Wi-Fiの900MHz帯使用に向けて着々と準備が進んでいる。ホーム/ビルオートメーションやモノのインターネット(IoT:Internet of Things)といった分野向けに複数存在する無線通信規格に対し、コストなどの面で競争力を高めていくことを狙う。今後新たに発行される「IEEE 802.11ah」規格に対応した半導体チップやシステムは、2015年以降に市場投入される見込みだ。
こうした動きは、無線LANにおいて最も広く採用されている規格として、当然の流れだといえる。屋内のマルチメディア通信や、ホーム/ビルオートメーションを狙う、60GHz帯を使用する各規格や、ZigBee、Z-Waveなどと競合することになるのだろうか。
IEEE 802.11ah規格に関しては、早ければ2013年9月末に第1回目の投票が行われる予定だ。正式な発行は2016年1月である。このため、エンドノードやアクセスポイントに向けた新しい半導体チップを開発する場合は、2014年中に行う必要があるだろう。
これまでに数多くの企業が、IEEE 802.11ah規格の策定に向けて取り組んできた。同規格の議長は、Qualcommのエンジニアが務めている。この他の参画企業としては、BroadcomやHuawei、Intel、LG Electronics、Marvell Technology Group、NEC、Samsung Electronics、ZTEなどがある。
IEEE 802.11ah規格は、伝送速度が1MHz幅で150Kビット/秒から、8MHz幅以上で約40Mビット/秒までの、幅広いオプションに対応する予定だ。また、伝送距離は、IEEE 802.11n規格の対応製品と比べて約50%延長できる見込みで、伝送速度が72Mビット/秒までの製品分野をターゲットとする。
Qualcomm Atherosでプロダクトマネジメント担当シニアディレクタを務めるAdam Lapede氏は、「Wi-Fi規格のロードマップにおいて次なる目玉となるのは、GHz未満の伝送速度に対応可能な規格だ。いかなるユースケースにおいても、無線とルータを1つずつ使用すればよいため、他のネットワークを考慮する必要がなく、簡素化を実現できる」と述べている。
Lapede氏は、「現在、数多くの900MHz帯プロトコルが、ビル/ホームコントロールネットワーク向けに集中しており、深刻な問題となっている。それぞれのプロトコルに対して、ハブや基地局を個別に用意する必要があるため、高コストの要因となる。その上、これらのデバイスにIPを追加すれば、さらにコストが増大する」と述べている。
IEEE 802.11ahは、一般家庭向けに10〜20Mビット/秒の伝送速度をサポートする規格として期待されている。最大8000の接続をサポート可能な大規模なビルネットワークを実現することもできるという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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