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直販ハイスペックモデルと店頭モデルの性能差を見極める
既報の通り、ソニーが発売するVAIOノートは2014年春モデルが最後となるが、その中で唯一のニューフェイスが「VAIO Fit 11A」だ。独自の「マルチフリップヒンジ」を用いた画面回転機構により、3つのスタイルに切り替わる「VAIO Fit A」シリーズ最小の11.6型2in1デバイスとして注目されている。
先に掲載した速報的なレビューでは、ソニーストアで購入できるVAIOオーナーメード(VOM)モデル「SVF11N1A1J」のハイスペック構成を中心に見てきたが、今回は店頭販売向けの標準仕様モデル「SVF11N19EJS」も含め、より詳細な性能検証を行なっていく。
前回述べた通り、このVAIO Fit 11Aは、基本システムに“Bay Trail-M”の開発コード名で知られる新しいモバイル向けPentium/Celeronを搭載する。CPUコア、グラフィックスコア、そしてチップセットの機能も1チップに統合したSoC(System On Chip)であり、CPUコアのアーキテクチャは、Windowsタブレットでの採用例が多いAtom Z3000シリーズ(Bay Trail-T)と同じSilvermontだ。
一般的なUltrabookや2in1で数多く採用されている第4世代Core(開発コード名:Haswell)とはCPUコアの内部構造が大きく異なるため、コア数や動作クロックを横並びで比較できない点に注意していただきたい。
なお、Bay Trail-Tとの違いは主にチップセット部分だ。Bay Trail-MはSerial ATA 3GbpsやPCI Express 2.0をサポートするなど、ストレージがeMMCに抑えられるタブレット向けのBay Trail-Tに対し、汎用(はんよう)性が高く、省電力よりは性能やコスト面に重きを置いている(InstantGoには対応しない)。また、OSは64ビット版Windows 8.1だ(現状でBay Trail-T搭載機のOSは32ビット版に限られる)。
今回テストした店頭モデルとVOMモデルの主な仕様は下表にまとめた。一部のテストでは、以前にレビューした2013年秋冬モデルの「VAIO Tap 11」(店頭モデル)と「VAIO Fit 13A」(店頭モデル)のスコアとも比較するため、これらの仕様も併記している。
今回テストしたVAIO Fit 11Aのスペック比較 | ||||
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製品名 | VAIO Fit 11A 店頭モデル (SVF11N19EJS) | VAIO Fit 11A VOMモデル (SVF11N1A1J) | VAIO Tap 11 店頭モデル (SVT11218DJB) | VAIO Fit 13A 店頭モデル (SVF13N19DJS) |
CPU | Celeron N2920 | Pentium N3520 | Core i5-4210Y | Core i5-4200U |
コア/スレッド数 | 4コア/4スレッド | 4コア/4スレッド | 2コア/4スレッド | 2コア/4スレッド |
CPU基本クロック | 1.86GHz | 2.166GHz | 1.5GHz | 1.6GHz |
CPU最大クロック | 2GHz | 2.42GHz | 1.9GHz | 2.6GHz |
キャッシュ容量 | 2Mバイト(2次) | 2Mバイト(2次) | 3Mバイト(3次) | 3Mバイト(3次) |
チップセット | CPUに内蔵 | CPUに内蔵 | CPUに内蔵 | CPUに内蔵 |
内蔵グラフィックス | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics 4200 | Intel HD Graphics 4400 |
GPU実行ユニット数 | 4基 | 4基 | 20基 | 20基 |
GPUクロック | 844MHz | 854MHz | 200〜850MHz | 200MHz〜1.0GHz |
TDP | 7.5ワット | 7.5ワット | 11.5ワット | 15ワット |
SDP | 4.5ワット | 4.5ワット | 6ワット | − |
メモリ | DDR3L-1066デュアルチャンネル | DDR3L-1333デュアルチャンネル | DDR3L-1600デュアルチャンネル | DDR3L-1600デュアルチャンネル |
メモリ容量 | 4Gバイト | 8Gバイト | 4Gバイト | 4Gバイト |
データストレージ | 128GバイトSSD | 256GバイトSSD | 128GバイトSSD | 128GバイトSSD |
データストレージ型番 | TOSHIBA THNSNJ128GVNU | TOSHIBA THNSNJ256GVNU | TOSHIBA THNSNH128GMCT | TOSHIBA THNSNH128G8NT |
画面サイズ | 11.6型ワイド | 11.6型ワイド | 11.6型ワイド | 13.3型ワイド |
液晶ディスプレイ | トリルミナスディスプレイ for mobile(IPS) | トリルミナスディスプレイ for mobile(IPS) | トリルミナスディスプレイ for mobile(IPS) | トリルミナスディスプレイ for mobile(IPS) |
表示解像度 | 1920×1080ドット | 1920×1080ドット | 1920×1080ドット | 1920×1080ドット |
バッテリー容量 | 24.5ワットアワー | 24.5ワットアワー | 30.45ワットアワー | 36.23ワットアワー |
公称バッテリー駆動時間 | 約8時間 | 約8時間 | 約8時間 | 約12時間 |
OS | 64ビット版Windows 8.1 | 64ビット版Windows 8.1 | 64ビット版Windows 8 | 64ビット版Windows 8 |
※VAIO Tap 11とVAIO Fit 13Aは2013年秋冬モデル |
店頭モデルは、CPUにCeleron N2920を採用したエントリークラスの構成だ。VOMモデルが搭載するPentium N3520に比べて、CPUコア、グラフィックスコアともに動作クロックが低いほか、対応メモリもDDR3L-1066に限られる。
各種性能テストは、Windows 8.1の電源プランを「バランス」、「VAIOの設定」での「CPUとファンの動作モード」を「標準」にして実施した。どちらもデフォルトの設定だ。
Sandra 2014(CPU/メモリ性能テスト)
まずはSandra 2014 SP1(20.10)でCPUとメモリの性能を見てみよう。
「プロセッサの性能」は、Dhrystone、Whetstoneという伝統的なプログラムで整数演算/浮動小数点演算性能を調べる内容、「マルチメディア処理」はマンデルブロ集合演算を行うことでSIMD拡張命令(SSE、AVXなど)の性能を調べる内容だ。いずれもワークセットはごく小さいため、メモリやストレージなどの影響を排除したCPUの純粋な演算性能を測定できる。
こちらのテスト結果は、VOMモデルのPentium N3520と店頭モデルのCeleron N2920でCPUの内部構造が同じだけに、どの項目でも約21〜22%スコアに差が出た。CPUグレードに応じた素直なテスト結果だ。
「暗号処理」は暗号化/復号化のパフォーマンスを調べるテストだ。こちらもやはりVOMモデルと店頭モデルの差は、AES-256、SHA-256とも21%ほどだった。
「メモリー帯域」は文字通りメモリの帯域を測定する内容となる。理論値はPentium N3520が21.3Gバイト/秒、Celeron N2920が17Gバイト/秒だが、どちらも実効性能はほぼ半分で、2モデルの比較では17%ほどPentium N3520のほうがよいスコアとなった。
キャッシュの帯域を計測する「キャッシュとメモリー」では、CPUコア内部の1次キャッシュ帯域が約20.8%と、CPU性能とほぼ同じ差があることが分かる。
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