出版デジタル機構は5月30日、凸版印刷の完全子会社で電子書籍取次最大手のビットウェイの全株式を取得し、同社を完全子会社とすることを発表した。近い将来統合することを前提としたもの。
出版デジタル機構は、電子書籍の普及促進を目的に2012年4月に設立。官民出資の投資ファンドである産業革新機構の出資なども受け、経済産業省の「緊デジ」事業などと連携しながら書籍の電子化を推進してきた。こうした取り組みにより電子化された作品を各電子書店に配信する動きは2013年4月から本格化している。
一方、ビットウェイは2013年2月に事業をリテール事業と取次事業に分割、リテール事業をBookLiveが吸収、取次事業は新会社とする公告が出されていた。eBook USERではこれを紹介した記事で出版デジタル機構に取次事業が渡るのではないかとしたが、これが現実になった格好になる。なお、出版デジタル機構とビットウェイは電子書籍の取次・配信システムを協働で構築済み。
出版デジタル機構は今回の買収で、制作と取次の機能を内部に持つことになる。大手出版社であれば電子書籍の制作体制を整え、機構に頼らずに自社で展開していけるところも多いが、各電子書店からの売り上げ配分などその面倒さから取次に委託されることが多い業務も内包することで、業界における確固たる存在感を打ち出したい考え。
短期的には、ビットウェイと並ぶ電子書籍取次会社として知られる大日本印刷グループのモバイルブック・ジェーピーがどのような動きを見せるかも注目だが、これに加え、出版デジタル機構が音楽の世界で言うJASRACのように権利の信託を受けた一元管理機能を持つことを志向してくるかどうかで、その方向性がより鮮明になってくるだろう。出版業界再編の行方は今後も注視したい。
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