セキュリティ製品・サービスの新体系を発表
「セキュリティについては当社もこれまでいろいろやってきたが、今回の発表はその集大成だ」
富士通の川妻康男執行役員常務は、同社が1月20日、セキュリティに関する製品やサービス群を「FUJITSU Security Initiative」として新たに体系化したことを発表した会見でこう切り出した。
同社ではこの新体系を通じて、各種製品・サービスとともにこれまで培ってきたセキュリティ対策の構築・運用ノウハウや教育・訓練をトータルに提供していく構えだ。
また、30人のセキュリティエキスパートを核とした組織「セキュリティイニシアティブセンター」を新設。顧客企業のセキュリティ環境の課題抽出、対策検討、システム構築、運用といったライフサイクルに対し、巧妙化するサイバー攻撃などの脅威から常に安全なICT環境を保てるよう支援するとしている。
新体系では今回の発表に合わせて、サイバー攻撃対策やセキュリティコンサルティング、セキュリティ運用を強化するとともに、教育・訓練を新たなサービスとして追加している。その詳細については関連記事を参照いただくとして、ここでは今回のように重点事業の体系化を進める同社の狙いを探ってみたい。
これまで富士通では、重点事業の体系化として、クラウド、ビッグデータ、モバイルについてそれぞれ「FUJITSU Cloud Initiative」「FUJITSU Big Data Initiative」「FUJITSU Mobile Initiative」を展開しており、今回発表したセキュリティ向けが4つ目のInitiativeとなる。
川妻氏はInitiativeについて、「Initiativeとして体系化した事業は、富士通の中で特定の事業部が展開するのではなく、全社を挙げて取り組んでいく」と説明した。また、今回の発表会見で川妻氏に続いて説明に立った同社サービスビジネス本部ビジネス統括部の太田大州統括部長は、「FUJITSU Security Initiativeは、グローバルに一本化された体系として打ち出したものだ」と強調した。
グローバルに一本化された体系という意味では、先に展開しているクラウド、ビッグデータ、モバイル向けのInitiativeも同じだ。グローバル展開に力を入れている同社としては、Initiativeとして体系化することで、国内だけでなくグローバルにも重点事業への取り組みを明確に打ち出す狙いがある。
グローバルへの発信力を強める「Initiative」
そうした国内外への意思表示を含めて、重点事業をInitiativeとして体系化する取り組みは、まさしく富士通のマーケティング戦略に基づくものである。それは、川妻氏がマーケティング部門の副部門長であることからも明らかだ。
同社はマーケティング戦略において、昨年4月に大方針を打ち出している。それは、全社ビジョンとして掲げる「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」を基軸に、ビジネスや社会のイノベーション・コンセプト、その実現に向けた技術や商品のコンセプト、および対応する商品群を「Fujitsu Technology and Service Vision」として体系化したものだ。
この大方針を発表した当時の会見で、マーケティング部門長を務める佐相秀幸副社長が、「技術や商品を新たに体系化することで、イノベーションにつながる領域にビジネスを広げていきたい」と力説していたのを覚えている。重点事業をInitiativeとして体系化する取り組みも、この大方針の流れの中にある。
実は、こうしたマーケティング戦略は、富士通が競合するIBMやHPなどで先行している。その理由は、グローバル企業として経営理念や行動指針にとどまらず、技術や商品における価値や今後の方向性における共通認識がこれまでにも増して大事になってくるからだ。その意味では、真のグローバル企業に向けてさまざまな発信を行っていくことは、富士通にとって非常に重要だろう。
例えば、同社がInitiativeとして体系化したクラウド、ビッグデータ、モバイル、セキュリティといった分野は、IBM、HP、Oracle、SAPなどもこぞって製品・サービスの体系を打ち出している。もちろん、実際にはその中身が問われることになるが、製品・サービスの体系を分かりやすく提示するのも非常に大事だ。これまで日本のベンダーはその発信力が弱かった印象がある。その意味では、今回の富士通のアプローチには大いに期待したいところだ。
最後に、今回富士通が発表したFUJITSU Security Initiativeにまつわるプチ情報を1つ。同社はこの中のサービス名称で一部「サイバーセキュリティ」という言葉を使おうとしていたが、取りやめた。聞くところによると、サイバーセキュリティという言葉は商標登録されているそうだ。あまり知られていないようで、ネット検索でもさまざまなところに適用されているケースが見られる。注意喚起しておきたい。
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