ストレージ装置は、データセンタなどにおけるデータ量の増大や、携帯情報端末の高機能化と需要拡大などにより、事業機会が拡大する。同時に大容量化や消費電力の低減、コストダウンなどを実現していくための新技術や新製品の開発が求められている。こうした中、新たなストレージ装置として不揮発性メモリを搭載したSSD装置が注目されている。しかし、企業向けを中心に2020年ごろまでは引き続きHDD装置が市場をけん引していくという見方が強い。
HGSTの日本法人であるHGSTジャパンは2013年6月、ストレージ装置の市場や技術動向などについて、東京都内で記者説明会を開催した。市場動向について、HGSTでプロダクトマーケティングのバイスプレジデントを務めるBrendan Collins氏は、「クラウドサービスやSNS(Social Networking Service)などの本格化により、記憶するデータ容量が増大し、ゼタバイト(ZettaByte)の時代を迎えている。しかし、ストレージメディアは記録密度の上昇率が限界を迎えつつあり、記憶容量確保のためにストレージ装置の出荷台数が増えている。また、携帯情報端末への対応などからストレージ装置の薄型・軽量化が求められている」と話す。
同社によれば、2012年から2016年までの企業関連データの年平均成長率は55%の増加が見込まれている。これに対して、ストレージメディアにおける記録密度の年平均成長率は20%増にとどまる。つまり、データ量の増加率が記録密度の成長率を大きく上回ることになる。他方、ストレージ装置全体の成長率は台数ベースで3.1%増だが、セグメント別の成長を見ると、企業向けSSD装置は47.4%増、個人の記録用HDD装置が21.9%増と大きく伸びる半面、デスクトップPCやモバイルPC向けHDD装置はマイナス成長となる予想だ。ストレージ装置の記憶容量は、クラウドサービスがけん引し、需要の成長エンジンとなる。特に大きな記憶容量を必要とするのは「ビッグデータ解析」と「コールドストレージ」である
データセンタの進化とTCO
ストレージ装置の需要拡大にはTCO(Total Cost of Ownership)の低減が大きな要因となる。Collins氏は「TCOの評価基準としては『消費電力』や『冷却効率』、『信頼性』などを挙げることができる」と述べた。例えば消費電力を試算すると、HDD単体で1Wの消費電力を削減できれば、フルに5年間HDD装置を使った場合に43.8KWhを節約できる。これがサーバーあたり12台のHDDを搭載していれば525.6KWhとなる。さらにデータセンタなどでこのサーバーを2万5000台使っていれば、1314万KWhの節電となる計算である。これを米国の電力料金に換算すれば、5年間で90万米ドルも電気代を削減できることになる。
信頼性を向上することでもTCOの低減につながる。Collins氏は、「平均故障間隔(MTBF)が120万時間から200万時間となれば不良件数は4割削減され、不良対策のためのコストを数百万米ドルも低減する効果がある。その上、システムの稼働時間を向上することになる」という。
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