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大幅リニューアルでサービス強化 富士通のシニア向けSNS「らくらくコミュニティ」とは

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 シニアを対象にしたNTTドコモのフィーチャーフォン「らくらくホン」を10年以上継続して開発し続けている富士通。2012年にはAndroid OSを採用した「らくらくスマートフォン F-12D」を開発し、翌2013年8月には「らくらくスマートフォン2 F-08E」、さらに同年10月にらくらくスマートフォンでは初めてGoogleアカウントの登録に対応した「らくらくスマートフォン プレミアム F-09E」を開発した。らくらくスマートフォンシリーズは、押した感触のある独自のタッチパネルを搭載し、シニアにも使えるシンプルなスマートフォンとして受け入れられている。

photophoto「らくらくスマートフォン プレミアム F-09E」(写真=左)と「らくらくスマートフォン2 F-08E」(写真=右)

 初代らくらくスマートフォンの提供と同時に始められたサービスが、シニア向けSNSの「らくらくコミュニティ」だ。富士通が運営するSNSで、サービス開始当初はニックネームを利用するオープンな掲示板として提供されていたが、らくらくスマートフォン2の発売時に大幅リニューアルが行われた。今回、リニューアルの内容やコミュニティの現状、さらに富士通がシニア向けSNSを展開する理由や将来の展望について、富士通 ユビキタスサービス事業部の熊沢剛氏と、同 ユビキタスビジネス戦略本部の青山進氏に話を聞いた。

photophoto富士通 ユビキタスサービス事業部の熊沢氏(写真=左)と同 ユビキタスビジネス戦略本部の青山氏(写真=右)

らくらくコミュニティを始めた理由

 「新しいモノを使いこなす喜びを提供したいという思いがあった」——シニア向けのSNSを始めた理由を、熊沢氏はこう振り返る。

 「らくらくスマートフォンを始めるにあたって、プロダクトのみならずサービスの提供も始めました。“モノ”に加えて“コト”も提供し、新しいつながりが増える喜びを提供したいという思いが背景にありました」(熊沢氏)

photophotoらくらくスマートフォン2/プレミアムのホーム画面にはらくらくコミュニティへの専用ボタンがある(写真=左)。

 らくらくコミュニティは当初、シニア向けコンテンツサイト「らくらくニッポン探訪」の1コーナーとして、「旅」や「食」など、テーマが決められた掲示板機能として始まった。しかし、もっと趣味について深く熱く語りたい、実名で実社会の身近な仲間と安心してコミュニケーションしたい、というユーザーの声に応える形で、2013年8月にリニューアル。現在は独立したサービスとして提供されている。リニューアル前のユーザーは約7万5000人。10月時点で新規ユーザーが約1万8000人おり、合計9万人のユーザーが利用している。らくらくスマートフォン購入者の半数弱が利用しており、年齢は60歳以上が多い。登録数上の男女差はそれほどないが、アクティブユーザーは女性の方が多いという。

 リニューアルでは、さまざまな端末を利用するシニアユーザーが、安心して趣味と仲間作りに注力できるような場所、というコンセプトでマルチデバイスに対応。スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット、PCで利用できるようになった。また、らくらくスマートフォン2とらくらくスマートフォン プレミアムには専用アプリがプリセットされており、利用登録が3ステップ程度と簡単にできるほか、投稿にコメントがあると通知されてらくらくコミュニティを簡単かつ便利に使える。その他の端末でも、ブラウザ経由で利用可能だ。

「あいさつ」から始まる掲示板のコミュニケーション

 らくらくコミュニティのメインの機能は、趣味を語り合う掲示板だ。これはリニューアル前から提供されてきた機能だが、掲示板のテーマを細分化し、活性化させているところだという。

photophoto「旅」に関する掲示板の利用イメージ

 「これまで、旅や食をテーマにしたものがあったんですが、『どういう話題を投稿していいか分からない』『自分の些細なことを投稿していいいのか』『読んではいるけれど投稿する勇気がない』と、遠慮される方がいました。そこで、まずは投稿してみましょうということから、“あいさつ”の掲示板を用意しました」(熊沢氏)

 あいさつの掲示板に投稿されるものは、「初めまして」「初めて投稿してみました」など、本当にごく一般的なあいさつ。しかし、それに後述する「拍手!」が付き、あいさつをトリガーにしてコミュニケーションが始まっているという。「近況」「昭和懐かしモノ」といったテーマも用意され、気軽に何でも投稿できる場として好評だ。

photophoto何気ないあいさつのやりとりから掲示板に慣れ親しむことが多いという

 趣味に関する掲示板には、従来の旅や食に加え、「ペット」や「家族・人間関係」などが追加された。特にペット掲示板が人気だという。

 「コメントのやり取りも活発で、『かわいい』というコメントが付くと非常に喜んでいただけます。死んでしまったペットの写真をアップしている方もいて、ここに写真が残っているということが大事なことになっていますね」(熊沢氏)

