シャープが11月30日に発売する“AQUOSクアトロン プロ”「XLシリーズ」は、フルHDパネルを使って「4K相当の解像感」(同社)という新製品だ。しかし、同社を含めたテレビメーカー各社が4Kテレビのラインアップを拡充する中、4K相当のフルHDテレビにどんな意味があるのか。発売前日となる29日、シャープが技術説明会を催して疑問に答えた。
「クアトロン プロ」は、独自の4原色構造を持つ「AQUOS クアトロン」パネルが持つサブピクセル構造を活用する。液晶パネルでは、RGB(赤、緑、青)のサブピクセルを1つのグループとして1画素を構成することで色を表現しているが、クアトロンパネルには、RGB(赤、緑、青)に加えてY(黄)のサブピクセルがある。
「2010年に最初の製品を発売したクアトロンは、黄色のサブピクセルを追加して中間色の表現力を高めるとともに、(バックライトの)光のエネルギーを効率的に使えるようにした。当時はサブピクセルを配置する順番について、その理由を公表しなかったが、緑と黄色を等間隔に配置したのはクアトロンプロを見越していたからだ」(シャープ、AVシステム開発センターの吉田育弘所長)。
人が感じやすい光の波長は550ナノメートル付近で、490〜590ナノメートルの波長を持つ黄と緑はともに感度が高い。そしてクアトロンパネルでは緑と黄色のサブピクセルを等間隔に配置することで2つの輝度ピークを作った。映像処理回路の「超解像 分割駆動エンジン」は、サブピクセルを「赤・緑・青」「青・黄・赤」のグループに分けて駆動する。それぞれが正確な色を表現するとまではいえないが、少なくとも白と黒の描き分けは可能だ。「例えば白を表示する場合、左半分で緑を中核として白にする方法、右半分でも黄色を中心に白を表現する方法がある」という。
また、垂直方向にも解像感を上げる仕組みがある。クアトロンパネルでは、以前から1つの画素を上下に分割し、輝度レベルを個別に調整するサブピクセル制御技術を使っていたが、それを進化させて上下独立した信号で輝度を調整する。「液晶の“窓”(サブピクセルを区切る部分)を上限に、上下を独立駆動させる。これにより、1画素内の輝度ピークの数を2倍にしてはっきりした斜め線を描くことができる」(同氏)。
この2つの技術により、1つの画素を水平方向と垂直方向にそれぞれ2分割し、1つの画素あたり4つの輝度ピークを設ける。それぞれで輝度と色を制御することで、フルHDの4倍の解像度を持つ4Kに相当する解像感が得られるという。
「輝度情報と色情報をうまく組み合わせることで、精細感の高い映像が表示できる。“輝度の解像度”に関しては4Kそのもの。フルHDパネルなのに4K相当の解像感を得られる不思議な状況だ」(吉田氏)。
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