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パナソニックの新規事業になる? 空気と水と光からメタンを作る人工光合成とは

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「エコプロダクツ2013」でパナソニックが展示した人工光合成システム

 パナソニックは、「エコプロダクツ2013」(2013年12月12〜14日、東京ビッグサイト)において、同社が開発を進めている人工光合成の最新研究成果を一般公開した。従来、人工光合成による生成物はギ酸(HCOOH)だったが、触媒の材料をインジウムから銅に置き換えてメタン(CH4)を生成することに成功した。今後は、2015年までに、植物と同等レベルの太陽光エネルギー変換効率(照射した太陽光のエネルギーに対して、生成した有機物が有するエネルギーの割合)でメタンを生成することを目標としている。

 従来の生成物だったギ酸は、化学メーカーの原材料として利用されている他、燃料電池車の燃料として注目されている水素の原料にもなる。しかし、ギ酸そのものは、直接燃料として利用はできない。一方、メタンは、都市ガスなどに利用される燃料ガスである。ギ酸と同様に水素合成の原料にもなる。

 現在、パナソニックの人工光合成における、メタン生成時の太陽光エネルギー変換効率は0.04%。これを、バイオマスとして使用されている植物(スイッチグラス)の光合成と同等の0.2%にまで高めたい考えだ。

「エコプロダクツ2013」でパナソニックが展示した人工光合成システム「エコプロダクツ2013」でパナソニックが展示した人工光合成システム。左側が窒化ガリウムを用いる光電極部で、右側が銅を用いた触媒部である(クリックで拡大)

光化学で最も注目されている研究テーマ

 人工光合成とは、植物が太陽光を浴びて水(H2O)と空気中の二酸化炭素(CO2)から有機物(植物の場合はブドウ糖)と酸素を生成する光合成を、人工的な仕組みで行えるようにする技術のことである。光化学で最も注目されている研究テーマの1つであり、豊田中央研究所なども取り組んでいる(関連記事:空気と水と太陽光だけで燃料を作る、豊田中央研が人工光合成を実現)。

植物の光合成(左)と人工光合成の比較植物の光合成(左)と人工光合成の比較(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 人工光合成では、光を照射することで水を水素イオンと酸素に分解する光電極部と、この水素イオンと二酸化炭素から有機物を生成する触媒部に分かれている。なお、水素イオンは、イオン交換膜を介して光電極部から触媒部に移動する。また、水の分解の際に発生する電子は、有機物の生成反応に用いるため触媒部に流れるようになっている。

人工光合成の仕組み人工光合成の仕組み。パナソニックの場合、光電極部に窒化ガリウムを、触媒部に金属(インジウムや銅)を用いる(クリックで拡大) 出典:パナソニック

無機材料だけで人工光合成を実現

 パナソニックは2012年7月、光電極部にLED照明などで用いられている半導体材料の窒化ガリウム(GaN)を、触媒部にインジウムを用いることにより、ギ酸の生成に成功したと発表した(プレスリリース)。ギ酸生成時の太陽光エネルギー変換効率は0.2%。これは、先述したメタンの目標値である、バイオマスとして使用される植物とほぼ同等だ。

 高い太陽光エネルギー変換効率に加えて、窒化ガリウムとインジウムという無機材料だけで人工光合成を実現したことも大きな特徴だ。従来、光電極部には二酸化チタンなどの無機材料を利用する事例はあったが、触媒部は金属に有機物を配位させた金属錯体を用いることがほとんどだった。しかし、金属錯体の場合、照射した光の量に素早く追随できる反応速度を得るのが難しかった。

 さらに、エコプロダクツ2013で公開した成果により、触媒部に用いる金属を変更することで生成する有機物の種類を変えられることも分かった。ギ酸が必要な場合はインジウムを、メタンが必要な場合は銅を用いればよいので、人工光合成の活用範囲を広げられるわけだ。

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