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電力消費「ゼロ」のノートPC、その秘密とは?

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 太陽電池が非常に高価だった過去、それでも用途が2つあった。1つは系統電力が全く利用できない場合の電力源だ。例えば、離島に設置した機器を動かしたり、宇宙空間で電力を得たりする場合である。もう1つの用途は電力の消費量が非常に少なく切手大の太陽電池で動作する携帯型機器だ。最も広く使われているのは電卓だろう。

 太陽電池が安価になり、性能が高まるにつれて、両方の要素を兼ね備えた用途が開けてきた。その一例が太陽電池だけを電力源とするノートPCだ。

 カナダの通信サービスプロバイダーWeWi Telecommunicationsは、「SOL」と呼ぶノートPCを開発した。solar-powered laptopという名の通り、液晶ディスプレーの背面に4枚の太陽電池モジュールが格納されている。

 SOLは蓄電池(バッテリー)を内蔵しており、蓄電池だけで8〜10時間動作する。ここまではごく一般的なノートPCと同じだ。特徴は太陽電池が強力なことだ。SOLは晴天下であれば蓄電池を使わず、太陽電池だけで動作する。利用していないときは、太陽電池モジュールを広げた状態で内蔵する蓄電池を2時間で充電できるという(図1)。「ACアダプターも利用できるので安心して欲しい」(同社)。

yh20130815SOL_expand_590px.jpg図1 太陽電池モジュールを展開したところ。出典:WeWi Telecommunications

 太陽電池で駆動するノートPCには先駆者がいる。韓国Samsung Electronicsだ。同社は2011年、まずケニアにノートPC「NC2158」を投入、次いで米国市場などにも参入したが、必ずしも市場からは受け入れられなかったというのがWeWi Telecommunicationsの分析だ。同社の創設者であるDavid Snir氏によれば、SOLはこの「失敗」から学んでおり、充電後の利用可能時間を伸ばしたのだという。なお、NC2158の充電時間は2時間だが、利用可能時間は1時間だった。

 同社がSOLを企画したきっかけは、2012年初頭にアフリカのガーナに出張したSnir氏の印象にある。「ガーナの電力インフラの状態は非常に悪い」。そこで、電力インフラに全く依存しないノートPCの開発を開始し、14カ月で製品化できた。固定電話インフラが不十分な地域で、携帯電話サービスが広がった例を想定しているという。

 開発のきっかけとなったガーナ市場向けにまず2万台を出荷し、250〜300カナダドル(2万4000〜2万8800円)で販売する予定だ。その後、衛星電話接続機能を付けた機種をアフリカ市場に投入し、さらに欧米市場向きに高機能で高価格な機種を軍用機器向け、旅行者向けとして販売する計画だ。例えば欧米市場向けには水没に耐える機種を400米ドルで販売する。

 SOLの重量は2.28kgであり、軽量モデルとはいえないが、両側面にゴムを張るなど、堅牢性を高めることが重要だったのだという(図2)。

yh20130815SOL_office_590px.jpg図2 堅牢性を高めたSOL。出典:WeWi Telecommunications

 なお、SOLは一般的なノートPCとして利用可能な性能を備えているという。以下は欧米市場向けの仕様である。プロセッサとして米IntelのAtom D2500(1.86GHz)を内蔵し、4GBのメモリと320GBのHDD、1366×768画素の液晶ディスプレーを利用できる。Wi-Fi(802.11b/g/n)の他、GPS(gpsOne Gen8A)も備えている。OSとしてLinuxディストリビューションの1つである「Ubuntu(ウブンツ)」を利用した(図3)。Ubuntuではオフィスソフトウェア「LibreOffice」(またはApache OpenOffice)など大量のアプリケーションソフトウェアを利用可能だ。

yh20130815SOL_Ubuntu_590px.jpg図3 起動するとUbuntuのデスクトップ画面が表示される。出典:WeWi Telecommunications

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