Samsungが「GALAXY Gear」、ソニーモバイルが「SmartWatch 2 SW2」を発売し、Googleの「Google Glass」も一般発売が待たれるなど、ウェアラブルコンピューター、そしてモノのインターネット(IoT:Internet of Things)の時代が少しずつ近づいている。だがネットワークやサービスはもちろん、端末やUI側の課題はまだまだある。11月中旬に米サンフランシスコで開催された「Open Mobile Summit 2013」で、ソニー、Motorola(Google)などの代表者が“ポスト・スマートフォン”(スマートフォンの後)時代についての課題や展望を語った。
パネルには、ソニーモバイルでCEOに助言する立場にあるシニア技術アドバイザーのJan Uddenfeldt氏、Motorola Mobilityで製品マネジメント担当シニアバイスプレジデントを務めるRick Osterloh氏、Verizon Wirelessでデバイス技術担当バイスプレジデントを務めるRo McNally氏、デザインやコンサルの草分けであるFrog Designの最高クリエイティブディレクター、Mark Rolston氏の4氏が参加。そしてGartnerでモノのインターネット分野を担当するリサーチディレクター、Angela Mclntyre氏がモデレーターを務めた。
スマートフォン単体で戦ってきたメーカーが弱くなっている
スマートフォンが成長国で普及し、これから途上国市場に拡大という段階だが、業界はすでにスマートフォンの次を探っている。現時点ではスマートウォッチやメガネ型コンピューターが注目されているが、全体としてはモバイル端末だけではなく、家電などすでにある製品カテゴリーもインターネットに接続される“モノのインターネット”の時代に向かっている。その流れについてモデレーターのMclntyre氏は、「スマートフォンは(ポストスマートフォン時代も)十分活用される。技術を操作するにあたって中心的な存在になる」と予想する。
ソニーのUddenfeldt氏も「スマートフォンは周囲から独立した製品ではない。コンシューマー家電の中心になる」と述べ、Mclntyre氏の意見に同意する。これは家電メーカーのソニーにとっては優位になるという。「ソニーは端末間で共通のユーザー体験を構築している。テレビ、カメラなどほかの製品との統合をすすめており、これにはウェアラブルも含まれる」とUddenfeldt氏。この点については、「(これまでの携帯電話とは)根本から異なる点だ。スマートフォン単体で戦ってきたベンダーが、(コンシューマー家電との連携戦略を持たないために)どんどん弱くなっている」と続ける。
ソニーの具体的な対策の1つとしてUddenfeldt氏が挙げたのが「One Touch」だ。NFC接続によりヘッドフォン、スピーカーなどの周辺機器とBluetoothペアリングを行うことができるサービスで、Xperia側の音楽をスピーカーで聴くなどのことができるようになる。Xperiaを中心に「コンシューマー家電のエコシステムを作る」とUddenfeldt氏は述べる。すでに対応製品は60機種を超えているという。
これに対し、ライバルMotorolaのOsterloh氏は「ポストスマートフォン時代をどうやって可能にしていくか、これに時間を割いている」と述べるにとどまった。Osterloh氏はその代わり、IoT時代に向けた動きの一例として、Disneyがフロリダ州Disney Worldでテスト中のリストバンド「Magic Band」に触れた。RFID内蔵のユーザー情報を含むリストバンドで、入場券、ホテルのキーとして利用できる。「さまざまな技術が含まれているが、目に見えない。利用も簡単で、シンプルさを実現している」と評価した。
SmartWatch 2は「実際に使えるレベルに達した」
スマートフォンを活用する上で、クラウドも重要になってくる。「複数の画面がある環境で、便利で使いやすい体験を提供するために、クラウドをスマートに使う必要がある。ある程度の自動化も必要だ」とソニーのUddenfeldt氏。
あわせて、スマートフォンを便利に使うための取り組みの1つとして、Uddenfeldt氏はSmartWatchを紹介した。Bluetooth接続でXperiaスマートフォンと連携できるのがSmartWatch最大の特徴。電話の着信やメールの受信、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアからのフィードや天気情報などを表示できる。先に登場した3世代目のSmartWatch 2については、「実際に使えるレベルに達した」と満足顔だ。スマートフォン背面に装着できる“アタッチャブルカメラ”「DSC-QX100」も紹介、Wi-Fi経由でXperiaと接続できるカメラとなる。
だが、課題も多数挙がった。スマートフォンと周囲の端末との連携という点では「かなり望ましい状態になってきた」としながらも、全体としては、「エンドユーザーにとっては、恐ろしいぐらいぐちゃぐちゃな状態」とMotorolaのOsterloh氏は言う。さまざまな端末からクラウドにあるデータやサービスにアクセスできるようになったが、利便性や操作性はまだまだ大きく劣るとみる。
FrogのRolston氏は端末連携で必要になる管理面も課題に挙げた。「Bluetooth接続、パスワードの入力、ホームWi-Fiの管理など、常時接続はコンシューマーにとってやっかいでもある。コンシューマーが一種のネットワーク管理者になってしまっている」とRolston氏。一方で、これは企業にとってチャンスでもあるという。「サービスが連携して動くように1つにまとめることにビジネスチャンスがある。データやセキュリティだけではなく、ネットワークも管理する1つのバーチャルプロバイダが必要」とRolston氏。
家電連携もスマートフォンが中心になる
