2009年のOracle Database 11g R2のリリースから約4年が過ぎ、Oracle Databaseの最新バージョンOracle Database 12c R1がリリースされました。本連載では、Oracle Database 12c R1の主要な新機能をユーザーの立場に立って実際に使用、評価し、新機能の活用方法や注意点を紹介します。
第1弾となる本記事では、Oracle Database導入を実施ならびに支援するサービスプロバイダという筆者の立ち場から、ユーザーにとってのOracle Database 新バージョンの意義を考えながら、Oracle Database 12c R1の新機能や廃止された機能などをご紹介します。
待望のOracle Database 12c R1リリース
2012年9月のOracle OpenWorldで、米OracleのCEOであるラリー・エリソンが「Container Database」「Pluggable Database」という新たなコンセプトとともにOracle Database 12cを発表してから約1年が過ぎ、やっとOracle Database 12c R1がリリースされました。サンフランシスコの興奮から首を長くして待ち続けて、少し待ちくたびれたような気もします。
Oracle Database 12c R1は既にオラクルのWebサイトからダウンロード可能になっています。2013年6月25日時点ではLinux、Solarisプラットフォーム向けが、続いて7月11日にWindows x64プラットフォーム向けがリリースされていますので、ぜひダウンロードしてインストールしていただければと思います。
また、今後順次AIX、HP-UXなどのプラットフォーム向けもリリースされるはずです。
Oracle Database 12c R1では非常に多くの新機能が提供されています。新機能については、マニュアル「New Features Guide」(2013/07/20時点でマニュアルは英語版のみが提供されています)から確認できます。このマニュアルによると、おおよそ320の新機能が提供されているようです(小項目の数で筆者がカウントした数値)。
これらの新機能にはさまざまなレベルのものがありますが、システムに与えるインパクトが大きい新機能としては以下が挙げられます。
マルチテナント・アーキテクチャの導入 複数のデータベースを1つのインスタンスに統合できる技術。データベースが多数存在することから発生する大きな運用負荷を軽減できることが期待されます。また、パブリッククラウド、プライベートクラウドへの活用も想定されます。以前は「Pluggable Database」と呼ばれていましたが、現在は「Pluggable Database」を包含する概念として「マルチテナント・アーキテクチャ」という用語が使用されています。
情報ライフサイクル管理の強化 データベースに格納された多くのデータをライフサイクルの観点で分類し、データの使用状態に応じたデータ格納方式(圧縮有無、格納先ストレージ装置の利用)の選択を、半自動的に実行するための各種機能の総称。従来も圧縮機能など、情報ライフサイクル管理に適用できる要素技術は存在していましたが、Oracle Database 12c R1では機能を追加・統合し、より使いやすい形で提供しています。
セキュリティ機能の強化 監査、権限などのセキュリティ関連の機能を強化し、エンタープライズ領域でのデータ管理をよりセキュアにしています。
より堅牢なデータベース基盤の実現 近年のDisaster Recovery要件に対する高まりを受け、Oracle DataGuardやレプリケーション関連の機能が強化されています。特に遠隔地を含めた複数拠点においてデータベースの基本機能である参照、更新、接続を提供するための数多くの機能拡張が行われています。従来はシステムの作り込みや運用で対処せざるを得なかった部分をOracle Databaseの機能として実現できるため、環境固有の実装や運用手順を排除し、コストの面で堅牢性を実現できなかったシステムでも低コストに堅牢性を得られるようになります。
いずれの機能も、エンタープライズITシステムのシステム構成、アーキテクチャにおいて大きなインパクトをもたらす画期的な機能です。Oracle Database 12c R1のリリースはエンタープライズITシステムに関わる立場として、「待望のもの」と言えるでしょう。
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