驚くべき進化を遂げた“第2世代”のVAIO Duo
ノートPCとタブレットを1台で両立できるコンバーチブル型PCは、Windows 8の発売以降、製品数を増やしつつある。その中でもソニーが2013年6月29日に発売した「VAIO Duo 13」は、最も先進的な製品の1つに違いない。
2012年10月に発売された「VAIO Duo 11」の上位に位置するVAIOノートの新しいフラッグシップモデルで、“世界一”と“世界初”の特長を持つ。前者は、Haswellこと「第4世代Coreプロセッサー」のUシリーズと、それに最適化した省電力技術を組み合わせることで、Ultrabookで世界一となる公称約18時間のバッテリー駆動を実現したこと。後者は第4世代Core搭載PCとして、世界で初めてWindows 8のConnected Standbyに対応したことだ(いずれも2013年6月10日時点)。
さらに、VAIO Duo 11で注目を集めた独自のスライド機構をよりコンパクトに搭載しつつ、画面サイズは大型化、ペン入力機能も強化したうえで、本体のサイズと重量はほとんど変わらない値に抑えているのだから、まさに驚異的な進化といえる。
そんなVAIO Duo 13はどのように生まれたのか? 詳細なレビューは掲載済みだが、本特集では製品の開発コンセプトやデザイン、独特の変形機構が備わった薄型軽量ボディの秘密を解き明かすべく、開発の主要メンバー5人にインタビューを行った。特にボディの内部構造は、開発者自身の手で実機を分解してもらいながら、詳しく見ていこう。
VAIOのフラッグシップモデルは代々、長野県安曇野市のソニーイーエムシーエス 長野テクノロジーサイトで製造されており、これに該当する「VAIO Z」や「VAIO Duo」は“安曇野モデル”と呼ばれている。今回開発チームを率いたプログラムマネージャーの笠井貴光氏は、過去に「VAIO Z(Z1/Z2)」シリーズやその前身となる「VAIO type S(SZ)」シリーズなど、数々の安曇野モデルを手がけてきた実績を持つ。
また、機構設計を行った齋藤謙次氏、電気設計を担当した土田敏正氏、デザイナーの田中聡一氏、そして商品企画を担当した山内洋氏についても、歴代VAIO ZやVAIO Duo 11の開発に携わってきた経緯があり、VAIO Duo 13がスペシャルなモデルということは、開発陣の顔ぶれからも明らかだ。最初のあいさつで「VAIO DuoをVAIO Zの領域まで引き上げるべく、皆が全力を尽くした」(笠井氏)と聞き、いやが上にも期待が高まる。
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スライド機構+ペンの魅力をより高めるために
Windows 8とともに登場したVAIO Duo 11は、「PCとしての高い生産性、タッチパネルでの直感的な操作、紙のノートを代用できる高度なペン機能——これら3つが高次元に融合した新しいスタイルのPCを創出すること」を目的に製品化され、その革新性はワールドワイドで高評価を得た。
VAIO Duo 11で最大の見どころといえば、液晶ディスプレイ部をスライドさせることで、ノートPC形状の「キーボードモード」とタブレット形状の「タブレットモード」を瞬時に切り替えて利用できる独自の“Surf Slider”(サーフスライダー)機構だ。このユニークな変形機構を備えているため、VAIO Duoには「スライダーハイブリッドPC」という特別な愛称が与えられている。
当時のインタビューにおいて、「スライド機構を完成させたうえで、全体のバランスとスペックを確保するという優先順位で開発を進めた」と開発陣が語るように、タッチパネルが付いた11.6型ワイド液晶ディスプレイをスムーズに開閉でき、しかも十分な剛性を確保するというのは、経験豊富なVAIO開発陣にとっても大きなチャレンジだった。
第2世代のVAIO Duoを開発するにあたり、開発チームを統括した笠井氏は「VAIO Duo 11はSurf Sliderの初代機なので、とにかく安心して使っていただけるよう、スライド機構を可能な限り頑丈に作り上げた。これが無事に完成したため、次世代機ではVAIO Duo 11をリファレンスとし、品質、堅牢性を同等に保ちつつ、スライド機構をより小さく、軽くする目星がついた」と、そのスタートを振り返る。
VAIO Duo 11の開発期間後半と、VAIO Duo 13の開発期間前半は重なっているが、開発陣はVAIO Duoという新ラインアップを育てていくうえで、初代ではまず「スライド機構を作り上げ、新しいPCの価値を創造する」、2代目は「スライド機構を洗練させ、新たなPCの価値を昇華させる」というロードマップを描いていた。そのため、笠井氏は「VAIO Duo 11発売後の市場からのフィードバックはおおむね予想通りだった。その課題の多くはVAIO Duo 13で克服できている」と強い自信を見せる。
スライド機構の小型化は既定路線として、次の検討課題は「VAIO Duo 11と同じ画面サイズで携帯性を追求するか」、それとも「VAIO Duo 11と同等のボディサイズで画面を大型化するか」という2つの方向性だった。笠井氏は「VAIO Duoがスライド機構とともに大事にしているペンの価値をより高めるには、紙のノートに近いサイズ、VAIO Duo 11より広いスペースを存分に使って書けることが重要」と考え、後者を選択する。
こうして初代機より画面が一回り大きな13.3型ワイド液晶ディスプレイを採用した2世代目のスライダーハイブリッドPC、「VAIO Duo 13」の開発が本格的にスタートした。
なお、一部のユーザーにとっては残念な報告だろうが、現時点でVAIO Duo 11をVAIO Duo 13と同様の新設計スライドボディにモデルチェンジする予定はないという(今後11型クラスのコンバーチブルPCは、IFA 2013で発表された「VAIO Tap 11」が担うものと予想される)。
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