Googleは2014年1月に3つの戦略を実施した。具体的には、Motorola Mobilityの売却、Nest Labsの買収、Samsung Electronicsとのクロスライセンス契約の締結だ。これら3つ点を線で結ぶと、何が見えてくるだろうか。
筆者は、その線の先に、スマートフォン時代の終えんを見ている。より正確に言えば、世界中の消費者のスマートフォンに対する熱が冷める時が来ようとしている。「スマートフォンがもてはやされる時代は終わった」と、筆者は感じている。
Googleは、Motorola Mobilityのモバイル事業を中国の巨大企業Lenovoに売却すると決断した(ただし、Motorola MobilityのIPの大半は、Googleが引き続き所有する)。この決断は、Googleの敗北ではなく、中国に対する米国の敗北を意味している。
メディアによるGoogle批判が過熱している。Googleが、「Motorolaブランドの携帯機器や携帯電話機を新たに開発し、携帯機器とソフトウェアの両方でAppleと勝負する」という約束を果たせなかったからだ。
筆者は、米国が仕事を創造し続ける国であってほしいと思うが、Googleの決断を責めるつもりもない。今回のGoogleとLenovoの取引は、Googleが「スマートフォンのハードウェア事業にしがみついていても、得るものは少ない」と認識していることを表している。
付加価値は周辺機器に
では、32億米ドルでNest Labsを買収するというGoogleの決断には、どういった意味があるのだろうか。
Nest Labsの製品である、人工知能を搭載したサーモスタット「Learning Thermostat」と、煙や一酸化炭素の感知器「Protect」は、1つのレシーバ(Nest Labsのスマートフォン用アプリ)に接続することを前提に設計されている。
ここで重要なのは、スマートフォン自体は、単にサーモスタットや煙探知機を操作するための道具にすぎないということだ。スマートフォンは、早くもコモディティ品になりつつある。
誤解のないようにしておきたいのだが、筆者はスマートフォンの失墜を予測しているわけではない。スマートフォンは、この先何年もユビキタスな存在であり続け、その価値が失われることもないだろう。しかし、スマートフォンのカギとなる機能は、「多種多様な接続機器や技術に付随するモデムのようなもの」に変わっていくだろう。
スマートフォンにできるだけ多くの機能を詰め込もうとするのは、もう古い考えだ。スマートフォンは、別の何かに変化する可能性がある。スマートフォンの存在によって、新たな世界が開かれようとしている。今後は、付加価値に関して新たな競争が巻き起こると予想される。だがそれは、スマートフォン自体ではなく、スマートフォンに接続する周辺機器を取り巻く競争だ。
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