「世界が今本当に必要としているものを創るのだ」。GEの創業者である発明王トーマス・エジソン(Thomas Edison)の言葉だ。GEはその言葉通り、主要業務分野を変えながらも各分野でイノベーションを生み出し続けてきた。多くの日系企業がイノベーション創出に苦しみ、新たな価値を示せない中、GEではなぜ、継続的に新たな価値を提案し続けることができるのだろうか。
日系企業と技術連携を目指す「ジャパン・テクノロジー・イニシアチブ」などを運営する、GE グローバルリサーチセンターの日本代表を務める浅倉眞司氏に、GEのイノベーションへのアプローチと現在重視する技術の方向性について話を聞いた。
イマジネーションを生み出すカルチャー
MONOist 多くの企業がイノベーション創出に苦しんでいる中、GEではイノベーションを経営の柱に据え、さまざまな取り組みを通じて、多くの分野でイノベーションを生み出してきました。その根本にはどういう考え方があるのですか。
浅倉氏 GEはブランディングのタグラインとして「imagination at work(イマジネーション・アット・ワーク)」を掲げている。イマジネーションはイノベーションを生み出すのに必要なものだ。そのイマジネーションをいかに生み出すかということを追求するカルチャーがGEの中にはある。
イノベーションというと定義がいろいろあるが(関連記事:その製品が売れないのは「良くないから」だ——一橋大学米倉教授)、最終的にはマーケットのニーズにどう応えるかということだ。顧客が今どういうものを欲しがっていて、どういうものを提供すれば、みんなが幸せになるのか。それに対して新たな価値を提供するのが、イノベーションになる。
イノベーションの話題になると、オープンイノベーションなどがよく語られるが、それらは基本的には顧客のニーズに対してどのようなアプローチを取るかという問題にすぎない。
顧客に対する価値を最終目的とした場合、そこに至る手法はさまざまなものが存在する。その手法が既に存在している技術で、さらにそれが外部にあるのであれば、オープンイノベーションを採用する、という流れになる。そうでなければ、自社で開発することになるだろう。
さまざまな技術を自社内で開発するメリットはさまざまなものがあると思うが、GEの研究開発では、基本的に「No Reinventing the Wheel(車輪の再発明をするな)」ということが強く言われている。既に広く使われている技術に新たにリソースを掛けて、あまり変わりがないような再発明を行ったとしても顧客にとっては価値はない。顧客に価値を提供するのにいかに効果的な手法を選択して目的を達成するかということが問われている。顧客への価値提供を中心に考えた場合、「自社内の技術か、他社の技術か」というのは大した違いはないという考え方だ。
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