著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。アイティメディアのONETOPIでは「ディズニー」や「博物館/美術館」などのキュレーターをこなしつつ、自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め日々試行錯誤中。
「Winny」「Share」「Perfect Dark」など、P2Pファイル共有ソフトと呼ばれるアプリケーションをご存じでしょうか。これらはユーザー同士がファイルを交換できるツールで、いくつかの特徴から悪用されることが多く、セキュリティの世界では注目されているものです。
その特徴とは、「ピアツーピアでの通信」や「高い匿名性」などです。ピアツーピアは中央にサーバがあるのではなく、直接PCとPCが通信を行うというものです。中央にサーバがないため、いったい誰が、誰と、何を交換したのかが分かりにくくなります。この特徴を最大限に拡張したのが、Winnyなどのファイル共有ソフトです。
なぜ悪用されるのか? それは、違法なファイルの交換がアンダーグラウンドでひっそりとできてしまうのです。例えばテレビ番組や映画の動画ファイルなどの著作権侵害コンテンツや、ポルノコンテンツ、そして企業や個人から漏えいした個人情報……。特にP2Pネットワークに“放流”された個人情報は回収することが難しいという事情もあり、これらのアプリケーションは、技術的には注目すべき点が多いものの流通するコンテンツの問題から長らく「悪」とされてきました。
なお、P2Pネットワークは匿名性が高いとされていますが、日本の警察もP2Pファイル共有ソフトの監視を続けていて、サイバー世界のパトロールの結果、摘発される事例も多数あります。違法コンテンツの流通に加担しないよう、企業内、家庭内で監視を行うべきツールだといえます。
若い世代は「P2Pファイル共有ソフト」を正しく認識しているかも?
……と、ここまで読んだ人の中には「そんなの常識だよ」「いまさらなぜこの説明を?」と思う人も多いでしょう。
いわゆる年末年始休みの1週間のデータですが、それぞれのツールともに横ばいで変化はありません。つまり、今日でものべ15万〜20万ノードが稼働中だということです。古くからP2Pファイル共有ソフトを使っている人は、ずっと使い続けているのかもしれないと読み解くこともできます。
今度は逮捕者数のグラフを見てみましょう。何と30〜40代が全体の78%を占めています。一方、20代は16%、10代に至ってはたったの2%しかいません。「コンテンツはネット上で無料で手に入るもの」と思いがちなデジタルネイティブ世代のほうが少数派なのです。あくまでも逮捕された人たちの年齢ですが、この分布はちょっと意外に思うのではないでしょうか。
「P2Pはヤバい」という新入社員、自分だけは大丈夫と思う中堅社員
P2Pファイル共有ソフトの逮捕報道は、ITセキュリティ事件のなかでもテレビのニュースなどになりやすいものです。おそらく、事件の概要が分かりやすい上に悪者がはっきりしていることが要因ではないかと思います。
その結果、P2Pファイル共有ソフトを使っていない若者たちは誘惑に駆られて新たに手を出すことはなく、すでに使っていた人たちは「自分だけは大丈夫、ヘタはうたない」と考えて使い続けるという構図になっているのかもしれません。
実際に、誠編集部の20代代表としてイケダ記者(25歳)に「P2Pファイル共有ソフトについてどう思う?」と聞いてみました。
「『Winny』という名前のソフトがあることは知っています。『Share』というのも耳にしたことがあります。『Perfect Dark』は知りませんでした。実際に使ってみたいかって? それはまったく思いませんね。だって、怖いじゃないですか」
このコラムを読んでいる読者の年齢層は幅広いのではと思いますが、皆さんの周りではいかがでしょうか。もしかしたら、P2Pファイル共有ソフトを使うのは「おっさんくさい」などと若者から言われてるのかもしれませんね。
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