パナソニックをはじめとする日本の中堅カメラメーカー各社は、スマートフォンで「自撮り」(Selfie)を楽しむ世代へのミラーレスカメラの売り込みに苦戦している。ミラーレスカメラが5年前に登場したときには、将来性の高い技術として大いに期待されていた。
富士フイルムやオリンパスなどの同業他社と同様に、パナソニックはカメラ事業で赤字を出している。高画質の写真を撮れるスマートフォンがコンパクトカメラ市場に食い込んできた結果だ。調査会社IDCによれば、2013年のコンパクトカメラの販売台数は前年比で40%以上減少し、5900万台を下回る見通しという。
一方、「ローエンドのコンパクトカメラとハイエンドの一眼レフカメラの間に位置する存在」として将来性が期待されていたミラーレスカメラも、画質よりネット接続を重視するユーザーが増加する中で、売れ行きが鈍化している。
パナソニックは2013年4〜9月期決算でカメラの売上高が40%減少しており、同社のイメージング事業部は厳しい状況に置かれている。パナソニックは中期経営計画において2016年3月期までの赤字事業の解消を目指しており、それがかなわなかった場合には事業撤退の可能性もあるとしている。
「中長期的にみると、デジタルカメラメーカーの業績は低下しており、市場は寡占化が進んでいる」。クレディ・スイス証券のイメージング担当アナリスト、吉田優氏はそう指摘する。
IDCによれば、2013年7〜9月期のカメラ市場においてパナソニックのシェアは3.1%と、前年の3.8%よりも縮小している。この市場では、キヤノン、ニコン、ソニーの3社が合わせて60%超のシェアを占めている。
「強いブランド力と価格競争力を持つ企業だけが生き残る。この基準を満たしているのは、キヤノン、ニコン、ソニーだけだ」と、吉田氏は語る。
現在、一眼レフカメラ市場はキヤノンとニコンが独占している。ソニーは複数のカメラメーカー向けにセンサーを製造している強みやスマートフォン部門との協業によって、淘汰を回避できそうだ。
ミラーレスの失速
パナソニック、富士フイルム、オリンパスの各社は、コンパクトカメラを見限り、深海ダイビングなどのニッチ市場にターゲットを据え、より利益幅の大きいミラーレスモデルを投入することで、スマートフォンの脅威をかわそうとしている。
一眼レフ市場がキヤノンとニコンにほぼ独占される中、同市場から締め出されている中堅カメラメーカーにとっては、ミラーレスカメラが期待の成長分野となった。一眼レフ市場ではソニーが大差で3位に付けており、パナソニックと富士フイルムは一眼レフは作っておらず、オリンパスも2013年に開発を事実上打ち切っている。
パナソニックの「LUMIX GM」をはじめとするミラーレスカメラは、光学ファインダーに必要となる内部ミラーを搭載せず、電子ファインダーや液晶画面で画像を確認する。そのため、ミラーレスカメラは一眼レフよりも小型化が可能であり、一方では、より大きなセンサーと交換式レンズのおかげで、コンパクトカメラやスマートフォンよりも優れた画質を提供できる。
「一眼レフは重くてシャッター音もうるさいが、ミラーレスは小さくて静かだ。一眼レフのほうが画質が良いと言う人もいるが、ミラーレスカメラの画質は一眼レフ以上とまでは言わないまでも、同等レベルにまでは向上している」と、富士フイルム光学・電子映像事業部長の田中弘志氏は語る。
一方、批判的な向きからは「液晶画面は光学ファインダーの鮮明さには決してかなわない」といった指摘や、「スポーツのように高速で動く被写体にはシャッタースピードが遅すぎる」といった声が挙がっている。
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