連携させることができれば、“今までのランニングウオッチ以上の価値”を提供できるだろうと考えた。腕時計であれば、運動中でも自然に情報を確認できる。わざわざポケットからiPhoneを取り出す必要はなくなる。
——既にBluetooth LE対応のG-SHOCKが製品化されているが、なぜ「スポーツウオッチ」というカテゴリーで製品を出すのか?
長谷川氏 G-SHOCKには、これまで培ってきた“G-SHOCKのカルチャー”がある。G-SHOCKイベント「SHOCK THE WORLD」からも見てとれるが、ミュージック、アートなどといったG-SHOCKの世界観がある中で、「健康(ヘルスケア)」というのは、どうも違和感がある。ブランドイメージが異なる中で無理に展開するのではなく、価格も抑えたスポーツウオッチとして開発することにした。
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