紙の本は、購入してしまえば「どの書店で買ったか?」が大きな違いになることはありません。しかし、電子書籍は「どの書店で買ったか?」で、その後の体験が大きく異なります。それは、音楽・映像・ゲームなどの配信サービスと同じように、電子書店がただ単に読み物をパッケージとして販売しているだけではなく、購入後の読書環境や保管に至るまでの総合的な「サービス」を提供しているからです。
国内でサービスを展開している電子書店はいくつもあり、まさに群雄割拠の様を呈しています。まだ「どこを利用すればいいのだろう?」と悩んでいる方も多いでしょう。どの電子書店もサービス内容を進化させ続けており、2012年度版の「電子書店完全ガイド」特集も既にやや古い内容となりつつあります。
そこで今回、「電子書店完全ガイド2013」と銘打ち、進化の著しい電子書店をレビューし直すことにしました。これまで通り以下の5つの要素に基づき、前回のレビューとの違いを中心に徹底解説していきます。
各項目について、3点を平均とし、いい所があれば加点、悪い所があれば減点という形で評点します。記事の最後で、評点結果をチャートグラフにしたものを用意しています。前回の評点と比較できる形で表示していますので、そちらも参考にしてください。
なお、どの電子書店も以前と比べてサービスレベルが向上しているため、前回は加点した項目でも今回は通常レベルのサービスとみなして加点しない場合もあります。全体のレベル向上により、相対的に評点が前回より下がる場合もあることをあらかじめご了承ください。
2013年度版の第9回目は、「iBooks Store」をレビューします。以前は「iBookstore」と表記されていましたが、現在は変更されています。前回のレビュー(2013年3月6日)はこちらです。
ラインアップは充実しているか?
前回の調査時と同様に、iBook Storeでは検索結果に件数が表示されないため、配信数を調べる方法がありません。これはiTunes Storeの音楽や映画といった他のカテゴリでも同じなので、Apple全体としてのポリシーなのでしょう。Appleのウェブサイトには「200万冊以上」と表記されていますが、注釈には「数字は世界各国の数字の合計です」とあり、日本語の書籍数は公表されていません。出版社数も不明です。
ただ、筆者が2013年10月に行った「アニメ化作品」を対象とした網羅率調査(iBooks Storeを含む11ストアを対象とし、35タイトル393作品の配信状況をチェックした)では、他の多くの電子書店が70%以上配信していましたが、iBooks Storeの網羅率は61%と下から3番目でした。ジャンルに偏りのある調査ですが、「アニメ化」という絶好のプロモーション時期に配信されている数が他より少ないわけですから、他のジャンルも推して知るべしでしょう。「ラインアップは相対的に少ない」と判断せざるを得ません(☆-0.5)。
また、2013年3月から4月にかけて、集英社『GANTZ』や『To LOVEる』『To LOVEる ダークネス』などが突然配信停止され、1カ月後に復活するという“事件”が発生しています。Appleは暴力表現や性的表現、外部リンクに関してもかなり厳しい審査を行っており、そのために配信が遅れがちになったり、配信されなかったりというケースが多々あるようです。もっとも、似たような表現規制はKindleストアやGoogle Play ブックスでも、そして日本以外でも発生しており、米国企業がグローバルに展開するプラットフォームにはよくある問題ともいえます。
なお、雑誌はiBooks Storeではなく「Newsstand」で配信されていますが、こちらも検索結果に件数が表示されないため、ラインアップを他と比較するのが困難です。
評点:☆2.5
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