VerizonのMcNally氏は、家電との連携が実現するスマートホームへの期待として「冷蔵庫などが接続される。スマートフォンは中心になる」と語った。どの技術が連携をスムーズにするのかの模索を経て、音声認識など方向性が定まりつつあるとトレンドをまとめる。特に音声認識については、「ユーザーの違和感がなくなってきている」とMcNally氏。ソニーのUddenfeldt氏も音声認識について「長年の技術開発を経て、入力方法として使えるようになってきた」と進化を認めた。だが、FrogのRolston氏はさらにパワフルなUIに期待を寄せ、最終的にはスマートフォンの制御なしにユーザーが何をしたいのかに合わせて、端末側が自動対応することが理想であることを展望した。
これをGartnerのMclntyre氏は「バーチャルアシスタント」と形容し、アプリやサービスが協調して動く世界だと考える。MotorolaのOsterloh氏は「マシン間がユーザーの介入なしに自動的にやり取りする構想に向けて、Googleは取り組みを進めている。Webにあるサービス側の進化にデバイスとネットワークが追いつき、現実のものにしていく必要がある」と述べた。普及にあたっては、「先駆者が出てきて道筋を示すことが大切」とOsterloh氏。ソニーのUddenfeld氏はこれに同意しながら「Androidエコシステムで協業が進んでいる」とAndroid陣営のリードを強調し、隣のOsterloh氏と握手を交わした。
XperiaはSony Ericsson買収後に販売台数が伸びている
パネルの後、Uddenfeldt氏と話をする機会があったが、そこでUddenfeldt氏はソニーによるSony Ericsson買収からこれまでの経緯を評価して、次のように語った。「Xperiaラインは買収後に販売台数が伸びており、買収の成果が出ている。モバイルはソニーの3つのコア事業の1つであり、Xperiaはソニーにとって戦略的製品だ。ソニーはモバイルを積極活用して企業を変革している」。同じくコア事業であり、先に登場した「Sony Playstation 4」などゲーム分野との統合については、「SP4ではクラウド活用を進めているが、これは非常に重要なこと。詳細な計画は話せないが、クラウドゲームの文脈でモバイルがどう利用されるかが大切になる」とコメントした。
平井一夫社長が進める「One Sony」については、「これまでの経過は素晴らしい。連携できる端末が増えている」とし、60以上の端末と連携できるという先述のOne Touchを引き合いに出した。プラットフォームについては、「テレビなどほかの端末でも重要になっている」とAndroid戦略を強調した。
関連キーワード
ソニー | スマートフォン | 家電 | スマートウォッチ | Xperia | Motorola(モトローラ) | クラウド | ウェアラブルコンピュータ | Google | Sony Ericsson | ソニーモバイルコミュニケーションズ | Android | メガネ型コンピュータ | Bluetooth | 音声認識 | Verizon | ウェアラブル | ディズニー | GALAXY Gear | サイバーショット | ヘッドフォン | 平井一夫 | NFC(Near Field Communication) | Google Glass | Xperia Z1
関連記事
- Open Mobile Summit 2013:キャリアの役割は単なるダムパイプなのか?——ドコモ、T-Mobile、Verizonが語る
米サンフランシスコで11月中旬に開催された「Open Mobile Summit 2013」で、VerizonとT-Mobile、そしてNTT DOCOMO USAのキーパーソンがLTE時代のモバイル戦略を語った。キャリアの役割とは、単なるダムパイプなのか、それとも——。 - 初めて“フルスイング”したOne Sonyのスマートフォン——平井社長と田嶋氏が語る「Xperia Z1」
9月のIFAでグローバルモデルが発表後、日本でも10月に発売された、ソニーモバイルの最新スマートフォン「Xperia Z1」。このZ1を軸に、ソニーはどんな事業展開を図っていくのか。そしてZ1に込めた想いとは? ソニーの平井社長と、ソニーモバイルの商品企画を統括する田嶋氏に話を聞いた。 - ソニーモバイル、「SmartWatch 2 SW2」と自動撮影スタンド「IPT-DS10M」を10月25日に発売
ソニーモバイルが、腕時計型デバイスの最新モデル「SmartWatch 2 SW2」と、Xperiaをセットして自動で顔認識+笑顔を撮影をしてくれるスタンド「IPT-DS10M」をXperia Storeで10月25日に発売する。あわせて、Xperiaユーザーを対象とした特別キャンペーンを実施する。 - IFA 2013:何ができる? 操作方法は?——写真と動画で解説する「GALAXY Gear」
Samsung電子が発表した腕時計型デバイス「GALAXY Gear」は、ブースの中でも特に来場者の注目を集めていた。短時間ながら実機を触ってきたので、主な特徴と操作方法を解説していく。 - IFA 2013:“スマートで自由だああ!”でありたいユーザーのための腕時計型デバイス──「GALAXY Gear」発表
GALAXY Gearを身につけたが最後、スマートフォンやタブレットデバイスとワイヤレスで接続して、メールやSNSが“いつでも”チェックできてしまうのであった。 - まるで「レンズだけ」 スマホ連携前提の新サイバーショット、ソニーから登場
ソニーがスマートフォンをファインダーがわりとするユニークなデジタルカメラ“サイバーショット”「DSC-QX100」「DSC-QX10」を発表した。 - 石川温のスマホ業界新聞:「Xperia Z1はOne Sonyの成果。これは第一章に過ぎない」——ソニーモバイル・鈴木国正CEOの囲みにツッコミ
ソニーモバイルが9月13日、新型スマートフォン「Xperia Z1」の発表会イベントを開催。同イベントに登壇したCEOの鈴木国正氏に囲み取材を行った。
関連リンク
Copyright© 2013 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.