ファイルメーカーは12月4日、カスタムデータベース作成ソフトの最新版「FileMaker 13」を発表。新バージョンの狙いについて、同社のビル・エプリング社長と米FileMakerのアンドリュー・ルケイツ氏(システムエンジニアリング・ディレクター)に聞いた。
FileMaker 13は「ポストPC時代」をにらんだ新バージョン
——昨年4月に投入したFileMaker 12では、それまで有料だったモバイル端末向けアプリケーション「FileMaker Go」を無償化した。この試みは市場にどう受け止められたか。
エプリング社長 FileMaker Goは、無償化後の最初の週にかつてないダウンロード件数を記録しました。グローバルでの累計ダウンロード数は現在までに80万件を超えています。
モバイル端末を業務で使いたいと思っていなかった企業でも、FileMaker Goのことを知れば興味を持ってもらえるケースが多いです。FileMakerシリーズが新規ユーザーを獲得する上で、FileMaker Goはいまや重要な要素の1つになっていますね。
——「FileMaker 13」で強化したポイントは。
ルケイツ氏 新しいデザインエンジンを搭載し、モバイル端末上でより使い勝手のよいカスタムデータベースを構築できるようになりました。また、開発者向けにさまざまなスクリプトやプログラムをまとめて提供し、従来以上に多機能なカスタムデータベースを作成できるようにしたのもポイントです。
さらに今回は新機能として、カスタムデータベースをWebブラウザ上で利用できる「WebDirect」機能を追加しました。
——WebDirect機能では、FileMakerの専用アプリケーション経由ではなくWebブラウザ上でカスタムデータベースを利用できる。この狙いは。
エプリング社長 新バージョンの前提にあるのは「ポストPC時代」の到来です。PCの出荷数が減り続ける一方、モバイル端末の出荷数は爆発的に増えています。PCとモバイル端末は完全に入れ替わるものではありませんが、ポストPC時代は確実に現実化しつつあると言えるでしょう。
そうした中、FileMakerは1つ1つの企業ニーズに合わせて一層カスタマイズされたビジネスソリューションになることを目指しています。具体的には、ユーザーが現在使っているデスクトップ版のアプリケーションと同じようにリッチな環境をFileMaker上でも再現したい。Webダイレクト機能は、カスタムデータベースを専用アプリケーションから解放することで、より柔軟性の高い使い方を支援するものです。
——カスタムデータベースをWebブラウザ上で利用できるということは、例えば(FileMakerの専用アプリが対応していない)Android上でも使えるようになるということか。
エプリング社長 WebDirect機能は今回「バージョン1」として提供するので、モバイル端末向けにはまだまだ最適化されていません。
ただし今後はOSが何であれ、ユーザーのWebブラウザ環境に適した形で利用できるようにWebDirect機能を改善していく予定です。特定の利用方法に合わせるわけではありませんが、ユーザーにとってよりよい方向に進化させていきたいと考えています。
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