ひと口に節電対策と言っても、さまざまな方法がある。あらゆる対策を試すのも悪くはないが、できれば効果の大きい方法に絞って、面倒な手間をかけずに済ませたいところだ。
「スマートジャパン」が提案する節電対策は5つのステップに分かれる。実施する難易度をもとに、手軽な方法から順に紹介していこう。5つのステップをすべて実行すれば、夏や冬の電力需要のピークを抑えられるだけではなく、年間を通して電気料金が安くなるはずだ。もちろん一部の対策だけでも効果はある。
エレベータの節電効果は意外に小さい
第1のステップはコストをかけない節電対策である。オフィスでも家庭でも、エアコンの温度設定に気をつけることは今や常識になっている。照明をこまめに消したり、何本かを間引いたりする対策も、この3年間で定着してきた。
ここで改めて考えたいことは、夏や冬の電力需要のピークを抑えるための節電なのか、それとも電気料金を安くするための節電なのか、という問題だ。どちらも重要だが、それぞれとるべき対策の優先度が違ってくる。
夏の電力需要は14時前後がピークになる(図1)。このピークを抑えるためならば、空調の使用量を下げるだけで十分な効果が得られる。オフィスビルでも店舗でも、夏の14時前後の電力のうち約半分が空調で消費されているからだ。
ビルによっては昼間のエレベータの稼働台数を減らす対策をとっている場合があるが、さほど効果は大きくない。エレベータが使用する電力はわずか5%に過ぎず、稼働台数を半分に減らしても削減率は2.5%にとどまる(図2)。
それよりも空調の設定温度を1度だけ上げる(冬には下げる)ほうが効果的だ。1度の違いで消費電力は1割くらい少なくなることが実証されている。これだけで全体の5%に相当する削減量になる。
照明を間引くと年間の電気料金が安くなる
夏や冬のピークを抑制するための節電は、効果の大きい対策に絞ることが重要なポイントだ。照明を間引く方法も効果はあるが、むしろ窓のブラインドを下ろして十分な照明をつけたほうが空調の電力使用量を抑えられる。ただし秋から春にかけては、太陽光を取り入れて、照明を間引くと効果は大きい。
電気料金を安くするための節電対策を考える場合でも、ピークを抑制することは基本料金の削減につながる。そのうえで1日を通して、さらに年間を通して電力の使用量を少なくすることで、電気料金を大幅に引き下げることができる。
照明を間引くことは年間の電気料金を下げる対策として有効だ。オフィスビルでは夏や冬の夕方以降に空調を止める対策も可能であれば実施したい。ピークの抑制には関係ないが、電気料金には影響する。
このほかにパソコンなどOA機器の節電対策も電気料金を引き下げる効果は大きい。夏のピーク時の電力使用量に占める割合は16%程度だが、OA機器は季節や時間帯に関係なく使い続けるため、ピーク以外の時間帯では比率が大きくなる。
さほど手間をかけずに実施できるOA機器の節電対策としては、パソコンを使わない時にスタンバイモードに設定する方法が一般的だ。コピーやファクスに使う複合機は節電モードに設定しておくだけでも効果がある(図3)。
こうした照明やOA機器を対象にした節電対策を実施することで、年間を通して電力使用量を減らすことが可能になる。コストをかけずに電気料金を安くできるので、夏や冬に限らず徹底したい対策である。
次回はスマートな節電の第2ステップとして、機器を買い替えることの効果を検証してみる。一時的にコストはかかるが、大きな節電効果を得ることができて、買い替え後の電気料金は確実に安くなる。
連載第2回:「機器を買い替える」 9月12日掲載予定
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