三菱電機は2014年2月10日、カーナビゲーションシステム(カーナビ)などの車載情報機器向けに「簡単操作インタフェース」を開発したと発表した。ドライバーが実行したい操作を推定する「先回りエージェント」と、1回の音声入力で操作ができる「タッチ&ボイスHMI」などにより、従来のカーナビと比べて操作プロセスを大幅に簡略化することができる。2018年度以降の事業化を目指す。
簡単操作インタフェースの機能は3つある。1つ目の先回りエージェントは、ドライバーの操作履歴や運転履歴などを基に、行き先検索や電話などの行いたい操作を推定して上位3つの候補をディスプレイなどに表示する機能だ。これら3つの候補から、ステアリングなどに設置した3択ボタンで選ぶだけで操作を行える。3つの候補に行いたい操作がない場合には、同じくステアリングに設置されている4つの機能ボタン(カーナビゲーション、オーディオ、エアコン、電話)から目的のボタンを選ぶことで、その機能ボタンに関連する、表示されていない推定候補3つが表示される。
2つ目のタッチ&ボイスHMIは、先回りエージェントによって候補が出ない場合に用いる。実行したい操作に関連する機能ボタンを長押しすると、音声ガイダンスが起動する。この音声ガイダンスに従って、実行したい操作について1度だけ音声入力すれば操作を完了する。
先回りエージェントとタッチ&ボイスHMIを用いれば、従来のカーナビと比べて操作回数や時間を大幅に削減できる。施設名称でカーナビゲーションの目的地設定を行う場合、従来のカーナビはタッチパネル操作で操作回数15回/操作時間50秒、音声操作で操作回数10回/操作時間90秒だった。先回りエージェントとタッチ&ボイスHMIであれば、操作回数は2回以下、操作時間は15秒以内に短縮できるという。
3つ目は、大型かつ高輝度のヘッドアップディスプレイ(HUD)である。3.3m先に17.2型サイズ(480×240画素)で表示されるHUDの画面は、輝度が1万3000cd/cm2以上あり日中でも視認性は高い。
同社は、これらの簡単操作インタフェースの機能を示すために運転席型プロトタイプを試作。大型・高輝度のHUDの他、ステアリングには先回りエージェントとタッチ&ボイスHMIに用いる3択ボタンと4つの機能ボタンが設置されている。
「ドライバー要求推定技術」と「カーナビ・クラウド連携音声認識技術」
今回の簡単操作インタフェースを開発する上で重要な役割を果たしたのは、2つのソフトウェア技術である。
1つは、先回りエージェントに用いられている「ドライバー要求推定技術」である。目的地・経由地の設定やルート探索条件、エアコン操作などの履歴である機器操作履歴、車両の現在地、速度、ガソリン残量などの情報である車両情報、ルート上の渋滞情報や車両の近くにあるスポットなどの情報である交通情報を、独自の意図推定アルゴリズムでリアルタイムに処理し、ドライバーが実行したい操作を高い確率で推定する。
もう1つは、タッチ&ボイスHMIの音声認識に用いられている「カーナビ・クラウド連携音声認識技術」だ。カーナビの音声認識機能とクラウドを用いた音声認識機能、それぞれの長所を生かして、カーナビの音声操作と最新全国施設の音声検索の両方について高精度認識を実現したという。
カーナビの音声認識機能は、カーナビ特有の音声認識対象単語を設定できる。例えば、カーナビのアドレス帳に登録した名前を音声認識して電話をかけるなどの操作が可能だ。その一方、処理能力やメモリ量には限界があるため、全国施設の名称などを正確に認識できない場合もある。クラウドの高い処理能力と豊富なデータベースを用いる音声認識機能は、全国施設の名称のような認識対象単語数が多い音声検索に適している。しかし、カーナビの音声認識機能のように、珍しい人名やカーナビ特有の操作用語などは認識しづらい。
カーナビ・クラウド連携音声認識技術では、両者の認識結果から適切に認識結果を選択・統合する独自技術を導入。カーナビの音声操作と最新の全国施設1000万件の音声検索について高精度の認識を両立したとしている。
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