 現実のイベントに関連したテーマで盛り上がることもある。

 「阿波踊りの時期には、200〜300人がペットに手ぬぐいかぶせた写真を投稿して、掲示板内でバーチャル阿波おどり大会が勝手に始まりました」(青山氏)

 掲示板では、写真やテキスト以外に、イラストの投稿も可能となっている。イラストは顔文字調、キャラクター、季節の風物詩など150点以上を富士通が用意し、随時更新している。また、Facebookの「いいね!」に相当する「拍手!」ボタンがあり、1タップで投稿への共感や感想を相手に伝えることができる。

photophotoコミュニケーションを円滑にする掲示板用のイラストも豊富に用意している

 「現在、投稿する8割の方がイラストを利用しています。コメントが入ったときにイラストで返すというような使われ方です。また、拍手!ボタンは、コメントまで書く必要がない場合にこれで済ますというように、使い分けがされているようです」(熊沢氏)

 コメントは礼儀正しく、いいコミュニケーションがとられているのが、主催者としても嬉しいという。また、「らくらくコミュニティに写真を投稿するために散歩に行くようになった」「旅行にデジカメだけでなくケータイも持っていって写真を撮るようになった」など、らくらくコミュニティが、いい方向でシニア層の生活に変化をもたらしている事例もあるそうだ。

実名も使えるクローズドな「サークル」

 今回のリニューアルでは、ニックネームに加え、実名でも利用できるクローズドの「サークル」も提供されるようになった。サークルは誰でもすぐに作ることができ、事前チェックのようなものはない。サークルの管理者である幹事が承認した仲間しか参加できず、実名かニックネームでやり取りするかは、幹事が決める。

photophotophotoサークルの利用イメージ

 「300近いサークルができていますが、仲良しサークルが多いですね。例えば、ペット掲示板で知り合って、同じ犬種を飼っている人同士でサークル作り、ローカルにやろうという流れが多いです。また、我々も望んでいるところですが、実社会のコミュニティ、例えばボランティアやマラソンサークル、お料理クラブ、カラオケクラブなど、そういった活動をされている方々が、『Facebookは難しいから、らくらくコミュニティでやろうよ』という流れもあり、我々も告知を強化しています。この場合は当然、実名でのコミュニケーションですね」(熊沢氏)

 季節のイベントや共通の趣味に関する画像、時事に関する投稿など、各サークルで活発なコミュニケーションが行われている。

 「例えば、夏は花火大会のテレビ中継に合わせ、サークル内でもバーチャル花火大会が開催されました。花火が上がったら『たまやー』と投稿するとか、料理写真の“差し入れ”をするなど、その個人サークルに全国からユーザーが集まりました。絵手紙サークルは、ご自身の力作を披露する場になっています」(熊沢氏)

 他にも、らくらくスマートフォンの使い方に長けている人が、他の人に使い方を教えるサークルなどもあるそうだ。

らくらくコミュニティ主催のイベントも人気

 サークルには、らくらくコミュニティ主催のオープンサークルもあり、イベントが定期的に開催されている。中でも「フォトコンテスト」は2013年8月から毎月開催。写真家の林義勝氏が審査員を努め、毎月300〜400人が参加しているという。

 「開始当初は300程度の投稿だったんですが、もっと気楽でいいんですよ、という先生の講評が出てからは、投稿が増えていきました。構図をしっかり決めた作品もありますが、このフォトコンテストの特徴は、スマートフォンで撮った写真らしく、衝動に駆られてシャッターを押したもの、臨場感あふれる写真が多いことです」(熊沢氏)

 フォトコンテスト以外に、絵本ライターの中川ひろたか氏が審査をする「だじゃれコンテスト」、手芸用品店のオカダヤや日本手芸協会とコラボレーションした「手芸コンテスト」なども行われた。

 「コンテストの作品に対しても、ちゃんとコメントが付きます。写真を投稿するのは同じですが、ジャンルを変えていろんな趣味の方に響くようなコンテストを用意しているところです」(熊沢氏)

 らくらくコミュニティが主催するサークルには、「らくらくコミュニティ編集室」という名前で司会進行役のファシリテーター(促進者)が存在する。ファシリテーターはイベントへの参加を促すだけではなく、見るだけの人にも、いろんな写真や投稿を提供し、読み物としての楽しさの幅を広げることになる。

 「例えばフォトコンテストで、ファシリテーターが『◯◯のような写真もいいですよね』という一言を投稿すると、そういった写真が集まります。いい意味での引っ掻き回し役ですね。その辺のノウハウもできつつあります」(熊沢氏)

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